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情報:農業と環境
No.19 2001.11.1

 
No.19

・農業環境技術研究所−IGBP−GCTE Rice Network
     Rice FACE Modeling 2001 国際ワークショップの開催

・ワークショップ:地球温暖化の日本への影響

・平成13年度専門技術員研修が開催される
     −土壌インベントリーとその土壌管理への活用−

・外来昆虫種の侵入によって植物群落に必要な相利共生関係がこわされる

・本の紹介 64:有機物の有効利用 Q&A 鹿児島県農業試験場


 

農業環境技術研究所−IGBP−GCTE Rice Network
Rice FACE Modeling 2001 国際ワークショップの開催

 
 
「高濃度CO2環境下のイネ生長プロセスモデリング
 
  開催日時 平成131126()29()
  開催場所 農業環境技術研究所 中会議室(547-549
  主  催 農業環境技術研究所
  共  催 IGBP-GCTE Rice Network
  後掲(事前申し込み必要)
 
開 催 趣 旨
 大気 CO2 増加による地球環境変化がイネ生産に及ぼす影響について,生長プロセスモデルを用いた予測はすでになされているが,信頼性には大いに問題がある。地球環境変化予測の不確実性に加えて,生長モデル自体にも未解決の問題点が多い。特に,イネの生長に及ぼすCO2 濃度上昇の直接的影響について,ほ場観測データを用いたモデルの検証は今まで一度もなされておらず,モデルの信頼性は確かめられていない。
 
 農環研では,CO2 濃度上昇がイネの生長に及ぼす影響について,世界で初めて FACE ( 開放系大気CO2 増加 )によるほ場実験を行ったが,その観測結果を用いて世界の主なイネ生長プロセスモデルを検証するために,この度 Rice FACE Modeling 2001 ワークショップを開催する。本ワークショップの結果は,生長プロセスモデルを用いた影響予測の信頼性向上に寄与するものと期待される。
 

プ ロ グ ラ ム

1126日(月)
9:30  開会の挨拶  農業環境技術研究所 理事長 陽 捷行
 
 セッション1 実験とモデルの相互理解
10:00  実験の紹介
    Rice FACE実験の概要(小林和彦), 気象とCO2 (岡田益己),

 
  イネの生長と発育(金 漢龍), 土壌とイネの窒素吸収(三浦 周)
11:00  モデルの紹介
    CERES-Rice (Upendra Singh), ORYZA1 (Krirk Pannangpetch)
12:00    (昼食休憩)
13:00  モデルの紹介(続き)
    JAPONICA (長谷川利拡), TRYMRob Williams),
    RICEPSMTed Wilson), RLRICE (Shu Fukai)
14:20  シミュレーションと観測結果の比較(小林和彦)
 
 セッション2 標準窒素施肥量での高CO2 濃度下のイネ生長シミュレーション
15:00  シミュレーション実施(各モデラー)
17:00    (1日目終了)


1127日(火)
9:30  シミュレーション結果の報告(各モデラー)
10:30  シミュレーションと観測の比較解析(全員による検討)
12:00    (昼食休憩)
 
 セッション3 異なる窒素施肥量での高CO2 濃度下のイネ生長シミュレーション
13:00  高CO2 濃度の影響に対する施肥窒素量の効果について(金 漢龍)
15:00  シミュレーション実施(各モデラー)
17:30    (2日目終了)


1128日(水)
9:30  シミュレーション結果の報告(各モデラー)
10:30  シミュレーションと観測の比較解析(全員による検討)
12:00    (昼食休憩)
13:00  高CO2 濃度の影響に対する気温の効果について(Jeff Baker
15:00  シミュレーション実施(各モデラー)
17:30    (3日目終了)


1129日(木)
 セッション4 生長プロセスモデルの検証と改良
9:30  シミュレーション結果のまとめ(各モデラー)
12:00    (昼食休憩)
13:00  モデルの検証と改良(全員による検討)
15:00  全体討論
17:00   (閉会,ワークショップ終了)


ワークショップ出席予定者
 Jeffrey T. BAKER (アメリカ農務省ベルツビル農業研究センター,アメリカ)
 Upendra SINGH (国際肥料開発センター,アメリカ)
 L. Ted WILSON (テキサスA & M大学,アメリカ)
 Robert L. WILLIAMS (ヤンコー農業研究所,オーストラリア)
 Shu FUKAI (クィーンズランド大学,オーストラリア)
 Krirk PANNANGPETCH (コンケン大学,タイ)
 長谷川利拡(北海道大学)
 岡田 益己(農業技術研究機構 東北農業研究センター)
 三浦  周(北海道立上川農業試験場)
 鳥山 和伸(中央農業総合研究センター 北陸研究センター)
 後藤 英司(東京大学)
 金  漢龍(東京大学)
 小林 和彦・吉本真由美・酒井 英光(農業環境技術研究所)
 渡辺 朋也(中央農業総合研究センター)
 他
 
問い合わせ先
 

 
農業環境技術研究所 生態系影響ユニット 小林和彦(clasman@niaes.affrc.go.jp
 
 
 

ワークショップ:地球温暖化の日本への影響
 
 
  開催日時 平成131112日(月),13時〜1730
  開催場所 国立環境研究所(地球温暖化棟交流会議室)
  共  催 気候影響・利用研究会,国立環境研究所,農業環境技術研究所
  後  援 日本気象学会,日本農業気象学会気候変化影響研究会
  参集範囲 国公立・独立行政法人試験研究機関,大学,行政部局ほか
 
開 催 趣 旨
 過去1世紀の気候変化を解析した結果,地球上の平均地上気温はほぼ0.6℃上昇し,なかでも日本を含む北アジア一帯で昇温の規模が最も大きく現れたことが明らかになった。このような傾向が将来においても進行すれば,日本周辺の地域は,温暖化の影響を最も早く被ることが懸念される。
 
 地球規模の環境変化は,気温ばかりでなく降水量や日射量も大きく変化させることが,全球気候モデルによる予測で明らかになっている。このような気象要素の変化が,日本の陸上生態系,農林業,水文・水資源と水環境,海洋環境,人間の健康などにどのようなインパクトを及ぼすだろうか。本ワークショップでは,これらの点に関して従来得られている知見を整理し,広く情報を共有して今後の研究方向について検討する。
 

プ ロ グ ラ ム

.
 
開会挨拶
 
川崎 健
(気象影響・利用研究会会長)
13:0013:15
 
.

 
温暖化の日本への影響の全体像
 
原沢英夫
(国立環境研究所社会環境システム部)
13:1513:45

 
.
 
将来気候
 
野田 彰
(気象研究所気候研究部)
13:4514:15
 
.

 
農林業への影響

 
林 陽生
(農業環境技術研究所地球環境部)
14:1514:45

 
.

 
生態系への影響

 
大政謙次・清水 庸
(東京大学大学院農学生命科学研究科)
14:4515:15

 
.
 
水資源への影響
 
花木啓祐
(東京大学大学院工学系研究科)
15:3016:00
 
.

 
海面上昇・沿岸への影響

 
加藤博和
(名古屋大学大学院環境科学研究科)
16:0016:30

 
.
 
健康への影響
 
佐々木昭彦
(福島県立医科大学)
16:3017:00
 
. 総合討論   17:0017:30


問い合わせ先
 

 
農業環境技術研究所 地球環境部 西森 基貴
e-mail mnishi@niaes.affrc.go.jp

 

 
305-8604 つくば市観音台3-1-3
Tel 0298-38-8356Fax 0298-38-8199
 
 
 

平成13年度専門技術員研修が開催される
−土壌インベントリーとその土壌管理への活用−

 
 
 平成13年度専門技術員研修「専門研修」が下記により開催されました。
 以下にの講義内容の概略を紹介します。
 
I  開催要領
1.趣旨
 土壌インベントリーが農業生産及び環境保全に果たす役割は大きいが,その活用には特性の理解と適切な管理が必要である。土壌の断面調査から何を読みとることができるのか,また,物理性や化学性の分析はなぜ必要であり,どのような情報が得られるのか,それらは土壌管理にどのように活用できるのかについて理解を深める。
 
 農業環境技術研究所が担当する研修なので,土壌インベントリー,土壌調査・分類の意義,土壌インベントリーの整備・活用に関する研修とともに,関連してこれから都道府県の現場でも対応がますます重要になってくる,重金属や栄養塩問題についてもホットな情報を提供する。
 
2.事業者
農林水産省経営局普及課
 
3.開催者
農業環境技術研究所
担当:農業環境インベントリーセンター
化学環境部重金属研究グループ,栄養塩類研究グループ
 
4.開催日・場所
開催日:平成13年9月19日(水)〜9月20日(木)
開催場所:農業環境技術研究所
 
5.受講者
専門技術員7名(宮城,新潟,京都,鳥取,徳島,愛媛,高知)
 
 
II 研修内容
 
目 次
1.農業環境技術研究所の農業環境インベントリー構想
農業環境インベントリーセンター長 浜崎忠雄
2.土壌断面調査と土壌分類の意義
農業環境インベントリーセンター長 浜崎忠雄
3.土壌情報の整備と活用
農業環境インベントリーセンター土壌分類研究室 室長 中井 信
主研 小原 洋
4.新たな重金属研究(とくにカドミウム)
化学環境部重金属研究グループ長 樋口太重
5.重金属類の土壌中の存在形態と吸収抑制
化学環境部重金属研究グループ 土壌化学ユニット
研究リーダー 菅原和夫
6.栄養塩類の土壌中における挙動
化学環境部栄養塩類研究グループ 土壌物理ユニット
研究リーダー 加藤英孝
7.土壌粒子の移動に伴う化学物質の拡散
地球環境部食料生産予測チーム長 谷山一郎
8.再生有機質資材の畑土壌における受容量の推定手順とマップ化
化学環境部栄養塩研究グループ長 上沢正志
 
 
1.農業環境技術研究所の農業環境インベントリー構想
 
農業環境インベントリーセンター長
浜崎 忠雄
 
1)はじめに
 20014月に発足した独立行政法人農業環境技術研究所には,農業環境インベントリーセンターが設置され,農業環境インベントリーの構築と利用に関する研究に当たることとなった。農業環境研究では,土壌,水,大気・ガス,昆虫,微生物,線虫,植物・作物,農薬・肥料等農業環境構成要素の野外における動態を観測したり,採取した標本・試料を実験室で観察・分析したりして得られたデータを基に農業環境資源の分類,特性と動態の解明,機能や環境影響の評価,変動予測等が行われる。これらの標本・試料やデータはすでに数多く蓄積され,また現在も追加されているが,収集した研究者や研究室が分散して保管しているため特定の研究者のみが利用できるにとどまっている。また,研究上必要な行政事業データ,他機関所蔵データ等も研究者が必要に応じてその都度収集し,利用している状態である。一方,ネットワーク技術やハードウェアの発展など情報技術の進展によって,ネットワーク上に存在する異質あるいは同質のデータや異なるフォーマットで分散して存在するデータベース・モデルを相互に協調させることによって,統合処理する技術開発が可能になってきている。
 
 農業環境インベントリーの目的は,農業環境研究の基盤となる農業環境構成要素の標本・試料の収集・展示と情報のデータベース化を進め,農業環境研究に必要な様々な要素データベースを協調させ,統合するシステムの開発によって,統合された知識を提供し,農業環境要素間の相互作用の解析を可能とするシステムを提供することである。農業環境インベントリーの構築により,自然循環機能に基づいた食料と環境の安全性の確保及び地球環境の保全をめざす研究が促進されるばかりでなく,これらの情報の再利用と統合化により各分野が個々に取り扱っていたときには知り得ない,新しい発見も期待できる。これらにより,農業環境資源を健全な状態で維持し,質の高い農業環境資源を次世代に継承することに貢献したい。
 
2)農業環境インベントリー構想
 農業環境インベントリーは,資源標本,資源標本情報,農業環境情報の三つのサブインベントリーによって構成することを考えている。
 
 (1)資源標本サブインベントリー
 資源標本サブインベントリーは,標本や試料といった資源そのもの収集・保存インベントリーである。標本は分類上の証拠となるとともに同定に当たって照合に用いる。また,かけがえのない農業環境資源に対する啓発に用いる。保存試料は,ダイオキシンのように農業と環境に関わる新たな問題が発生した場合に,全国的な分布を把握したり,過去にさかのぼって問題を追跡するためのタイムカプセル的意義をもつ標準環境試料と,分析精度の向上のために用いられる標準分析試料とを考えている。
 
 (2)資源標本情報サブインベントリー
 資源標本情報サブインベントリーは,収集した標本・試料に関する情報を整理したデータベースである。基準情報やバックグラウンド情報となるものであり,必要に応じて提供できるようにする。
 
 (3)農業環境情報サブインベントリー
 農業環境情報サブインベントリーは,農業環境関連全分野にわたる情報の集積であり,土壌・水・気象・昆虫・微生物・線虫・植物・植生・土地等の各農業環境資源情報,生物多様性情報,ダイオキシン等の有機化学物質・重金属類・環境負荷栄養元素等の環境動態情報,窒素等の広域における物質循環情報,温暖化等の地球環境情報,組換え体の野外における安全性情報,生態系機能情報等,当所内部で集積されたモニタリングデータを含む各種原データ・加工データ・図データ情報,分析・モニタリング・解析・モデリング等の手法情報,農業環境関連知識情報とともに,外部から収集・導入したこれらをデータベースに蓄積または外部情報システムとリンクしたインベントリーである。
 
3)おわりに
 農業環境インベントリーは,試験研究関係者,教育関係者,行政,その他一般の利用者が,訪問,インターネット,依頼等によりアクセスできるようにする。また,情報の蓄積・提供がさらに新たな蓄積・提供を生むような増殖システムにしたい。
 
 農業環境インベントリー構想の推進には,他試験研究機関,大学,行政部局等との連携協力が不可欠である。また,要員,予算,設備等の多くの問題が残されているが,できるところから着実に進めて行きたいと考えている。
 
添付図(省略)
1.農業環境インベントリーのイメージ
2.土壌資源インベントリーのイメージ
3.土壌資源情報統合システム
 
 
2.土壌断面調査と土壌分類の意義
 
農業環境インベントリーセンター長
浜崎 忠雄
 
1.農耕地土壌分類第3次改訂版の概要と意義
 日本の農耕地土壌調査・分類のあゆみ,農耕地土壌分類第3次改訂版の内容と意義について述べる。
 
資料:農耕地土壌分類第3次改訂版,土肥誌,69206-2111998
 
2.土壌断面調査と土壌分類の意義
 「水田土壌の生成と水分環境」の関係を通して,土壌断面調査から何を知ることができるかについて述べる。また,「土壌類型等土壌条件が水稲冷害に及ぼす影響」の解析結果を例にして,土壌断面調査・土壌分類の活用について述べる。
 
資料:水田土壌の生成と水分環境,ペドロジスト,4548-552001
土壌類型等土壌条件と標高差が水稲冷害に及ぼす影響,ペドロジスト,442-82000
 
 
3.土壌情報の整備と活用
 
農業環境インベントリーセンター
土壌分類研究室長 中井 信
土壌分類研究室主任研究官 小原 洋
 
1.はじめに
 土壌の物理性や化学性の特性や分布の情報は,土壌を管理・利用する上で非常に重要な要素である。作物栽培のための施肥の決定には,土壌の養分状態など主に化学性の情報が必要であり,耕耘や水管理には土壌の物理性が強く影響する。そして土壌の分布の情報は,ある作物や栽培技術の適地を決めたり,ある地域での作物や栽培技術の適応性を判定するために活用できる。そればかりでなく,環境汚染に対する脆弱性を調べたり,汚染物質の移動や集積を予測するためにも活用できる。このような土壌の基本的情報を集めたものが土壌インベントリーである。インベントリーは英語の"inventory"であり,財産目録とか在庫目録といった意味で,近年環境関係の文書に頻繁に登場するようになっている。気候変動枠組条約京都議定書(199712)でも,温室効果ガス削減目標の達成状況を評価する基礎として温室効果ガスインベントリーの報告が義務づけられている。
 
 このようにインベントリーは政策や事業の策定や評価の基盤となるものである。土壌インベントリーにはどのようなものがあるか,諸外国と日本の例を紹介し,土壌インベントリー活用法の一端を紹介する。
 
2.諸外国の土壌インベントリー
 土壌に関連する諸外国のインベントリーとしては,米国農務省の全国資源インベントリーが有名である。米国農務省では1930年代から土壌保全局によって全国の土壌侵食のモニタリングと改善事業が行われた。土壌保全局はその後資源保全局に改組され,土壌だけでなく農地に関連する資源全般の調査を行うようになった。この調査は,1777年から5年毎に行われ,「全国資源インベントリー」として公表されている。ホームページアドレスは,http://www.nrcs.usda.gov/technical/NRI/ (最新のURLに修正しました。2010年5月) である。調査項目は,土壌保全対策関係を中心としているが,土地利用,地表被覆,湿地,野生生物生息地などの関連分野を広く網羅している。対象地域は全国の約70%80万地点に及んでいる。調査結果は,全国的な自然資源の現状を把握するために利用され,農業生産性,保全対策の必要性,保全事業の効果,土壌の侵食や野生生物の生息地など広範な分野について取りまとめられている。例えば,1999年の報告によると,農耕地の土壌侵食は1982年には年平均18t/haであったが,土壌保全対策によって1997年には年平均12t/haにまで減少した。このインベントリーを活用して,土壌の質や流域の汚染などの問題への取り組みも行われている。
 
 米国農務省は全国の土壌調査を行い,その過程で新しい土壌分類法,Soil Taxinomy1975年に提案し1),世界の土壌分類法に大きな影響を与えた。この分類法はその後何度も改定され,1999年に第二版が公表された2)。土壌調査の報告書や各種の土壌図は,CD-ROMで販売されているとともに,インターネット上で公開されるようになっている。資源保全局の土壌図は,郡別,州別,全国の種類があり,土壌調査データ,断面記載,土壌統分類,土壌特性データがデータベースとして整備されている。
 
 国際連合食糧農業機関(FAO)では,1974年に世界土壌図3)を作成した。この土壌図はデジタル化されCD-ROMで入手することが可能である。ここで用いられた土壌図凡例は,世界の土壌を同一基準で分類するもので,国際基準となることが期待された。この凡例は1992年に改定され4),さらに国連環境計画(UNEP)と国際土壌科学会議(ISSS)によって統合され,1998年に世界土壌照合基準(WRB)として提案された5)
 
 国際土壌照合情報センター(ISRIC)では,全世界の土壌に関する情報の収集・整理,土壌劣化,土壌保全や土壌分類についての研究を通じて,全世界の土壌データベースの構築を進めている。その中で,国際土壌科学連合(IUSS,元のISSS),UNEPFAOと共同して,土壌と地域データベース(SOTER)を開発した。これは土壌と地域資源の広範囲な解釈に活用するため,世界の土壌資源の最新情報を提供することを目的としている。これには水食評価,土地評価,農作物生産シミュレーションなどのアプリケーションと地図表示プログラムが付随して開発されている。
 
 EU諸国が共同で運営しているヨーロッパ環境庁(EEA)では,ヨーロッパ全体の環境情報を観測するネットワーク(Eionet)が運用されており,3年ごとにヨーロッパの環境の状態について報告している。このネットワークでは,排気,大気,植被,海洋など多くの環境情報について観測調査がなされている。土壌については,土壌劣化のモニタリング,土壌汚染についての情報の収集と解析などが行われている。
 
3.日本の土壌インベントリー
 国内の土壌インベントリーとして,インターネットもしくはコンピューターで利用可能か利用が計画されているデータベースを紹介する。
 
 わが国では戦後,食糧増産と農耕地の改良を目的に数多くの土壌調査が農林水産省の事業として実施されてきた。また,文部省科学研究費による海外学術調査や政府開発援助に伴う土壌調査が行われ,情報が収集されている。これらの情報は事業等に活用された後も高い価値を持つ情報であり,その活用を目指して開発されたのがSoil Net Japan(SNJ)である6)。まだ充分なデータが活用できるとはいえないが,ネットワーク上で公開されている唯一の土壌インベントリーといえる。これは,個々の事業や調査で作成された土壌資源情報を,インターネット上で簡単に検索し,外部の利用者にデータを提供するシステムである。このシステムでは,一般理化学性,試料採取地点情報,断面記載,写真,粘土鉱物組成,水分保持特性や生物性など多岐にわたる情報が扱われている。現在,登録・運営が計画されている土地資源情報データベースは以下の3つである。(1)熱帯アジア水田土壌データベース:水田表層土約600試料の理化学性,全分析,粘土鉱物組成。西アフリカ土壌の肥沃度も含む。(2)日本の耕地土壌中の微生物数データベース:表層と下層土の各種微生物種ごとの菌数。タイ水田土壌中の微生物数,世界各地からのメタン発生量のデータベースも含む。(3)アンディソル・データベース:約60土壌断面,計439土壌層位に関する理化学性,遊離酸化物,水分保持特性情報。
 
 農林水産省は戦後各種の事業に伴って全国的な土壌調査を行ってきた。これらの事業は土壌保全対策事業と総称されるもので,低位生産地調査(昭和22年〜昭和43年),施肥改善調査事業(昭和28年〜昭和36年),地力保全基本調査(昭和34年〜昭和53年),土壌環境基礎調査(昭和54年〜平成9年)などがある。これらのうち地力保全基本調査と土壌環境基礎調査の結果は,データベース化されている。
 
 地力保全基本調査の調査結果は,地力保全基本調査総合成績書7)にまとめられている。また,土壌の分布は158)1209)の農耕地土壌図に県土壌区単位で図示されている。この事業で調査されたデータは,デジタル化されデータベースとして保管されているが,一般の利用は困難である。20年以上前のデータであるが,20万地点以上に及ぶ断面調査が行われており,土壌の種類ごとの面積統計がとられた唯一のデータでもあり,その後の土壌の変動を解析する上でも利用価値は高い。そこで,パソコンでも容易に使えるように形式を変更して,CD-ROM化が進められている。
 
 この事業で作成された農耕地土壌図も,コンピューターで扱えるようデジタル化がなされた。デジタル土壌図は,ポリゴンデータと100mと500mのメッシュデータになっている。このデータも上記CD-ROMに収録される予定である。
 
 農耕地土壌図は,その後の農耕面積の変動があり,1993年に修正が加えられ,全国土壌統単位で図示された。一方で,コンピューター技術は急速に発達し,パソコンでもGISソフトが扱えるようになった。そのため,これら土壌図をパソコン上で扱えるようにデジタル化が進められている。デジタル土壌図と分析値を基に,GISシステムによって各種の解析が可能となる。
 
4.土壌環境基礎調査
 1979年に始まった土壌環境基礎調査は,定点調査と基準点調査からなる。定点調査は,全国約2万地点について5年に一度土壌調査を行うモニタリング調査である。全国の農地の代表的な地点を選定し,肥培管理や作付体系などの土壌管理実態調査(アンケート調査)と土壌の特性を調査する土壌実態調査を行った。
 
 調査内容は以下のとおりで,地力保全基本調査を拡充して行われた。
 
(1)土壌管理実態調査
農家の経営(専業兼業の別)
労働力の状況
家畜の飼養頭数
土地改良等の履歴
作付体系(作物の種類,作付面積,収量など)
施肥の状況(施用された肥料の種類,同肥料の保証成分量,施肥量,施用時期)
土壌改良資材(堆肥等有機物を含む)の施用状況(土壌改良資材の種類,施用量など)
 
(2)土壌実態調査
土壌分類
母材堆積様式
圃場条件
作土の厚さ
有効土層の厚さ
層位別の土性,土色,緻密度,酸化沈殿物,三相分布,粒径組成,保水性,透水性,pH,電気伝導度,全炭素,全窒素,陽イオン交換容量,塩基含量,リン酸吸収係数,可給態リン酸,可給態ケイ酸,微量成分,可給態窒素,銅,亜鉛など
 
(3)かんがい用水
pH,電気伝導度,全窒素,アンモニア態窒素,硝酸態窒素,全リン,カリウム,カルシウム,マグネシウム,ケイ酸,ホウ素,銅,亜鉛など
 
(4)作物体
水分,全窒素,リン,カリウム,カルシウム,マグネシウム,ケイ酸,ホウ素,マンガン,モリブデンなど
 
 これらの調査項目のうち,かんがい用水と作物体の分析値は土壌に比べるとかなり少ない。また,団粒分析,土壌生物(小動物と微生物)の調査も最初は計画されていたが,実際には行われなかった。
 
 定点調査はこれまですでに4回行った。基準点調査は,定点調査で明らかになる地力の時間経過に伴う変化とその要因を把握することを目的に行われた。全国に調査定点を設け,投入資材を変えて肥培管理を行い,作物の収量・品質および土壌の理化学性の変化を調査した。この調査には,一般調査と精密調査がある。一般調査は,全国138地点で,無窒素区,化学肥料単用区,有機物施用区および総合改善区を設定し,土壌特性,作物の生育,収量,品質などを継続的に調査した。精密調査は,全国6カ所の農業試験場で,家畜排泄物,下水汚泥などの連用による養分動態,作物生育などについてライシメーター試験を行った。
 
 定点調査は,非常に多岐の項目について,長期にわたって繰り返し調査した貴重なデータである。長期間の農耕地土壌の特性変動を見ることができ,多方面に活用できることが期待される。現在データの最終チェックと取りまとめが進められており,今年度中には報告書が出される予定である。また,調査データについては,データベース化してインターネットを通じて活用できるシステムの開発が進められている。
 
 定点調査は,1997年度で一応の区切りを迎え,1998年度からは土壌機能モニタリング調査が開始された。この調査は,各都道府県の関係者数の減少に対応したもので,基本的には土壌環境基礎調査に従っている。そのため,地点数を約1/5にし,調査項目から土壌環境基礎調査で実施率が低かった項目を選択項目としている。また,調査方法,対象,項目などについても見直しを行った。実際の調査は1999年度から開始された。
 
 この他,2001年度から独立行政法人になった農業環境技術研究所では,農業環境インベントリーセンターによって,農業環境資源のインベントリー化が開始されている。土壌関連では,土壌の調査・分類法などの書誌情報,土壌モノリスや標準土壌試料などの標本情報,各種調査や研究で得られた土壌分析値,および土壌図などのデジタル情報を整備することを計画している。このデータには,訪問,インターネットや依頼によりアクセスできるシステムの開発を行う。
 
5.土壌情報の活用
 このような土壌インベントリーは,コンピューター上に構築することにより,広範囲な利用が考えられる。データベースとアプリケーションソフトによる解析やGISソフトによる解析結果の図示などが直ちに活用できる分野であろう。以下に,そのいくつかの例を紹介する。
 
  図1 は,水稲の冷害被害の局地的変動に対する土壌要因の影響を解析した例である。1993年の水稲冷害の収量データをもとに,栽培条件や気象条件などがほぼ同程度の比較的狭い地域について土壌条件を調査した。平年に対する収量比に影響する要因を解析し,還元性,透水性と養分保持力から土壌を類型化することにより,冷害への土壌の影響を評価できた(詳細は論文参照10))。
 
図1 水稲の冷害被害予測図 (jpgファイル:200KB)
 
 
 
  図2 は,有機資材の畑地土壌における受容量推定図である。土壌の特性と有機資材の微量重金属や窒素などの含有率,およびそれらの蓄積性から年間の受容量を推定した。100年間の資材の継続施用によって,農用地における土壌中の重金属等の蓄積防止に関わる管理基準以下の亜鉛濃度を維持し,窒素とリン酸の過剰蓄積や水質などへの負荷を防止する投入量を受容量としている。土壌条件を加味することにより,土壌類型を反映した,より詳細な受容量の情報となっている。
 
図2 有機資材の畑地土壌における受容量推定図 (jpgファイル:100KB)
 
 
 
  図3 は,小流域について作成した1/5千の細密土壌図を基に,単位面積当たりのリン酸吸収量を図示したものである11)。細密土壌図は,1/5万の土壌図を参考に,地形図,地質図,土地利用図などと補助土壌調査により1/5千を作成した。その際,土壌層位の厚さ,保水能,透水能,および物質の保持・浄化能を考慮して土壌の類型化を行い,それを図示単位としている。この土壌図は各土壌区について標準断面を設定しており,各層位に代表値を与えることにより,各種の評価図を作成できる。
 
図3 リン酸吸収量 (jpgファイル:55KB)
 
 
 
  図4 は,表層の微量重金属分布予察図である。この手法の詳細については文献を参考のこと。
 
図4 土壌表層の微量重金属分布予察図 (jpgファイル:57KB)
 
 
 
  図5 は,三重県で開発した土壌調査支援システム12)の中の評価図の1つ,排水性の良否である。このシステムは,土壌調査の際に以前の調査地点に到達するため,また調査位置を地図上に容易に登録するためにGPSを利用している。システムには,土壌図,地形図,土壌特性値データを備えており,調査地点の土壌情報を,特性値については数値で,分布については図の形で表示することができる。さらに,いくつかの評価図を作成・表示することができる。これらのことは,ノートパソコンを携行することにより野外現地で行うことができるのが特徴である。
 
図5 土壌調査支援システムによる排水性の良否 (jpgファイル:120KB)
 
 
 
  図6 は,千葉県で開発した土壌情報活用システム13)の土壌図である。このシステムはデジタル化された農耕地土壌図と土壌環境基礎調査(定点調査)のデータによる土壌区の特性値からなる。土壌区の特性値は全国土壌統の平均値となっている。ホームページ形式で表示されるようになっており,県内任意地点の土壌図を表示できる。土壌図凡例の土壌区をクリックすると,その土壌区の理化学性,断面情報,断面写真などの情報が表示される。また,デジタル化された土壌図であるので,面積集計も容易である。
 
図6 千葉県耕地土壌情報システムによる土壌図 (jpgファイル:144KB)
 
 
 
 土壌環境基礎調査(定点調査)の20年間のデータは,上記のように現在とりまとめられている。主に15年間の地目別,土壌群別の土壌理化学性の変動,資材投入の変動などの解析が進められている。今年度末には結果が公表される予定であるので,詳細はその報告を参考にされたい。
 
6.土壌インベントリーの開発
 以上のように,土壌の網羅的情報の集積である土壌インベントリーは,農業や環境などの政策の企画・立案や事前・事後の評価に活用できる。また,土壌研究にとっても非常に有用な知見を与えるものである。多くの,土壌インベントリーは事業や研究問題ごとに収集され,個別に管理されている。このままでは多くの場面への活用は困難であり,データの散逸も危惧される。そこで,これらのインベントリーをコンピューター技術により統合化し,利用しやすいシステムに構築することが必要である。現在,前述の当所の農業環境インベントリーセンターでは,土壌情報の統合システムの開発を行っており,多種多様な土壌インベントリーがオンラインでだれにでも活用できるようになることが期待される。
 
 また,インベントリーは情報の集まりであるが,農業環境技術研究所の農業環境インベントリー構想にあるように,標本・試料の収集も重要である。標準標本は,新たな試料が全体の中でどこに位置づけられるかを検討する上で重要な基準試料になる。土壌でいえば,基準断面と比較検討することにより,当該断面が分類上どこに位置するかという基準となる。また,過去のある時点の土壌試料は,その時から現在までの変動を解析することに役立つ。新たな分析手法が開発されたとか分析項目が追加されたとき,過去に戻って分析を行うことが可能となる。このように,保存試料はタイムカプセルとして活用でき,利用範囲も広がる。とくに近年は土壌試料の収集も次第に困難になっており,試料保存の重要性は高くなっている。
 
7.農耕地土壌分類に必要な情報
 土壌に名前を付けることは,土壌を理解し,技術を普及するために非常に重要なことである。土壌断面調査を行い,断面記載と分析値をもとに土壌分類を行うのであるが,農耕地土壌分類第3次改訂版14)の分類に必要な項目は以下の通りである。
 
○地点情報(断面調査票から)
・地形(山地,丘陵地,台地,低地,砂丘地)
・地下水位
・岩盤または礫層の深さ
 
○土壌層位ごとの項目(断面調査票から)
・母材(沖積堆積物,礫質,火山礫質,花崗岩,軟岩,石灰岩,軽石質,スコリア質,灰質)
・泥炭量
・泥炭構成植物
・礫含量
・土性(触感)
・土色
・ジピリジル反応
・斑鉄(量と形態)
・構造表面光沢
・物理的に未成熟
 
○土壌層位ごとの項目(分析値から)
・有機物含量
・リン酸吸収係数
・塩基飽和度
・pH(H2O
・pH(H2O2
・交換酸度(Y1)
・遊離酸化鉄
・硫化物または硫酸
・土性
 
○分析値のない場合の類推
・有機物含量は断面調査票の土性と土色から類推する。
・土性は触感土性を用いる。
・リン酸吸収係数はアロフェンテストがあれば「即時鮮明」以上を1500以上とする。
・黒ボク土の交換酸度は,1/100万土壌図から準黒ボク土を≧5と間接的に類推する。
 これらの項目を基に以下の特徴層位と識別特徴の有無を判定する。
 
特徴層位
有機質土層:泥炭を含む有機物含量20%以上の土層。泥炭層と黒泥層に分けられる。
泥炭層:泥炭を断面の面積割合で2/3以上含み,有機物含量20%以上の土層。
黒泥層:泥炭を断面の面積割合で2/3未満含み,黒〜黒褐色を呈する有機物含量20%以上の土層。
腐植質表層:有機物含量5%以上10%未満,かつ明度/彩度1.7/12/12/22/33/13/2の厚さ25cm以上の表層。
多腐植質表層:有機物含量10%以上,かつ明度/彩度1.7/12/12/22/33/13/2の厚さ25cm以上の表層。有機質土層を除く。
グライ層:ジピリジル反応が即時鮮明であるか,または物理的に未熟成で青灰色を呈する土層。青灰色を呈しても物理的に未熟成のものでなければグライ層ではない。地下水によって維持されている地下水グライ層と停滞水によって維持されている停滞水グライ層に分けられる。
逆グライ層:作土直下の逆さグライ層。停滞水グライ層の一種であり,その下方に斑鉄層,鉄集積層または灰色化層が現れる。
斑鉄層:地下水変動による季節的な還元と酸化の繰返しの下で,斑鉄(管状を指標斑鉄とする)を生じたふつう基色灰色の土層。即時鮮明なジピリジル反応を呈しない。黒ボク土の混入で黒〜黒褐色を呈することがあるので,灰色は必要条件としない。
鉄集積層:作土の2倍以上の遊離酸化鉄(Fed)を含み,斑鉄(糸状,雲状,糸根状)に富む厚さ2cm以上の次表層位。
灰色化層:雲状斑鉄に富み,構造がよく発達し,構造表面は灰色の光沢を示す灌漑水の影響の下で発達したふつう基色灰色の次表層位。
 
識別特徴
土色(湿土)
赤 色:色相5YRまたはそれより赤く,明度>3かつ彩度≧3,ただし明度/彩度4/34/4を除く。
暗赤色:色相5YRまたはそれより赤く,明度≦3かつ3≦彩度≦6および明度/彩度4/34/4
黄 色:色相5YRより(5YRは含まない)黄色で,明度≧3かつ彩度≧6,ただし明度/彩度3/64/6を除く。
黄褐色:色相5YRより(5YRは含まない)黄色で,明度≧3かつ3≦彩度<6および明度/彩度3/64/6
灰 色:色相10Yより(10Yは含まない)も黄色または赤く,明度≧3かつ彩度<3,または無彩色で明度≧3。
青灰色:色相10Yかそれよりも青い。
黒〜黒褐色:明度3未満。ただし,暗赤色に入るものを除く。
異質土壌物質:下記の類別において異なるグループ(表1)に属する土壌物質をいう。
黒ボク土壌グループ,低地土壌グループ,有機質土壌グループ,灰色台地土・グライ台地土,褐色森林土,赤色土・黄色土,ポドゾル,暗赤色土,未熟土壌グループ。ただし,自然状態で起こりうる異質土壌物質の組合わせの場合は造成土とはしない。
 以上の,特徴層位と識別特徴の有無により,検索表に従って土壌を命名する。
 
<引用文献>
1Soil Survey Staff(1975) Soil Taxinomy, Soil Conservation Service, USDA
2Soil Survey Staff(1999) Soil Taxinomy, 2nd ed., Natural Resources Conservation Service, USDA
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(翻訳)中井 信(2000),世界の土壌資源―照合基準―,(社)国際食糧農業協会
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7)各都道府県農業試験場(1978)地力保全基本調査総合成績書
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9)農蚕園芸局(1980)地力保全基本調査耕地土壌図,農林水産省農蚕園芸局
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11)小原 洋・加藤邦彦(1999),土壌機能評価図の作成法,農業環境モニタリングマニュアル,農環研,
12)安田典夫(2000),土壌調査支援システムの開発,平成11年度土壌環境評価システム開発事業報告書,57-75
13)千葉県農業試験場(2001),新版千葉県耕地土壌図
14)農耕地土壌分類委員会(1995)農耕地土壌分類第3次改訂版,農業環境技術研究所資料,17
 
 
4.新たな重金属研究(とくにカドミウム)
 
化学環境部重金属研究グル−プ長
樋口 太重
 
 わが国の玄米カドミウム濃度の基準値は食品衛生法上,1.0mg/kgADWと決められ,それを上回る玄米は法律的に販売できない。法律的規制のない0.41ppm未満の玄米は,食糧庁では消費者に健康上の不安を抱かせないように,工業用糊など食用以外の用途に回す。ここでは1ppm以上の玄米を「カドミウム汚染米」,0.41ppmの玄米を「準汚染米」と,便宜上呼ぶこととする。カドミウム汚染米が確認された水田では,客土等の対策を講じない限り,そのままの状態での玄米生産は継続できない。カドミウム汚染米地域では,「農用地の土壌汚染防止に関する法律」に基づいて,農用地土壌汚染対策地域が指定され,対策計画を策定したのち,客土などの対策事業が実施される。その事業の結果,カドミウム汚染米が出現しない地域は指定解除となり,通常の流通に沿った水稲栽培が可能となる。いま,わが国のカドミウム汚染の指定地域はおよそ6,600haにのぼるという。
 
 近年,農業をめぐるカドミウム問題に新たな変化が生じている。一つは国際的に見ると,コーデックス対応問題がある。世界の消費者の健康を保護し,食品の健全な貿易慣行を確保し,国際貿易を促進するために,FAO/WHOの食品規格委員会(コーデックス委員会)が1962年に設立された。本委員会の主要業務の一つは食品の国際基準を作成することである。1967年,わが国は本委員会に加盟している。ステップ1〜8までの作業工程に分けて検討される食品添加物・汚染物質部会(CCFAC)では,現在米,小麦,野菜等の基準値案がステップ5まで詰められ,本年7月のコーデックス委員会に提案された。ところで,1999年のCCFACに提出されたデンマーク報告によれば,カドミウムの一日最大摂取量(TMDI)はおよそ60μgであるとされている。わが国の試算では,大人の米の一日摂取量を300gとし,これに含まれるカドミウム含量を0.2ppmと仮定すれば,カドミウム摂取量は60μgとなる。これに米以外の食物からおよそ150μg,水から15μgを摂取すると,一日当たりのカドミウム摂取量の合計は225μgとなる。このように,デンマークとわが国のカドミウム摂取量に大きな開きが認められるが,上記カドミウムの連続的摂取量が人間の健康に安全か否かということである。わが国玄米濃度の1/50.2ppm)となる現在の基準値(案)は食品添加物専門部会(JECFA)で,さらに科学的データに基づいて見直すことになるだろう。いずれにしても米が主食となるわが国農業において,カドミウム汚染の少ない安全な米づくりが強く求められることは間違いない。なお,国際基準値に直接の強制力はないというが,世界貿易機関(WTO)の協定を批准しているわが国は他の加盟国と同様,基準値をクリアーした食品取引が要求されるだろう。前述のとおり,基準値の決定にはまだ紆余曲折が予測されるが,いまの基準値(案)が最終の委員会で決定すれば,わが国農業は重大な局面を迎えることが予測され,食料政策及び農業技術は根本的な見直しを迫られることになろう。二つめは学問的な確証が十分得られてない状況ではあるが,最近,環境ホルモン(内分泌攪乱物質)の一つとして,カドミウムが疑われていることを銘記しなければならない。三つめには最近,米産地のあちこちでカドミウム汚染米の出現が懸念されている国内問題があげられる。過去の汚染地域が指定解除となり,通常の稲栽培を続けてきたある米生産地で,新たに汚染米が確認されたという衝撃的なマスコミ報道は記憶に新しい。また,12年度国産米を対象とした食糧庁の重点調査においても,準汚染米が少なからず確認される。最近国に依存しないで,汚染米等の積極的な情報公開に踏み切り,自治体あげての汚染対策に取り組んでいる例がある。汚染米や準汚染米の出現には様々な要因が絡んでいるのであろう。かっての鉱山のような明確な汚染源ばかりでなく,現在の効率主義に傾注した農業事情も加担しているかもしれない。このように,過去のものと思われていたカドミウム汚染米や準汚染の実態に即して,自治体及び農業団体など関係者は,いま安全な米づくりに向けて,熱心に農家を指導している。一方,農林水産省は,過去の対策事業や稲作技術に対する不信や疑問を払拭するために,その原因を含めて全国的な調査及び新たな対策事業を展開している。
 
 独立行政法人農業環境技術研究所は,環境省または農林水産省の委託事業でカドミウム関連の3つのプロジェクト研究を推進している。これらの研究では農業技術研究機構及び公立農業試験研究機関と連携して,カドミウム負荷経路や吸収機構の解明,吸収抑制技術の開発等を目指している。また,農林水産省農産振興課では各県との連携のもとに,汚染地域の農地にとどまらず,水田のカドミウム汚染対策事業を平成13年度から始めた。さらに,生研機構では,技術会議研究開発課の指導のもとに,大学,民間,法人,県と一体となり,ファイトリメディエーション(植物を利用する環境修復)を骨格とするカドミウム吸収抑制のためのプロジェクト研究を東北地域で開始した。今後の研究成果が期待されるところである。
 
 地球上の金属元素が81種類あるなかで,比重がおよそ45以上の重金属は67種類存在する。そのうち有害元素としては鉛,水銀,アンチモン,カドミウム等が知られる。カドミウムの人体への影響については不明の点も残されるが,我が国では腎細管障害や骨粗しょう症などをもたらした神通川イタイイタイ病があまりにも有名である。ところで,食品に対する考え方は,地域や宗教上の理由から必ずしも世界共通とはならない。また,カドミウムの人体蓄積量や蓄積過程は,個人差や環境条件等に支配され,健康障害に差異をもたらすといわれる。こうした事情を踏まえて,第33CCFACではわが国の疫学調査に基づくカドミウム毒性評価の必要性を受け入れて,JECFAのプライオリティーリストに載せるとともに,平成15年には科学的データによる毒性評価の実施を決定した。なお,わが国の毒性評価は厚生労働省との連携のもとに,食品中のカドミウム濃度と人間の健康影響に係る疫学調査に基づいて実施されている。
 
 農耕地土壌のカドミウム含量はさまざまであるが,一般に地核よりも多い傾向にある。これは,カドミウムが環境中で動きやすい元素であることを物語る。農地にインプットされるカドミウムは,肥料等の農業資材,かんがい水,雨水,大気,有機物などに由来するであろう。非汚染地の水田では,とくに雨水や肥料由来のカドミウムの多いことが試算される。土壌中のカドミウムは,粘土,腐植,水和酸化物と結合して,あるいは水溶態として存在する。水田土壌を湛水に保ち,とくに出穂期前後の土壌をできるだけ還元状態に維持したり,アルカリ土壌改良資材を併用すると,水稲のカドミウム吸収量が抑制される事実は,土壌中の水溶態カドミウム含量の減少と密接に関連するのかもしれない。この新知見は詳細に検討が加えられ,同時に現場での対策事業にも活用されている。ところで,兼業農家を多数抱える我が国の農業は,安全な米作りを目指した水管理が十分できていないのが現実であろう。また,玄米のカドミウム含量は,気象条件(降雨)に左右され,年次間で大きく変動しやすいことも,生産者を泣かせる要因となる。さらに,コンバイン収穫など水稲の機械化一貫作業を図り,低コスト稲作を強力に推進する専業農家では,暗渠等による土壌の乾田化及び早期落水処理によって,玄米カドミウム濃度が上昇する懸念がある。
 
 上述のように,カドミウム汚染米及び準汚染米の発生が年次間でバラツキのあること,同一圃場(一筆)でも,土壌または水稲の採取位置によって,カドミウム含量がかなり異なり,しかも両者間で一定の傾向がみられないこと,湛水処理や土壌改良資材の施用によって,水稲のカドミウム吸収が大きく制限されること,カドミウム吸収に水稲の品種間差があることなど,我が国のカドミウムをめぐる研究成績は,次第に蓄積されている。しかし,昭和40年代の公害問題を頂点にして,我が国のカドミウム研究は一時中断された状態となり,若手研究者への継続が十分なされてない。コーデックス対応を考えると,今後の重金属,とくにカドミウム研究は水稲にとどまらず,豆類,麦類,野菜等の作物まで広げて,広範囲に実施する必要がある。短期的にみると,モニタリングデータの整備,農地におけるカドミウムの化学形態とその変動要因の解明,新しいカドミウム測定法の開発,低吸収作物品種の検索等に寄せる期待は大きい。農地へのカドミウム負荷量の増大,水田の汎用化など現在の農業実態を踏まえると,中長期的な研究として,農地におけるカドミウム環境収支の解明,植物を利用したカドミウム除去技術の開発,低カドミウム肥料の開発等を積極的に手がける必要が考えられる。農業環境技術研究所重金属研究グループでは,これらの研究を通じて,土壌管理指針を策定し,安全な食料確保をめざしている。
 
 
5.重金属類の土壌中の存在形態と吸収抑制
 
化学環境部重金属研究グループ
土壌化学ユニット研究リーダー
菅原 和夫
 
1.はじめに
 最近,重金属汚染の問題が再び注目を集めるようになった。その背景には,FAOWHOによって設置されたCodex Alimentarius Commission(コーデックス委員会)において,食品中のカドミウム・鉛濃度を規制する厳しい国際基準が検討されているという事情がある。基準作りの実務を担当しているのは,下部組織のCodex Committee on Food Additives and Contaminants (CCFAC,食品添加物・汚染物質部会)である。
 
 食料生産の現場では,作物のカドミウム吸収を抑制する化学的方法が最大の関心事であろうが,その基礎として土壌化学性がカドミウムの存在形態に影響を及ぼすことについても理解しておく必要がある。土壌のカドミウム汚染に関する報告は多数出版されているが,ここでは,speciation(形態分析)とbioavailability(生物的可給度)をキーワードとして取りまとめた。
 
2.重金属の存在形態
 土壌中では,重金属の大部分は粘土の結晶格子の中に固定(fixation)された形態,鉄・マンガンなどの酸化物に吸蔵(occlusion)された形態,腐植や粘土に吸着(adsorption)された形態で存在する。これらの形態の重金属は水に溶けにくいと考えられる。一方,重金属の一部はイオンや錯体(キレート)の形態で存在する。これらの形態の重金属は水に溶けやすく,土壌・水環境を移動すると考えられる。
 
 化学形態別の存在割合は重金属の種類によって大きく異なる。他の重金属に比べて,カドミウムは結晶格子中には少なく,鉄・マンガンなどの酸化物に吸蔵された形態,腐植や粘土に吸着された形態で存在する。イオン交換樹脂を用いた形態分析の結果,畑状態の土壌では,水溶態カドミウムの50%以上がカチオンの形態で,314%がアニオンの形態で存在することが分かった(櫻井ら,1999)。一方,湛水状態の土壌ではカチオンの形態が著しく減少し,中性の形態が増えることが分かった(櫻井ら,未発表)。
 
3.カドミウムの存在形態に及ぼす土壌化学性の影響
 1)土壌pHとイオン強度
 一般に,土壌表面へのカドミウム吸着はFreundlichの吸着等温式,q=kccdnに従う。ここで,qはカドミウムの吸着量,Cは溶液中カドミウム濃度,kccdおよびnは定数である。カドミウムの吸着はpHに対して高感度であり,pH0.5上昇すると約2倍に増加する(Boekhold et al., 1993)。カドミウム保持力の強いAlfisolsVertisolsに低濃度のカドミウムを添加した場合,カドミウムの大半が吸着されてしまうのでpHの効果は小さい(Naidu et al., 1994)。
 通常のpH条件下では,イオン強度を高めるとカドミウムの吸着は低下する。しかしながら,硝酸ナトリウムを添加してイオン強度を高めるとpHが低下する。そこで,平衡pHとカドミウムの吸着の関係を求めた結果,カドミウムの吸着量はpHの上昇に伴い増加し,イオン強度の低い水を溶媒としたときに最大となった(Naidu et al., 1994)。
 
 2)共存イオンの影響
 高濃度の塩素イオンが共存すると,土壌中におけるカドミウムの移動性が高まる(Doner1978)。塩分を含む灌漑水をかん水した場合など,土壌溶液のイオン強度が高まり,作物のカドミウム吸収が促進される(Bingham et al., 1983McLaughlin et al., 1994)。その理由として,1)陽イオン交換反応によりCd2+が土壌溶液中に放出されること(Bingham et al., 1983Bingham et al., 1984),2)カドミウムが塩素イオンと錯体を形成し,土壌溶液に溶けること(Smolders et al., 1998)などが示された。
 水稲のカドミウム吸収は水溶性マンガンの施用により顕著に抑制されるが,土壌中の可給態カドミウムが減少したとは考えられない(吉川ら,1979)。一方,花崗岩を母材とする中粗粒質灰色低地土では,土壌中カドミウム濃度が自然賦存量程度であるにもかかわらず汚染米が検出された。その理由として,作土層・鋤床層がジピリジル反応を示さない酸化的条件下にあり,跡地の土壌pH5.3とやや低く,可溶性マンガン濃度も20 mg kg-1以下であることが示された(三角ら,1987)。
 
 3)酸化還元
 土壌を湛水条件下で培養すると,酸化還元電位(Eh)が-130 mV前後に低下すると,1規定酢酸アンモニウム可溶の重金属が急速に減少する(飯村・伊藤,1978)。この現象はカドミウムについて最も明瞭に認められ,亜鉛についても部分的に認められる。この現象はSO42- H2 S系のEh変化と一致することが多く,硫化物の生成に対応すると考えられる(飯村・伊藤,1978)。
 細粒質灰色低地土や多湿黒ボク土にくらべて礫質灰色低地土では,土壌中カドミウム濃度が0.5 mg kg-1程度であるにもかかわらず,玄米のカドミウム濃度が要監視基準の0.4 mg kg-1 をこえた(伊達ら,1981)。減水深の大きい礫質灰色低地土では,穂ばらみ期から登熟期の土壌が酸化的であったためと考えられる(伊達ら,1981)。
 
 4)有機物
 土壌中のカドミウムを8つの形態に分画したところ,ピロリン酸ナトリウム(pH 10)で抽出される metal-organic complex-bound の存在形態が最も多く,この形態のカドミウムは生物的可給度との相関が高かった(Krishnamurti, et al.)。すなわち,有機物に吸着された形態のカドミウムが作物に利用されやすいと考えられる。
 
4.カドミウム吸収の抑制
 1)土壌pH上昇
 石灰と熔リンを同時に施用した場合,または熔リンを単独で施用した場合,水稲のカドミウム吸収が落水条件下でも顕著に抑制された(伊藤・飯村,1976)。酸性土壌を用いたコムギの栽培試験において,石灰を施用すると子実中カドミウム濃度が低下した(Bingham et al., 1979)。ケイ酸カルシウムの施用は土壌pHを上昇させ,作物体のケイ酸濃度を高めるとともに蒸散を抑制するため,水稲のカドミウム吸収が抑制されたと考えられる(柳沢ら,1984)。最近では,多孔質ケイ酸カルシウムを施用して土壌pH7以上に調整すると,慣行の水管理でも水稲のカドミウム吸収を抑制することができた(長谷川栄一ら,1995)。
 
 一方,水稲のカドミウム吸収を抑制することを目的として,各種の対策試験が行われたが,ケイ酸カルシウム,炭酸カルシウム,熔リンの施用は期待したほど有効ではなかったと評価された(Chino1981)。湛水した水田には高濃度の可溶性Fe2+が存在するため,期待したほど土壌pHを低下させることができなかったためと考えられる(Chino, 1981)。
 
 2)マンガン施用
 水溶性マンガンを施用した場合,水稲のカドミウム吸収が対照区の約1/100.14 mg kg-1)に抑制された(吉川ら,1979;吉川ら,1986)。X線マイクロアナライザを用いて水稲根を解析した結果,中心柱(維管束)においてカドミウムに対するマンガンの拮抗作用が認められた(吉川ら,1986)。
 
 3)湛水処理
 全期間湛水で栽培した場合には,玄米中カドミウム濃度は異なる土壌間で差異が認められず,土壌中カドミウム濃度の上昇に伴いわずかに増大した(伊藤・飯村,1976)。分けつ期以降落水した場合には,玄米中カドミウム濃度は土壌中カドミウム濃度の上昇に伴い著しく高まり,最高で約5 mg kg-1,常時湛水区の約10倍に達した(伊藤・飯村,1976)。高濃度カドミウム汚染土壌を用いて間断灌漑と常時湛水の2処理を比較した結果,玄米中カドミウム濃度に顕著な差異が認められた(松崎ら,1987)。
 
 4)有機物施用
 最近,予備的な試験ではあるが,腐植酸質資材の施用によってカドミウムの吸収が抑制されたとの報告がある(吉田光二,未発表)。土壌pHの上昇,養分供給の増大,キレート作用などの寄与について検討中である。
 
5.まとめ
 作物のカドミウム吸収を抑制するためには,次のような化学的方法が有効である。
1) 水稲については,湛水期間の延長
2) 多孔質ケイ酸カルシウム,炭酸カルシウム,熔リンの施用
3) マンガンの施用
 しかしながら,化学的方法の抑制効果は圃場の水分条件によって大きく変動する。物理的方法(排土・客土)によって抜本的な土地改良を行うまでの,暫定的な方法と考えるのが妥当である。
 
引用文献
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6.栄養塩類の土壌中における挙動
 
化学環境部栄養塩類研究グループ
土壌物理ユニット研究リーダー
加藤 英孝
 
 農耕地に施用された化学肥料や畜産廃棄物に由来する硝酸塩などの栄養塩類の溶脱による地下水汚染が懸念されている。ここでは,土壌中における栄養塩類の移動メカニズムおよび栄養塩類の挙動に対する土壌物理性の影響を概観し,その予測に土壌物理性の測定値をどう活用できるかについて考えてみたい。
 
1.土壌中の栄養塩類の移動メカニズム
 溶存物質としての栄養塩類は, ( i ) 水による輸送および ( ii ) 液相中の分子拡散の2つのメカニズムによって土壌中を移動する。土壌中の溶存物質の移動を最も単純化して表したモデルはピストン流と呼ばれるものである。このモデルでは,土壌に浸入してくる ( 例えば土層内上方から下方に ) 水は,それに先立って存在した水,すなわち土壌溶液を,完全に置換しながら均一な速度で土壌中を移動する。このとき,土壌への浸入水量を I ( cm ) とすると,非吸着性の溶質の水による輸送距離 xf ( cm )
  xf = I / θ [ 1 ]
 
で与えられる。ここで θ は土壌の体積含水率 ( cm3 cm-3) 。侵入した新しい水が土壌中の古い水を置き換える時,溶液濃度は不連続に階段状に変化する。
 
 明らかに,式 [ 1 ] は現実を過度に単純化した式である。実際には,巨視的には均質に見える土壌中でも間隙水の流速が微視的に不均一であるために,新しい水と古い水の混合が生じ ( 流体力学的分散と呼ばれる ) ,溶液濃度は連続的に変化する。ただしその場合でも,水移動が巨視的には均一であれば,溶質の平均移動距離はやはり式 [ 1 ] により求められる。
 
 土壌中の水移動は巨視的に見た場合でも,つねに均一に生じるとは限らない。亀裂等の粗大孔隙を持つ重粘な土壌では,降雨時には粗大孔隙を通じた不均一な水移動の寄与の大きいことが知られている1) ( いわゆるバイパス流” ) 。不均一な水・溶質移動が生じる土壌では,水みちにあたる間隙が液相全体に占める割合は概して小さい ( たかだか数%程度 ) ので,溶質の移動距離は式 [ 1 ] から予想されるよりもはるかに大きくなり,時として施肥成分の根群域からの急速な溶脱をもたらす。
 
2.栄養塩類の挙動に土壌物理性はどう影響するか
 栄養塩類の挙動に土壌物理性はどう影響するだろうか。ここでは例として硝酸イオンの移動を取り上げよう。硝酸イオンの移動に土壌物理性が影響するのは, ( i ) [ 1 ] に現れる θ ,および ( ii ) 不均一な水移動発生の有無とその程度を通じてである。もし土壌中の水移動が巨視的には均一と見なせるならば,土壌物理性は土壌断面内の水分分布 θ ( z ) を通じてのみ,溶質の移動距離に影響する ( z は深さ ( cm ) ) 。正味の浸入水量 ( 降水量から表面流去水量と蒸発散量を差し引いた値 )  I  のとき,土壌表面に散布された非吸着性溶質の平均下方移動距離 zf ( cm )


 


 

[ 2 ]
 
の関係から求められる。このとき,流体力学的分散に関係するパラメータであるdispersivityの値が知られていれば,水分保持曲線や不飽和透水係数などの土壌の水理学的性質を知ることなく,土壌中の溶質濃度分布を予測することもできる2)。このような場合,正味の浸入水量 I が同じならば,平均体積含水率の小さな土壌ほど溶質の移動距離は大きく,根群域内滞留時間は短い。
 
 不均一な水移動は,粗大孔隙が存在すれば必ず発生するわけではない。毛管力による水分保持の点からすると,粗大孔隙は最も水で満たされにくい孔隙である。降雨時に粗大孔隙を通じた水移動が生じるのは,土壌マトリクスの毛管力による吸水・伝達能力が小さく,土壌表面あるいは粗大孔隙壁面での土壌水の圧力 ( マトリック ) ポテンシャル ψ 0付近にまで上昇してしまうためである。したがって,毛管力による吸水・伝達能力の小さい土壌ほど,弱い雨でも不均一な水移動が発生しやすい。
 
 毛管力による土壌の吸水・伝達能力は,浸入前の水分状態から飽和にいたるまでの土壌の透水係数K( ψ )の大きさに依存する3, 4)。毛管力によって土壌が効率よく吸水するには,土壌マトリクス内部の ψ が負の大きな値を持つ(吸引圧が大きい)だけでは不十分であり,飽和に近づく過程でK( ψ )が十分に大きくならなければならない。逆にK( ψ )が十分に大きくなれば,降雨時の土壌表面あるいは粗大孔隙壁面での ψ の上昇は抑制され,土壌はなかなか飽和に達しない。このような土壌 ( 例えば良好な水分保持・伝達特性を持つ黒ボク土 ) では,すでに多水分状態にあった土壌に降雨強度の大きな雨が浸入する場合を除き,粗大孔隙を通じた水移動は生じがたい。
 
3.栄養塩類の挙動の予測に土壌物理性の測定値はどう活用できるか
 水・溶質移動が比較的均一に生じる土壌で,正味の浸入水量がすでに知られて ( または推定されて ) いる時,非吸着性の溶質 ( 例えば,結晶性鉱物主体の土壌における硝酸イオン ) の平均移動距離を求めるには,土壌の平均体積含水率を知ればよい。これには土壌調査結果をそのまま用いることもできるし,あるいは深さごとに得られた土壌の水分保持曲線と代表的なマトリックポテンシャルの値から推定することもできよう。また,黒ボク土のように硝酸イオン等の陰イオンを吸着し,陰イオン移動速度が水移動速度に比べて小さい土壌でも,圃場条件下で実効的に働く吸着能を何らかの適当な方法により測定すれば,正味の浸入水量と土壌の体積含水率から陰イオンの平均移動距離を推定できる5-7)
 
 現在のところ困難であるのは,粗大孔隙を通じた不均一な水移動が生じる土壌について,その発生頻度や溶質輸送に対する寄与を予測することである。そのためには,降雨時に土層内で不均一流が発生する深さを知り,そこでの圧力ポテンシャルの時間変化を予測する必要がある。ある与えられた気象条件の下での不均一流の発生の有無やその程度に,土壌の水分保持曲線 ψ ( θ )や透水係数K( ψ )のような水理学的性質が影響することは明らかであるが,これらの性質から発生する不均一流の大きさを予測できるにはいたっていない。ただし,負圧浸入計を用い,わずかな負圧 ( 例えば ψ = -315 cm ) をかけて一定の大きさ以上の径を持つ孔隙が水移動に関与できない状態で野外土壌のK( ψ )などの水理学的性質を測定8, 9)すれば,粗大孔隙を通じた水移動の発生しやすさを推測することはできる。すなわち,このようにして測定した土壌マトリクスのK( ψ )が大きい土壌ほど,粗大孔隙を通じた水移動は生じがたいと予想される。
 
 土壌中の溶質の移動速度 ( 平均移動速度および速度分布 ) は,たんにある期間における下方移動距離や地下水到達時間を決めるだけでなく,根群域内滞留時間を通じて作物による吸収率(および根群域下方への溶脱率)にも影響を与えるはずである。粗大孔隙を通じた不均一な水移動が問題とされるのも,まさにそれが栄養塩類の根群域内滞留時間に大きな影響を与えうるからにほかならない。硝酸イオンに限って見ても,その挙動全体に対する土壌の物理的性質の影響を定量的に明らかにし,予測に役立てるには,今後に残された課題も多い。
 
引用文献
1) White, R. E. 1985. The influence of macropores on the transport of dissolved and suspended matter through soil. Adv. Soil Sci., 3, 95-120.
2) Katou, H., and Akiyama, R. 1990. Solute dispersion during unsteady leaching as affected by aggregate size and soil water content. Soil Sci. Plant Nutr., 36, 53-64.
3) Philip, J. R. 1969. Theory of infiltration. Adv. Hydrosci., 5, 215-296.
4) 加藤英孝 1992. 多孔質体としての土壌の機能. 圃場と土壌, 24 (10·11), 30-37.
5) Katou, H., Clothier, B. E., and Green, S. R. 1996. Anion transport involving competitive adsorption during transient water flow in an Andisol. Soil Sci. Soc. Am. J., 60, 1368-1375.
6) 加藤英孝 1999. 黒ボク土中の吸着性イオンの移動. 北海道土壌肥料研究通信 45回シンポジウム, p. 33-40, 北海道土壌肥料懇話会.
7) Katou, H., Uchimura, K., and Clothier, B. E. 2001. An unsaturated transient flow method for determining solute adsorption by variable-charge soils. Soil Sci. Soc. Am. J., 65, 283-290.
8) 加藤英孝 1997. 負圧浸入計法. 土壌環境分析法編集委員会編 土壌環境分析法, p. 69-73, 博友社。
9) 酒寄貴範・長谷川周一・中野明正・加藤英孝・河野英一 1998. 負圧浸入計を用いた畑土壌の不飽和透水係数の測定. 土肥誌, 69, 386-394.
 
 
7.土壌粒子の移動に伴う化学物質の拡散
 
地球環境部食料生産予測チーム長
谷山 一郎
 
1.はじめに
 日本では,傾斜地が多く,多雨であるため,林地や畑での水食による土壌侵食のポテンシャルが高く,林家や農家ではその防止のため多大な労力を払ってきた。しかし,近年の産業構造の変化に伴い,林地の管理が粗放化するとともに,畑の機械化のための大型圃場の造成や農作業機械の走行による次表層の圧密化など,土壌侵食の危険は増加している。
 
 一方,水田では土壌侵食は発生せず,系外への土壌流出量も著しく少ないと考えられてきた。しかし,水利用システムの変化や土壌管理の省力化に伴い,田面水中の土壌細粒画分を中心とする懸濁物質が流出し,水質汚濁や粒子の堆積による水生生物への影響が心配されている。農林地が排出源となる環境負荷物質のうち土壌粒子に吸着されているのは,窒素,リンおよび農薬類であるが,それらに関するデータは少ない。その中でも,比較的実測例があり,吸着態の占める割合の高いリン( 表1 )を中心に,土壌粒子の実態と合わせて報告する。
 
表1  水中の窒素・リン濃度のうち懸濁態(SS)が占める割合 (gifファイル:33KB)
 
 
2.林地からの負荷
 林地からの土壌流出として,土砂崩壊と土壌侵食によるものがあり,ライシメータ試験の結果や河川の懸濁物質(SS)濃度と流量などから流出量が見積もられている。その範囲は1年間に0.110t/haと,降雨量などの気象条件,傾斜などの地形条件,土壌の性質や地質侵食および森林の管理方法によって大きく異なる( 表2 )。流域レベルでの土壌流出量は,山地崩壊の激しい滋賀県南部の山地でも12t/ha,特に山地崩壊の問題がない青森県の山地では0.2t/ha程度である。侵食による土壌流出は,伐採時とその後苗が成長するまでがほとんどであり,育林期間中は少ないが,間伐直後にも流出がある。しかし,適切な間伐をおこなわないと林床植生が少なくなり,侵食量は増える(三浦,1995)。また,土壌粒子の負荷に比べて化学物質の負荷は小さいと見られている。
 
表2  林地における土壌流出量 (gifファイル:8KB)
 
 
3.畑からの負荷
 多くの傾斜ライシメータ試験が行われ,土壌侵食量または負荷物質の発生量について実測や予測が行われている。特に,肥料や堆肥を多投している傾斜畑からの窒素およびリンの流出が懸念されいる。しかし,これらの多くは均一な傾斜斜面において測定された観測値,またはそれに基づいて計算されたものであり,圃場内の不均一な微地形による再堆積までは考えられていない。圃場内に堆積するのは侵食発生量の3060%とのデータがあり,圃場内で発生した土砂量に対する流域の末端まで出ていく土砂量の比率,いわゆる流達率は流域面積が大きくなるほど低下することが知られている(図1)。したがって,圃場で発生する化学物質流出量と湖沼や海域に達する化学物質の量は等価ではない。
 
 茶園や果樹園は一般に急傾斜地に造成され,地形要因から見ると侵食を受ける危険性は高い。しかし,常緑果樹園や茶園は植被に常に覆われており,草生やマルチが雨滴侵食を軽減させている。また,急傾斜地では管理や収穫作業のためテラスが導入され,侵食量は少ないとされる(谷山,1998)。
 
(図省略)
図1 ウィスコンシン州クーン川流域(360km2),カリフォルニ州ローントゥリー川流域
1.74km2)およびソ連オカ川における底質の堆積量の推定(Walling1994
 
4.水田からの負荷
 水田からの土壌粒子流出量について,かんがい排水の流量と懸濁物質(SS)濃度の積から求めた全国の慣行栽培での流入量との収支の測定例では,マイナスから数千kg/haという幅広いデータが得られている(谷山,2000)。このように,測定値に幅があるのは,土壌の性質の違い,代かき時の降雨,水管理,用排水分離の影響などが原因としてあげられる。なお,湛水期間中の土壌流出のうち,代かきと移植時に占める割合が約90%とされ,表面排水が多く暗渠からの排出は少ない。また,水田から流出する活性な粘土や有機物画分が多いSSでは,環境負荷物質の含量が原土よりも高いことが報告されている。実際の水田圃場からの土壌粒子に吸着されたリンの年間排出量は,多く報告が10kg/ha以下( 表3 )であるが,圃場整備による工事などイベントによる大量流出の可能性も指摘されている。
 
表3  文献調査による慣行栽培での水田からのリン流出量 (gifファイル:14KB)
 
 
5.河川・湖沼の水質への影響
 河川・湖沼の底質として堆積した土壌粒子中の化学物質が,どのように分解・脱着して,イオン状で水中に放出されるかが問題となる。一般には,その速度は遅いと考えられているが,逆に,ひとたび汚染されるとその影響は長時間続くことになる。また,水中に再放出されないでも食物連鎖を通じて生物濃縮が問題となる元素や物質もある。特に,重金属や環境ホルモンのように微量であってもその影響が強くでるものについては,吸脱着や合成・分解の実態とそのメカニズムを含めて,流出の実態を明らかにする必要がある。リンでは,土壌を対象に開発された無機態リンの分画法が河川,湖沼および海域の底質に適用され,リンの地球化学的な挙動や底質からのリンの放出に関連して有益な情報が得られている( 表4 表5 )。特に,湖底に堆積した底質では,好気的条件下においても,嫌気的条件下でも,鉄リン濃度の減少が顕著である(細見,1981)。
 
表4  好気的条件下の溶出実験前後における各形態リンの変化
(霞ヶ浦底泥)(細見,1981を改変) (gifファイル:6KB)
 
 
表5  嫌気的条件下の溶出実験前後における各形態リンの変化
(琵琶湖底泥)(細見,1981を改変) (gifファイル:6KB)
 
 
6.リン負荷の危険度評価と対策
 リン負荷の危険度については,日本では土壌侵食同様,傾斜と斜面長の組み合わせから段階評価が示され(井田,1992),アメリカでは侵食の危険度,河川との距離,土壌の可給態リン酸含量およびリン酸肥料の施用量などの要因を総合化した評価が提案されている( 表6 )。対策としては,土壌侵食量,土壌粒子流出量およびリン投入量を低下させることである。しかし,畑地では土壌侵食量を減らすことによって,降雨浸透量を増加させ,NO3-N等の化学物質による地下水汚染を加速する危険があり,慎重な対応が必要と言われている(Sharpley, et al.,1999)。
 
表6  P流出危険度評価表(Sharpley et al. 1999を改変) (gifファイル:15KB)
 
文献
 
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Sharpley, A.N. et al.1999Agricultural phosphorus and eutrophication, USDA, ARS-149, p142
 
 
8.再生有機質資材の畑土壌における受容量の推定手順とマップ化
 
化学環境部栄養塩類研究グループ長
上沢 正志
 
1.研究の目的・意義
 循環型社会形成推進基本法や食品リサイクル法の制定等により,下水汚泥・食品残さ等の有機性廃棄物を肥料化した再生有機質資材の畑地等での利用促進が期待されている。一方,過剰に集積した窒素等栄養塩類の畑地からの流出が生じている。そこで,窒素・リン酸や亜鉛の濃度が比較的高いこれら資材の畑土壌における利用を促進するため,受容量を100メートルメッシュに図示する手順を整理することを目的とした。受容量を図示することにより,都市におけるゴミ問題の緩和や水系を単位とする栄養塩類の管理による水質保全ばかりでなく,持続的な農業生産に必要な亜鉛等微量要素の管理に対して視覚的な理解が深まる。
 
2.研究の内容・成果
 本研究では,畑土壌における再生有機質資材の受容量を,30または100年間の継続施用によっても,土壌の全亜鉛濃度が「農用地における土壌中の重金属等の蓄積防止に係わる管理基準(農用地土壌管理基準[120 Zn mg/kg乾土])」以下に維持され(既に,この基準を越えている土壌では一般に「不適地」として投入しない),かつ,窒素ならびにリン酸の過剰な土壌蓄積や水系等への負荷を防止する施用量と定義し,この量の推定とマップ化する手順を以下のよう定めた。
 
 1)受容量推定の前提:以下の2点を前提とした。
(1)下水汚泥肥料を再生有機質資材のモデルとして想定し,資材に含まれる成分濃度は,「全国下水汚泥製品調査」の結果に基づいた。すなわち,亜鉛濃度:民間推奨基準の上限1800 Zn mg/kg,窒素濃度(水質環境基準,閉鎖性水域における総量規制に係わる):2.4%,リン酸濃度(閉鎖性水域における総量規制,湖沼の富栄養化に係わる):3.4%。(2)土壌からの重金属溶出に顕著な影響を及ぼす土壌pH(H2 O)を,土壌診断により適切な範囲(通常6.06.5)に維持する。
 
 2)マップ化の対象:栃木県壬生図幅とした。この地域の主要な作付体系はカンピョウ+葉菜で,この作付け体系に準拠して下水汚泥肥料の施用は年2回とした。
 
 3)推定手順とその概要
 手順1:全国農耕地土壌図データベース(メッシュ型)から対象地域を切り出し,土壌統を単位として必要なデータセット(以下の斜体)をピックアップ・算出する。
 手順2土性が礫または砂質で陽イオン交換容量(CEC)の小さいメッシュ(一般的にCEC:5me/100g乾土以下)および傾斜地(一般的に傾斜8度以上)では,成分の下方移動が早いため「要注意」メッシュとして,下水汚泥肥料の投入容量を表示しない。
 手順3:下水汚泥肥料由来亜鉛濃度の指数関数減少モデル(川崎 晃等)における「速度定数」を用いて,各土壌類型の亜鉛濃度が30または100年後に農耕地土壌管理基準に到達する下水汚泥肥料の施用量を受容量として算出する。必要なデータセットとして,(1)速度定数:0.03(2)対象とする土層:30cmに設定し,(3)初期値としてメッシュごとの土壌亜鉛濃度ならびに土壌重量(/ha)。なお,このモデルの活用により,管理基準に到達する施用年数は任意に設定できる。
 手順4:「資材による年間窒素投入量」−「作物による窒素吸収量」による資材受容量の検討。下水汚泥肥料由来窒素量(最大168kg/ha)が,カンピョウ+コマツナによる窒素吸収量(150+83=233kg/ha)に比べて小さく,受容量に問題の無いことを確認。化学肥料等を含めた窒素収支は,0.1*年間浸透水量(mm表示)kg/ha以下が望ましい。
 手順5:「資材による年間リン酸投入量」−「作物によるリン酸吸収量」による資材受容量の検討。リン酸の年間収支が,最大16.7kg/haと施肥量と同等の水準で,かつ10年間における蓄積リン酸量は土壌のリン酸吸収可能量(土壌のリン酸吸収係数から算出)の5%未満であり,定期的な土壌診断を前提として,受容量に問題の無いことを確認。蓄積リン酸量はリン酸吸収可能量の10%以下が望ましい。
 手順6:手順3〜5により,下水汚泥肥料の亜鉛・窒素・リン酸濃度に基づく資材の受容量を推定。
 手順7:受容量を階層化して,マッピングする( 図参照 100年間の施用を想定)。
 
3.考察
 「土壌インベントリー」,「土壌化学」および「環境管理・情報」の研究領域を異にする研究者の共同によりなされた研究であり,今後更に流域ごとに展開することにより,緊急に解決を要する都市ゴミ問題の緩和等,都市を含む流域全体における有機性資源管理のあり方の提言等につながる研究成果である。
 
 100年間の施用を想定した推奨基準案はほかに無く,長期的な推定値が初めて得られた。30年間を想定した他の推奨基準案と比較すると,今回の推定値は土壌類型を反映したより詳細な受容量情報の提供となっている。なお,土壌環境基準等で定められている成分が資材に含まれている際には,当該成分に基づいた検討手順を加える必要がある。
 
 指数関数減少速度に関しては,データが少ない。今後の土壌類型ごとのデータを集積する必要がある。受容量はあくまで推定値であり,再生有機物資材の連続的利用には,定期的な土壌診断による土壌亜鉛や可給態リン酸の増加傾向を確認することが必要である。
 
 

外来昆虫種の侵入によって
植物群落に必要な相利共生関係がこわされる

 
Consequences of a biological invasion reveal the importance of mutualism
for plant communities, C.E. Christian, Nature 413, 635-639 (2001)
 
 農業環境技術研究所は,農業生態系における生物群集の構造と機能を明らかにして生態系機能を十分に発揮させるとともに,侵入・導入生物の生態系への影響を解明することによって,生態系のかく乱防止,生物多様性の保全など生物環境の安全を図っていくことを重要な目的の一つとしている。このため,農業生態系における生物環境の安全に関係する最新の文献情報を収集しているが,その一部を紹介する。
 
要 約
 南アフリカへの外来生物(アルゼンチンアリ)の侵入によって,フィンボス(南アフリカ特有の低木林)を構成する植物とその種子分散に関与する在来種のアリとの相利共生関係がこわされ,植物群落の再生に影響が出ている。
 
 アルゼンチンアリが侵入すると多くのアリの在来種が排除される。フィンボスを構成する植物種の30%は,種子の分散をアリに頼っているが,アルゼンチンアリは種子の分散を行わない。これらの植物には大型種子を作る種類と小型種子を作る種類がある。在来のアリは大型種子と小型種子の両方を巣に運ぶものと小型種子だけを運ぶものに分けられるが,アルゼンチンアリが侵入すると,特に大型種子を運ぶ2種の有力なアリが排除される。その結果,大型種子の分散が阻害され,ネズミなどによって食べられてしまうことが多くなる。このため大型種子を作る植物は小型種子を作る植物よりも侵入地域で減少しやすい。また,火災の後は,種子分散を受けない大型種子の発芽密度が激減する。
 
 これらの結果は,種子の分散に限らず生物間の相利共生関係を早急に保護する必要があることを示している。
 
 
 なお,アルゼンチンアリは,日本の中国地方の一部にもすでに侵入,定着している。このアリが,在来種のアリとアブラムシ,シジミチョウとの相利共生関係をこわしたり,さらに農業生態系や自然生態系にまで影響したりするのかどうかは不明であるが,十分に監視する必要があろう。
 
 

本の紹介 64:有機物の有効利用 Q&A
鹿児島県農業試験場
 (2001) 562円 ISBN4-06-263612-3
 
 
 「環境」を健全に維持・持続するということは,百年単位の計画を構想し,それを実施する革命といえる。なぜなら,10ppmを超えつつある地下水の硝酸性窒素を1ppmに低下させることや,現在の二酸化炭素380ppmを,産業革命前の280ppmにもどすには百年以上の歳月がかかる。したがって,未来は楽観視できない。
 
 しかし,人類は,環境問題への対策に決定的な変化をもたらすきっかけをつかみ始めた気配が感じられる。例えば,カーソンの「沈黙の春」が,今日の環境運動のきっかけを与えて40年が経った。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第1回の報告書(Climate Change)の原案が,ハーバード大学で練られてからすでに12年が経過した。歳月が必要なのである。他方,巨大企業グループがISO140019000を競って取り始めた。さらに,政府が企業が学者が,そしてこれらに直接は関係しない多くの市民がこぞって「環境」の問題に取り組み始めた。これらの現象が,その気配である。
 
 わが国における環境保全型農業の推進政策は,1992年の「新しい食料・農業・農村政策の方向」に始まり,1999年に成立した「食料・農業・農村基本法」の中に定立された。その後,これらを受けて農業環境三法(持続農業法・肥料取締法・家畜排泄物法)など関連の法律が制定された。このような背景の中で,「全国環境保全型農業推進会議(会長:熊澤喜久雄東大名誉教授)」が設立された。ここでは,平成7年から毎年「環境保全型農業推進コンクール」の表彰者が決定され,環境保全型農業の優秀な実践者が紹介されている。
 
 このように,環境を保全しながら農業の持続的発展を図っていくことが今後のわが国の農政の重要課題の一つに位置付けられている。そのための法整備や新たな農業生産方式等の開発と普及,さらには,これらが定着するための諸施策が講じられている。環境保全型農業を達成するための新技術は,緊急に取り組まなければならない。しかし新技術を現場で普及させ,これを定着させるためには,まだまだ解決すべき課題がたくさん残されている。この問題は,官民あげて長期的視点から着実に取り組む必要がある。
 
 このような気配は,県の試験場の教育・普及の場にも定着し始めた。本書は,鹿児島県農業試験場の主として農業環境担当者(上村幸廣氏)が中心になって書かれたものである。表題は「有機物の有効利用」であるが,内容は,質問と回答の形式で書かれた農業環境保全のガイドブックである。
 
 冒頭で,環境問題の解決のための変化が感じられると書いた。本書は,環境保全型農業のゆくえについてまさにその気配を感じさせてくれる一冊である。目次は以下の通りである。
 
目 次
● 環境保全型農業,持続性の高い農業生産
  1.環境保全型農業の基本的な考え方とは
  2.環境保全型農業への進め方とは
  3.有機物の肥料的な価値と連用の効果
● 鹿児島県の土壌の概要
  4.本県の土壌の地質について
  5.本県の土壌の概要と特徴
  6.本県の火山灰土壌とは
  7.シラス土壌の特徴
  8.礫土の特徴
  9.黒ボク土壌の特徴
 10.黒ニガ土壌の特徴
 11.アカホヤ土壌の特徴
● 鹿児島県における家畜ふん生産の現状
 12.本県における家畜の飼養状況は
 13.牛ふん,豚ぷん,鶏ふんの生産量はどれくらいなのか
 14.家畜ふん堆肥を広域流通させるためには,どうすれば良いのか
● 飼料の現状
 15.日本における牛,豚,鶏の飼料給餌量はどのくらいなのか
 16.輸入飼料に伴う年間の窒素輸入量は
 17.輸入食料,輸入飼料の行く末はどうあるべきか
● 近年の消費者動向
 18.何故,人は有機農産物を好むのか
 19.野菜は無農薬,有機が好まれ,肉類,魚介類はほとんどが有機でないのに何故,消費者からの攻撃を受けないのか
● 窒素(タンパク)の収支
 20.世界の人口と食料事情の関係は
 21.自給率向上の重要性が叫ばれているが
 22.食料生産と環境負荷の関係は
 23.カロリー源としての米の重要性は誰も口にしない
 24.自然界での窒素循環はどうなっているのか,どうなるべきなのか
● 近年の農業上の基準
 25.土壌診断基準とは
 26.土壌の重金属基準とは
 27.水道の水質基準とは
 28.農業用水の基準とは
 29.排水基準とは
 30.JAS法はどのようなものなのか
 31.食糧,農業,農村基本法とは
 32.環境三法とはどのようなものなのか
● 農業系での環境浄化
 33.自然界でのδ15N値の利用について
 34.微生物資材及び微生物制御には問題点はないのか
 35.窒素固定菌について
 36.VA菌根菌とは
 37.肥効調節型肥料とは
 38.畑での環境浄化能はどういう機構なのか
 39.水田の重要性と環境浄化能とは
 40.今までの土壌汚染をどのように修復するのか
 41.今までの水質汚染をどのように修復するのか
 42.大気圏内での養分収支について
 43.日本とその他の国の環境負荷の違い,認識の隔たりがあるのか
 44.家畜ふん堆肥を施用したときの養分の漏れは
 45.水の窒素浄化のために空気中に窒素を揮散させても良いものか
 46.何故,単位面積当たりの肥料消費量は多いのに,日本は諸外国に比べて土壌汚染,水質汚染が進んでいないのか
● 有機質肥料と化学肥料
 47.化学肥料とはどのようなものなのか
 48.有機質肥料とはどのようなものなのか
 49.化学肥料と有機物の違いは
 50.有機物と化学肥料の作物からみた長所,短所は
 51.有機物の土壌からみた長所,短所はどんなところにあるのか
 52.土壌改良資材について
 53.家畜には高濃度飼料を給餌し,何故,人だけが有機農産物なのか
 54.人の食料としての家畜に有機農産物を給餌したら,何故だめなのか
● 家畜ふん堆肥の堆肥化技術
 55.県内における堆肥化施設の実態はどのようになっているのか
 56.何故,家畜ふんは堆肥化しなければいけないのか(病原菌,種子は堆肥化で死ぬのか)
 57.家畜ふん尿はどのようにして堆積すれば良いのか(切り返し,かん水のタイミングは)
 58.副資材としてのおがくず,バーク,チップ,稲わらの特性は
 59.家畜ふん堆肥はどうして品質が異なるのか
 60.家畜ふん尿の堆肥化はどこまですれば良いのか,良質堆肥の目安は
 61.堆肥化に際して,家畜ふんは混合してから,堆肥化するのが良いのか,別々に堆肥化した方が良いのか
 62.家畜ふん堆肥の成型化とはどのようなものなのか
 63.家畜ふん堆肥の肥効発現コントロールとは
 64.家畜ふん尿だけで良質堆肥はできるのか。何故,堆肥の無機化は材料によって異なるのか(分解は何で決まるの)
 65.微生物の働きで堆肥化中に窒素,その他の養分,重金属はどのような動態をしているのか
 66.何故,未熟な堆肥はだめなのか
 67.さとうきびバガス堆肥はどうして作ればよいのか
● 諸有機物の性質
 68.家畜ふん堆肥を施用すれば,どのような効果があるのか
 69.牛ふん堆肥の性質は
 70.鶏ふん堆肥の性質は
 71.豚ぷん堆肥の性質は
 72.家畜ふん堆肥以外の有機物はどのようなものがあるのか
 73.でん粉粕の性質とは
 74.焼酎廃液の性質とは
 75.下水汚泥堆肥の性質とは
 76.バーク堆肥の性質とは
 77.油粕類の性質とは
 78.魚粕類の性質とは
 79.ぼかし肥料とは
 80.都市生ゴミの取り扱いはどうすれば良いのか
 81.成分調整堆肥の考え方とは
 82.緑肥栽培の意義と性質とは
 83.家畜ふん堆肥の成分はどう違うのか
 84.堆肥中の重金属含量について
● 有機物が土壌施用されてから
 85.作物の必須養分とは
 86.有機物が作物に吸収されるまでの土壌中での動向
 87.作物が吸収する養分形態は有機栽培と無機物栽培と異なるのか
● 家畜ふん堆肥施用の意義
 88.堆肥はいつ施用すれば良いのか,毎年施用したほうが良いのか
 89.作物生産上の家畜ふん堆肥の意義は
 90.堆肥施用の目的は養分補給なのか物理性改善なのか
 91.物理性改善のための堆肥とは
 92.肥料養分を主目的とした堆肥とは
 93.堆肥の持続効果はどれくらい
 94.作物に対する家畜ふん堆肥のパワーはどの程度あるのか
 95.輪作体系における家畜ふん堆肥の施用技術とは
 96.家畜ふん堆肥施用に伴う環境汚染は
 97.家畜ふん堆肥は微生物資材に他ならない
 98.有機物の投入量はどれくらいがいいの
 99.堆肥の局所施肥はどういうことなのか
100.我が国における有機物と化学肥料の施用割合はどのようにすれば良いのか
101.家畜ふん堆肥を施用するときはどのようにすれば良いのか
102.家畜ふん堆肥の分解に遅速があるのは何故だろう
103.家畜ふん堆肥を有効に作物に利用させるための環境制御とは
104.家畜ふん堆肥主体で栽培可能な農作物とは
105.有機栽培下の農作物の内容成分はどうなっているのか
106.キャベツを鶏ふん堆肥主体で栽培したいのだが,どうすれば良いのか
107.甘しょを牛ふん堆肥主体で栽培したいのだが,どうすれば良いのか
108.アイガモを水田に入れたいのだが
109.水田での家畜ふん堆肥の効きは何故,低いのか
110.施設栽培に家畜ふん堆肥を施用するときの留意点とは
111.花き栽培に家畜ふん堆肥を使いたいのだが,どうすれば良いのか
112.有機主体で栽培した場合の土壌への影響は
113.土壌の違いによる有機物の分解スピードはどのように異なるのか
114.作物栽培で土壌,有機物は本当に必要なのか
115.エネルギー効率を考えた未来型食生活へのシフト
116.家畜ふん堆肥をブレンドする重要性,意義とは
117.有機農産物,特別栽培農産物をにらんだ有機物と化学肥料のブレンドとは,どのようなことなのか
118.環境負荷低減,地下水汚染軽減を念頭においた新しい施肥法とは
119.下水汚泥堆肥の作物への効果は
120.でん粉粕・鶏ふん堆肥の作物への効果は
121.焼酎廃液の作物への効果はどの程度なのか
122.物質循環社会へシフトしよう
 
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