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情報:農業と環境 No.115 (2009年11月1日)
独立行政法人農業環境技術研究所

MARCOシンポジウム2009 「モンスーンアジアにおける農業環境問題と研究の課題」 が開催された

10月5日から7日までの3日間、つくば国際会議場(エポカルつくば)において、MARCOシンポジウム2009 「モンスーンアジアにおける農業環境問題と研究の課題」 を開催しました。

水田を中心としたモンスーンアジアの農業は、独特の農業生態系をはぐくむとともに、持続的生産を可能にしてきました。しかし近年、人口の増加や経済発展に伴う食料需要の増大に加え、新たなバイオ燃料生産等の動きにより、この地域の農業生産に対する需要が著しく増大しつつあります。その一方で、農業の集約化による環境への負荷の増大や自然資源の劣化、さらには温暖化の進行等、農業と環境をめぐる問題は深刻さを増しています。

こうした背景のもと、環境との調和を図りつつ農業に対する需要の増大にこたえていくためには、同地域内の各国の農業と環境にかかわる研究者・技術者・行政担当者等が国際的に密接な連携を築くことがいっそう重要になってきています。本シンポジウムでは、問題の現状や動向、研究の最先端について発表するとともに、今後の研究方向や連携協力について、3日間にわたって議論しました。

シンポジウムには26か国から445名が参加し、全体会議、ワークショップとも活発な議論が繰り広げられました。農業環境技術研究所では今回の成果を受け、連携強化に向けた活動を今後も展開していきます。

会期: 2009年10月5日(月曜日)−7日(水曜日)

会場: つくば国際会議場 (エポカルつくば)

主催: 独立行政法人農業環境技術研究所 (NIAES)

後援: 農林水産省農林水産技術会議事務局

参加国: オーストラリア、バングラデシュ、ベニン、カナダ、中国、エジプト、フランス、ドイツ、インド、イラン、日本、韓国、マレーシア、ミャンマー、パキスタン、フィリピン、スロバキア、スリランカ、スイス、台湾、タイ、チュニジア、オランダ、英国、米国、ベトナム

プログラム

10月5日 (月曜日) 9:30〜17:15

全体会議

開催あいさつ 農業環境技術研究所 理事長 佐藤洋平

来賓あいさつ 農林水産省農林水産技術会議事務局長 佐々木昭博

基調講演 モンスーンアジアの自然と農業 久馬一剛(京都大学名誉教授)

講演  アジア農耕地の重金属汚染の現状

Yongming Luo(中国科学院土壌科学研究所、中国)

モンスーンアジア地域における農業食糧植物遺伝資源の保存と利用

河瀬眞琴((独)農業生物資源研究所)

気候変化に強いイネの生産体系と国際協力

Holger Meinke(ワーゲニンゲン大学(UR)、オランダ)

穀物・植物貿易による外来植物の導入と生物多様性への影響

小沼明弘((独)農業環境技術研究所)

東アジアにおける食料生産・消費による窒素フローの変化とその環境への影響

新藤純子((独)農業環境技術研究所)

土地利用と炭素ストックを宇宙からとらえる −ラオス焼畑生態系における研究から−

井上吉雄((独)農業環境技術研究所)

地球温暖化時におけるアフリカの土地荒廃: 大気中の二酸化炭素増加による施肥効果によってアフリカの土地荒廃はかくされるのか?

Paul L. G. Vlek(ボン大学開発研究センター、ドイツ)

1日目の全体会議では、モンスーンアジアの農業と環境をめぐる問題を概括的にとりあげました。

10月6日 (火曜日) 9:00〜17:00
10月7日 (水曜日) 9:00〜12:00

2日目、3日目のワークショップでは、重金属、高温障害、植物資源、農業生態系と生物多様性、メタゲノム解析技術といった個別の課題に関してワークショップ(分科会)を開き、これに関する講演と討論を行いました。

ワークショップ 1 植物機能を利用した農作物中の重金属低減技術の開発

作物中のカドミウムを減らすための効果的な植物機能の利用技術の開発、ヒ素による水・土壌の汚染問題についてのアジア各国の現状報告とヒ素汚染対策技術に関して、国内5名、海外から13名の話題提供があり、これをもとに議論しました。(参加者約100名)

ワークショップ 2 地球温暖化に伴う農作物高温障害の発生、予測と適応戦略

国内から7名、国外から16名の専門家を迎え、作物の高温ストレスの発生実態とモニタリングネットワークの構築、温暖化の影響および適応技術の効果を評価するための作物モデル開発に向けた国際的なネットワーク研究の推進などに関して議論しました。(参加者約100名)

ワークショップ 3 モンスーンアジアの植物資源とアレロケミカルの探索

国内から6名、海外から5名のスピーカーが話題を提供しました。モンスーンアジア地域の植物資源が豊富な国の研究者が、アレロパシー活性の強い固有の植物について発表しました。国内研究者からは、植物成長促進活性があるストリゴラクトンとレピジモイド、全活性の概念によるアレロケミカルの単離と証明、低分子で重要なシアナミドの発見など、最先端の研究の紹介がありました。最後に今後のMARCO圏内での共同研究について具体的な話し合いが行われました。(参加者は約60名)でした。

ワークショップ 4 水田を中心としたモンスーンアジアの農業生態系と生物多様性

国内から3名、海外から6名の話題提供があり、これに続く討議では、水田地域における水田、ため池や水路、森林などのモザイクが重要な生物生息空間として機能しているという共通認識が得られました。その一方で、モンスーンアジアの水田地域における生物多様性については、欧米に比べて知識の集積が極めて遅れており、調査法の標準化や研究者のネットワーク化が必要とされました。(参加者は約80名)

ワークショップ 5 農業研究におけるメタゲノミクスの展望

国内9名、海外6名の研究者を招聘(しょうへい)し、メタゲノム解析技術の農業環境分野への展開について議論しました。総合討論では、メタゲノム研究にかかわる研究協力の推進に対して、海外の研究者からは、研究材料提供の申し入れ、研究者や学生の交流の提案、情報交換や共同研究推進のための双方からのファンドへの応募等が提案されました。(参加者は約180名)

10月7日 (水曜日) 13:00〜15:00

全体会議

総合討論

ワークショップ1〜5からの報告 各ワークショップコンビーナー

サテライト・ワークショップからの報告

「東アジアの陸域生態系における炭素窒素循環とその環境影響に関する国際会議」

「農薬およびPOPsの土壌残留と食の安全に関する国際セミナー」

ステートメント

閉会あいさつ

総合討議では、それぞれの分科会からの報告と、MARCOサテライト・ワークショップからの報告を受け、問題の解決に向けた連携、研究協力について議論しました。最後に、以下のシンポジウム声明 (Statement) を発表して、閉会しました。

Statement

Agriculture centering on paddy rice in Monsoon Asia has enabled sustainable production while fostering distinctive agro-ecosystems. The demand for food, however, is going to increase considerably due to population growth, economic development, biofuel production, and so forth. As a result, the demand for agricultural production in this region will increase significantly.

On the other hand, agricultural and environmental problems, including urbanization, pollution from industry, environmental impacts of agricultural intensification, deterioration of natural resources, and the progress of global warming, are getting more serious and will cast a shadow over agriculture and the environment in the future.

In order to meet the growing demands on agriculture while using natural resources in sustainable ways and providing protection and support for the ecosystem, it is imperative that researchers and administrators of this region closely collaborate, internationally, by facing the emerging problems as challenges and opportunities.

In this symposium, five hot issues concerning food safety, global warming, biological resources, biodiversity, and metagenomics of soil microbiota have been discussed.

For that purpose, we will continue to promote challenging, future-oriented client-demanding international cooperation under the framework of the Monsoon Asia Agro-Environmental Research Consortium (MARCO).

シンポジウム声明

モンスーンアジアにおける水田稲作を中心とした農業体系は、その特徴的な農業生態系を育むとともに、持続的な生産を可能としてきました。しかしながら、人口増加、経済発展、バイオ燃料生産等により、食料に対する需要は今後大幅に増え、そのためこの地域における農業生産はさらなる増加が求められると予想されます。

その一方で、都市化、工業からの汚染、農業の集約化による環境影響、天然資源の枯渇、地球温暖化の進行といった、農業と環境を巡る問題は一層厳しさを増し、将来に暗い影を落とすに至っています。

天然資源の持続的な利用と生態系の保全を図りながら、農業に対する需要の増大に応えていくためには、この地域の研究者や農業政策担当者が、迫り来る問題を好機と捉え、国際的に密接な協力関係を築いて対応していく必要があります。

今回のシンポジウムでは、食品の安全性、地球温暖化、植物資源、生物多様性、土壌微生物のメタゲノミクスという5つのテーマに関して議論が行われました。

モンスーンアジア農業環境研究コンソーシアム(MARCO)の下、私たちは、将来を指向し、人々の求めに応える国際協力を、挑戦的に推進していきます。

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