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農業と環境 No.155 (2013年3月1日)
独立行政法人農業環境技術研究所

稲作からの温室効果ガス発生に関するワークショップ (1月 フィリピン) 参加報告

2013年1月21〜24日の4日間に、「稲作からの温室効果ガス発生に関するワークショップ」がフィリピンの国際稲研究所 (International Rice Research Institute, IRRI) において開催され、農環研からは八木と南川が参加しました。このワークショップは2つの会合とエクスカーションから構成され、水田からの温室効果ガス発生の緩和に関する研究の現状や今後の展開について、約40名の参加者が議論しました。

21日朝からの1日半は、「水田からの温室効果ガス発生を削減する技術の多国間検証」 事業 [Greenhouse Gas Mitigation in Irrigated Rice Systems through Water Management: Feasibility Assessment and Measurement Guidelines, MIRSA(ミルサ)] のキックオフミーティングが行われました。MIRSA 事業は、農林水産省(農林水産技術会議事務局国際研究課) から IRRI への拠出金によって、2012年11月からの1年間に実施されるものです。

IRRI では水稲作における節水栽培を目的に、Alternate Wetting and Drying (AWD) という水管理技術 (「自然排水後に表面水の水深を目安に潅漑(かんがい)」 をくり返す) を開発し、東南アジア諸国において普及を進めています。日本における中干しや間断潅漑と同じように、湛水によって嫌気化した土壌に酸素が供給されるため、土壌から発生するメタンの削減に効果があります (くわしくは 「農業と環境」152号の記事 をご参照ください)。MIRSA 事業では、(1)AWD による水田における温室効果ガス削減のための手法の評価、および、(2)温室効果ガス測定手法の確立を目標としています。今回の会合では、事業の開始にあたって関係者が参集し、具体的な研究計画内容について意見交換と情報共有を図りました。

GRA 会合のようす(写真)

GRA 会合のようす: 左から八木、 IRRI の Reiner Wassmann 博士、 Achim Dobermann 博士、 GRA 事務局の Deborah Knox 氏

22日午後からの1日半は、農業分野の温室効果ガスに関するグローバル・リサーチ・アライアンス(GRA)の水田研究グループ第4回会合が行われました。GRA に関する情報やこれまでの活動については、「農業と環境」 133号134号135号 の各記事をご参照ください。会合では、共同議長である八木による進行のもと、各国からの活動状況の報告や、短期的活動計画(測定方法の標準化、研究成果等のデータベース化及び研究ネットワーク、能力開発)に関する議論などが行われました。

とくに測定方法の標準化については、日本における研究成果をもとに、南川から測定法マニュアル作成のための「たたき台」が提示されました。GRA 参加各国は、稲の栽培体系だけでなく測定用器材も大きく異なるため、次回の会合において、各国が国内で利用する測定法マニュアルを紹介して、GRA として作成するマニュアルの内容について引き続き議論していくことが合意されました。

農家水田における手動チャンバーでの測定(写真)

農家水田における手動チャンバーでの測定: 透明な土台の上に白いゴミ箱を設置して稲を囲っている

IRRI所内の実験水田における自動チャンバーでの測定(写真)

IRRI 所内の実験水田における自動チャンバーでの測定: 採取したガスは自動で濃度分析装置に送られる

最終日のエクスカーションでは、マニラから北東へ50 kmほどのブラカン州にある水田実験サイトと水田用大型潅漑施設などを視察しました。手動で行うガス発生量の測定では、器材としてプラスチック製のゴミ箱が利用されており、限られた予算で研究を行うためのアイデアが垣間(かいま)見られました。また、AWD を実践する動機は単に 「乾季の雨量が少ないため」という先入観を南川は持っていましたが、今回の視察で、社会的な制約 (潅漑施設の有無や、都市に送る生活水との競合) が大きな理由であることを初めて知りました。

滞在期間中のフィリピンの最高気温は27度程度でした。季節は乾季に当たりますが、潅漑設備が整った環境では稲の栽培が行われていました。南川は、今回が初めてのフィリピン滞在でしたが、「モンスーンアジアにおける温室効果ガス研究」を展開していく上で、研究の現場を頭の中で思い描くことができる貴重な経験となりました。

南川和則 (物質循環研究領域)
八木一行 (研究コーディネータ)

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