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農業と環境 No.183 (2015年7月1日)
国立研究開発法人農業環境技術研究所

農林交流センターワークショップ 「栽培試験における気温の観測技法と利用」 開催報告

国立研究開発法人農業環境技術研究所は、筑波農林研究交流センターとの共催により、6月10日(水曜日)から6月12日(金曜日)まで、第191回農林交流センターワークショップ 「栽培試験における気温の観測技法と利用」 を開催しました(国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構 花き研究所が協力)。

近年、農業試験研究の現場では、夏季の異常高温などによって生じる農作物の生育障害への対応を迫られています。しかし、研究に際して、不適切な方法で観測・収集された気温データを説明変数として栽培試験の解析を行うと、結果の汎用性が失われたり、誤った解釈を導いたりしかねません。

そこで、気象を専門としない産学官の試験研究機関の研究者や農業関連の技術者を対象として、作物の栽培試験において気温を正しく観測して利用するために必要な一連の知識と技法を、総合的に習得できる機会を提供するために本ワークショップを開催し、企業、農業者、県農試、国立研究開発法人および独立行政法人から、合わせて9名の参加を得ました。

実験施設内での製作実習のようす

NIAES-09S型強制通風筒の製作実習

ソバ畑のさまざまな高さに強制通風筒を設置

ほ場(ソバ畑)での観測実習

ガラス温室の中に強制通風筒を設置

温室での観測実習

高さと気温の関係など観測結果を班ごとに発表

解析実習での班発表

講義と実習内容

2015年6月10日(水曜日)

8:45-8:50

[挨拶]

農林水産省農林水産技術会議事務局筑波事務所 研究交流課長 池田仁

8:50-9:20

[講義]NIAES-09S型強制通風筒の紹介

農業環境技術研究所 福岡峰彦

9:20-15:20

[屋内実習]NIAES-09S型強制通風筒の製作

農業環境技術研究所 福岡峰彦

15:30-17:00

[屋外実習]測器の設置

◇圃場コース:農環研ほ場

◇温室コース:花き研温室

2015年6月11日(木曜日)

8:30-9:50

[講義]気温・湿度観測の理論と注意点

農業環境技術研究所 桑形恒男

9:55-11:15

[講義]作物栽培試験における気温・湿度の観測技法

農業環境技術研究所 福岡峰彦

11:20-12:00

[講義]植物の体温はどのようにして決まるのか

農業環境技術研究所 吉本真由美

13:00-14:20

[講義・屋内実習]メッシュ気象値の利用方法と注意点

農業環境技術研究所 石郷岡康史

14:25-14:55

[講義]農耕地の気温はAMeDASの気温とどう違うのか

農業環境技術研究所 桑形恒男

15:00-15:30

[講義]産学官連携における活用事例の紹介

農研機構花き研究所 牛尾亜由子

15:30-15:50

[ディスカッション]習得内容をどのように産業に活かせるか

農業環境技術研究所 福岡峰彦

16:00-16:30

[屋外実習]総合気象観測装置の見学(農環研気象観測露場)

農業環境技術研究所 桑形恒男

16:30-17:00

[屋外実習]観測データの回収

◇圃場コース:農環研ほ場

◇温室コース:花き研温室

2015年6月12日(金曜日)

8:30-9:30

[講義・屋内実習]気象観測データのまとめ方

農業環境技術研究所 石郷岡康史

9:35-14:00

[屋内実習]観測データの解析

農業環境技術研究所 福岡峰彦

14:10-15:10

[発表]解析結果の発表と考察

15:10-15:30

[質疑]質疑討論

農業環境技術研究所 桑形恒男、吉本真由美、石郷岡康史、福岡峰彦

受講者らはまず、屋外において気温を観測する際に日射熱がセンサーに及ぼす影響をさえぎるために必要となる、強制通風式の放射よけとして、農環研が開発した安価で自作可能な 強制通風筒「NIAES-09S(PDF)」をそれぞれ1台ずつ製作しました。続く観測実習では、受講者らはほ場と温室2つのコースに分かれ、製作した強制通風筒を農環研のほ場や花き研の温室に設置して気温観測の技法を実地に習得しました。

また講義と実習により、気温観測の理論や技法、農耕地の気温の特徴、植物の体温の決定機構、面的な気象分布を推定したメッシュ気象値の利用方法と注意点、気象データのまとめ方、産学官連携における活用事例をそれぞれ学びました。

ワークショップの最後には、実際に観測した気温データの解析実習を行いました。今年度は梅雨時ながら晴天に恵まれ、解析のしがいのある観測データが得られました。同じほ場や温室内であっても、観測方法が違うと得られる値が大きく異なってくることを自らの観測と解析を通じて目の当たりにした受講者らは、正しい観測方法の重要性について認識を新たにしていたようです。

なお、本ワークショップで製作した強制通風筒は受講者らがそれぞれ持ち帰り、これからそれぞれの職場で役立てていただきます。

気象を専門としない農業関係者が気温の観測手法を体系的に学ぶ機会がこれまでほとんどなかったなかで始まった本ワークショップも、今年度で3回目となりました。農業環境技術研究所として開催するワークショップは今回が最後となりますが、コーディネーターを務めた福岡、講師を務めた桑形と吉本、石郷岡(いずれも大気環境研究領域)は、より良い気象観測手法の啓発と普及の活動を今後も継続していきたいと考えています。

なお、本ワークショップは 作物応答影響予測リサーチプロジェクト のアウトリーチ活動として実施されました。

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2000年5月からの訪問者数(約181万人)