前号へ 総目次 総索引 検索 研究所 次号へ (since 2000.05.01)

情報:農業と環境
No.22 2002.2.1

 
No.22

・平成13年度気象環境研究会
   −農業生態系における大気質拡散の評価−

・第6回衛星データの農業実利用研究会
   −農業分野における衛星データの流通と利用−

・「熱帯地域の土地利用変化と温室効果ガス,土壌炭素と
   栄養分のサイクル」に関する国際ワークショップ

・平成13年度農業環境研究推進会議の開催

・平成13年度農業環境技術研究所評議会が開催された

・農業環境技術研究所と農村振興局資源課農村環境保全室
   との連絡会が開催された

・京都議定書の2002年発効の体制

・エアロゾル,気候および水循環

・自然環境下における遺伝子組換え作物のモニタリング

・本の紹介 68:水俣病の科学,西村 肇・岡本達明著,
   日本評論社 (2001)

・本の紹介 69:共生の思想−自他の衝突と協調−,藤原鎮男著,
   丸善ライブラリー (2000)

・本の紹介 70:熱帯土壌学,久馬一剛編,
   名古屋大学出版会 (2001)

・資料:世界と日本における食料安全保障の現状と課題 (2002)


 

平成13年度気象環境研究会
−農業生態系における大気質拡散の評価−

 
 
趣 旨
 農業生態系は大気を浄化する機能があることが知られているが,一方ではいくつかの大気汚染質の放出源となっている。たとえば,植物から放出された空中花粉が原因となる花粉症が世界各地で問題となっている。また,乾燥地域から発生する砂塵ダストは,植物を枯らしたり裸地化を促進するばかりでなく,大気エアロゾルとして地球規模の熱収支にも影響すると考えられている。さらに,農耕地における作物残渣の燃焼により発生する様々なガスや煙は,地域並びに地球規模での大気環境にも影響を与えている。これらの問題に対処するためには,このような大気質の拡散過程を解明し,予測する手法の開発が必要となる。

 本研究会では,大気質が放出され拡散していく過程に関する最新の知見について,農業気象学的な視点から連携した議論を図る。
 
主  催 独立行政法人農業環境技術研究所
開催日時 平成14年3月5日(火)10:00−17:00
開催場所 農業環境技術研究所 大会議室
 
プログラム
1.あいさつ 10:00〜10:10

 
陽  捷行 独立行政法人 農業環境技術研究所
 
2.大気質拡散過程の研究課題 10:10〜10:40

 
川島 茂人 独立行政法人 農業環境技術研究所
 
3.作物残渣燃焼による大気質の動態 10:40〜11:20

 
米村正一郎 独立行政法人 農業環境技術研究所
 
4.ダストの放出・拡散過程の解明 11:20〜12:00

 
杜  明遠 独立行政法人 農業環境技術研究所
 
(昼食)  
5.空中花粉の多様な拡散動態 13:00〜13:40
  佐橋 紀男 東邦大学薬学部  
6.アレルゲンの拡散動態 13:40〜14:20
  高橋 裕一 山形県衛生研究所  
7.微粒子状大気質の自動測定法 14:20〜15:00
  藤田 敏男 大和製作所  
8.ガスの広域的拡散シミュレーション 15:10〜15:50

 
田口 彰一 独立行政法人 産業技術総合研究所
 
9.粒子状物質の広域的拡散シミュレーション 15:50〜16:30
  神田  学 東京工業大学  
10.総合討論 16:30〜17:00
   大気質拡散問題の解決に向けた新しい評価法の活用  
 
参集範囲 国公立・独立行政法人試験研究機関,大学,行政部局,関係団体等
連 絡 先 独立行政法人 農業環境技術研究所 地球環境部 気象研究グループ
     大気保全ユニット 川島茂人
    〒305-8604  つくば市観音台3-1-3
    TEL:0298-38-8206,FAX:0298-38-8199
    (E-mail : sig@niaes.affrc.go.jp)
 
 

第6回衛星データの農業実利用研究会
−農業分野における衛星データの流通と利用−

 
 
趣 旨
 21世紀を迎えて,人類は,地球温暖化や異常気象に代表される地球環境問題,人口増加と経済成長に伴う食糧不足,頻発する自然災害という解決すべき問題を抱えている。この状況を客観的に把握し,対応方針を導く技術として,衛星リモートセンシング技術が注目されている。

 今回は,農業分野での衛星データの利用推進を目的として,衛星データの特性と流通,ネットワーク環境の利用,応用分野での利用例についての成果発表と討議を行う。
 
主  催 衛星リモートセンシング推進委員会農業ワーキンググループ
協  賛 農林水産研究計算センター,農業環境技術研究所
開催日時 平成14年2月26日(火)10:30−17:00
開催場所 農業環境技術研究所 大会議室
 
プログラム
開会あいさつ 10:30〜10:45
  林 陽生  農業環境技術研究所  
  森山 隆  宇宙開発事業団  

第1部 衛星データの流通

 
 ALOS・ADEOS-II計画 10:45〜11:10
  小野 敦  宇宙開発事業団  
 LANDSAT・SPOT・RADARSAT 11:10〜11:30

 
伊藤恭一  リモートセンシング技術センター
 
 TERRA/ASTER 11:30〜11:50
  加藤胤一  資源・環境観測解析センター  
 IKONOS 11:50〜12:10
  李 雲慶  日本スペースイメージング  
 QuickBird 12:10〜12:30
  小平高敏  日立ソフト  
(昼食)  

第2部 ネットワーク関連

 
 SIDaB・つくばWAN 13:30〜14:00
  名越 誠  農林水産研究計算センター  
  江口 尚  農林水産研究計算センター  
 防災関連利用データベース 14:00〜14:20
  佐藤 功  産業技術総合研究所  

第3部 応用利用事例

 
 北海道での事例−おいしい米・小麦の高収量− 14:20〜14:50
  志賀弘行  北海道立北見農業試験場  
  安積大治  北海道立中央農業試験場  
 広島での事例−荒廃農地の把握− 14:50〜15:10
  谷本俊明  広島県立農業技術センター  
 水田面積調査 15:20〜15:40
  石塚直樹  農業環境技術研究所  
 農業災害モニタリング 15:40〜16:00

 
宋 献方  科学技術振興事業団
        (現ビジョンテック)

 

第4部 総合討論
16:00〜17:00
 
 (パネリスト) 安田嘉純  東京情報大学  
  本郷千春  千葉大学  
  関矢信一郎 ホクレン農業協同組合連合会  
  塩川正則  長野県営農技術センター  
  高野 充  日本農村情報システム協会  
  岡本勝男  農業環境技術研究所  
  岩濱好則  農林水産省大臣官房統計情報部  
閉会あいさつ  
  斎藤元也  農業環境技術研究所  
 
事 務 局 リモートセンシング技術センター 利用推進部 促進課 齋藤健一
    〒106-0032 東京都港区六本木1-9-9 六本木ファーストビル12階
    TEL:03-5561-4549,FAX:03-5574-8515
    E-mail:ksaito@restec.or.jp
    独立行政法人 農業環境技術研究所 地球環境部
     生態システム研究グループ 斎藤元也
    〒305-8604  つくば市観音台3-1-3
    TEL:0298-38-8221,FAX:0298-38-8199
    E-mail : genya@niaes.affrc.go.jp
 
 

「熱帯地域の土地利用変化と温室効果ガス,土壌炭素と
栄養分のサイクル」に関する国際ワークショップ

 
 
趣 旨
 1997年の京都における気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3),および2001年のCOP7会議で,二酸化炭素,メタン,亜酸化窒素などの温室効果ガス発生量を削減することが提唱された。また,気候変動に関する政府間パネル(IPCC)では,熱帯地域の土地利用変化が温室効果ガスの発生量に与える影響の重要性を指摘している。

この背景により,環境省地球環境研究総合推進費プロジェクト「熱帯アジアの陸域生態系における土地利用変化が温室効果ガスの発生に及ぼす影響の評価に関する研究」が,農業環境技術研究所を中心に実施され,日本及びインドネシアの研究者による多くの共同研究成果が生み出された。

本国際ワークショップは,この共同研究成果をアフリカおよび中南アメリカ熱帯地域での研究成果と相互に共有し,今後の研究および施策に役立てることを目的に,関係する研究者が一同に会して発表・討論をする。
 
開 催 日 2002年2月19日(火)〜2月21日(木)
開催場所 文部科学省研究交流センター
    〒305-0032 茨城県つくば市竹園2-20-5
    TEL:0298-51-1331,FAX:0298-56-0464
共  催 (独)農業環境技術研究所・環境省地球環境局研究調査室
参集範囲

 


 
土地利用変化と温室効果ガスの発生に関する研究に関係する国公立および独立行政法人の試験研究機関,行政機関,大学,民間団体など
申し込み・ 〒305-8604 つくば市観音台3-1-3
問い合わせ先
 

 
(独)農業環境技術研究所 地球環境部
    温室効果ガスチーム 鶴田治雄
    TEL:0298-38-8234,FAX:0298-38-8199
    E-mail : tsuruta@niaes.affrc.go.jp
 
第1日  
 開会挨拶 (独)農業環境技術研究所 理事長 陽 捷行
 基調講演  
 熱帯域GHG研究の概括            Arvin Mosier: USDA/ARS, Colorado, USA
 土地利用変化と森林に関するIPCC活動の紹介             IGES (予定)
 セッション1:各熱帯地域での土地利用変化と温室効果ガス研究成果
 中南アメリカ: Michael Keller: University of New Hampshire, USA
  Christopher Neill: The Ecosystem Center, USA
  Free de Koning: University of Gottingen, Germany
 アフリカ Patrick Mutuo:

 
International Center for Research in Agroforestry,Keniya
 熱帯アジア Daniel Murdiyarso:
  Bogor Agricultural University, Indonesia
 北海道大学とインドネシアとの拠点プロジェクトの紹介:  大崎 満教授(北海道大学)
  岩熊 敏夫教授(北海道大学)
 環境省熱帯アジアプロジェクトの成果概要    鶴田治雄:(独)農業環境技術研究所

第2日

 
 セッション2:土地利用変化とGHG及び土壌の現地測定
 湿潤熱帯林 石塚成宏:(独)森林総合研究所

 
Iswandi Anas : Bogor Agricultural University, Indonesia
  中島泰弘:(独)農業環境技術研究所
  上田真吾:日本大学
  米村正一郎:(独)農業環境技術研究所
 泥炭湿地 原口 昭:ブランデルブルグ大学
  犬伏和之:千葉大学
  Abdul Hadi: Lambung Mangkurat University, Indonesia
  Mochamad Ali: Jambi University, Indonesia

 
Muljady Mario: Bogor Agricultural University, Indonesia
 炭素収支 蒲生 稔:産業技術総合研究所
Ina Guillermo:Center for International Forestry Research (CIFOR),Indonesia
  藤間 剛:森林総合研究所,CIFOR
  林 正康:東京情報大学
 リモセン解析 斎藤元也:(独)農業環境技術研究所
Lilik B. Prasetyo:Bogor Agricultural University, Indonesia
 バイオマス燃焼 須藤重人:(独)農業環境技術研究所
  H. Saharjo: Bogor Agricultural University, Indonesia

第3日
 パネル討論:今後の研究方向
  和田英太郎教授:京都大学(予定)・
  大崎 満教授:北海道大学 (予定)・
  犬伏 和之教授:千葉大学・
  Arvin Mosier・Michael Keller・
  Christopher Neill・Free de Koning・
  Daniel Murdiyarso・Patrick Mutuo
閉会の挨拶 環境省地球環境局研究調査室 担当官(未定)
 
 

平成13年度農業環境研究推進会議の開催
 
 
推進会議の趣旨
 農業環境研究推進会議運営要領に基づき,農林水産省関係行政部局と関係研究機関等からの要望等を受け,農業環境研究に関する意見交換を行い,研究の推進を図る

 本推進会議は,本会議,研究推進部会,評価部会で構成する。
 
1.本会議
日 時
 
平成14年2月28日(木) 10時〜12時
 
場 所
 
農業環境技術研究所 大会議室
 
趣 旨
 


 
関係行政部局及び関係試験研究機関から提出された研究問題について農業環境研究推進の観点から検討し,今後取り組むべき研究課題を明確にする。
議 題
 
1)平成13年度研究推進状況の総括
 
    2)平成13年度評議会報告
    3)平成13年度に実施した研究会・シンポジウムの概要報告
    4)独立行政法人移行後の研究体制と研究方向について
    5)調査研究をめぐる情勢と行政部局から調査研究への要望
    6)平成14年度開催の研究会・シンポジウム等について
    7)その他
参集者
 
行政部局および研究機関等の関係者
 

 

 
農業環境技術研究所の理事長,理事,企画調整部長,総務部長,研究部長,センター長,グループ長,チーム長,研究企画科長等
 
2.推進部会
日 時
 
平成14年2月28日(木) 13時〜17時
 
場 所
 
農業環境技術研究所 大会議室
 
趣 旨










 












 
21世紀は環境の時代といわれるが,WTOに代表されるグローバル化は農林水産業と環境の関係をあやうくしかねない。WTOにおける議論が推し進められた場合,輸入国の農林水産業は縮小を余儀なくされる。こうした状況に対応するため,国内の各地域では生き残りをかけた農業生産戦略(政策)をたてている。しかし,グローバル化による農業環境の急激な変化は,自然循環機能の消失等,地域農業に大きな影響をおよぼしており,その結果としてさまざまな環境問題が生じている。
 本部会では,まず当研究所からグローバル化とそれに伴う環境問題を総括的に示し地域農業研究センターと関係公立場所からグローバル化の中で各地域が取ろうとしている農業戦略と予想される環境問題を提示してもらう。さらに,その問題の解決に向けて当研究所がどう支援・協力できるかを議論し,農業環境技術研究所と地域との連携・協力につながる方策を探る。
議 題
 
「グローバル化が地域農業に及ぼす影響と環境問題」
 
    1)理事長あいさつ
    2)グローバル化と環境問題
     清野 豁(農業環境技術研究所 企画調整部長)
    3)地域におけるグローバル化への対応と環境問題

 

 
 高橋賢司(農業技術研究機構 北海道農業研究センター 生産環境部長)
     武田眞一(岩手県農業研究センター 生産環境部長)
     渡辺和彦(兵庫県立中央農業技術センター 農業試験場 環境部長)

 

 
 假屋尭由(農業技術研究機構 九州沖縄農業研究センター
        畜産飼料作研究部長)
     太田 充(静岡県農林水産部 研究調査室主幹)
    4)連携・協力のあり方
参集者
 
行政部局および研究機関等の関係者
 

 

 
農業環境技術研究所の理事長,理事,企画調整部長,総務部長,研究部長,センター長,グループ長,チーム長,研究企画科長等
 
3.成果情報部会
趣 旨
 


 
主要成果検討会で選考された主要成果を提示し,行政部局,他研究機関等の意見を聞く。
 
日 時
 
平成14年3月1日(金) 9時〜12時
 
場 所
 
農業環境技術研究所 大会議室
 
議 題
 
1)平成13年度主要研究成果の評価・採択
 
    2)その他
参集者
 
行政部局および研究機関等の関係者
 

 

 
農業環境技術研究所の理事長,理事,企画調整部長,総務部長,研究部長,センター長,グループ長,チーム長,研究企画科長等
 
 

平成13年度農業環境技術研究所評議会が開催された
 
 
 平成13年度の農業環境技術研究所評議会が開催された。趣旨,日時,場所,議事次第,出席者等は以下の通りである。
 
趣  旨


 



 
独立行政法人農業環境技術研究所における研究の基本方向,運営および研究成果の評価について,学識経験者および農林水産省関係者等の意見を反映することにより,研究所の円滑な運営及び研究の効率化を図ることを目的とする。
 
日  時 平成13年11月16日(金) 10時30分〜17時00分
場  所 農業環境技術研究所 大会議室
議事次第  
1. 出席者の紹介
2. 理事長あいさつ
3. 平成12年度農業環境技術研究所の主な活動の総括
4. 農業環境技術研究所の研究概要
   1)独立行政法人化とその後の取り組み
   2)研究部・センターの研究概要
5. 所内見学
6. 意見交換
 
出 席 者
[評 議 員]
  秋元  肇 地球フロンティア研究システム大気組成変動予測研究領域長
    (所用により欠席)
  中村 雅美 日本経済新聞社科学技術部編集委員
  木村 眞人 名古屋大学大学院生命農学研究科 教授
  小川 吉雄 茨城県農業総合センター首席専門技術員
  藤田 和芳 大地を守る会代表
  浜田 康敬 独立行政法人国立環境研究所理事
    (合志陽一 同理事長が所用により欠席のため代理出席)
  三輪睿太郎 独立行政法人農業技術研究機構理事長
  廣居 忠量 独立行政法人森林総合研究所理事長
  福所 邦彦 独立行政法人水産総合研究センター瀬戸内海区水産研究所所長
  西郷 正道 農林水産省大臣官房企画評価課環境対策室長
 
[オブザーバー]
  宮下 清貴 農林水産省農林水産技術会議事務局研究開発課長
 
[農業環境技術研究所]
  陽  捷行 理事長
  三田村 強 理事
  杉原  進 監事
  清野  豁 企画調整部長
  福嶋 勝之 総務部長
  河部  暹 生物環境安全部長
  濱  弘司 化学環境部長
  浜崎 忠雄 農業環境インベントリーセンター長
  石井 康雄 環境化学分析センター長
  (ほかに各研究グループ長,課(科)長など 計24名)
 
 以下に,開会あいさつ(農業環境技術研究所理事長),独立行政法人化とその後の取組み(同企画調整部長)を要約した。
 
 なお,議事の最後の意見交換では,各研究問題での研究推進方向,他研究機関との連携,国民との情報交流,行政への基礎データ提供,機関評価の方法,研究所のクライアントなどについて,さまざまな議論,意見があった。これについては,整理したうえで別に報告する予定である。
 
1.理事長あいさつ
 
評議会の目的
 これまで,この会議の趣旨に添った会議を「運営委員会」と称し,毎年7月ころに開催していたが,これにかわる会議として,法人として新たに「評議会」を置いた。評議員に研究所の運営に関するご意見をいただき,同時に研究所に対する評価をしていただきたい。ただし,法人はこの4月に発足したばかりなので,本格的な評価は来年夏に予定している次回の評議会でお願いする。
 
自主的な活動
 独立行政法人として,公共性と自主性と透明性が重要だと考えている。企画調整部長からも報告するが,自主性について3点だけお話しする。
 
 1点目は,農業技術研究機構の理事長の協力を得て,全国各地域の研究所と意見交換をしている。新しい農業環境技術研究所が何をやろうとしているのか,地域の農業研究センターや試験場ではどのような農業環境にかかわる研究があるのか,また農業環境技術研究所とどのような研究協力ができ,それをプロジェクト化できるかなど,各地域の試験研究機関と情報・意見を交換している。来年度は,民間や私立大学の環境関連の研究所等とも意見交換をして,これらの機関と協力できる面を探したい。
 
 2点目として,森林総合研究所,水産研究総合センター瀬戸内海区水産研究所と当研究所とで,環境研究にかかわる農・林・水の3研究所の連絡会を作った。これは環境研究を林業・水産業・農業の研究所間で協力しながら推進することを目的としており,すでにダイオキシン類に関する研究会などを共催している。また,環境関係の9研究所の連絡会ができた。防災科学技術研究所,産業技術総合研究所,国土交通省の気象研究所,国土技術研究所,土木研究所,国立環境研究所,森林総合研究所,水産総合研究センター,および農業環境技術研究所の9所の第1回の連絡会が開催された。今後この連絡会が,全国あるいは国外を含めた環境研究のかなめとなればと考えている。幹事を引き受けていただいた国立環境研究所の理事長,理事にはそのリーダーシップを期待している。
 
 3点目として,海外の研究機関との協力協定を結んでいる。10月末に,韓国農業科学技術院と協定書(MOU)を結んだ。韓国とは26年間にわたり国際協力事業団(JICA)を通した技術協力があった。しかし韓国のOECD加盟とともにそれまでの技術協力ではなく平等な研究協力が必要になり,5年前,三輪睿太郎現農業技術研究機構理事長が農林水産技術会議事務局長の時に,農業科学技術院とMOUを結んだ。それが今年で切れるため,当研究所と農業科学技術院が今後5年間のMOUを新たに結び,環境研究についてさまざまな形の協力をしていくことになった。昨年は中国の南京土壌科学技術研究所とも,独立行政法人になる前にMOUを結んでおり,このようなアジアの農業環境関係研究機関とのMOUをさらに広げていきたい。
 
研究所の役割
 この研究所の役割は,安心と安全とブレーキと,そして次世代へ資源を残すことであると考えている。
 
環境問題と当研究所の歴史
 この千年間の二酸化炭素とメタンと亜酸化窒素の濃度をリスク比数として示す。つい最近の1950年ころの各リスク比数は10,20程度だったが,急激に現在の100まで上っている。大きな変化があったのはこの千年の中でごく最近の50年間である( 図1 )。
 
 
図1 農業環境のリスク評価とリスク軽減技術の開発
(jpgファイル:230KB)
 
 
 次に百年間のインパクトを考えたい。この百年間はこの研究所の歴史でもある。農事試験場が西ヶ原に置かれたのが今から108年前の1893年で,インパクトのデータがまだない時期。それから1950年に農事試験場が改組されて農業技術研究所ができた。この時期からインパクトのデータが少しずつ入ってくる。さらに,1983年に農業環境技術研究所に改組された。このころにはいくつものインパクトが急激に伸びてくる。2001年には独立行政法人農業環境技術研究所が設立された。インパクトのうち,人口はすでに62億に達し,今や63億になろうとしている。エネルギー消費は,近年になって急激に上昇している。化学肥料もどんどん増加している。これらに比べて右下がりのものがある。それは1人当たりの耕地面積で,年々減少している。それからもう一つ,1995年ころに初めて現れた遺伝子組換え作物の作付面積が急激に増えている( 図2 )。
 
 
図2 20世紀における農業環境インパクト
(jpgファイル:100KB)
 
 
 この新しい研究所ができた2001年は,この百年間でも劇的な変動が起こっている時期であり,この中で農業環境研究をどのように進めていくかが,この研究所に与えられた重いテーマと思っている。
 
研究所のクライアント
 上のような千年あるいは百年単位の環境の問題にどのように対応するかを考える時,当研究所のクライアント,お客様は,生産者であり,消費者であり,研究者であり,あるいはポリシーメーカー(行政担当者)である。この研究所は非常にクライアントの多い研究所だといえる。本日ご出席いただいている評議員の先生方には,クライアントを代表される方々として,それぞれの立場から,研究所と環境研究について意見をいただきたい。
 
研究所運営の原則
 この研究所を発展させていくために2つのことが重要だと考えている。1つは研究の活力を十分に引き出すこと。活力をうまく引き出すためには自由と規制とをうまく平衡させていかなければならない。2つめは研究者に対する公正さである。公正さについては,やはり平等と,一方では格差を適切に平衡させていかなければならない。いずれにしても活力と公正とを,当研究所の信念としてもちつづけたい。
 
2.独立行政法人化とその後の取り組み(企画調整部長説明)
 
ロゴマーク等について
 独立行政法人化と同時に,所内から募集してロゴマークとキャッチフレーズ( 図3)を決めた。ロゴマークについては,基本的には,空色の部分が大気,緑色が生物,空色と緑色の重なった薄い色が水,文字の茶色が土壌を表しており,研究所の研究対象である大気,水,生物,土壌のすべてが含まれている。正面玄関の前の石碑にキャッチフレーズが刻み込まれている。英語のキャッチフレーズもある。
 
 
図3 ロゴマークとキャッチフレーズ
(gifファイル:55KB)
 
 
独立行政法人化までの経過
 理事長のあいさつにもあったように,当研究所の前身である農業技術研究所ができたのが1950年,農林水産省農業環境技術研究所の発足が1983年で,これが今年2001年4月に独立行政法人となった。
 
 当研究所では,独立行政法人化に向けた検討をおよそ2年にわたっておこなってきた。所内に設置した検討委員会として,将来方向検討委員会,推進方策委員会,独法準備委員会がある。さらに4月以降にも積み残した案件がいくつかあったため,整備検討委員会を設置して,残りの作業を9月までにほぼ終わらせている。
 
 一方では新たな科学技術基本計画が,2001年3月に閣議決定された。その中では,我が国がめざすべき国の姿として,知の創造と活用,国際競争力および持続的発展,安心・安全で質の高い生活が求められている。また,重点化分野が示され,中でもライフサイエンス,情報通信,環境,ナノテクノロジー・材料の4分野が当面の重点領域とされている。ここに環境分野があげられていることは,この研究所の設立にとって1つの大きな背景となる。
 
組織の変更
 4月の独立行政法人化と同時に,当研究所の組織を全面的に変えた。これまでは,研究部の中にさらに専門分野別の科を置いて2段階の組織体制をとっていたが,研究課題別のグループを置き,グループ内にユニットを置いた。また,緊急問題に対応してグループとは別にチームを設置した。同時にチームとグループ等との併任制を導入し,チームの課題が終われば,併任を解除してもとのグループ等に戻ることにしている。また,研究企画の業務を円滑に進めるため,企画調整部の行政職員を増員した。(組織図を参照)
 
中期目標と中期計画
 独立行政法人として当研究所がどのように業務を進めることになったかを説明する。まず農林水産大臣が当研究所に対して,こういう業務(調査,研究など)をやってほしいという「中期目標を示す。当研究所はそれを受けて,その達成のための具体的な手段を書き込んだ「中期計画を提出する。さらに,各年度ごとにその年度の具体的なやり方を書いた「年度計画」(平成13年度計画)を作成する。
 
 中期目標の中で特に研究にかかわる部分は,「国民に対して提供するサービス」と表現されているが,当研究所の中期目標には次の3つの課題を進めることが書かれている。1つめは「農業生態系のもつ自然循環機能に基づいた食料と環境の安全性の確保」,2つめは「地球的規模での環境変化と農業生態系との相互作用の解明」,3つめが「生態学・環境科学を支える基盤的研究」である。研究以外の部分については,たとえば,前年比1%の運営交付金の削減とか,評価・点検の実施,研究資源の効率的活用など,さまざまな項目に取り組むことが書かれている。それに対応して,中期計画では,たとえば中期計画期間中に年度あたり予算を1%削減するとか,外部委員による評価を実施するとか,所全体で5年間に論文810報を出すとか,国内特許を10件とるというような宣言をしている。また,人事に関しては,国家公務員試験の活用,選考採用の活用,任期付き任用の拡大,研究をおこなう職の公募などが中期計画にうたわれている。
 
公共性,自主性,透明性
 独立行政法人の運営原則としては,公共性・自主性・透明性がある。
 公共性については,研究所のウェブサイトに「情報:農業と環境」というページを作り,情報を月1回インターネットで発信している。理事長あいさつにあった農林水3所連絡会環境研究9所連絡会に参画して他の研究所との連携をはかっている。
 
 自主性としては,毎年2回程度の国際会議開催経費,年間約40件の国際研究集会参加経費,さらに,10数件程度の法人内のプロジェクト研究経費などを,研究所内の予算で取り扱っている。透明性については,中期目標中期計画年度計画業務方法書職員採用情報(「研究所からのお知らせ」を参照)などをインターネットで公開している。
 
研究所の会計,予算規模
 会計については企業会計制度を使用し,電子会計システムを導入して物品購入や出張届を電子化している。
 
 当研究所の年度予算の基礎は,農林水産省からの運営費交付金,約35億円である。このうち研究事業費が約7億3000万円,人件費が約20億円である。研究事業費の部分が研究費として使われるが,先に説明した外国出張経費や国際会議開催経費,法人プロジェクト経費などの予算は研究推進費という枠の中で運営している。ほかに農林水産省,環境省,文部科学省などから約6億円の委託プロジェクトがある。
 
機関評価と評議会
 独立行政法人は,これまでの国立研究機関の時代とは大きく変わり,まず業績,成果が問われる。しかし,そのためには何が機関の業績,成果であるかを明確にしないといけない。また,評価の視点や評価の方法,評価の基準など,評価の仕組みを整える必要がある。
 
 当研究所は,このような問題に対応するため評価システムを設けている。評価には研究課題評価と研究者業績評価がある。そして,それを積み上げた機関の評価がある。これら一連の評価を内部で実施して,それが外部での評価につながるようなシステムにしている。本日の評議会は,内部での機関評価に対応するものと考えている。
 
 この評議会では,研究者の業績評価と研究課題評価を積み上げた内容を全体として見ていただき,研究所運営が適切か,改善すべき点はないかといったご意見をいただきたい。その結果を踏まえて,業務運営全般にかかわる自己評価資料を作成して,独立行政法人評価委員会に報告することにしたい。
 
 研究課題については,設計検討会から始まって成績・計画検討会,主要成果検討会,課題検討会という,検討システムを作っている。次回(14年度)の評議会では,そういう場での検討結果をまとめて報告する。
 
 研究者の業績評価については,科学技術基本計画に示された多様な項目による評価が可能な,公正で透明な評価手続きとするための検討を重ねている。
 
 また別の大きな検討内容として,中期目標の達成に資する業務が適切に実施されているか,そして目標とする業績指標が適切であるか,目標の水準は適切であるかなどといったことも,あわせて議論していただくことになる。
 
 

農業環境技術研究所と農村振興局資源課農村環境保全室
との連絡会が開催された

 
 
 独立行政法人 農業環境技術研究所と農林水産省 農村振興局 資源課(農村環境保全室)との平成13年度の連絡会が,農林水産省において開催されたので,その概要を報告する。
 
日 時:平成13年12月5日(水)15:00〜18:10
場 所:農林水産省農村振興局第1会議室
参加者:(農業環境技術研究所)
清野 企画調整部長,今川 研究企画科長,浜崎 農業環境インベントリーセンター長,石井 環境化学分析センター長,上沢 栄養塩類研究グループ長,井手 植生研究グループ研究リーダー,デイビッド・スプレイグ 生態システム研究グループ主任研究官
    (資源課農村環境保全室)
 鈴木 資源課長,川合 農村環境保全室長,跡部 課長補佐(環境調査班),橋本 調査係長,安岡 課長補佐(環境保全班),植松 環境保全係長,田井 水質保全係長,富田 課長補佐(環境評価班),佐々木 環境評価係長,前園 影響評価係長,松島 環境影響評価専門官
 
内 容:
1.話題提供(農業環境技術研究所から)
(1) 独立行政法人農業環境技術研究所の概要
(2) 農業環境インベントリーと土壌環境基礎調査(定点調査)データの解析
(3) 農地からのダイオキシンの流出
(4) 河川懸濁物質によって運搬される栄養塩類の流出実態と農業環境対策研究
(5) OECDでの農業生物多様性インディケーター策定の動向
 
2.話題提供(農村環境保全室から)
(1) 環境との調和への配慮について
(2) 農村環境保全室における調査の概要
(3) 農業用水資源の水質監視等への取り組み
(4) 壌環境保全対策の制度のあり方(環境省中間取りまとめ)について
(5) 生物多様性国家戦略について
 
3.意見交換
 (1)生物多様性を問う際の「二次的自然」のとらえ方に対する欧米と日本との間にあるギャップを埋めることができるか,(2)農村振興局が開始した「環境に配慮した農業農村の整備」についてのマスタープランの策定主体,空間配置の設定方法について,(3)農地からの土砂やダイオキシン流出防止対策について,などが議論された。
 
 今回の連絡会はちょうど10回目であるとともに,双方の組織・目標があらたまり,再スタートとなった記念の会となったが,今後も相互の情報の交換を通して協力していくことが確認された。
 
 

京都議定書の2002年発効の体制
 
 
 地球温暖化防止のためモロッコのマラケシュで開催された気候変動枠組み条約第7回締約国会議(COP7)は,2001年11月10日,温室効果ガスの削減を義務づける京都議定書に最終の合意をした。これによって,議定書の2002年発効の体制が整った。日本政府は,2002年の議定書批准のための国内対策づくりに着手することになる。今度の通常国会に関連法案が提出されるであろう。これについては,産業界への規制に加えて,対策が難しい運輸や家庭など民生部門での排出削減など多くの問題が山積みされている。
 
 COP7では,途上国を含む180カ国で合意文書が採択されたが,途上国には削減目標が設定されないままで会議は終了した。一方,先進国の温室効果ガスの削減の緩和措置も大幅に認められた。緩和措置の代表的なものには,排出量を減らしにくい国が余裕のある国から排出枠を買う排出権取引や,森林によるCO2吸収を削減分にカウントする措置がある。合意では,排出権取引などは補助的な役割にとどめるとされたが,実際には排出権取引に上限は設けられなかった。
 
 日本は森林のCO2吸収分3.7%を削減分にカウントすることを認められたが,一方で1999年の日本の温室効果ガス排出量は,基準年の90年に比べて6.8%増加しており,削減しなければならない量は9%を上回る。削減目標を達成できない場合は,順守行動計画の策定などに取り組むとともに,超過した排出量の1.3倍を次期排出量から差し引かれることになっている。
 
 COP7での主な合意事項
1.途上国問題
 ●条約に基づく特別気候変動基金,最貧国基金と議定書に基づく適応基金を設立
 ●途上国の参加問題の議論はCOP8に先送り
2.京都メカニズム
 ●排出量取引などすべての手法は国内対策の補完と位置づけるが,使用に定量的制限は設けない
 ●排出量取引の売買量は90年の排出量の10%以下
 ●原子力発電による削減は控える
 ●報告義務などの順守規定を守らない場合,メカニズムの利用を制限
 ●排出量取引(ET),クリーン開発メカニズム(CDM),共同実施(JI)の排出枠の相互交換を認める
 ●排出量取引,CDM,JIの排出枠の次期約束期間への繰り越しを認める
3.森林吸収
 ●国ごとに上限を設定。日本は年間1300万トンまで認められる
 ●CDM,JIでの新規植林,再植林を認める。ただし,許容枠は90年の排出量の1%
 ●ロシアへは毎年3300万炭素トンを吸収量の上限として認める
4.順守
 ●削減目標未達成分の1.3倍を2013年以降の次の約束期間から差し引く。罰則規定の法的拘束力は議定書発効後の最初の会議で決める
 ●順守委員は10人。先進国4,途上国6で構成
 ●国内排出量の報告を怠ると「順守行動計画」の策定を課す
 ●違反のある国を他国が告発できる制度を導入する
5.把握報告・審査
 ●排出削減に伴う途上国への影響に関する報告をする
 ●森林吸収量を毎年報告する
注  CDM:クリーン開発メカニズム,JI:共同実施
 
 国内対策の検討
 2010年に90年比の6%削減という数字があるが,99年度の国内排出量は13億700万トンであるから,90年比で6.8%も増えている。環境省の予測では,現在の対策のままだと,これが2010年には90年比の8%増になるという。6%の削減目標が逆に8%増加する。結局,2010年には14%の削減を達成しなければならないことになる。
 
 2001年7月の中央環境審議会の中間とりまとめでは,次のような対策が盛り込まれている。
1.温暖化対策税(炭素税)・課徴金
2.排出枠を売買する国内排出量取引
3.排出者が国と削減義務を約束する協定制度
4.実行計画の公表義務化
5.電力の排出源単位の改善
6.交通体系のグリーン化
7.ライフスタイルの改善など
 
気候変動枠組み条約と京都議定書
 気候変動枠組み条約は94年に発効した。先進国は温室効果ガスの排出量を2000年に90年水準に戻す「目標」を定めた。しかし,これでは不十分として,97年の京都会議(COP3)で,強制力のある削減目標を定めた「京都議定書」を採択した。ただ,議定書の発行は持ちこされた。削減目標は,先進38カ国と欧州委員会が2008-2012年に,温室効果ガスの排出量を90年比5%減,日本,米国,EUはそれぞれ6,7,8%減らすことにした。議定書の内容について,2001年7月のCOP6再会会合で基本を合意し,COP7で最終合意し,2002年に発効する予定である。
 
 

エアロゾル,気候および水循環
 
Aerosols, Climate and the Hydrological Cycle
V. Ramanathan, P.J. Crutzen, J.T. Kiel and D. Rosenfeld, Science, 294, 2119-2124 (2001)
 
 人間圏の活動によって,大気に微細な粒子(エアロゾル)が放出されている。これら人為起源のエアロゾルは,太陽光の分散・吸収を促進する。また,エアロゾルは降雨時に効率の悪い鮮やかな雲を形成する。これらは,言いかえると地球表面に到達する太陽の光量を大幅に減少させることになる。これによって,大気の温度構造,降雨の抑制力,汚染物質の除去能の低下などが変動する。これらのエアロゾルは,水循環に少なからず影響する。このことは,淡水の利用と質に直接関連する21世紀の主要な環境問題のひとつである。
 
 

自然環境下における遺伝子組換え作物のモニタリング
 
Transgenic crops in natural habitats
M.J. Crawley, S.L. Brown, R.S. Hails, D.D. Kohn and M. Rees, Nature, 409: 682-683 (2001)
 
 農業環境技術研究所は,農業生態系における生物群集の構造と機能を明らかにして生態系機能を十分に発揮させるとともに,侵入・導入生物の生態系への影響を解明することによって,生態系の攪乱防止,生物多様性の保全など生物環境の安全を図っていくことを重要な目的の1つとしている。このため,農業生態系における生物環境の安全に関係する最新の文献情報を収集しているが,その一部を紹介する。
 
要 約
 遺伝子組換えによって収量向上を目指した作物が開発されている。しかし,これらの植物が栽培環境から自然環境に出た場合に,持続的に生育できるかどうかが生態学的な関心事となっている。本論文は,自然環境下における組換え作物の動態について長期にわたり研究した結果を示している。
 
 英国の3地域に4種類ずつ作物(油料ナタネ,バレイショ,トウモロコシ及びテンサイ)を植え付け(合計12箇所),10年間にわたりモニタリングした。その結果,組換え植物が対照とする在来植物よりも自然環境への侵入性やそこでの持続性が高かった例はなかった。
 
 1980年代の終わりには,遺伝子組換え作物について心配される3つのリスクがあった。すなわち,1)遺伝子組換え植物が雑草化したり,自然環境へ侵入するのではないか,2)導入遺伝子が花粉によって野生の近縁種に伝搬され,交雑した子孫の雑草性と侵入性が増すのではないか,3)組換え植物が人,家畜,あるいは有益な野生生物に直接危害(例えば毒物質やアレルゲンとして)を与えるのではないかということである。この研究では,最初の2つの問題に対する評価を行った。
 
 使用した組換え作物は,1990年の段階で利用可能だった油料ナタネとトウモロコシ(除草剤グルホシネートに耐性),テンサイ(除草剤グリホサートに耐性),およびバレイショ(殺虫性のBtトキシンまたはマメ由来のレクチンのどちらかを産生する2タイプ)である。
 
 毎年,それぞれの実験場所のモニタリングを実施し,1)播種(または植付け)した植物の推移の追跡,2)播種していない近隣地域への分散の調査,3)後年の自然攪乱によって復活してくることがないのかの判定を行った。
 
 播種(植え付け)1年後において,組換え作物と対照とする在来作物の非播種場所への分散には差がなかった。組換えと在来を問わず,いずれの作物も,どの場所においても増加して繁茂することはなかった。全ての作物の個体群サイズは,在来の多年性植物との競争により減少した。どの場合も組換え作物が対照の在来作物より有意に長く生存することはなかった。
 
 

本の紹介 68:水俣病の科学,西村 肇・岡本達明著
日本評論社 
(2001) 3,300円 ISBN4-535-58303-X

 
 
 本書は,次の文章から始まる。「歳月はいつも重い意味を持ちます。水俣病事件の場合,最初の二年半,それから三年,さらに九年,そこからはるかな歳月を経ること三十二年,合わせて約半世紀の歳月が水俣病の因果関係解明の里程標を示しています。」
 
 二十世紀に起きた世界でも最大・最悪の公害といわれた水俣病。発見までの二年半,それから原因物質の発見まで三年,政府の公害認定までさらに九年,そこからはるかな歳月を経ること三十二年とは,1968年の政府の公害認定から現在までの時間である。
 
 1950年代から熊本の水俣湾周辺で,手や足のまひや言語障害など深刻な健康被害が住民に出た。水俣市の新日本窒素(現チッソ)水俣工場から水俣湾に排出された「メチル水銀」がその原因であった。どうして悲劇は起きたのか。膨大なデータと気の遠くなるような歳月を費やして,克明に事実を解明し,この公害をまとめたのが本書である。著者は結語で述べる。「私たちもまた加害者ではなかったのか? そしてあなたも」と。
 
 本書は,序章・第1−3章,結語,あとがき,「補論」なぜ水銀が有機物に結合するか,索引からなる。
 
 序章の最後の文章を引用する。「私たちは「常識」から出発しながら事実を集め,発見を繰り返しながら一歩一歩「科学」に近づいていきました。遅々たる歩みではありましたが,歳月は力です。ばらばらに見えた発見が急に一つにまとまって全体が浮かび上がるときが来ました。そして私たちはついに,メチル水銀の生成機構を解明するとともに,二つの謎を解き,チッソ水俣工場からのメチル水銀排出量を捜査以来の過去にさかのぼって性格に推定することに成功しました。その結果,これまで理解できなかった一つ一つの事実が,鉄のような必然性をもって展開していった惨劇の一コマ一コマであることがはっきりと見えるようになったのです。」
 
 第1章は,水俣工場の当時の様子を関係者からの聞き取りを含めながら,水俣チッソのアセトアルデヒド工場の全容が,工場の内部に立ち入り語られる。アセトアルデヒドは,オクタノールをはじめとするブタノール,酢酸など塩ビ以外の重要な有機製品の原料である。合成繊維をはじめとする化学製品の原料として欠かせない。石灰岩と石炭から生成されたカーバイドからアセチレンが作られる。アセチレンからアセトアルデヒドが作られるが,その触媒として水銀が使われる。これらのことが,工場の図解,工場の技術者,戦後の技術革新,追求の道を閉ざしたチッソ,廃水処理の実体と変遷などの項目のもとに解説される。
 
 第2章は,「水俣病の発生」から「海域へのメチル水銀排出量」を追跡する。水俣病の発生を食習慣から追跡し,その原因が「魚介類のメチル水銀濃度」であることを検証する。つづいて,海域の生態系汚染機構の解明を通して「海水中のメチル水銀濃度」を推定する。最後に,排水拡散理論から「海域へのメチル水銀排出量」を推定する。この因果関係を明らかにする手法と努力は圧巻である。
 
 第2章の最後で著者は語る。「私たちは,長い時間かけて集めた膨大な諸々のデータの持っている意味をできるだけ読み解き,水俣湾の生態系,海水中のメチル水銀の挙動,魚介類の汚染実態,排出されたメチル水銀量の推定,底泥の無機水銀のメチル化機構,水俣湾の底生魚と不知火海の魚の汚染機構などの基本問題を検討し,その成果を総合することにより,環境・生態系汚染の全体像と残された問題を明らかにした。
 
 第3章は,「メチル水銀生成機構」から「海域へのメチル水銀排出量」を追う。第2章は,当時のデータをもとに半定量的に「海域へのメチル水銀排出量」を推定した。この章では,第2章の確信を基礎に,定量的手法を駆使してメチル水銀排出量を求め,それがいつどんな原因でどのように変わったか精密に明らかにしている。「メチル水銀生成機構」を明らかにし,反応速度論から「反応器内メチル水銀生成量」を推定する。さらに,プロセス工学理論から「プロセスからのメチル水銀排出量」を明らかにし,廃水処理原理の活用により「海域へのメチル水銀排出量」を明らかにする。
 
 生成機構の解明もまた圧巻である。著者は語る。「新しい化学である有機金属化学に基づいてメチル水銀の生成機構を初めて本格的に論じたのが本章であり,その結果をまとめたのが図3-3です。古い化学と新しい化学の違いは,アセトアルデヒドの生成の過程,特にその中間体の構造にはっきりあらわれています。この違いを生んだ最大の原因は,原子と原子の結合に対する考え方の差です。古い化学では,金属は他の元素と同じように単に結合する手がある原子としてしかとらえていませんが,新しい化学ではある種の金属(遷移金属)は二重あるいは三重結合そのものに結合してその一本を切る働きがあると考えます。・・・・それは科学者,特に化学者の心理に原因があります。多くの化学者は,実験報告で確認されていること以外は考える対象にしません。・・・・・」。
 
 最後に,海域へのメチル水銀排出量の経年変化と水俣病被害の進行状態との関係が明らかにされる。すなわち,「アセトアルデヒド生産量と周辺海域へのメチル水銀排出量推定」,「メチル水銀排出量と水俣周辺住民のへその緒の水銀濃度」,「メチル水銀排出量と胎児性水俣病患者発生数」および「メチル水銀排出量と非典型水俣病患者発生数」がそれである。
 
 結語では,科学と技術の方法論に関する多くの提言がある。「新しい科学の見方」,「リスク基準」,「安全性の考え方」,「日本の科学のあり方」「科学のもつ一方向性と双方向性」,「世の中に役に立つこと」,「内分泌攪乱物質」,「日本の環境科学の成果の外国への発信」など。なお,著者はこれを英訳して世界に発信しようとしている。この努力に敬意を表したい。
 
 本書は三つの特徴を持つ。一つは,自然科学と人文科学の研究者が共同して成した希有な作品であること。環境科学の解明とは,まさにこの例が示すもの以外のなにものでもない。二つめは,感動なくしては読めない書である。かつて,世に感動を与えた環境にかかわる本に,レーチェル・カーソンの「沈黙の春」,シャロン・ローンの「オゾン・クライシス」,シーア・コルボーンらの「奪われし未来」などがある。本書は,これらに勝るとも劣らない傑作である。最後は,研究者への魂を込めた研究の方法論が語られていることである。若い研究者のみならず,熟成した研究者にとっても必読の書である。
 
序 章 解かれなかった謎
 
第一章 水俣のチッソのアセトアルデヒド工場
 1 チッソ水俣工場の中に入る
 2 アセトアルデヒド工場の現場
 3 工場をつくった技術者 − その技術力と思想
 4 戦後の技術革新(1)助触媒の変更
 5 戦後の技術革新(2)蒸発方式の変更
 6 科学的因果関係追求の道を閉ざしたチッソ
 7 廃水処理の実態と変遷   
 
第二章 海のメチル水銀汚染
 幕間対話
 1 患者の発病時期に関するデータ
 2 動物にあらわれたメチル水銀中毒 
 3 魚に異変が起こっていた
 4 底泥の有機物汚染 
 5 底泥の無機水銀汚染 
 6 海水中の水銀はどうだったのか 
 7 水俣湾の生態系 
 8 貝のメチル水銀汚染
 9 海水中のメチル水銀の挙動と魚の汚染実態
 10 表層魚のメチル水銀汚染
 11 メチル水銀排出量の推定
 12 水俣湾の底生魚の汚染機構
 13 不知火海の魚の汚染機構
 
第三章 メチル水銀の生成から排出まで
 1 メチル水銀とは
 2 なぜ水銀が使われたか
 3 水銀触媒の脱線反応
 4 メチル水銀の生成機構
 5 生成機構の実験的証明
 6 生成機構解明を可能にした新しい化学
 7 メチル水銀排出量の推定の方法
 8 メチル水銀生成速度の定式化と決定
 9 メチル水銀蒸発速度の定式化と決定
 10 精留塔ドレーンからのメチル水銀排出量の推定
 11 第一の謎の解明 − 助触媒の変更
 12 加わったもう一つの原因 − 母液廃棄・流出量からのメチル水銀排出量の推定
 13 第二の謎の解明 − 塩素イオン
 14 精留塔ドレーンリサイクルの効果
 15 廃水処理の効果
 16 海域へのメチル水銀排出量の経年変化と水俣病被害進行との関係
 
結語,あとがき,〔補論〕なぜ水銀が有機物に結合するか,索引
 
 

本の紹介 69:共生の思想−自他の衝突と協調−
藤原鎮男著,丸善ライブラリー 313,丸善
(2000) 780円 ISBN4-621-00513-2 CO230

 
 
 序章の冒頭で,著者は語る。「我々が今生きているこの現実社会には解決困難な問題が山積みしている。本書は,それらの世の中の解決困難な問題はすべて自分と自分以外のもの,つまり他人,これを他,または他者と呼ぶこととすると,この自と他の対立,ないし衝突によって起こる問題であり,また自と他の区別が喪失したために起こる問題であると思い,その対応を考えようとするものである。」
 
 そのような例は,沖縄の基地移転,市町村のゴミ処理,あるいは民族や宗教などによって起こる国際紛争など,枚挙にいとまがない。では,その解決のためにはどうすればよいのか,それを解くカギが「共生の思想」であると強調する。
 
 著者は,世の中は実はこの自と他の両者が共生して初めて立つものであることを,科学と文化の面から解析する。そして,自然は根本の法則として「自他の共生」を本体としていることを強調する。
 
 第一部では,科学にも文化にも,外部の環境によって動かされることのない「自」のあることが実例でもって示される。科学の例では,深海水,原子核,生物の種が,文化では,民族が本来的に保有する特性などがそれに当たる。
 
 第二部では,科学においても文化においても自と他が併存し,両者の共存で全体ができていることが解説される。また,「自」の存在を認めることは,「他」の存在を認めることであり,「自」と「他」は併存するものであると論じる。実際に自然界では宇宙や地球を構成する元素の数を見るとそうだし,日本文化の実体ともいえる連歌がそうであるとし,これらの実例をもって「自」と「他」の共存を解説する。
 
 第三部では,「自」と「他」,「個別」と「普遍」の両極で成り立つものの他に,両者を結ぶ「媒体」があり,両極とこの媒体の三者が協力して働くことによって,自然界の運行が果たされることが解説される。これを,「自他の共生」と呼ぶ。
 
 自然界では,この自他の共生が自然法則として成立する。しかし,人間の社会では自他の均衡ははなはだ難しい。自他の衝突がある。その解決の方法は,協調,協定,規約,規制,教育であると指摘する。近代科学はこの方向に沿って展開していることを,ガウスの誤差論,マックスウェル,ボルツマンの気体分子運動論を例にして解説する。
 
 著者は,東京大学名誉教授で理学部化学科の卒業である。本書の中に,1847年に発刊された「宇田川榕庵」の「舎密開宗」の話がでる。150年前の化学の教科書に使われた言葉が,いまもどれだけ生きているかを知りたい方には,大変興味深い本でもある。
 
序 章 自他の定義/本書の視点
 1 自他の別
 2 個別性と普遍性
 3 利害
 4 歴史
 
第1部 「自」の存在
第1章 科学の「自」
 1 深海水
 2 原子核・放射能
 3 種
第2章 文化の自−日本文化の原点
7・5調のリズム感/「かな」を創った音感/助詞を発明した「文字表現の流れ尊重」意識/カタカナを発明した「記号感覚」/直感認識の尊重
 
第2部 自然界における自他の併存−個別性と普遍性の併存
第1章 科学
 1 地球の全元素数
 2 普存性元素と個別性元素の機能
第2章 文化−連歌の語彙に見る普遍性と個別性
 1 連歌の意義
 2 連歌の語彙と出現頻度
 3 普遍性の語彙と個別性の語彙
第3章 東洋と西洋の物質観
 1 西欧の元素観と東洋の全体観
 2 解析と総合における時間の意義
第4章 八百万の神という言い方
 1 東洋の個体観,西洋に成分観
 2 イノチと物
 3 「物」という文字について
第5章 物質の総数
 1 「物の数」ということの意味
 2 学術用語の数
 3 元素の数,化合物の数
 4 東西の合一
第6章 物質観における普遍性と個別性
 1 論理と直感
 2 解析に偏する現代学生
 3 計算機設計の発展過程における東西の違い
 4 直感の現代的意義
 
第3部 自他の共生
A 自然則
第1章 自他の相関と種類
 1 相関の種類(1)−一方通行的流れ
 2 相関の種類(2)−共生の場の働き
 3 海水の塩濃度
B 近代科学の自他共生への展開
第2章 分子観の展開
 1 気体分子運動論
 2 数平均と質量平均
 3 ブラウン運動に関するアインシュタインの理論とペランの実験
第3章 物質観の展開
 1 化学物質のデータベース構築に見られる西欧の東洋への接近
 2 規格・規約化の推進・展開
 3 学問における普遍性と個別性の共生確立の努力
 4 学術用語確立の意義
 5 規格化と標準化
 6 用語と歴史−個別性の価値
 
結語−自他共生の「本義と現実」
 1 本義
 2 現実
 
 

本の紹介 70:熱帯土壌学,久馬一剛編,名古屋大学出版会
(2001) 5800円 ISBN4-8158-0413-3 C3061
 
 
 環境科学が関係と関係の学問であると定義するならば,そのことを実践をもって証明したのが,この本ということができる。編者は「はしがき」で,そのことをいみじくも表現している。「太陽の光と熱に恵まれた熱帯が,潜在的に大きな生産力を持つことは疑いのないところである。しかし,20世紀後半に人類が経験した多くの事実は,その潜在生産力が一部には水資源の不足から,また,一部には土壌資源の制約と生物相互間の拮抗から,容易には実現されえないものであること,それだけでなく,熱帯の自然がかなり脆弱であって,人間の不用意な干渉の下では不可逆的に劣化する恐れの大きいことを教えてくれた。」
 
 上述した関心から,熱帯土壌の研究に携わってきた編者と京都大学を中心とした熱帯土壌の研究者たちが,これまでに蓄積した知見をまとめたものが本書である。この本が生まれる発端は,わが国で初めてプロジェクト化された「熱帯水田土壌調査」の研究にある。それは今から39年前の1963年のことである。その意味で,本書はこれまでの調査・研究の集大成ともいえる。したがって,本書は「継承こそが学問の王道」であることをもわれわれに教えてくれている。
 
 「第1編 熱帯の土壌」では,熱帯土壌とは?,熱帯の自然環境と土壌生成因子,土壌の分類,生産力評価(台地土壌,低地土壌)などが歴史的事実のもとに解説される。「第2編 熱帯の土壌にかかわる諸問題」では,酸性硫酸塩土壌,有機質土壌,土壌生態(熱帯林,焼畑),土壌の塩類化とアルカリ化,土壌劣化/砂漠化,熱帯土壌の持続的管理などがきわめて具体的に解説される。
 
 新しい時代には新しい課題がある。熱帯土壌の研究は,かつて食料生産の増強のために行われた。しかし,いまでは地球環境の保全という面からの研究も必要とされている。本書は,その両面に答えてくれている。
 
序文
はしがき
第I編 熱帯の土壌
 I-1 熱帯,および熱帯土壌学
  I-1-1 熱帯:その特質と問題点
  I-1-2 なぜ熱帯土壌学なのか
 I-2 熱帯の自然環境/土壌生成因子
  I-2-1 気 候
  I-2-2 生 物
  I-2-3 地質と母材
  I-2-4 地 形
  I-2-5 時 間
  I-2-6 総括:熱帯の自然の特徴
 I-3 熱帯土壌とその分類
  I-3-1 熱帯における土壌生成作用と風化作用
  I-3-2 熱帯に分布する主要な土壌(1)−−Soil Taxonomy
  I-3-3 熱帯に分布する主要な土壌(2)
      −−FAO/UNESCO世界土壌図凡例の土壌ユニット
  I-3-4 熱帯に分布する主要な土壌(3)
      −−World Reference Base for Soil Resources 
  I-3-5 熱帯土壌の生産力可能性
 I-4 熱帯の台地土壌とその生産力評価
  I-4-1 熱帯の台地に分布する強風化土壌と低活性粘土
  I-4-2 熱帯土壌の荷電特性
  I-4-3 熱帯の台地土壌の肥沃度的特性
  I-4-4 熱帯の台地土壌の物理的特性
  I-4-5 熱帯の台地土壌の侵食と保全
  I-4-6 熱帯の台地土壌の生産力評価
 I-5 熱帯の低地土壌とその生産力評価
  I-5-1 低地土壌の一般的特徴
  I-5-2 熱帯アジアの低地土壌
  I-5-3 熱帯アフリカの低地土壌
 
第II編 熱帯の土壌にかかわる諸問題
 II-1 マングローブ林下の堆積物と酸性硫酸塩土壌
  II-1-1 マングローブ林下の堆積過程
  II-1-2 堆積物中におけるパイライトの生成と蓄積
  II-1-3 酸性硫酸塩土壌の生成
  II-1-4 酸性硫酸塩土壌の分類
  II-1-5 酸性硫酸塩土壌の肥沃度的性質
  II-1-6 酸性硫酸塩土壌の利用と改良
 II-2 湿地林下の有機質土壌
  II-2-1 東南アジアの湿地林の広がりと熱帯泥炭の生成
  II-2-2 泥炭土壌の分類
  II-2-3 熱帯泥炭土壌の性質
  II-2-4 熱帯泥炭の開発と利用の問題点
  II-2-5 タイ・マレーシアにおける泥炭調査の事例
  II-2-6 熱帯泥炭の開発可能性
 II-3 熱帯林の土壌生態
  II-3-1 熱帯林とそれを支える土壌
  II-3-2 熱帯林土壌の養分蓄積と循環
  II-3-3 熱帯林の撹乱と土壌
 II-4 焼畑の土壌生態
  II-4-1 東南アジアの焼畑
  II-4-2 アフリカの焼畑
 II-5 土壌の塩類化とアルカリ化
  II-5-1 塩成土壌の分布
  II-5-2 塩成土壌の定義と分類
  II-5-3 塩成土壌の地球化学
  II-5-4 塩成土壌の化学性
  II-5-5 塩成土壌の物理性
  II-5-6 塩成土壌と作物生育
  II-5-7 塩成土壌の改良
  II-5-8 潅漑と土壌の塩類化
  II-5-9 東北タイの土壌塩類化−−地質に起因する特異例
 II-6 土壌劣化/砂漠化
  II-6-1 農業生産と土壌劣化
  II-6-2 土壌劣化の現状
  II-6-3 熱帯圏における土壌劣化
  II-6-4 砂漠化
 II-7 熱帯土壌の持続的管理−−アフリカを中心として
  II-7-1 熱帯アフリカにおける農業システムの持続性
  II-7-2 熱帯アフリカにおける持続的農業システム研究開発の現状
 謝 辞/索 引
 
 

資料:世界と日本における食料安全保障の現状と課題
農業および園芸,
77,71−225 (2002)

 
 
 「農業および園芸」では,毎年,新年号の特集を組んでいる。今年のテーマは表題の通りで,154ページもの紙面が割かれている。「食料安全保障とは何か」,「第1部:21世紀の世界の食料安全保障」,「第2部:海外諸国の食料安全保障」,「第3部:日本の食料安全保障」が全体の構成である。
 
 「食料安全保障とは何か」では,まず食料安全保障という言葉の歴史的な変遷が,総合安全保障との関連で紹介される。つづいて,食料安全保障の何たるかを明らかにするため,英・仏・独・日の防衛,食料,エネルギーが比較され,食料安全保障の位置づけがなされる。さらに,食料安全保障の内容が,水産物の自給率,食料の質の問題および食料の安全性の観点から考察され,今後の食料安全保障については,自給率ばかりではなく質や安全の指標を含めた広い角度から考えていくことの必要性が提案されている。
 
 「第1部:21世紀の世界の食料安全保障」は,「食料の安全保障」,「食料安全保障に影響する世界の環境資源と環境問題」,「技術進歩と世界の食料安全保障」および「食料安全保障の新たな課題と論点」から成る。
 
 「食料の安全保障」では,わが国において食料安全保障論が論議されるようになった経緯が振り返られる。つづいて,世界の食料需給の展望とわが国の食料自給率についての概説がある。さらに,食料危機対策,狂牛病問題と食料安全保障問題,遺伝子組換え作物の安全性と食品の表示問題について考察し,最後にわが国の食料安全保障政策のあり方について述べている。
 
 「食料安全保障に影響する世界の環境資源と環境問題」では,食料安全保障を予測するに当たって必要と思われる人口の増加,穀物生産量の推移が紹介される。次に,水・土壌・資源・エネルギーの地球的規模での変動と枯渇化が具体的に紹介される。つづいて環境の悪化と題して,オゾン層破壊,温暖化,ダイオキシン,インベーダー,遺伝子組換え作物の現状が紹介される。さらに,気候変動と紫外線,気候変動と酸性雨と紫外線,淡水資源の取水と窒素汚染などを例にして,複合的環境悪化の問題が提示される。最後に,これらのことを考慮に入れた食料安全保障の考え方が必要であることが提案される。
 
 「技術進歩と世界の食料安全保障」では,まず,バイテク出現以前の技術開発が作物生産の向上に大きく貢献したことが紹介される。しかし,これが途上国に即適応できるものではないことが解説される。次に,FAOのデータから今後の食料需給の展望が紹介される。つづいて,バイテクの活用による食料安全保障の具体的検証はまだないことが述べられる。さらに,遺伝子組換え作物の環境安全性の問題が様々な実例をもとに論議される。そして,食料安全保障に役立つバイテクとは何かが,開発国と途上国にわけて解説される。最後に,夢と不安の両面をもつバイテク技術を学際的な視点に立って考えることが強調される。
 
 「食料安全保障の新たな課題と論点」では,新しい段階を迎えた食料安全保障の課題を3つの側面から取り上げ,それらの背景と主要論点,さらには今後の政策課題について検討している。ひとつは,環境変動や資源劣化が農業生産に及ぼす影響の問題である。次は,狂牛病や環境ホルモンなどにみられる食料リスク,あるいは食料の質的な問題である。最後は,農業のもつ多面的機能と食料安全保障との関わりである。この問題は,WTOとOECDでの検討状況をふまえつつ考察される。
 
 「第2部:海外諸国の食料安全保障」は,「アジア諸国」と「その他諸国」から成る。ここでは,中国,韓国,台湾,インドネシア,フィリピン,マレーシア,インド,ドイツ,EU,スイス,ロシア,ブラジルおよびアフリカの食料安全保障,農業政策,食料需給および食料生産などが解説される。
 
 「第3部:日本の食料安全保障」では,わが国の食糧安全保障と食料・農業・農村基本法,自給率向上(農地と担い手,水田農業経営および畜産経営の観点から)およびWTOとの関連が解説される。
 
 食料安全保障とは何か・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・篠原  孝
 第1部 21世紀の世界の食料安全保障−構図と課題,展望−
    食料の安全保障・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・大賀 圭治
    食料安全保障に影響する世界の環境資源と環境問題・・・・・・・・陽  捷行
    技術進歩と世界の食料安全保障・・・・・・・・・・・・・・・・・西尾 道徳
    食料安全保障の新たな課題と論点・・・・・・・・・・・・・・・・嘉田 良平
 
 第2部 海外諸国の食料安全保障
 (1)アジア諸国
    中国の食料安全保障・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・白石 和良
    韓国の食料安全保障対策
     −親環境農業振興政策の貫徹が“鍵”−・・・・・・・・・・・・足立恭一郎
    台湾−WTO加盟後を見越した食料・農業政策−・・・・・・・・・水野 正己
    インドネシア−世界最大のコメ輸入国−・・・・・・・・・・・・・井上荘太郎
    フィリピン−食料問題と農業問題の狭間で−・・・・・・・・・・・福井 清一
    マレーシア−食料増産への方針転換とその背景−・・・・・・・・・石田  章
    インド[1]−経済自由化後の食料需給の行方−・・・・・・・・・中村 まり
 (2)その他諸国
    食料安全保障とEU食料・農業政策・・・・・・・・・・・・・・・是永 東彦
    食料安全保障と食品スキャンダルへの対応:ドイツの現状
      ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・市田(岩田)知子
    スイス連邦共和国の食料安全保障・・・・・・・・・・・・・・・・中村 光弘
    ロシア−経済体制移行期における食料安全保障−・・・・・・・・・野部 公一
    ブラジル−輸出農業の発展と食料生産の停滞との併存−・・・・・・千葉  典
    アフリカの食料生産・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・平野 克己
 
 第3部 日本の食料安全保障
    食料・農業・農村基本法の成立と食料安全保障・・・・・・・・・・田代 洋一
    農地と担い手の現状からみた自給率向上の課題・・・・・・・・・・荒井  聡
    水田農業経営確率による自給率向上の可能性・・・・・・・・・・・梅本  雅
    畜産経営の現状からみた自給率向上の課題・・・・・・・・・・・・増井 和夫
    WTO農業交渉の現状と食料安全保障・・・・・・・・・・・・・・渡部 靖夫
 
前の号へ ページの先頭へ 次の号へ
目次ページ 索引ページ 検索ページ 農業環境技術研究所トップページ