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農業と環境 No.152 (2012年12月1日)
独立行政法人農業環境技術研究所

第5回環太平洋農薬科学会議(9月 中国) 参加報告

第5回環太平洋農薬科学会議(9月中国北京)参加報告  2012年9月16日から20日までの5日間、中国北京市の北京国際コンベンションセンターで開催された、第5回環太平洋農薬科学会議 (The 5th Pan Pacific Conference on Pesticide Science: PPCPS) に参加しました。この会議は2012年7月につくばで開催される予定でしたが、東日本大震災の影響に関してのさまざまな不安から、北京へ場所を移して、第4回農薬と環境安全性に関する国際シンポジウム(4th International Symposium on Pesticides and Environmental Safety) および第8回農薬と規制調和に関する国際ワークショップ (8th International Workshop on Crop Protection Chemistry and Regulatory Harmonization) との同時開催となりました。従来、PPCPS は米国と日本で交互に開催されており、日本の現状を知ってもらうには良い機会であったのですが、日本で開催できなかったことは非常に残念でした。

第5回環太平洋農薬科学会議(写真)

写真1 オープニングセレモニーのようす

会議には、中国、日本、韓国、台湾、米国、カナダ、コスタリカ、コロンビア、オーストラリア、ニュージーランド、英国、イタリア、オランダ、スイス、ドイツ、フランス、ナイジェリアなどから参加者がありました。発表件数は口頭発表が177件、ポスター発表が132件、合計309件と、この種の国際会議としては比較的多い発表件数でした。セッションは大きく6つに分けられ、(1)農薬の規制に関する国際的な見解と調和された取り組み、(2)食品中の農薬残留と国際貿易基準、(3)農薬の環境動態、暴露モデルとリスク評価、(4)農薬の品質と製剤施用技術、(5)新規農薬の探索と合成、(6)農薬の作用機作や代謝と抵抗性メカニズム、と農薬科学や農薬行政などの非常に広い範囲をカバーしており、6つのセッションが同時に進行されました。そのため、興味のある発表がたびたび重なることになり、聴講することができず残念な思いをしました。農業環境技術研究所からは有機化学物質研究領域の3名が参加し、いずれもセッション(3)で、次の演題で招待講演を行いました。

小原裕三 「農薬の大気を経由した長距離輸送とモデリング」

清家伸康 「キュウリのディルドリン残留の軽減」

堀尾 剛 「水田流域河川における農薬と主要代謝物のモニタリング」

国際会議開催会場から見た北京国家体育場の風景(写真)

写真2 国際会議開催会場から見た北京国家体育場の風景

この国際会議の開催前から、中国での反日デモが大きく報じられ、日中関係の影響が懸念される時期の開催となりましたが、日本からの参加の取りやめについての話はなく、無事開催されたことは幸いでした。会議が開催された北京国際コンベンションセンターは、北京オリンピック公園(オリンピック・グリーン)の中にあり、北京国家体育場(通称 「鳥巣」)の近くで、筆者の宿泊したホテルまでは、徒歩で30分弱でした。徒歩での往復や、市中での飲食店利用に関してもまったく問題はなく、9月18日に日本料理店や日系のコンビニエンスストアが閉店していた以外はとても平穏で、テレビや新聞にある反日デモのニュースとはまったく異なる印象でした。また、中国農業大学(北京農業大学と北京農業工程大学が1995年に合併)の学生たちが、会議の運営や会場のお世話係でがんばっており、とても親切で暖かいもてなしには良い印象を受けました。

国際会議で行った研究打合せ(写真)

写真3 国際会議で行った研究打合せ

この会議には、農薬に関する専門家が参加し、国際的な最先端の情報を収集するためには大変重要です。とくに、農作物中の農薬の残留基準値は、国や地域によって異なり、輸出入の障壁となり得るため、国際的な協調が求められています。次回の開催については未定ですが、今後もこのような国際会議に積極的に参加し、情報発信・収集をしなければいけないと思います。

(有機化学物質研究領域 小原裕三、清家伸康、堀尾 剛)

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