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農業と環境 No.166 (2014年2月1日)
独立行政法人農業環境技術研究所

農環研研究職員に日本土壌肥料学会賞および日本土壌肥料学会奨励賞

農業環境技術研究所の研究職員が、次の通り、2014年度の日本土壌肥料学会賞および日本土壌肥料学会奨励賞を受賞することが決まりました。

第59回 (2014年度) 日本土壌肥料学会賞

黒ボク土におけるイオン吸着・移動過程に関する研究

加藤 英孝

(物質循環研究領域 上席研究員)

業績概要

アロフェン,イモゴライトを主要粘土鉱物とする黒ボク土は,陽イオンだけでなく硝酸イオンなどの陰イオンも吸着する性質があります。しかし,表面電荷の大きさがpHや溶液濃度,吸着イオン種にも依存することなどから,これらのイオンの吸着・移動過程は解明が進んでいませんでした。本研究では,ほ場条件に近いイオン組成を持つ黒ボク土中のイオンの吸着・移動過程を解明するために,新たな実験法を開発するとともに,イオン吸着を溶液濃度のみの関数として表せることを理論的に明らかにしました。それらの結果に基づいて,硝酸イオンなどの陰イオンの吸着・移動過程をモデル化し,吸着による移動の遅れを定量的に予測することを可能にしました。

核磁気共鳴法を利用した土壌中における元素動態の解明

平舘俊太郎

(生物多様性研究領域 上席研究員)

業績概要

核磁気共鳴(NMR)法は、原子核の磁気的性質を調べることにより、その原子や周囲の化学的性質を非破壊で解析することができることから、多くの研究分野で利用されていますが、土壌研究への利用は、測定の障害となる物質が含まれていることや解析理論が難解であることから極めて限定的でした。受賞者は植物を対象とした研究の蓄積と経験をもとに、土壌中における元素の動態研究に核磁気共鳴法を適用し、酸性土壌において植物の生育を阻害する含アルミニウム化合物の化学構造の解明や、火山灰土壌の初期生成過程の解明、土壌中に炭素が安定的に保持される機構の解明など、世界的にも高く評価される多数の研究成果を挙げ、土壌学の進展に大きく貢献しました。

第32回 (2014年度) 日本土壌肥料学会奨励賞

観測値と数理モデルに基づく農林地生態系温室効果ガス排出量の広域評価

片柳 薫子

(物質循環研究領域 特別研究員)

業績概要

畑地および水田はおのおの温室効果ガスである亜酸化窒素およびメタンの主要排出源です。これらの排出量を削減するためにはまず現在の排出量を正確に把握しなければなりません。しかし、排出の時空間変動はとても大きいため、観測値から流域・地域・国といったより広い範囲の排出量を推定する場合、推定値は高い不確実性を含むことになります。受賞者はこの不確実性を低減し、排出量の予測精度を向上するための観測・データベース解析・排出量予測モデルの開発をおこない、排出量予測精度の向上を実現しました。さらに、これまでの研究成果の統合により、いっそう具体的な広域の温室効果ガス排出量定量手法の確立が見込まれています。

広域的なデジタル土壌情報の整備とその利活用法に関する研究

高田 裕介

(農業環境インベントリーセンター 研究員)

業績概要

日本およびカザフスタン共和国において、広域的なデジタル土壌情報の整備手法を確立し、国および州レベルでの農地土壌中の土壌有機炭素収支の評価を行ってきた研究が評価されました。また、研究過程で得られた土壌情報について、ウェブ上でだれでも簡単に閲覧できるように 「土壌情報閲覧システム」 を開発したことも評価されました。

日本土壌肥料学会賞は、「土壌・肥料・植物栄養学及びこれらに関連する環境科学に関する顕著な業績」 をあげた日本土壌肥料学会の会員に授与されるものです。また、日本土壌肥料学会賞奨励は、「土壌・肥料・植物栄養学及びこれらに関する環境科学の研究の進歩に寄与するすぐれた業績を会誌、欧文誌又はこれに準ずるものに発表し、更に将来の発展を期待しうる」 40歳未満の日本土壌肥料学会会員を対象とするものです。

授賞式および記念講演は、2014年9月に東京で開催される年次大会において行われます

なお、第12回(2013年)日本土壌肥料学雑誌論文賞に、農業環境技術研究所の研究者による次の論文が選定されたことが同時に公表されました。

坂口 敦・加藤英孝・家田浩之・中野恵子: 土壌特性・土層構成に基づく利根川下流域内農耕地における硝酸イオンの地下水到達時間の面的推定、日本土壌肥料学雑誌 84(2) p.90-99 (2013)

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