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農業と環境 No.151 (2012年11月1日)
独立行政法人農業環境技術研究所

刊行物の紹介: 環境報告書2012

農業環境技術研究所は、「環境報告書2012」 を刊行・公開しました。農環研の8冊目の環境報告書となるこの冊子では、2011年度の実績を中心に、研究所における環境負荷低減の取り組みや、農業環境の安全性と持続性を確保するためのさまざまな研究活動を報告しています。

環境報告書2012表紙

今回の報告書では、1990年に、遺伝子組換え植物の環境に対する安全性を評価するために設置された 「遺伝子組換え植物隔離ほ場」 を、とくに紹介しています。

報告書冒頭の農業環境技術研究所理事長からの「ごあいさつ」と目次を以下にご紹介します。

農業環境技術研究所 環境報告書2012 「ごあいさつ」

独立行政法人 農業環境技術研究所 理事長
宮下清貴

2011年は、日本が東日本大震災という未曾有の大災害を経験した年でした。特に、大地震による津波により発生した東京電力福島第一原子力発電所事故は、環境中に多量の放射性物質を放出し、農耕地を含む環境に降下・沈着しました。農業環境技術研究所は、大気圏核実験由来の放射性降下物による農耕地や農産物の汚染が世界的に問題となっていた1959年(農環研の前身である農業技術研究所の時代)から、日本各地で土壌や農産物中の放射性物質のモニタリングを継続して行ってきました。3月11日の大地震発生直後に緊急放射能調査・測定に取りかかれる体制を組み、県や国からの依頼により、野菜など農産物や土壌の放射性物質濃度の分析を開始しました。測定結果は直ちに県に送られ、規制値を超えた農産物が生産された地域からの出荷制限や、2011年のイネの作付け制限に活用され、国民への安全な食品の供給に貢献しました。また、農地汚染の広域的な実態を明らかにするために、福島県とその近隣の県の農地土壌を採取し、放射性セシウム濃度を地図に表示して汚染マップを作成しました。こうした情報は、農業の放射性物質汚染対策に活用されています。原発事故で汚染した農業環境の修復には、長期的な取り組みが必要です。食品の安全と農業環境の修復のために、農環研は関係機関と連携をとりながら研究を推進していきます。

現代社会は、多量のエネルギー消費の上に成り立っていますが、東日本大震災はエネルギーのあり方について、様々な問題を投げかけました。震災の発生にともなう電気事業法に基づく電気の使用制限に対して、農環研は節電実行委員会を新たに設置して対策を検討し、フリーザーの集約化、温室等の節約運転、大電力使用分析機器等の夏場の使用調整、居室・廊下照明の点灯抑制等、所を上げて徹底した節電対策に取り組みました。その結果、従前から実施していた経年機器の省エネ機器への更新等の効果とあわせ、前年のピーク比15%減を大きく上回る20%以上の減を達成しました。このような取り組みにより、使用電力低減によるコスト削減が進展したほか、年間電力使用量では対前年度比20.4%減となり、また都市ガスや石油燃料、高温水等を含むエネルギー使用によるCO換算での排出量では対前年度比8.8%減となりました。今後も、研究所として環境負荷低減の取り組みを進めていきます。

さて、農環研は2011年から、5年間の第3期中期目標期間に入りました。第3期では以下の4課題を重点課題とし、第2期までの成果の上に立ちながら、さらなる研究の深化と成果の社会への還元を目指します。

1.地球規模環境変動と農業活動の相互作用に関する研究

2.農業生態系における生物多様性の変動機構及び生態機能の解明に関する研究

3.農業生態系における化学物質の動態とリスク低減に関する研究

4.農業環境インベントリーの高度化

中期計画課題を推進するリサーチプロジェクトについても見直しを行い、新たな体制としました。

環境問題の解決のためには、国境を越えた国際的な取り組みが重要です。農業分野からの温室効果ガス削減を目指す国際ネットワークである Global Research Alliance では、農環研は水田研究グループの共同議長国である日本の代表機関として、2011年も国際会合に専門家を派遣するとともに、9月には MARCO ワークショップ 「農業分野における温暖化緩和技術の開発」 を開催しました。農業を巡る環境問題が世界的にますます重要性を増していく中、こうして形成された研究者や研究機関の国際ネットワークは、農業環境問題の解決のために大きな力となっていると確信しています。

この報告書は、2011年度に実施してきた研究所の環境配慮の取り組みとともに、一般向けのシンポジウム・セミナーや各種イベントへの出展、さらには専門家の派遣や技術相談等、社会貢献をめざす様々な活動をとりまとめたものです。また、中期計画課題を推進するリサーチプロジェクトの概要や研究トピックスについても紹介しています。皆様にはご一読の上、忌憚のないご意見を頂ければ幸甚です。

環境報告書2012 目次

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