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農業と環境 No.136 (2011年8月1日)
独立行政法人農業環境技術研究所

論文の紹介: 安価で高性能な強制通風筒 NIAES-09 の自作

[講座]建築資材を活用した低コスト強制通風筒 「NIAES-09」 の製作法、
福岡峰彦ら、 生物と気象 11、A10-16 (2011)

強制通風筒(NIAES-09 型)(写真)

農環研が開発した強制通風筒 「NIAES-09」

農環研が開発した強制通風筒 「NIAES-09」 の詳細な製作方法が「生物と気象」第11巻に掲載されました。日本農業気象学会のサイト (最新のURLに修正しました。2014年3月)全文の PDF ファイル (最新のURLに修正しました。2014年3月) を読むことができます。

近年、夏の異常高温は農作物の生育にさまざまな影響を及ぼし、たとえば稲作ではコメの品質低下や不稔(ふねん)により、各地で深刻な被害をもたらしています。このような障害がどのような気象条件で発生しているのかを明らかにして対策技術を開発するためには、まず気温を正確に測定することが必要です。

気温などの気象観測には、従来は百葉箱が広く使われていました。しかし、百葉箱は自然の通風に依存しているため、風が弱いときに強い日射を受けると気温が実際より高めに観測されてしまう問題がありました。そのため、現在の気温観測には、温度センサー部分に外部の空気を強制的に送り込む「強制通風筒」が使われています。ただし、市販の強制通風筒は特定の温度センサーに合わせて専用に設計されていることが多く、また1台が数十万円程度と高価なため、一般には利用が進んでいません。

農業環境技術研究所では、低コストで自作可能であり、市販の強制通風筒と同等の観測精度をもつ、強制通風筒 「NIAES-09」 を開発し、農作物の高温障害の研究などに利用しています。NIAES-09 の主要部分は、既製の建築用資材をほぼそのまま組み立てた簡易な構造ですので、容易に自作でき、仕上がりも均質です。温度センサー格納部は、強制吸排気(FF)式給湯器の吸排気管として用いられるステンレス二重管の内筒に塩ビ管を挿入した構造になっており、温度センサーは塩ビ管内につり下げます。温度センサー格納部の上部にはくみ取り式トイレ用の換気扇を取り付け、温度センサー格納部の下端から空気を吸引します。材料費は設置用金具を含めても2万円以下です。

NIAES-09 は、市販の温度センサーや温度ロガーと組み合わせることにより、精度の高い気温測定を安価に実現します。農業以外にも、都市におけるヒートアイランド現象の調査など、気温の正確な測定を必要とする幅広い分野において利用が期待されます。

(参考)

建築資材を活用した低コスト強制通風筒 「NIAES-09」 の製作法 (PDF) (最新のURLに修正しました。2014年3月) (「生物と気象」第11巻 日本農業気象学会)(2011年6月)

気温を正確に測るには (PDF) (農環研ニュース 90号)(2011年3月)

低コストで高精度の気温測定を可能にする強制通風筒(平成21年度研究成果情報)(2010年3月)

(広報情報室長 廉沢敏弘)

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