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農業と環境 No.139 (2011年11月1日)
独立行政法人農業環境技術研究所

第11回有機化学物質研究会「化学物質と人間・環境との調和を目指すレギュラトリーサイエンス」が開催された

10月4日、農業環境技術研究所大会議室において、第11回有機化学物質研究会 「化学物質と人間・環境との調和を目指すレギュラトリーサイエンス」 を開催しました。

レギュラトリーサイエンスは、1980年代、国立衛生試験所(現在の国立医薬品食品衛生研究所)の内山充氏によって 「学問や技術を人間・環境にとって望ましい内容と方向を持つように調整(レギュレート)するための」「予測・評価・判断の科学」 として提唱された概念であり、近年、科学的知見と行政施策を結びつけるために必要な取組みとして、その充実・強化が望まれています。

この研究会では、有機化学物質を主な対象として、行政の立場から「レギュラトリーサイエンス」推進のための取組み、研究の立場から「レギュラトリーサイエンス」の実践事例を紹介いただき、今後の「レギュラトリーサイエンス」の一層の推進に向け、理解を深めることを目的としました。

開催日時: 2011年10月4日(火曜日) 10:00 〜 17:00

開催場所: (独) 農業環境技術研究所 2階 大会議室

講演の概要は次のとおりでした。

(1) 農薬科学におけるレギュラトリーサイエンスの役割と展望

バイエルクロップサイエンス(株) 星野敏明
(農薬学会レギュラトリーサイエンス研究会委員長)

「レギュラトリーサイエンス」 の背景、定義、および社会のために果たすべき役割について、農薬の生態影響評価などの事例を紹介しながら概説していただいた。

(2) 農林水産行政が求めるレギュラトリーサイエンス

農林水産省消費・安全局 大熊 武

農林水産省として、食品の安全性に関するリスク管理のための取組みの紹介、および求めている研究の方向性について解説していただいた。

(3) 環境行政が求めるレギュラトリーサイエンス −技術的課題の解決のために−

環境省水・大気環境局 西嶋英樹

環境省として、農薬の環境行政施策のために取り組んでいる調査研究の事例を紹介し、行政施策推進と試験研究の望ましい関係について解説していただいた。

(4) 農林水産における危害要因とレギュラトリーサイエンスの取り組み
−プロジェクト研究「生産工程」を事例として−

農業環境技術研究所 與語靖洋

農水省において 「レギュラトリーサイエンス」 の一環として取り組まれている 「生産工程」 プロジェクトの概略と、カドミウム、ヒ素、POPs、カビ毒、病原微生物の分野の研究成果を紹介。

(5) 化学物質の環境リスクに関する政策対応型調査研究の紹介

国立環境研究所 菅谷芳雄

化学物質の生態影響試験法の開発、化学物質データベース、レファレンスラボラトリー機能の整備など、環境政策への活用を視野に入れた国環研における調査研究の取組みを紹介いただいた。

(6) 純粋科学と意思決定をつなぐ道具としての規制科学 −化学物質のリスク評価・管理の観点からの考察−

産業技術総合研究所 小野恭子

「リスク評価」=「科学」×「約束事」の説明、および「純粋科学」と「政策(規制措置など)」との橋渡しとなる「規制科学」の重要性と今後の展望を解説いただいた。

(7) POPs 農薬による農耕地汚染の評価と管理

農業環境技術研究所 清家伸康

ウリ科野菜における POPs 農薬残留問題の対策に向けた調査研究について、リスク評価とリスク低減のための技術として開発に取り組んでいる研究成果を紹介。

今回の研究会には、研究機関、行政、企業、関連団体から、消費者団体、一般市民まで、多岐にわたる方々に出席いただきました。総合討論においては、「レギュラトリーサイエンスの成果をどのように発信していくのか?」、「提供する相手は行政か国民か?」といった論点について、さまざまな立場からの発言があり、レギュラトリーサイエンスの概念を考える良い機会が提供できたと考えています。

会場で回収したアンケートでは、運営面の不備のご指摘もいただきましたが、「時宜(じぎ)を得た企画で、興味深く聞かせていただきました」、「レギュラトリーサイエンスの重要性を認識できました」、「さまざまな立場からの幅広い講演があり、勉強になりました」などの感想を多数いただきました。

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