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農業と環境 No.147 (2012年7月1日)
独立行政法人農業環境技術研究所

気候適応に関する国際会議2012 (5月 米国) 参加報告

2012年5月29日から31日まで、「気候適応に関する国際会議2012」(2012 International Conference on Climate Adaptation)がアメリカ合衆国アリゾナ州のツーソンで開催されました。文部科学省気候変動適応研究推進プログラム(RECCA)の経費により、西森が参加したので報告いたします。

ツーソンは、州都フェニックスに次ぐアリゾナ州第2の都市で、古くから鉱業都市として栄えてきましたが、現在ではアリゾナ大学( University of Arizona、ちなみにアリゾナ州立大学 Arizona State University も別にあります)を中心とする学術都市、およびメキシコからの移民労働者も支えるエレクトロニクス産業拠点都市の側面を持っています。

この国際会議は、2年前の2010年にオーストラリア・メルボルンで開催された同会議の2回目として位置づけられており、上記アリゾナ大学と、国連環境計画の中の 「気候変動による脆弱性・影響・適応に関する研究プログラム」(PROVIA) の共催で、世界各国から約700人が参加しました。大会は3日間とも、メーン会場における全体会議、およそ10会場での分野・地域ごとの口頭セッション、休憩時間を兼ねたポスター発表、そして再び全体会議、というスタイルで行われました。大会全体としては 「政策」・「研究」 の2本柱であり、州政府や自治体、NPO/NGO関係の参加者が比較的多く、発表内容も気候変動に対する個別の影響・適応策の議論よりも、適応のための枠組み作りや行動指針とその実践例が目立っていました。

(写真)

発表ポスターと筆者(西森)

西森は、研究代表を務める RECCA 高知県課題に関し、そのグランドデザインと農業および水に関するサブテーマの中間結果をポスター発表しました。残念ながら、上記のようにポスター発表の時間は口頭発表セッション間の休憩を兼ねていたことと、その日がアジア地域のみの発表で、前日の欧州・アフリカ地域、翌日の北米・オセアニア地域の発表時に比べて聴衆はかなり少なかったのですが、「四国の水がめ」 早明浦(さめうら)ダムにおける貯水量の将来予測について結構な議論となり、予測の年代やそのもとになる降水量予測の不確実性、農業適応策との相互作用、および適応策に関するカウンターパート自治体(この場合は高知県・高知市)との枠組みに関し、突っ込んだ議論を行いました。いっぽう農業に関しては、われわれの 「高温耐性があり良味で値の張る農産物への転換」 という適応策は、生産量確保が第一という他のアジア諸国での適応方針に比べると、いかにも先進国的で、主な関心の対象とならなかったようです。

他のセッションでは、農業・作物生産モデルや気候シナリオのセッションに参加し、そこでは他の会議や文献等で見知った顔も多く、慣れた雰囲気で議論に参加したのですが、もっと突っ込んだ議論をしたかった気候・モデル研究者の多くが日帰りで、議論を深められませんでした。

ツーソンは山と砂漠に囲まれた開拓都市で、最高気温は滞在中も上昇し続け、40℃を越えましたが、乾燥しているため日陰ではしのぎやすかったです。ただ元来、車移動が前提の街なので、「近くにスーパーは?」と聞き「2分行けばあるよ」と言われて、炎天下を30分歩いて着いたこともあり、飲料水を携帯していないと「マジで命にかかわるな」と感じました。会場となった大学キャンパスも、周囲の立体駐車場からシャトルバスで移動するほど広大で、またスポーツの名門校(愛称は全部‘ワイルドキャッツ’)として知られています。有料の野球場・フットボール場等を本拠地として構えており、さらに周辺通りには各部活の宣伝のぼりが整然と並ぶ、まさに「学園都市」です。キャンパス内では各運動部・各研究学部のデザインウェアやブランドグッズが販売されており、この点、同じ公立で体育専門学部を持つ近所の筑波大学も、もっと見習えばいいのに、と思ったりもしました。

ところで日本からの参加は約10名で、分野・参加機関も限られていました。日本における気候変動適応の枠組みを拡大していく必要性を、日本からのリーダー格である三村信夫茨城大学教授ともども、痛感しました。中国・韓国からの参加者も同様に少なく、東アジアのプレゼンスが全体として弱かったのは残念でした。日本国内の事情として、前年度に発表申し込みが必要なために事業年度のハードルもあったようです。日本の適応研究発展のため、三村教授は組織委員会で次回の日本開催を訴え続けたそうですが、残念ながら次回2014年の開催国はまた南半球に戻り、ブラジルとなった模様です。

気候変動に適応するためには、単に研究分野を超えた学際連携だけでなく、自治体・政策者や住民も含めた連携がいかに大切か、改めて思い知らされた会議でもあり、引き続き RECCA 課題の進展だけでなく農業分野全般の適応も含め、とくに経済効果や実践行動を含む実現可能性に留意した研究を進めていきたいと思います。

(大気環境研究領域 西森 基貴)

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