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農業と環境 No.189 (2016年1月4日)
国立研究開発法人農業環境技術研究所

MARCOワークショップ「国際的な耕地微気象観測網による気候変動下のイネ高温障害リスク評価の革新」 開催報告

国立研究開発法人農業環境技術研究所(農環研)は、2015年11月24日から26日まで、文部科学省研究交流センター(茨城県つくば市)において、MARCOシンポジウム2015サテライトワークショップ 「国際的な耕地微気象観測網による気候変動下のイネ高温障害リスク評価の革新」 (MARCO Symposium 2015 Satellite Workshop; the kick-off meeting on “MINCERnet: Multi-site monitoring network of canopy micrometeorology and heat stresses of rice under the climate change”) を開催しました。

近年の温暖化により、世界の高温稲作地域では、開花期の高温による不稔や登熟期の高温による収量・品質低下といったイネの高温障害が発生しており、今後の気候変動で高温障害のさらなる激化が懸念されています。しかし、高温障害に直接関与する水田群落内の微気象は群落上とは異なり、そのギャップが高温障害の発生要因の解明や正確なリスク評価を妨げていました。

このような背景から、農環研は 2009 年の MARCO シンポジウムを契機として耕地微気象観測ネットワーク(MINCERnet)を組織し、アジアやアフリカ等の10か国で水田群落内の気温・湿度や高温障害の実態をモニタリングしてきました。

それから6年目の開催となる本ワークショップでは、MINCERnet の国内外の研究協力者が一堂に会し、これまでの結果を総括するとともに今後の研究の方向性について具体的な議論を行いました。

開催日時: 2015年11月24日(火曜日)―26日(木曜日)

開催場所: 文部科学省研究交流センター(茨城県つくば市)

主催:国立研究法人農業環境技術研究所

共催:国立研究開発法人国際農林水産業研究センター(JIRCAS)

後援:農林水産省農林水産技術会議事務局国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構日本農業気象学会日本作物学会

参加者:合計32名
海外9名(フィリピン 1、インド 2、スリランカ 1、中国 1、台湾 1、アメリカ 1、オランダ 1、ガーナ 1)
国内23名(農環研 11、他の国立研究開発法人 5、大学 5、民間企業 1、その他 1


ワークショップの参加者たち

24日(会議 1日目)

国内外の MINCERnet 参画者から、世界のコメ生産地における水田熱環境と高温障害の実態について、MINCER を活用した最新の研究成果が紹介されました。

25日(会議 2日目)

全サイトのモニタリング結果を総括するとともに、これまでに明らかとなった問題点や今後推し進めるべき課題を抽出しました。より高精度なモニタリングを要する開花時刻や不受精率・品質関連項目の調査方法、今後の研究の展開をにらんだ共通品種の選定、高温・乾燥複合ストレス実験の設計などについて、具体的な議論を行いました。

午後は、MINCER 装置の取り扱い方法や、一般気象測定、開花時刻のモニタリング方法などについて、実演を交えた測定ガイダンスを行いました。


今後の試験設計の議論と測定ガイダンス

26日(会議 3日目)

午前は今後の研究計画とプロトコルの最終確認を行いました。午後はエクスカーションとして、つくばみらい FACE 実験施設と、真瀬水田フラックス観測サイトを見学しました。

MINCERnet の参画者だけでなく、国内の大学や研究所などからワークショップに参加された方々にも、積極的に議論に参加していただき、イネの高温障害と農耕地の熱環境の把握に対する関心の高さがうかがえました。温暖化や異常気象が農作物に及ぼす影響の実態解明においては、群落微気象測器の普及とそれによるモニタリングが必須であり、農業気象学、作物学の知見とフィールド観測経験を有する農環研の果たすべき役割は極めて大きいと考えます。今後も MINCERnet をプラットフォームとしてイネの温暖化影響研究を主導することで、世界のイネ高温障害の発生要因の解明、リスク評価、対策技術の開発に大いに貢献するだけでなく、最新成果の効率的な情報発信にも役立てていきたいと考えています。


エクスカーション(つくばみらい FACE 実験施設/真瀬水田フラックス観測サイト)

なお、このワークショップは、JSPS科研費および環境省地球環境保全推進費の一部を使用して実施されました。

吉本真由美 (大気環境研究領域)

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