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農業と環境 No.178 (2015年2月1日)
独立行政法人農業環境技術研究所

第1回 国際土壌生物多様性会議(12月 フランス) 参加報告

2014年12月2日から5日まで、フランス・ディジョンで第1回国際土壌生物多様性会議(First Global Soil Biodiversity Conference - Assessing soil biodiversity and its role for ecosystem services)が開催されました。この会議に農業環境技術研究所から荒井(物質循環研究領・特別研究員)が参加したので、会議のようすを報告します。

この会議は、土壌における生物多様性の生態系機能と生態系サービスに関する科学的な研究を促進すること、そして国際的な環境議題や持続的な政策と土地管理の意思決定などを統合していくことを目的としています。56か国から約700人が参加しましたが、開催地がフランスということもあってヨーロッパ地域からの参加者が多く、アジア地域からの参加は比較的少なかったようです。

私たちは,地上に生息している生き物や植物を視覚的にとらえることができます。その動植物を支える土壌には数えきれないほどの生物が存在していますが、土壌中にはどんな生き物がいるのか、どんなことが生じているのかなど、足下にある土壌を見ただけでは土壌中で起きている変化を想像するのは難しいかもしれません。しかし、土壌は、動植物に生育・生息場所を提供する、水分や養分を供給・保持するなど、さまざまな機能を持っています。土壌の機能や土壌に生息する生物の多様性は、植物の生育や多様性にとって重要であること、地上部と土壌(地下部)は互いに影響を及ぼしあっていることもわかってきました。環境問題や気候変動が顕在化する現在、それらが進行するとどのようなことが生じるのか、生態系の持つ機能を把握し、生態系の機能やサービスを将来的にも利用していけるようにしなければなりません。そのため、土壌で生じている現象や地上部と地下部の関係を理解し、土壌の多様性と機能を維持・保全していく必要があります。

会議は、地球環境変動が土壌生物群集・生態系機能・生態系サービスに与えるインパクト、土壌の生物多様性の社会的・経済的な価値など7つのセッションに分けられていました。大ホールで口頭発表が行われましたが、大部分の参加者はポスター発表で研究成果を報告しました。ポスター発表の内容は多岐にわたり、たとえば、農地管理(施肥や耕作方法)が土壌生物(土壌動物や土壌微生物)や土壌環境、作物にどのような影響を及ぼすかが、さまざまな研究手法によって明らかにされていました。また、ヨーロッパやオーストラリアで開放系大気CO2 (二酸化炭素)増加実験を実施している研究者と、実験サイトの情報、高濃度のCO2 がもたらす植物への直接の影響や土壌環境・生物の変化を介した間接的な影響など、発表内容だけでなく多くの情報を交換できました。ポスター発表の数が多かったため、一つ一つの発表をじっくり聞くことができなかったことが残念です。

今回の会議参加では、農業環境技術研究所の女性研究者支援制度により一部を援助していただきました。国際会議への参加をご理解いただき、大変貴重な機会を得ることができました。


写真1 国際会議が開催された会場(Palais des Congres)
夜明けが遅いため、朝の8時ころでも、まだ薄暗い。


写真2 大ホールでの口頭発表
会場は満席でした。

(物質循環研究領域 荒井見和)

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