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農業と環境 No.153 (2013年1月1日)
独立行政法人農業環境技術研究所

農業環境技術研究所公開セミナー 「環境に優しい農業と暮らしに役立つ生分解性プラスチック利用促進技術の最前線」 開催報告

独立行政法人農業環境技術研究所は、平成24年12月4日、台東区生涯学習センター(東京)において、公開セミナー「環境に優しい農業と暮らしに役立つ生分解性プラスチック利用促進技術の最前線」 を開催しました。

生分解性プラスチック(生プラ)は、環境中に生息する微生物のはたらきで自然に分解するため、利用後に回収と処理が要らず、省力化やゴミの削減に役立つ資材として、わが国では農業用マルチフィルムなどに使われています。また、ヨーロッパ諸国では、農業用だけでなくレジ袋など生活資材として、ここ数年急速に市場が拡大しています。その一方で、思うように自然環境中で分解しない場合があること、あるいは反対に使用中に分解して役に立たなくなってしまうことがあるため、生プラの分解制御が普及上の技術的課題となっています。

農業環境技術研究所では、これまでに、生プラを分解する微生物が植物の表面に生息していることを発見し、その中から強力な分解微生物を選抜して、これらの微生物が生産する分解酵素の大量生産や、実際に農地に置かれた生プラマルチフィルムを短時間で分解することに成功しています。

このシンポジウムでは、生プラにかかわる行政、製造・販売者、ユーザーなどのステークホルダーの参加を得て、生プラについての海外や国内の需要動向をレビューし、農業環境技術研究所が開発した生プラ利用促進技術を中心に、その実用化に向けての議論を深めました。

参加者の総数は121名で、農業環境技術研究所から22名が参加した以外に、民間企業・団体から74名、都道府県から6名、農林水産省から3名、大学から3名、研究独立行政法人から4名、そのほか9名の方に参加いただきました。

パネルディスカッションでは、生プラフィルムの現在の価格をさらに下げることは難しいとの見解が示され、今後、分解制御技術によっていかに付加価値を付けるかが実用化の鍵(かぎ)となると思われます。参加者へのアンケートでは、わかりやすく興味深いセミナーだった、生プラマルチを使っている生産者の話が参考となったという意見を多くいただきました。また、pH、含水量、気温など生プラ分解にかかわる要因を一般化して分解の目安を標準化できないか、もっと活性の高い酵素が必要、ポリ乳酸の分解制御にも取り組んでほしい、生産現場での実証試験を早くやってほしい、行政が生プラ資材の普及を進めるべきなど、さまざまなご意見・コメントをいただきました。

今回のセミナーで得られた意見や情報に基づいて、実際に農業現場で使える生分解性プラスチック分解制御技術を確立するためのさらなる技術開発が必要と感じました。

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