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農業と環境 No.160 (2013年8月1日)
独立行政法人農業環境技術研究所

国際土壌科学連合 世界土壌炭素会議 (6月 米国) 参加報告

2013年6月3日から5日まで、米国ウィスコンシン州マディソンにおいて、国際土壌科学連合 世界土壌炭素会議 ( IUSS Global Soil Carbon Conference) が開かれました(写真1)。農業環境技術研究所から白戸と高田が参加しましたので報告します。

会議の参加者は約140人で、日本からは8名が参加していました。大半が5分という短い時間ながらも、参加者の約3分の2にあたる約90人が発表を行うという、珍しい会議のやりかたでした。

会議場のようす(2013年世界土壌炭素会議)(写真)

写真1 会議場のようす

会議は、国際土壌科学連合の4つの分科会、1)土壌と時間および空間(土壌生成)、2)土壌特性とプロセス、3)土壌の利用と管理、4)持続的な社会と環境のための土壌の役割 の順に3日間にわたって行われ、最終日の午後には、各セッションの代表者による総括が行われました。

白戸は、RothCモデルを用いた日本の農地管理による土壌炭素貯留ポテンシャルの全国推定 (Estimating carbon sequestration potential of cropland management in Japanese arable soils with the Rothamsted carbon model) について、高田は、日本の農地土壌の土壌炭素ストックと土壌管理のモニタリング (Monitoring of soil carbon stock and soil management in Japanese agricultural land) について、それぞれ口頭発表を行い、参加者と議論しました。

白戸の発表はモデルについてのものでしたが、モデル研究、さらには広域評価に関する報告はほとんどなく、長期連用試験など、ほ場試験の発表が比較的多かったように感じられました。また、メカニズム研究など基礎的な発表に多くの関心が集まり、「そもそも土壌構造とは何なのか」、「土壌の炭素貯留の定義とは?」 など、基本的な問題に関する議論が展開されたのが印象に残りました。また、日本の黒ボク土の高い有機炭素含量のメカニズムについての議論も盛り上がりました。一方で、社会や政策決定者とのコミュニケーションをもっととるべきだという主張に対して、多くの参加者が賛同を示していました。基礎研究は大事であり科学者としてはそこが面白いが、社会貢献も重視しなければ、という問題意識は、万国共通であると感じました。

「King Hall-Soils Building / 1525 Observatory Drive」と書かれた看板と建物 (写真)

写真2 土壌 (Soils) の名を冠した建物

会場となったウィスコンシン大学マディソン校は、土壌学の分野ではトップクラスの伝統と実績を誇る「聖地」のようなところであり、土壌だけの名を冠したひとつの建物(写真2)があるのに感銘を受けました。今回参加された日本土壌肥料学会会長の小崎首都大学東京教授も、若かりし頃に留学していたそうです。湖に隣接する緑豊かな素晴らしい環境で、このようなところで学生生活を送る学生は幸せだな、と話しつつ、早朝や夕方の空き時間には、散策やジョギングを楽しみました。あまり大規模ではない、比較的こぢんまりした会議で、「土壌炭素」 という、いま注目を集めているテーマに沿って集中的に議論することができ、意義深いものとなりました。

マディソン校に隣接する湖の風景 (写真)

写真3 マディソン校に隣接する湖の風景

農業環境インベントリーセンター 白戸康人・高田祐介

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