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情報:農業と環境 No.117 (2010年1月1日)
独立行政法人農業環境技術研究所

農業環境を巡る2009年の重大ニュース

2009年を振り返ると、日本でも世界でも、さまざまな事件やできごとがありました。ここでは、研究所内から寄せられた農業環境にかかわるニュースをご紹介します。

(1)地球温暖化の進行

12月に気象庁が発表した速報値によると、2009年の世界の年平均気温は平年差+0.31℃、統計開始以来第3位から第6位の高い温度になる。日本は平年差+0.58℃で第7位程度。世界の年平均気温は長期的には100年間で0.68℃の割合で上昇し続けている。
 http://www.jma.go.jp/jma/press/0912/14a/world2009.html (気象庁)

一方、世界気象機関(WMO)は、2008年の大気中の主要温室効果ガス濃度がいずれも過去最高値となったと発表。二酸化炭素(CO)385.2ppm(工業化以前は約280)、メタン(CH)1797ppb(工業化前 約700)、一酸化二窒素(NO)321.8ppb(工業化前 約270)。(ppmは体積比100万分の1、ppbは体積比10億分の1)

(2)温室効果ガス排出の削減

11月、環境省は京都議定書約束期間第1年にあたる2008年度の温室効果ガス排出量の速報値を12億8,600万トンと発表。基準年1990年の排出量を1.9%上回った。京都議定書での目標は2008年から5年間の平均を6%削減すること。
 http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=11766 (環境省)

鳩山首相は、9月に開催された国連気候変動サミットで、温室効果ガス排出量を2020年までに90年比で25%削減することを表明、すべての主要国の参加による意欲的な削減目標の合意を求めた。
 http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/unsokai/64_kiko_gh.html (外務省)

(3)気候変動枠組み条約COP15の開催

第15回国連気候変動枠組み条約締約国会議 (COP15) および京都議定書第5回締約国会合 (COP/MOP5) などが12月、コペンハーゲンで開催。森林・農業分野では、京都議定書期間以降の枠組みにおける吸収源の取り扱い、途上国の森林減少・劣化問題、気候変動における農業分野の取り扱いなどが議論された。産業化以前からの気温上昇を2度以内に抑える、先進国は2020年削減目標を、途上国は削減行動を提出する、先進国が資金支援を行うことなど 「コペンハーゲン合意」 が作成されたが、COP全体会合では「条約締約国会議として同合意に留意する」とされ、具体的な協議は先送りとなった。
 http://www.maff.go.jp/j/press/kanbo/kankyo/091221.html (農林水産省)

(4)グリーン・ニューディールが世界的に

省エネルギー対策や再生エネルギーの促進、環境汚染対策など 「環境」 分野への重点的な投資で景気回復や雇用創出を図る動きが、米国だけでなく、世界中に広がった。国連環境計画 (UNEP) は3月、報告書 「グローバル・グリーン・ニューディール:政策の概要」 を公表し、世界のGDPの1%にあたる7500億ドルを、5つの重点分野(建物のエネルギー効率化、再生可能エネルギー、持続可能な交通、生態系保全、持続可能な農業) に投資することを提唱した。
 http://www.unep.org/pdf/A_Global_Green_New_Deal_Policy_Brief.pdf (UNEP、英語)

(5)POPs条約COP4の開催

5月、残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約 (POPs条約) の第4回締約国会議 (COP4) が開催され、残留性有機汚染物質 (POPs) として9物質が追加された。その半数以上が農薬由来。国内では化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)による規制が行われる。
 http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=11117 (環境省)

(6)生物多様性国家戦略2010

2008年に施行された生物多様性基本法に基づく、生物多様性国家戦略の改訂作業が行われている。現在、国民からの意見募集 (パブリックコメント) を実施中。
 http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=11886 (環境省)

2010年は国連の定めた「国際生物多様性年」であり、生物多様性条約第10回締約国会議/カルタヘナ議定書第5回締約国会議 (COP10/MOP5) が10月に名古屋で開催される。
 http://www.biodic.go.jp/biodiversity/ (環境省)

(7)事業仕分けで科学技術予算も見直し

11月に行われた行政刷新会議の事業仕分けで、スーパーコンピューター、スプリング8など大型研究開発事業のほか、若手研究者育成や女性研究者支援など科学技術振興や研究者育成の予算もきびしい判定を受けた。
 (事業仕分け 第3会場評価結果) http://www.cao.go.jp/sasshin/oshirase/h-kekka/3kekka.html (該当するページが見つかりません。2015年8月) (内閣府)

12月25日に閣議決定された2010年度予算案において、科学技術振興費は27年ぶりに前年度を下回った。
 http://scienceportal.jp/news/daily/0912/0912281.html (科学技術振興機構 サイエンスポータル)

(8)耕作放棄地の増加

2008年度に実施した耕作放棄地に関する現地調査の結果が4月に公表された。耕作放棄地の面積は約28万ヘクタールと推定され、森林化・原野化して農地に戻すことが困難な「赤」区分が約半分を占めた。農林水産省は農地法を改正するとともに耕作放棄地への緊急対策を進めている。
 http://www.maff.go.jp/j/press/nousin/nouti/090407.html (農林水産省)

(9)コメのカドミウム基準値改正の検討

米のカドミウム基準値を、現行の 1.0mg/kg 未満から 0.4mg/kg 以下に引き下げる改正案がまとめられた。今後、食品衛生法に基づく基準改正と、農用地土壌汚染防止法に基づく対策地域指定の見直しとが行われる。
 (「食品に含まれるカドミウム」 に関するQ&A)
 http://www.mhlw.go.jp/houdou/2003/12/h1209-1c.html#07 (厚生労働省)
 (食品中のカドミウムに関する情報)
 http://www.maff.go.jp/j/syouan/nouan/kome/k_cd/index.html (農林水産省)
 (カドミウム高吸収イネによるカドミウム汚染水田の浄化技術 (ファイトレメディエーション))
 http://www.naro.affrc.go.jp/archive/niaes/techdoc/press/090821/press090821.html (農環研プレスリリース)

(10)国内で食品のカーボンフットプリント表示がスタート

「カーボンフットプリント制度」 は、商品やサービスの原材料調達から廃棄・リサイクルにいたるまでのライフサイクル全体での温室効果ガス排出量をCOに換算してわかりやすく表示する仕組み
 (カーボンフットプリント制度の基本ルール)
 http://www.meti.go.jp/press/20090303004/20090303004.html (該当するページが見つかりません。2012年7月) (経済産業省)
 (農林水産分野における省CO効果の表示の指針)
 http://www.maff.go.jp/j/press/kanbo/kankyo/090401_1.html(農林水産省)

(11)全国的な日照不足・低温による農作物被害

2009年夏の低日照により水稲作況が全国的に低下、北海道では低温による障害型冷害も発生
 http://www.naro.affrc.go.jp/archive/niaes/techdoc/sokuhou/091027.html (農業環境技術研究所)
 http://www.maff.go.jp/j/kanbo/joho/taisaku/index.html (農林水産省)

中国、北陸、東北地方では梅雨明けの時期が特定できず「梅雨の明けない夏」に
 http://www.jma.go.jp/jma/press/0909/01d/tsuyu2009.html (気象庁)

(12)温室効果ガス観測技術衛星の打ち上げ

地球から宇宙へ放射される赤外線スペクトルを宇宙から観測し、温室効果ガスの濃度分布を算出する、温室効果ガス観測技術衛星 「いぶき」 GOSAT が、1月に打ち上げられた。
 http://www.satnavi.jaxa.jp/project/gosat/goal.html (JAXA)

(13)新型インフルエンザの大流行

メキシコなどで4月に発生が確認された新型インフルエンザ (インフルエンザA型H1N1亜型) が世界的に流行した。6月にはWHOから世界的大流行 (パンデミック) が宣言された。国内の感染者は推計で1千万人を超えたが、流行はまだおさまっていない。
 (新インフルエンザ対策関連情報)
 http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/index.html (厚生労働省)

(14)消費者庁が発足

消費者行政を統一的、一元的に推進するための新たな組織として9月に 消費者庁 が発足。監視機能を有する独立機関として 消費者委員会 が置かれた。

(15)食料自給率が1ポイント上昇

平成20年度の食料自給率 (カロリーベース) は前年度からさらに1ポイント増加し41%となった、生産額ベースでは前年度より1ポイント低い65%。
 http://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/012.html (農林水産省)

(16)日本が「東アジア共同体」構想を表明

10月、タイ・ホアヒンで開催された第4回東アジア首脳会議で、日本は東アジア共同体 (EAC) 構想の推進を提案。
 http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/eas/shuno_4th.html (外務省)

中国・インドを含む東アジアにおいては、気候変動と人口増加に対応する食料の安定供給が今世紀における最優先課題となる。MARCO (モンスーンアジア農業環境研究コンソーシアム) による研究連携がますます重要になると思われる。

(17)オーストラリアで大規模森林火災

1月末から2月初めにかけ、オーストラリア南東部ビクトリア州で大規模な森林火災 (bush fire) が発生。焼失面積40万ヘクタール、死者200人以上。記録的な干ばつ、熱波、異常乾燥、強風などの悪条件が重なった。
 (オーストラリア南東部の熱波と森林火災について)
 http://www.jma.go.jp/jma/press/0902/09a/world20090209.pdf (ページのURLが変更されています。2015年6月) (気象庁)

(18)食料と競合しないバイオ燃料の技術開発が進む

(セルロース系バイオマスから固体発酵でバイオエタノール生産)
 http://www.naro.affrc.go.jp/archive/niaes/techdoc/press/090325/press090325b.html (農業環境技術研究所)

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