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農業と環境 No.162 (2013年10月1日)
独立行政法人農業環境技術研究所

第1回土壌に関する政府間技術パネル(ITPS)会合 (7月 イタリア) 参加報告

GSPロゴ(Global Soil Partnership for Food Security and Climate Change Adaptation and Mitigation)

地球の土壌資源を保障するための新たな国際協力の枠組みである 地球土壌パートナーシップ(GSP)*1 がその活動を本格的に開始しています(本号154号148号147号)。

土壌に関する政府間技術パネル (ITPS)」は、GSPに対して科学技術的な諮問・助言を行う専門家委員会として設立されましたが、その第1回会合(ITPS Working Session)が、第1回GSP総会 における委員の承認を受けて、2013年7月22−26日にローマの(FAO)本部で開催されました。わが国からは、委員として、農環研の八木研究コーディネータが出席しました。

ITPSメンバー(集合写真)

ITPSメンバー

ITPS会合のようす(写真)

ITPS会合のようす

会合には、27名の委員のうち24名が出席し、議長(Luca Montanarella (Italy))と書記(Helaina Black (UK))を選出した後、GSPの活動に関する議題を検討しました。

主な議題とその検討結果は以下の通りです。

(1)GSPロードマップの検討

GSP活動の工程を示した「GSPロードマップ」のなかで、早急に対応が求められている活動について検討されました。

■ 「土壌と持続的開発目標」の策定: 昨年(2012年)に開催された 国連持続可能な開発会議(リオ+20) では、2015年秋に「ポストリオ+20持続開発目標」を策定することが計画されました。このなかに、土壌に関する目標策定を盛り込むため、ITPSで「土壌と持続的開発目標」を策定することとしました。

■ 「世界土壌憲章」の改訂: 世界的に土壌保全対策を推進するため、FAOでは、1981年に「世界土壌憲章(World Soil Charter)」を採択しました。GSPでは、これを30年ぶりに改訂することを計画しています。この作業について、ITPS内にWGを形成して進めることとしました。GSPでは、この改訂を機会に、世界各国に「土壌基本法」などの土壌保全に関する法的体制の整備を求める計画です。

■ 「世界土壌資源白書(仮訳:原文はStatus of World Soil Resources Report)」作成の検討: 世界の土壌資源とその状況に関する報告書を作成し、出版することに合意しました。この報告書は、「国際土壌年」である2015年の出版を目標としています。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の評価報告書をお手本にし、数年おきに改訂版を出版する計画です。そのために、ITPS内にWGを形成し、各国に必要なデータや執筆者を求めることとしました。

(2)GSPピラーの活動計画の検討

下のボックスに示したように、GSPの活動について5つのピラー(柱)が構成され、それぞれWGを立ち上げて活動計画を策定することとなっています。ITPSは、これらの活動計画を審議する立場にあります。現時点では、ピラー4(土壌情報)のみが活動計画案を提出しましたので、審議を行い、一部修正の後、承認されました。

ピラー4 では、世界の食糧生産と環境保全の基盤となる土壌データと情報システムの整備をめざしています。今回承認された計画書は、そのために必要なデータの構成や収集システムについて23の提言を含んでいます。最終的には、来年のGSP総会にて承認される予定ですが、今後、ピラー4WGや地域土壌パートナーシップを通して、この計画書に沿った活動が強化されます。

その他のピラーについては、ITPS委員の分担を決定し(八木はピラー1を担当)、それぞれのWGに働きかけ、活動計画案を策定することとしました。

第2回ITPS会合は、来年(2014年)1月に開催される予定です。

GSPピラーの状況:

1. [土壌管理]土壌資源の持続的管理の推進

2012年12月にワークショップ開催(154号)。現在、WGで活動計画案を策定中。

2. [投資]土壌に関する投資、技術協力、施策、教育、普及の奨励

12月5日の世界土壌デーと2015年の世界土壌年の活動を推進。活動計画議論のためのワークショップ開催を準備中。

3. [研究] 土壌研究と開発の推進

GSP事務局で、国際農業研究協議グループ(CGIAR)などの国際研究機関への聞き取りを行い、研究計画策定のための予算確保をめざしている。WGはこれから構成。

4. [土壌情報]土壌データと情報システムの整備

すでにWGにより活動計画案が作成されている。第1回ITPS会合で審議され、一部修正の後、承認された。来年のGSP総会にて最終的に承認される予定。

5. [標準化] 持続的な土壌管理のための調査方法や指標の標準化

活動計画議論のためのワークショップ開催を準備中。

*1 GSP (Global Soil Partnership) の日本語訳について

「農業と環境」147号 では、「Global Soil Partnership」 の暫定的な日本語訳として、全てカタカナの「グローバル・ソイル・パートナーシップ」を提案しました。その後、所内研究者で検討し、新たな訳語「地球土壌パートナーシップ」を採用することとしました。

八木一行 (研究コーディネータ)

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