前の記事 | 目次 | 研究所 | 次の記事 2000年5月からの訪問者数
情報:農業と環境 No.112 (2009年8月1日)
独立行政法人農業環境技術研究所

公開セミナー 「GBIFと生物多様性情報の発信基地としてのアグリバイオ知的基盤の新たな展開」(アグリバイオ分野における知的基盤の今日と将来展望 第1回) が開催された

7月13日、つくば農林ホール(茨城県つくば市)において、公開セミナー 「GBIFと生物多様性情報の発信基地としてのアグリバイオ知的基盤の新たな展開」 (アグリバイオ分野における知的基盤の今日と将来展望 第1回)が、農業環境技術研究所、農業生物資源研究所、種苗管理センターの共催で開かれました。

地球規模生物多様性情報機構(Global Biodiversity Information Facility, GBIF)は、世界中の生物多様性情報をだれでも利用できるようにすることを目的に、現在、第2期 (2007−2011年)の活動を展開しています。農業環境技術研究所 は、農業分野でもっとも歴史のある昆虫微生物標本館を、農業生物資源研究所 は、配布可能な植物などのジーンバンクやゲノムリソースを、種苗管理センター は、わが国唯一の種苗法関連バイオリソースを有しています。

この公開セミナーは、GBIFの国際的な取り組み等を外部の有識者に紹介していただき,平成23年4月に統合が予定されている3法人が有するアグリバイオ分野における知的基盤のよりいっそうの整備と利活用に資することを目的として開催されました。

参加者数は130名で、内訳は、行政組織から11名、国公立・独立行政法人試験研究機関から100名(内、3法人から93名)、大学等から9名、民間企業等から8名、その他(国際機構など)から2名でした。

おもなプログラム

 I 部 地球規模生物多様性情報機構(GBIF)の目的

はじめに
菅原秀明 (農業環境技術研究所/国立遺伝学研究所/GBIF執行委員会前副議長)

GBIF について
松浦啓一 (国立科学博物館/GBIF執行委員会副議長)

GBIF 日本ノードとその関連プロジェクトの展開
伊藤元己・神保宇嗣 (東京大学)

II 部 農業分野の知的基盤整備

農業環境技術研究所の知的基盤
吉松慎一 (農業環境技術研究所)

農業生物資源研究所の知的基盤
長村吉晃 (農業生物資源研究所)

種苗管理センターの知的基盤
田平雅人 (種苗管理センター)

総合討論 司会: 對馬誠也・河瀬眞琴、コメンテーター:菅原秀明

議論の概要

第 I 部では、菅原氏から GBIF の成立経緯や GBIF がめざすものについて紹介があり、続いて、松浦氏から GBIF の現在の取り組みについて、伊藤氏から GBIF 日本ノードの現状について紹介された。第II部では、3法人の知的基盤の現状がそれぞれ報告された。

講演や総合討論では多くの意見やコメントがありました。その一部を以下に紹介します。

1) 持続性を求められる知的基盤の整備を、競争的資金で行うことには限界があるのではないか。

2) 現在のDNAバーコードだけでは不十分であり、今後は必要に応じて他のDNA領域も利用する計画がある。

3) 情報を GBIF に提供する研究者・研究組織に対するインセンティブが重要である。

4) 品種や種内変異などについて、今後 GBIF も対象としていくと思う。

セミナーのテーマが 「生物多様性と知的基盤」という特殊性からか、都道府県や農研機構などからの研究者の参加は少なく、行政、国際機関、民間団体など、これまであまり交流のない組織からの参加者が多いように思われました。知的基盤の成果の蓄積やその利用は今後ますます重要になると考えられるので、今後も議論を続けていきます。

前の記事 ページの先頭へ 次の記事