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農業と環境 No.161 (2013年9月1日)
独立行政法人農業環境技術研究所

ウリ科作物に残留するPOPsを減らす (日本農民新聞連載 「明日の元気な農業への注目の技術」 より)

POPsとは

POPs(ポップス)は、難分解性、生物濃縮性、長距離移動性、毒性の4つの性質をあわせ持つ物質で、正式には残留性有機汚染物質と呼ばれています。ダイオキシン類やPCB(ポリ塩化ビフェニル)、過去に農薬として使用されたDDT、ディルドリンやヘプタクロルなど、現在21物質が対象となっており、2004年に発効したPOPs条約 (残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約) の下、国際的に協調して廃絶、排出削減などが進められています。

ウリ科作物のPOPs汚染

近年、国内産のキュウリとカボチャから相次いで、食品衛生法に定められた残留基準値を上回るPOPs (ディルドリンとヘプタクロル) が検出されて問題になりました。これらの物質は1970年代に使用禁止になった農薬ですが、土壌中で分解されにくいため、現在でも農耕地土壌に残留しています。これは、「食の安全」 を揺るがす問題であり、産地では出荷の自粛、広範な土壌や作物の検査など、緊急対応を余儀なくされました。さらに、汚染された作物が出荷されたり流通したりすることを未然に防ぐための技術が求められました。

(独)農業環境技術研究所では、まず、「POPs汚染はウリ科作物だけなのか」を調査しました。それが分かれば、問題の広がりや解決の方向性が見えると考えられたからです。その結果、調査したウリ科作物はすべて、土壌中のPOPsを吸収するのに対し、ほかの科の作物はまったく、もしくは、ほとんど吸収しないことが分かりました。そこで私たちは、ウリ科作物にターゲットを絞り、POPs汚染を低減するための技術開発に取り組みました。

残留土壌で生育させた各種作物のディルドリン含量:茎葉部で検出されなかった作物:テンサイ、アマランサス、ソバ、ケナフ、ダイズ、ラッカセイ、アルファルファ、ヒマ、アマ、ニンジン、トマト、タバコ、エゴマ、ゴマ、ヒマワリ、イネ、トウモロコシ、ソルガム、ネギ; 検出された作物:ジュート、コマツナ、(以下すべてウリ科野菜、*:とくに高含量のもの)キュウリ*、メロン、ヘチマ、スイカ、トウガン、ユウガオ、ニガウリ、ニホンカボチャ*、セイヨウカボチャ*、クロダネカボチャ*、ズッキーニ*; (32作物のディルドリン含量の棒グラフ)

対策技術のあの手この手

◆土壌診断技術: 栽培前に土壌を分析 (土壌診断) することで栽培後のウリ科作物中のPOPs濃度が予測できれば、その畑でウリ科作物を栽培してよいかどうかを判断できます。そこで分析方法を検討したところ、土壌からPOPsを抽出する溶媒に、メタノールと水の50%混液(容積比)を使うと、ウリ科作物中の濃度を予測できることが分かりました。

◆吸収抑制技術: 汚染された土壌に吸着資材を施用してPOPsを吸着させると、ウリ科作物による吸収を抑制することが可能となります。そこで、活性炭、木炭、ゼオライトなどの吸着資材の吸収抑制効果を検討したところ、コストも考慮すると、活性炭が最も適していることが分かりました。しかし、土壌に活性炭をまくと、土壌害虫を防除する農薬の効果が低下してしまうため、適切な使い方を検討している段階です。

◆代替作物の利用: ウリ科以外の作物はPOPsを吸収しないことから、汚染された土壌でも、ウリ科以外の代替作物であれば栽培が可能です。ただし、根菜類やイモ類ではPOPsを含む土壌が外皮表面に付着する可能性があるため、注意が必要です。

◆低吸収台木の利用: 日本のキュウリ栽培はほとんどが接木栽培であることに着目し、POPsを吸収しにくい台木を選抜しました。その結果、検討した品種の中では、「ゆうゆう一輝黒」 が低吸収性台木として有望であることを明らかにしました。

◆ファイトレメディエーション: ファイトレメディエーションは、植物を使って環境を浄化する技術です。土壌中のPOPsを吸収するウリ科作物の中から、とくにファイトレメディエーションに適した植物としてズッキーニを選抜しました。POPsが残留した土壌でズッキーニを4作ポット栽培すると、土壌中の濃度が最大で半分になることを明らかにしました。

ここで紹介した技術は、いずれも現地の畑での実証試験が進められています。今後、都道府県の対策マニュアルなどへ反映され、現地で活用されることが期待されます。

有機化学物質研究領域 清家伸康

農業環境技術研究所は、農業関係の読者向けに技術を紹介する記事 「明日の元気な農業へ注目の技術」 を、18回にわたって日本農民新聞に連載しました。上の記事は、平成24年(2012年)7月25日の掲載記事を日本農民新聞社の許可を得て転載したものです。

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