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情報:農業と環境 No.113 (2009年9月1日)
独立行政法人農業環境技術研究所

カドミ米: 田んぼのカドミウムを減らす
(常陽新聞連載「ふしぎを追って」より)

最近「事故米」の不正転売が大きな問題になっていますが、「カドミ米」をご存知でしょうか?

「事故米」はカビが生えたり基準値以上の農薬が検出されたりして食用にできなくなったお米ですが、カドミ米というのはカドミウムを多く含む米のことです。カドミウムは四大公害病のひとつであるイタイイタイ病の原因物質で、食品衛生法上の米の基準値は1ppmとされています。これを超える米ができた田んぼは土を入れ替える大規模な修復工事が行われ、今では1ppmを超える米はほとんどありません。0.4ppm以上のカドミウムを含む「カドミ米」は毎年1000トン以上が買い上げられて食用以外に使われていましたが、「事故米」事件を受けて今後は焼却処分されることになりました。

カドミ米のカドミウムはどこからきたのでしょう?

土の中には多くの元素が含まれています。地殻に含まれる元素は多い順に酸素、ケイ素、アルミニウム、鉄・・・で、カドミウムは65番目です。田んぼの土にはもともと微量のカドミウムがあるので、稲は他の養分と一緒にカドミウムも吸収しています。ですから、私たちが食べているお米の中にもカドミウムが含まれています。カドミウムを多く含む食品を長年にわたって食べ続けると腎臓を痛めることが最近わかってきました。それでも、0.4ppm未満の米であれば健康への影響はほとんどないとされています。

カドミウムの多い米ができる原因の一つは、日本各地にある鉱山や精錬所などから、鉱石に含まれていたカドミウムが排出され、長い年月の間に田んぼにたまってしまったことです。ノーベル物理学賞を受賞した小柴博士の研究で有名なカミオカンデは岐阜県の神岡鉱山跡にあります。神岡鉱山では奈良時代から近年まで亜鉛などを採掘していました。

私たちの研究所では、このような田んぼのカドミウムを減らすための新しい方法を開発しました。それには稲を使います。稲にはたくさんの品種がありますが、その中に、私たちが食用にしている品種よりも土のカドミウムをよく吸収する品種があることがわかってきました。この品種を、カドミウムの多い田んぼで3年から5年栽培し、刈り取った稲を焼却します。この方法だと、土を入れ替える工事の半分程度の経費で、その後に栽培する食用米のカドミウムを約半分に減らすことが可能になります。

カドミウムをよく吸収するイネ品種で田んぼのカドミウムを減らす(図)

(農業環境技術研究所 土壌環境研究領域 荒尾知人)

農業環境技術研究所は、一般読者向けの研究紹介記事「ふしぎを追って−研究室の扉を開く」を、24回にわたって常陽新聞に連載しました。上の記事は、平成20年11月19日に掲載されたものを、常陽新聞新社の許可を得て転載しています。

もっと知りたい方は・・・

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