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農業と環境 No.154 (2013年2月1日)
独立行政法人農業環境技術研究所

グローバル・ソイル・パートナーシップ技術ワークショップ 「生きている土壌の管理」 参加報告

GSPロゴ(Global Soil Partnership for Food Security and Climate Change Adaptation and Mitigation)

昨年の 「農業と環境」147号 でご紹介した、地球の土壌資源を保障するための新たな国際協力の枠組みである グローバル・ソイル・パートナーシップ(GSP) の技術ワークショップが、昨年12月5日から7日にかけて、イタリア・ローマの国連食糧農業機関(FAO)本部で開催されました(写真1)。

GSP技術ワークショップ(FAO水環境部部長 Muller 氏の開会あいさつ)(写真)

写真1 GSP技術ワークショップ
(FAO水環境部部長 Muller 氏の開会あいさつ)

本技術ワークショップは、FAO、EC共同研究センター(JRC)、およびイタリア環境保護研究所(ISPRA)の共催により、世界全体と各国における土壌管理の現状と問題点を検討(review)し、GSP活動計画(Terms of References)の柱1 「土壌資源の持続的管理方策 (Promoting sustainable management of soil resources worldwide)」 における行動計画(Plan of Action)の策定に資することを目的としました。

本ワークショップには25か国、64名が出席しました。FAO水環境部部長 Muller 氏および国際土壌科学連合(IUSS)Yang 会長のあいさつ、FAO、国際肥料産業協会(IFIA)など国際機関からの報告のあと、土壌管理の現状と課題に関する各国(地域も含め全部で20)からの報告が行われました。わが国からは、環境保全型農業に向けた土壌管理の必要性、全国土壌調査事業と土壌情報システム整備の意義などを中心に話題提供をしました。

写真2 「世界土壌デー」祝賀式典(写真)

写真2 「世界土壌デー」祝賀式典

ワークショップの初日である12月5日が IUSS の定めた 「世界土壌デー」 に当たることから、FAOおよびGSPの主催で、その祝賀式典が開催されました(写真2)。「世界土壌デー」 は、この日が、土壌管理を精力的に推進しているタイのプミポン国王の誕生日であることから、2002年にタイ・バンコクで開催された第17回国際土壌科学会議において定められたものです。式典では、FAO事務局長、タイ農業協同省副大臣、IUSS 会長ほかから祝辞が寄せられ、土壌管理の重要性等に関する関係者からのスピーチ、およびFAOとGSPが作成したビデオの紹介がありました。

ワークショップの後半では行動計画策定のための議論が行われました。議論の大枠はGSP活動計画の柱1の主題である 「土壌資源の持続的管理方策」 でしたが、その内容として、「知識と情報の活用」、「技術適用のための農民の参加」、「研究成果の施策への展開」 の課題が選定され、それぞれについてグループでの議論を経て、全体で活動計画に盛り込む項目を整理しました。議論の概要と柱1の活動計画案は事務局で整理し、関係者によるレビューを経て、GSPウェブサイト等で公開される予定です。

なお、FAO本部では、本ワークショップと並行してFAO理事会が開催されていましたが、2011年9月のGSP立ち上げ会合から策定が進められたGSP活動計画が理事会にて承認されたことがワークショップ会場に伝わり、歓迎の拍手がわき起こりました。

今回のワークショップを含め、GSPの活動はいよいよ本格化してきました。その活動の基礎となるのは、世界の各地域内ネットワークですが、アジア地域のパートナーシップであるアジア・ソイル・パートナーシップ(ASP)も2012年2月に設立会合が開催されています(「農業と環境」148号)。

八木 一行 (研究コーディネータ)

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