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農業と環境 No.191 (2016年3月1日)
国立研究開発法人農業環境技術研究所

第33回土・水研究会「水稲におけるヒ素吸収抑制技術」 開催報告

国立研究開発法人農業環境技術研究所は、2016年2月25日(木曜日)、つくば農林ホール(つくば市観音台)において、第33回土・水研究会 「水稲におけるヒ素吸収抑制技術」 を開催しました。

食品の国際基準を策定しているコーデックス委員会は、平成26年7月に、精米に含まれる無機ヒ素の最大基準値を0.2mg/kgと設定しました。また、わが国の食品安全委員会は、食品を通じて摂取したヒ素による明らかな健康影響は認められず、ヒ素について食品からの摂取の現状に問題があるとは考えていないとの見解を示す一方で、関係する行政機関に、これまで行ってきた食品中のヒ素の汚染実態を把握するための調査、ヒ素のリスク低減方策に関する研究等を、さらに充実して取り組むように要請しています。このような背景から、農林水産省では、委託プロジェクト 「食品の安全性と動物衛生の向上のためのプロジェクト」 において、水稲におけるヒ素のリスクを低減する栽培管理技術の開発を実施しています。

この研究会では、農林水産省委託プロジェクトで得られた水稲ヒ素の低減に関する最新の研究成果を紹介するとともに、わが国における食品中のヒ素に関する食品安全行政、総ヒ素および無機ヒ素の摂取量推定、食品からのヒ素摂取に伴う発がんリスクに関する話題提供をいただき、質疑を行いました。

日時: 2016年2月25日(木曜日) 10:30−16:30

場所: つくば農林ホール(農林水産技術会議事務局 筑波産学連携支援センター)

主催: 国立研究開発法人 農業環境技術研究所

後援: 国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構

参加者数: 113名
(行政14名、国立研究機関32名、地方自治体39名、大学8名、民間企業等20名)

講演タイトルと講演者:

食品中のヒ素に関する安全規制 [ 要旨(PDF) ]

(一財)日本冷凍食品検査協会 常務理事 加地文

食品のヒ素分析と摂取量推定 [ 要旨(PDF) ]

国立医薬品食品衛生研究所 片岡洋平

食事からのヒ素摂取に伴う発がんリスク

(研)国立がん研究センター 澤田典絵

水稲のヒ素吸収抑制(1)水管理 [ 要旨(PDF) ]

(研)農業環境技術研究所 中村 乾

水稲のヒ素吸収抑制(2)吸収抑制資材の利用 [ 要旨(PDF) ]

(研)農業環境技術研究所 牧野知之

水稲のヒ素吸収抑制(3)カドミウム低吸収品種の利用 [ 要旨(PDF) ]

(研)農業環境技術研究所 石川 覚

米のヒ素分析−形態別分析と簡易分析− [ 要旨(PDF) ]

(研)農業環境技術研究所 馬場浩司

加地 文 氏

片岡 洋平 氏

澤田 典絵 氏

まず食品全般の安全規制の考え方について加地先生が講演し、食品にゼロリスクはないこと、規制には化学的根拠のほか、食品の代替性や食文化など、さまざまな要因が関係していることが紹介されました。国立医薬品食品衛生研究所の片岡先生からは、マーケットバスケット方式による摂取量推定により、カドミウムやヒ素の摂取量は最近の10数年であまり変化していないこと、無機ヒ素の摂取量の半分以上は米に由来していることが紹介されました。国立がん研究センターの澤田先生からは、食品からのヒ素摂取量と発がんの関係について、男性喫煙者の肺がんリスクの上昇を示唆する結果の紹介がありました。

中村  乾

牧野 知之

石川  覚

馬場 浩司

水稲のヒ素吸収抑制に関しては、水管理により水田土壌の気相率を適切に保つ手法(中村主任研究員)、ヒ素吸収を抑制する資材を利用する手法(牧野上席研究員)、カドミウム低吸収イネを使って節水栽培によりヒ素吸収を抑える手法(石川上席研究員)について、それぞれ紹介されました。また、無機ヒ素分析の注意点や簡易分析法の開発状況について、馬場主任研究員が講演しました。

全体質疑では、ヒ素と皮膚がんとの関連性や、水稲のヒ素吸収の年次間差などが話題になりました。

会場のようす(第33回土・水研究会)

会場のようす(第33回土・水研究会)

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