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農業と環境 No.181 (2015年5月1日)
国立研究開発法人農業環境技術研究所

農環研研究職員に日本作物学会論文賞

農業環境技術研究所 大気環境研究領域の長谷川利拡 上席研究員ほかの共著論文が、第12回日本作物学会論文賞を受賞しました。

この賞は、日本作物学会の会誌 (日本作物学会紀 および Plant Production Science) に発表された論文の中で優れた論文の著者である会員に贈り、これを表彰するものです。

受賞論文の概要は以下のとおりです。

Responses of Eighteen Rice (Oryza sativa L.) Cultivars to Temperature Tested Using Two Types of Growth Chambers
(2種類のチャンバーを利用したイネ18品種の温度応答)

Estela Magbujos Pasuquin, Toshihiro Hasegawa, Philip Eberbach, Russell Reinke, Leonard J. Wade, Tanguy Lafarge
Plant Production Science 16: 217-225 (2013)

温暖化環境に適した品種を開発するためには、高温条件におけるイネの成長の品種による違いを把握することが重要です。これまで高温条件における品種の評価は、人工気象室(チャンバー)やビニールハウスなどで行われてきました。しかし、実験結果は光などの温度以外の条件によって異なることが考えられますが、それについての検証は行われていませんでした。

そこで本研究では、オーストラリア・ニューサウスウェールズ州の人工光型チャンバーと自然光型チャンバーにおいて、来歴の異なる 18 のイネ品種を 25、28、31、34 ℃の4温度の条件で栽培し、各品種の成長量を調査しました。

その結果、バイオマスの温度反応は、チャンバーの種類で異なり、人工光型では 31 ℃で最大になったのに対し、自然光型では 25 ℃と 28 ℃で最大になりました。しかし、品種のバイオマスは両チャンバー条件間で高い相関を示し、高温条件における品種特性の評価はチャンバーの光条件に関わらず、安定的に得られることがわかりました。18 品種の中では、Vandana、タカナリ、N22 および IR64 の 4 品種が、異なる光・温度条件でも高い乾物生産能力を示すことがわかるなど、今後の高温に適した品種の評価、改良に有用な情報が得られました。

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