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農業と環境 No.181 (2015年5月1日)
国立研究開発法人農業環境技術研究所

刊行物の紹介: 農業環境技術研究所報告 第34号

農業環境技術研究所は、平成27年3月に農業環境技術研究所報告 第34号 を刊行しました。

農業環境技術研究所公開ウェブサイト内の 農業環境技術研究所報告のページ から、掲載された論文・資料のPDFファイルをダウンロードできます。

農業環境技術研究所報告 第34号

ここでは、この号に掲載された論文・資料について、表題、摘要、目次などを紹介します。

農業環境技術研究所における東京電力福島第一原子力発電所事故関連の2011年の放射能研究 (研究論文)

序文

2011年3月11日の東日本大震災に伴い、東京電力福島第一原子力発電所で炉心溶融事故が発生し、多量の放射性物質が外部環境に放出され、福島県を中心に、東日本の広範囲において農作物や土壌が放射性物質に汚染されました。(独)農業環境技術研究所(以下、農環研)は60年以上に渡る環境放射能調査・研究の実績を生かし、事故発生当初から他の農業試験研究機関等と連携して、農産物や土壌などの汚染実態の把握にあたりました。大気からの降下による汚染が収まってからは、作物による放射性物質の経根吸収の要因解明に関する研究を実施し、吸収抑制や除染に関する技術開発を進めてきました。

本報告では、「農業環境技術研究所における東京電力福島第一原子力発電所事故関連の2011年の放射能研究」と題して、特に2011年、事故直後から農環研で進められた様々な緊急対応研究等に絞って10報の論文を掲載しました。

福島第一原発から南南西約170kmの位置にある茨城県つくば市においても、3月15日に放射性プルームが通過し、高い線量率が観測されました。論文1では、つくば市にある農環研の圃場における事故直後から1年間の、葉菜、土壌及び降水中の放射性核種濃度の推移について取りまとめています。また、論文2及び3では、事故直後から県から緊急的に分析を依頼された関東地方の野菜類の放射性物質濃度の推移や、福島県周辺の農地土壌の放射性物質濃度の分析結果をとりまとめています。

論文4及び5では、放射性物質沈着初期の農地土壌を用いた放射性セシウムの抽出結果や、農作業に伴い巻き上がる土壌粒子に含まれる放射性物質の評価について報告しています。

農環研では文部科学省の航空機モニタリングによる空間線量率マップ、デジタル農地土壌図および放射性セシウム濃度の実測値に基づいて、農地土壌の放射性セシウム濃度分布図を作成して公開しました。論文6及び7では2011年度に実施した緊急調査と本調査について取りまとめています。

また、論文8及び10では、2011年秋に国の暫定規制値を上回る濃度の放射性セシウムが福島県産の玄米から検出されたことを受けて取り組んだ、規制値超過要因の解析に関係する調査を取りまとめました。

除染技術については、事故後に耕作が行われた圃場を対象とした、水を用いた土壌撹拌−吸引排水法について、論文9で取りまとめました。

東京電力福島第一原子力発電所の事故から4年が経過しました。2014年産の福島県の玄米の全袋調査約1100万袋のうち基準値を超えたものはなく、カリ肥料の施用などの吸収抑制対策の効果が確認されています。しかし、福島県の農耕地土壌で放射性セシウム濃度が5000 Bq/kgを越えている面積は数千haあると推定され、農環研では、今後も農業環境中の放射性セシウムの動態と作物吸収に関する実態把握や将来予測研究を進めていきます。

また、2012年には、「土壌―植物系における放射性セシウムの挙動と要因解明」について過去の研究をとりまとめた総説農環研報告 第31号(2012)に掲載しました。こちらもご活用下さい。

研究論文

(1) つくば市において観測された東京電力福島第一原子力発電所事故直後から1年間の葉菜,土壌および降水中の放射性核種濃度の推移

(2) 福島第一原発事故直後の関東地方における野菜類の放射性物質濃度

(3) 福島第一原発事故直後の福島県周辺の農地土壌における放射性物質濃度

(4) 放射性物質沈着初期の農地土壌からの放射性セシウムの抽出

(5) 農業環境技術研究所畑圃場における農作業に伴い巻き上がる土壌粒子に含まれる放射性物質

(6) 農地表層土壌中の放射性セシウム濃度分布図作成のための緊急調査

(7) 東日本の農地表層土壌中の放射性セシウム濃度分布図の作成

(8) 2011年高濃度放射性セシウム汚染玄米発生の土壌要因

(9) 水を用いた土壌撹拌-吸引排水法による水田からの放射性セシウム除去技術の開発

(10) 衛星データを使用した2011年の福島県における農地の土地被覆状況把握

農業環境技術研究所所蔵の井上寛博士のメイガ上科(昆虫綱:チョウ目)コレクション目録 (研究資料)

摘要

農業環境技術研究所に保管されている井上寛博士により寄贈されたパラタイプ標本を含む日本産メイガ上科463点(216属433種)の標本目録を作成した。和名、学名に加えて標本ラベルに記載されている採集場所・採集日・採集者の情報を報告するとともに一部の種については標本情報や分類学的扱い等に関するコメントを付した。また、特筆するべき種として7種をあげ、種の解説と全形写真を掲載した。

目次

I  はじめに

II  標本目録

III  特筆すべき種

IV  引用文献

V  図

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