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情報:農業と環境 No.106 (2009年2月1日)
独立行政法人農業環境技術研究所

農環研公開セミナー 「新規アレロケミカルの探索と利用」 が開催された

1月18日、エポカルつくば (つくば国際会議場) において、農業環境技術研究所が主催する公開セミナー 「新規アレロケミカルの探索と利用」 が開催されました。

このセミナーは、本年度(2008年度)、農環研が研究代表として採択された、生物系特定産業技術研究支援センターの競争的研究資金 「イノベーション創出基礎的研究推進事業」 の 「アレロケミカルの探索と新規生理活性物質の開発」(http://www.naro.affrc.go.jp/brain/inv_up/theme/2008/023742.html) (最新のページに変更しました。2014年8月) における国際的な活動の実施の一環として開催しました。

近年、アレロケミカルに関する研究が進み、植物が身を守ったり、相互に通信したりする手段として利用される、植物に特異的な二次代謝物質であることが明らかとなってきました。こうした物質から、新規の生理活性物質を開発したり、このような成分を含む植物の農業への直接の利用による環境に安全な農業と安全な食品を生産したりすることが期待されています。

各国からの報告者と研究代表者(藤井)(写真)

写真 各国からの報告者と研究代表者

このプロジェクトでは、海外を含めた未知の植物から新たなアレロケミカルを探索・利用することを目的としています。そこで、今回は、モンスーンアジア地域の植物資源が豊富な国の研究者を招へいし、それぞれの国における研究の現状を発表していただき、今後の共同研究の方向について討議しました。

まず、主催者を代表して農環研の田中宥司研究コーディネータが開会のあいさつをした後、研究代表者である藤井義晴上席研究員 (生物多様性研究領域) が、プロジェクト研究の概要と今回のセミナーの目的を紹介しました。引き続き、パキスタン (イブラール・シンワリ博士: パキスタン国立自然史博物館副学芸員)、タイ (ジャルンヤ・ピンスーパ女史: タイ国農務省植物防疫局雑草防除専門官)、イラン (マジード・アジジアラニ博士: フェルドウシ大学准教授)、マレーシア (バキ・ビン・ベイカー博士: マラヤ大学教授)より、各国のアレロケミカル研究の現状と今後の課題について報告がありました。この4か国から招へいしたのは、それぞれがアジアの4つの植生帯を代表する地域 (インド系、東南アジア系、西−中央アジア系、マラヤ系) を代表する国であるからで、これに日華系に属する日本を加えると、モンスーンアジアの植生帯を網羅しています。

総合討論では、モンスーンアジア地域の近接する地域における共通の植物とその成分について、薬用植物に強いアレロパシー活性がある傾向について討議され、日本の天然物質の同定と有機合成に対する期待について発言がありました。また、今後、この分野において、研究協定(MOU)を締結した共同研究を実施することが重要であるとの具体的な意見交換がなされました。日本からは、農環研のほか、筑波大学、徳島大学、九州大学、および天然物や生理活性物質に関係した民間企業、大学院生、アジアからの留学生や研究者・技術者など、多彩な参加者がありました。

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