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情報:農業と環境
No.32 2002.12.1

No.32

・第58回農業技術功労者表彰:小川吉雄氏;
    茨城県農業総合センター園芸研究所長・
    (独)農業環境技術研究所評議員

・農業環境技術研究所案内(2):土壌モノリス館

・窒素施肥が土壌炭素の安定性と代謝回転に及ぼす様々な影響

・北アメリカの外来魚に対する生態学的予測とリスク評価

・本の紹介 94:海と暮らす−イノーの世界−、
     みんなの環境シリーズ 1、
    (財)環境科学総合研究所(2002)

・本の紹介 95:A Better Future for the Planet Earth,
    Lectures by the Winners of the Blue Planet Prize,
    The Asahi Glass Foundation, pp282 (1997)

・本の紹介 96:A Better Future for the Planet Earth Vol.2,
    Lectures by the Winners of the Blue Planet Prize,
    The Asahi Glass Foundation, pp326 (2002)

・本の紹介 97:地球生命圏GAIA、J.E. Lovelock 著、
    スワミ・プレム・プラブッダ訳、工作舎(1984)

・本の紹介 98:ガイアの時代、J.E. Lovelock 著、
    星川 淳訳、工作舎(1989)

・本の紹介 99:読書力、齋藤 孝著、岩波新書801(2002)

・資料の紹介:IGBP Dictionary, 2002/2003

・資料の紹介:環境と食料生産の調和に関する研究、
    高等研報告書0203、
    財団法人国際高等研究所(2002)

・報告書の紹介:欧州委員会から欧州議会、理事会、経済社会評議会
     および地域委員会への文書;
    持続可能な開発のための
     グローバル・パートナーシップに向けて


 
 

第58回農業技術功労者表彰:小川吉雄氏;
茨城県農業総合センター園芸研究所長・
(独)農業環境技術研究所評議員

 
 
 農業技術協会が行っている農業技術者功労賞表彰は、昭和19年度に始まり、今年度で第58回目を迎えた。第1回からの受賞者は326名に及び、地域で活躍されている農業技術者にとって大きな励みになっている。
 
 本年度の受賞者は6名である。受賞者の中には、すでに創立された昭和19年以降の生まれの方も含まれ始めた。この事業の歴史の重みが感じられる。受賞者の一人である小川吉雄氏は、茨城県農業総合センター園芸研究所長であるとともに当所の評議員でもある。
 
 受賞の業績名は、「窒素肥料の環境への流出機構の解明と制御技術の開発・普及」である。化学肥料の多量施用や畜産廃棄物の不適切な使用が、地下水の硝酸濃度を高め、さらには湖沼の富栄養化を促進したことの指摘と、その定量化、さらには、これらの浄化技術の開発と普及に貢献したことが受賞の対象となった。
 
 これまでのほとんどの受賞者は、農業生産への貢献としてそれらの仕事が高く評価されてきた。ここで特筆されることは、農業環境問題での初めての受賞であることだ。農業生産は環境問題を無視しては成立しないことが、如実に現れてきた一例ともとらえることができる。それにしても、氏がこの研究を開始して優に20年の歳月が経過している。環境研究の評価は事程左様に時間のかかるものなのである。
 
 ちなみに、ノーベル賞に環境賞はない。6年前にオゾン層破壊でノーベル賞を受賞したローランドとクルッツェンとモリーナは、化学賞で受賞した。農業にも新たに環境に関わる賞が必要な時がきているのかも知れない。
 
 

農業環境技術研究所案内(2):土壌モノリス館
 
 
 農業環境技術研究所本館東側の平屋の建物に、「土壌モノリス館」がある。ここには、日本と世界の土壌断面が230点以上も保存されている。玄関を入った正面には、日本の代表的な土壌断面が地形連鎖(山地から平野、河川)に沿って10点近くライトアップされている。左側の壁には、土壌モノリス作成の手順が写真で紹介されている。左側の通路を行くと、右側には日本の、左側には世界の土壌断面の展示室がある。日本の土壌が展示されている部屋の土壌断面の脇の壁には、折り目のすり切れたひときわ古い「大日本 甲斐國土性図」(明治18年)と題する土性図が掛けられている。世界の土壌断面がある部屋には、大きな世界土壌図が掛けられている。今回は、その「土壌モノリス館」を紹介する。
 
土壌モノリスとは?
 土壌モノリス(soil monolith)とは、土壌断面の標本のことである。モノリスは単一(mono)の石(lith)を意味する。地表面から、ある深さ(通常1m程度)までの土壌断面を切り出し、展示用に加工したものを土壌モノリスとよんでいる。これがたくさん集められた空間を土壌モノリス館という。
 
 かつては、切り出した土壌断面を木の箱に詰めたまま展示する方式が多かったが、いまでは土壌断面を樹脂で固め薄く仕上げる方法や、現場で断面に樹脂を吹きつけ、固定化し、はぎ取る方法が使われている。日本国内でのモノリスの収集・保存・展示は、大学、研究機関、博物館などで行われているが、当研究所ほどの数を所有する機関はわが国では他にない。日本では最大規模の館である。現在、登録され当所に保存・展示されているモノリスは、国内の断面約200点および外国の断面32点である。国外では、ブラジル、フィリピン、タイおよび旧ソビエト連邦のモノリスが、それぞれ8,8,3,13点ある。
 
世界の土壌モノリス館
 世界の代表的な土壌モノリス館は、オランダにあるISRIC(International Soil Reference and Information Centre)、ロシアのドクチャエフ中央土壌博物館およびウクライナのウイリアム土壌博物館である。ドクチャエフ中央土壌博物館は98年の歴史をもつ。執筆者は、13年前と18年前にこれらの博物館を訪れたことがある。とくに、ドクチャエフ中央土壌博物館で深く感銘した記憶がある。それは、未知の元素の存在と性質を予言し、あの周期律表を創ったメンデレーエフが、土壌学を学び、ドクチャエフとともにモノリスを作ったことである。周期律表までを作る科学の深みが、土壌学にあることをこのとき痛感した。
 
 現在、当所の農業環境インベントリーセンターの土壌分類研究室で、世界の土壌モノリス館について調査中である。ドイツ、オーストリア、カナダ、メキシコ、韓国、タイ、フィリピン、アメリカなどに類似のものが存在するが、きわめて規模が小さいようである。世界的にみて、土壌標本の定常的な収集・展示・啓発を行い、規模の面でしっかりしている組織は、当所の土壌モノリス館と先に紹介したオランダ、ロシアおよびウクライナの館であろう。
 
 
農業環境技術研究所の土壌モノリス館ができるまで
 
 次の資料を紹介して、この土壌モノリス館が設置されるまでの経緯を眺めてみよう。
 
土壌モノリス館−農環研の顔の一つに
三土 正則
農水省農業環境技術研究所17年の歩み
114-115、農業環境技術研究所(1999)
 
 建物としてのモノリス館は、西ヶ原からの移転に先立って完成した。ところが展示するモノリスがないのが致命的だった。火山灰土壌の国際会議(1960年ごろ)のため収集したモノリスが農研西ヶ原の展示室にあったが、おそらくそれらも移転解体業者によってゴミなみに処分されたらしく、移転時には姿を消していた。一方、モノリス採取のための野外出張の予算の支出など全く目当てがなかった。これは筑波移転初期の最大のネックであった。
 
1)思わぬ助け船日本生命財団
 モノリス採取のチャンスは思わぬところからやってきた。日本生命財団で生命科学の研究費を援助しているから、応募してみてはという親切なsuggestionが寄せられた。他に当てのないわれわれはこれに賭けることにした。申請研究団体は農技研(農水省)と千葉大学(文部省)の共同研究とし、日本の代表的土壌のモノリスの収集と土壌試料の永久的保存を研究テーマとした。運よく申請はパスし(約240万円)、しかも過半を旅費に当ててよい自由な形で予算が配分された。
 
 こういうと随分潤沢な費用がついたように聞こえるが、240万円は、じつはモノリス15断面分に過ぎず、100断面という全体目標からみると初歩的成果でしかなかった。にもかかわらずそれが大きい成果だといえるのは、やる気を起こさせた効果、起爆力となったからだと思っている。日本生命財団の研究費補助がなかったら、モノリス収集はいまよりずっと遅れていただろうと思われる。
 
2)土壌の永久保存
 土壌のモノリス作成とともに、筆者らは土壌の永久保存を重要視した。このことは余り知られていない。その背景には全国的に土壌の劣化が進行しつつあり、劣化の内容と速度は来歴の明らかな土壌を半永久的に保存し、保存された土と将来同一地点の土を同時に同じ方法で分析・比較するのが、もっとも確かな方法であるという考えがある。したがって、モノリス館の土壌試料は遠い将来にわたる「保存」が目的であって、短い年月で使い切るものではないと考えている。
 
3)モノリス作成法のいろいろ
 モノリス作成の過程で色々の作成法が試みられた。木箱にとって持ち帰り樹脂を吹きつけるオーソドックスな方法。現地で断面に当てた布の外側から樹脂を塗布し、固定し硬化後削ぎ取る方法、水に出会うと硬化する樹脂を使って絶えず湧水をかき出しながら断面を硬化し削ぎ取る試み、泥炭土など有機質土壌をある程度収縮伸縮するに任せながら大量の希釈した樹脂で処理する試み、などである。さらに、3m×0.5m(タテ×ヨコ)のジャイアントモノリスの作成に成功し、成果品は農環研の玄関を永く飾っている。
 
4)モノリス作成法の技術移転
 モノリス作成に関与した土壌専門家が海外でモノリス作成の普及に貢献している。タイ(井上恒久氏)、ブラジル(岩間秀矩氏)、フィリピン・パラグァイ(浜崎忠雄氏)などがそれで、とくに東北タイでは日本人専門家から習得した技術でタイ各地の1000を越える土壌モノリスを作成し、タイのモノリス・センターの観を呈している。
 あまり目当てなしに出帆したモノリス館が農環研の顔の一つとなり、質量ともに世界のトップをゆくものに成長したことには感慨を覚えている。
 
 
土壌モノリスの作成法
 
 土壌モノリスの作成法については、次の文献を参照されたい。
 
土壌モノリスの作成法
浜崎忠雄・三土正則
農業技術研究所資料B、第18号、1-27 (1983)
要 旨
 
 土壌モノリス(断面標本)は、土壌学の普及、教育、研究の資料として重要な役割をもつ。そのため、諸外国では古くから大学、博物館、農業試験場などで、その作製法の研究と収集が行われてきた。わが国でも農業技術研究所、林業試験場、筑波大学などで、永久保存できる薄層土壌モノリスの作製と収集が進められ、作製技術も向上してきた。
 
 本資料は、これまでの土壌モノリスの採取・作製法を歴史的に述べ、種種の作成法について検討した結果から、農業技術研究所で考案した、エポキシ系樹脂(トマックNR−51)を用いた方法を軸にして、土壌モノリス作製の具体的方法を中心にとりまとめた。
 
 トマックNR−51は、層位・遺跡断面等の剥ぎ取り用に奈良国立文化財研究所埋蔵文化財センターが特に調整したエポキシ系樹脂で、接着力が強く、硬化剤を用いて固化するため有害なガスの発生と、硬化にともなう収縮が少ないので、土壌モノリス作製にもすぐれた特性をもつ。
 
 土壌断面は薄層土壌モノリスに加工して保存する。湿潤なわが国では、土壌モノリスは薄層にしないと激しいひび割れを生じて保存・展示に耐えないものになる。まず野外で木箱(内径20×100×7.5cm)に柱状土壌断面を採取する。次に室内で表面を裏打ち布で覆い、その上から調合したトマックを塗布する。放置固化後、3〜15mmの厚さに剥ぎ取り、マウンティングボードに固定し、乾燥させながら表面を自然の形態に整える。表面から薄めた木工用ボンドを滴下・乾燥させ断面を固定する。必要なら、さらにビニライトまたはサンコールの希釈液を噴霧して野外に近い濡れ色を出す。なお、火山灰土壌、砂礫質土壌、有機質土壌、湿性土壌などは、それぞれの特性に応じた工夫を要する。また、エポキシ系樹脂は、野外で直接薄層土壌モノリスを作る方法にも適用できる。
 
目次
 
1.はじめに
2.発達の歴史
3.土壌モノリスの採取と作製法
 3.1 野外での柱状土壌モノリス採取法
  (1)用具と材料
  (2)試坑の作り方
  (3)採取
  (4)梱包と輸送
 3.2 室内での薄層土壌モノリス作製法
  (1)用具と材料
  (2)前処理
  (3)樹脂の塗布と裏布打ち
  (4)剥ぎ取り
  (5)マウンティング
  (6)表面仕上げ
 3.3 野外で直接薄層土壌モノリスを作製する方法
  (1)用具と材料
  (2)試坑の作り方
  (3)樹脂の塗布と裏布打ち
  (4)剥ぎ取り
  (5)梱包と輸送
  (6)マウンティングと表面仕上げ
 3.4 特殊な土壌の採取・保存法
  (1)アロフェン質土壌
  (2)砂礫質土壌
  (3)有機質土壌
  (4)過湿鉱質土壌
4.土壌モノリスの展示
5.土壌モノリスの採取・作製法に関する文献
 
付録 使用樹脂一覧
Summary
 
 以上、当所の「土壌モノリス館」 (現在は「農業環境インベントリーセンター土壌モノリス展示室」となっています。2010年5月)を紹介した。最新の土壌モノリス作成法は、農環研土壌分類関係者のページ(旧土壌分類研究室のページ) (対応するページは存在しません。2015年10月) )で見ることができる。
 
 

窒素施肥が土壌炭素の安定性と代謝回転に及ぼす様々な影響
 
Variable effects of nitrogen additions on the stability and turnover of soil carbon
Jason C. Neff et al., Nature, 419, 915-917 (2002)
 
要 約
 
 土壌は、陸上の炭素のなかで地表近くにある最大の貯蔵庫である。このため、土壌への炭素貯蔵と代謝回転を支配している要因を知ることが、全球の炭素循環の変化を理解するうえで不可欠である。土壌炭素の分解に対する気候の影響はよく調べられている。しかし、主として農業用肥料と化石燃料との燃焼によって生じる反応性窒素が、全球で急速に増加するときに、土壌炭素の動的にどのような影響があるかについては、不確実な部分かなりが残されている。
 
 この論文では、長期にわたって窒素施肥された試験圃場の土壌炭素を、14C、13Cおよび化合物中同位対比によって解析することで、次のことを証明した。すなわち、窒素の施用は、軽い土に含まれる炭素化合物(回転速度が10年程度)の分解を速めたが、より重い鉱物をともなう土壌の炭素化合物(数十年から百年の寿命)をさらに安定化した。
 
 このように、土壌中の貯蔵場所によって反応に違いがあるが、全体の土壌炭素全体では顕著な変化は見られなかった。このことは、現在広く用いられている手法に限界があることを示している。ここでの、比較的高い濃度の肥料を短期に施肥する条件で得られた結果が、大気からの降下物により、自然の生態系に低濃度で長期にわたり窒素が加わることによって生じる効果と同じかどうかはまだ分からない。しかしそれにもかかわらず、われわれの結果は、陸上の炭素循環についての現在のモデルが、窒素の可給性と土壌炭素の貯蔵量の間の複雑な関係を捉えるのに必要な仕組みを持っていないことを示唆している。
 
 現在の人間の活動は、自然界が行っているよりも多くの大気中の窒素を、生物が使える形態に固定している。この研究から、あらゆる人間の活動の長期作用を評価するためには、窒素負荷の増大に対する土壌炭素の反応の複雑さを考慮する必要があることが解る。
 
 

北アメリカの外来魚についての生態学的予測とリスク評価
 
Ecological predictions and risk assessment for alien fishes in north America
Kolar, C.S. and Lodge, D.M., Science, 298, 1233-1236 (2002)
 
 農業環境技術研究所は、農業生態系における生物群集の構造と機能を明らかにして生態系機能を十分に発揮させるとともに、侵入・導入生物の生態系への影響を解明することによって、生態系のかく乱防止、生物多様性の保全など生物環境の安全を図っていくことを重要な目的の一つとしている。このため、農業生態系における生物環境の安全に関係する最新の文献情報を収集しているが、今回は外来生物のリスク評価法に関連する論文の一部を紹介する。
 
要 約
 
 外来生物のリスク評価の方法は、とくに農業生態系以外では、ほとんどが定性的なものである。北アメリカ五大湖への魚類の移入についての一般化が可能なリスク評価手法と統計的モデルとを用いて、もっとも被害を起こしそうな種に移入防止の努力を集中するための定量的な手法を開発した。
 
 1つの生態系(北アメリカの五大湖)で、1つの分類群(魚類)を調査し、侵入の段階(定着、分布拡大、環境影響)を別々に検討した。そして、多変量モデルを開発して、非意図的(船舶のバラスト水)あるいは意図的(養殖、釣り餌、スポーツフィッシング、ペット用)に導入される魚類の生態系へのリスクを評価した。
 
 判別分析によると、定着に成功した外来魚は、定着できなかったものと比較して、成長が速く、広い範囲の温度と塩濃度に耐えられ、また、過去に侵入の記録がある場合が多い。これらの4つの特性を使った判別関数によって、定着に成功した種と失敗した種とを87%の正確さで判別できた。また、CART解析(categorical and regression tree analysis)では、これを94%の正確さで類別できた。同様にして、分布の拡大が早い種と遅い種について94%を正確に判別でき、有害な種かどうかについて89%を正確に判別できた。
 
 さらに、非意図的にあるいは意図的に導入された場合に、五大湖に高いリスクを有すると予想される種を、この手法で特定することができた。このようなモデルとそれによる予測は、外来種の脅威を減らすのに不可欠な定量的なリスク評価と管理手段の基礎となる。
 
 

本の紹介 94:海と暮らす−イノーの世界−
みんなの環境シリーズ 1、(財)環境科学総合研究所
(2002)
 
 
 小さな冊子である。財団法人環境科学総合研究所が、平成12年から始めた「市民環境セミナー」の講演録をまとめたものである。このセミナーの願いとするところは、様々な環境問題を市民と膝を交えて語り合い、「人間の生命の安全」を脅かす多くの問題点を示し、一人一人が身の回りの環境を正すことにある。このように、環境問題を身近な自分たちの問題として取り上げ、これを解決しようと心がけ、そのために、冊子にして世の人々に問いかけたのが本書である。わが国の社会のしなやかさに感じいり、ここにこの本を紹介した。
 
 「海と暮らす」という本書のタイトルは、「あとがき」にあるように、「看板に偽りあり」である。それは、本書が各地の市民環境セミナーの内容を整理して一冊の本にしたがためである。編者はこのことを率直に謝り、今後の解決に努力することを「あとがき」で述べている。目次は以下の通りである。
 
  まえがき 宇田川武俊
1. イノーの世界・琉球における海の畑 明道智弥
2. アマモ(海草)からみた日本人の自然観 相生啓子
3.
 
環境と観光をどう考えるか−スウェーデンのホテルに学ぶ− 高見幸子
 
4. 植物の病気をどのように防除するか 諸見里善一
5. 生物多様性を守るということ 宇田川武俊
  あとがき  
 
 「イノーの世界・琉球における海の畑」では、サンゴ礁の浅瀬(イノー)の世界と漁業、イノーとウミンチュ社会の変貌、海と陸の境界領域、マングローブと環境問題(生活・干潟・観光)、開発の論理・保護の論理、が語られる。
 
 「アマモ(海草)からみた日本人の自然観」では、海草の歴史、アマモの生活誌と生態系、日本人と海、日本人の自然観、アマモ場と経済成長、故郷の海、が語られる。「環境と観光をどう考えるか」では、ヨーロッパの環境の状況と経緯、環境保護団ナチュラル・ステップについて、エコホテルと生活の質、エコホテルの実際などが紹介される。 
 
 「植物の病気をどのように防除するか」では、農業の永続性、農業の発達と人口、化学農薬について、化学農薬を使わない防除法、マンゴー炭そ病、総合防除のあり方が解説される。「生物多様性を守るということ」では、アフリカで動物たちを見て、生物多様性とは何か、生物多様性はなぜ重要か、生物多様性を守った昔の暮らし、世界の生物は今どうなっているか、が解説される。なお、「まえがき」とこの章の著者は、農業環境技術研究所の元環境研究官の宇田川武俊氏である。
 
 

本の紹介 95:A Better Future for the Planet Earth
Lectures by the Winners of the Blue Planet Prize
The Asahi Glass Foundation, pp282 (1997)

 
 
 旭硝子財団は、平成4年に地球環境国際賞「ブループラネット賞」を創設した。地球サミットがリオデジャネイロで開催された年で、時宜を得た賞であるといえる。この財団は、平成14年11月14日に第11回のブループラネット賞を発表し、秋篠宮殿下ご夫妻の参加のもとに表彰式典を挙行した。今年の受賞者は、米国のスタンフォード大学のハロルド・ムーニー教授とエール大学教授のジェームス・ガスターブ・スペス教授である。
 
 ムーニー教授は、「植物生理生態学を開拓して、植物生態系が環境から受ける影響を定量的に把握し、その保全に尽力してきた業績」で、スペス教授は、「地球環境問題を世界に先駆けて科学的に究明して、問題解決を国際的に重要な政治課題までに高めた業績」での受賞であった。ムーニー教授は、SCOPE(環境問題科学委員会)やIGBP(地球圏−生物圏国際共同研究計画)で中心的な役割を果たした学者で、スペス教授は、NRDC(天然資源防衛委員会)、WRI(世界資源研究所)およびUNDP(国連開発計画)で活躍された学者であるから、ご存じの方も多いであろう。なお、1980年に米国で公表された「西暦2000年の地球」は、氏の功績があって大である。
 
 賞の名称「ブループラネット」には、青い地球が未来にわたって人類の共有財産として存在し続けるように、との思いが込められている。本書は、第1回目の Syukuro Manabe 氏から第5回目の Broecker 氏までの経歴、エッセイ、講演内容、受賞業績、受賞者の写真などを詳しく紹介している。
 
 この受賞者と内容の遍歴は、まさに地球環境問題の内容と遍歴でもある。次に掲載した「本の紹介96」と合わせ読むことによって、今後の地球環境研究の方向をさぐる一手段になるであろう。目次は以下の通りである。なお、ブループラネット賞に関する詳細は、旭硝子財団のウェブサイト、http://www.af-info.or.jp を参照されたい。
 
Preface
Some Background on the Blue Planet Prize
 
I. The Winners of the Blue Planet Prize
1992 Dr. Syukuro Manabe
Profile
Essay “Model Assessment of Observed Global Warming Trend”
Lecture “Future Projection of Global Warming by Climate Models”
Major Publications
International Institute for Environment and Development (IIED)
Profile
Essay “Rio Plus Five-What Has Happened and What Next?”
Lecture “IIED' s Post-Earth-Summit Strategy”
Major Publications
 
1993 Dr. Charles Keeling
Profile
Lecture “A Brief History of Atmospheric Carbon Dioxide Measurements and Their Impact on Thoughts about Environmental Change”
Major Publications
IUCN The World Conservation Union
Profile
Essay “The Convention on Biological Diversity: An Idea Whose Time Has Come”
Lecture “Towards a Sustainable Future”
Major Publications
 
1994 Professor Dr. Eugen Seibold
Profile
Essay “Earthquakes and Volcanic Eruptions: Protection versus Prediction”
Lecture “The Seafloor as Part of Our Environment”
Major Publications
Mr. Lester R. Brown
Profile
Essay “The Acceleration of History”
Lecture “Environmental Revolution”
Major Publications
 
1995 Dr.Bert Bolin
Profile
Essay “What We Know and What We Don't Know about Human-Induced Climate Change and What Should be Done?”
Lecture “Biogeochemical Cycles and Climate Change”
Major Publications
Mr. Maurice F. Strong
Profile
Essay “The Rio +5 Forum: Taking the Earth Summit from Agenda to Action”
Lecture “Japan: Leading the World to a Sustainable Civilization”
Major Publications
 
1996 Dr. Wallace S. Broecker
Profile
Essay “Our Burden of Responsibility”
Lecture “Will Our Ride into the Greenhouse Future be a Smooth One?”
Major Publications
M.S. Swaminathan Research Foundation (MSSRF)
Profile
Essay “Sustainable Development ? Five Years after Rio”
Lecture “Ecotechnology and Sustainable Food Security”
Major Publications
 
II. “Questionnaire on Environmental Problems and the Survival of Humankind”
Five-Year Summary
 
About the Asahi Glass Foundation
Afterword
 
 

本の紹介 96:A Better Future for the Planet Earth,
Vol.2, Lectures by the Winners of the Blue Planet Prize
The Asahi Glass Foundation, pp326 (2002)

 
 
 本書は、上述した「本の紹介 95」に続く第2巻である。ブループラネット賞の第6回の James E. Lovelock (本の紹介97および98の著者)から第10回の Norman Myers までの受賞者の経歴、エッセイ、講演内容、受賞業績、受賞者の写真などが詳しく紹介されている。
 
 第1巻とあわせて読むことによって、地球環境の変動がここまできたのかとの思いが深まる。また、われわれは人類の英知を傾けて、地球環境の保全に尽力しなければならないとの思いがさらに深まる。目次は以下の通りである。なお、ブループラネット賞に関する詳細は、旭硝子財団のウエブサイト、http://www.af-info.or.jp を参照されたい。
 
Preface
Some Background on the Blue Planet Prize
 
I. The Winners of the Blue Planet Prize
1997 Dr. James E. Lovelock
Profile
Essay “The Evolution of the Earth”
Lecture “Travels with an Electron Capture Detector”
Major Publications
Conservation International (CI)
Profile
Essay “Setting Priorities for Saving Life on Earth: Megadiversity Countries, Hotspots, and Wilderness Areas”
Lecture “Biodiversity Conservation:
A Global Challenge, A Global Priority”
Major Publications
 
1998 Professor Mikhail I. Budyko
Profile
Essay “Global BiosphereCataclysms”
Lecture “Global Climate Warming and its Consequences”
Major Publications
Mr. David R. Brower
Profile
Essay “Comments on the Draft Yosemite Valley Plan”
Lecture “CPR for Business and the Planet”
Major Publications
 
1999 Dr. Paul R. Ehrlich
Profile
Essay “Our Environmental Future”
Lecture “Keeping the Blue Planet Habitable: A Multidisciplinary Challenge”
Major Publications
Professor Qu Geping
Profile
Essay “Let Nature Guide Man and Create a New Civilization for Mankind”
Lecture “My Dreams and Expectations -30 Years of Involvement with Environmental Protection”
Major Publications
 
2000 Dr. Theo Colborn
Profile
Essay “Say ‘No’ to Toxic Hitch-hikers”
Lecture “Inner Space Research: Assuring the Integrity of Future Generations”
Major Publications
Dr. Karl-Henrik Robert
Profile
Essay “The Second Arena”
Lecture “Planning form Principles for Success -Lecture on The Natural Step
Framework-”
Major Publications
 
2001 Lord (Robert) May of Oxford
Profile
Essay “Biological Diversity in a Crowded World: Past, Present, and Likely Future”
Lecture “Biological Diversity: Causes, Consequences, and Conservation”
Major Publications
Dr. Norman Myers
Profile
Essay “Our Environmental Future”
Lecture “Exploring The Frontiers of Environmental Science”
Major Publications
 
II. “Questionnaire on Environmental Problems and the Survival of Humankind”
10-Year Summary
 
About the Asahi Glass Foundation
Afterword
 
 

本の紹介 97:地球生命圏GAIA
J.E. Lovelock 著、スワミ・プレム・プラブッダ訳、
工作舎
 2400円 (1984)

 
 
 原著は、「GAIA: A New Look at Life on Earth 」と題され、Oxford University Press から1979年に出版されている。本書は、現在の地球問題を考えるうえで、あらゆる分野の多くの技術者や科学者に多大な影響を与えた。今から18年前の翻訳本であるが、若い研究者のために、ここに紹介する。
 
 ガイアとは、ギリシャ神話に語られる「大地の女神」のことである。遠いむかし、ギリシャ人は大地を女神として敬い、「母なる大地」に畏敬の念をいだいていた。この考え方は歴史上いたる国でみられ、いまなおわれわれの信条のもといとなっている。もちろん、わが国でも「古事記」にみられるように、石や土を称えた石土毘古神(いわつちびこのかみ)が敬われている。
 
 一方、近年、自然科学の発展と生態学の進展にともなって、地球生命圏は土壌や海洋や大気を生息地とするあらゆる生き物たちの単なる寄せ集め以上のものであるという推測が行われている。著者の J.E.Lovelock は、この推測を本書で実証しようとする。つまり、地球の生物と大気と海洋と土壌は、単一の有機態とみなせる複雑な系を構成しており、われわれの地球を生命にふさわしい場として保つ能力をそなえているという仮説の実証である。
 
 彼は化学者として大学を卒業し、生物物理学・衛生学・熱帯医学の各博士号を取得し、医学部の教授をへてNASAの宇宙計画のコンサルタントとして、火星の生命探査計画にも参加した。また、ガスクロマトグラフィーの専門家で、彼の発明した電子捕獲検出器は、環境分析に多大な貢献をしている。彼は、「沈黙の春」の著者レイチェル・カーソンの問題提起のしかたは、科学者としてではなく唱道者としてのそれであったと説き、生きている地球というガイアの概念を、天文学から動物学にいたる広範な科学の諸領域にわたって実証しょうとする。
 
 本書は第1章から第9章、訳者後記、用語の定義と解説、参考文献から成っている。参考文献は、微生物から宇宙にいたるまで幅広く、なかでも、Science, Nature, Tellus, J. Geophys. Res., Atm. Environ., SCOPE などの雑誌は、われわれにもなじみ深い文献である。
 
 第1章では、火星の生命探査計画に始まる地球生命への新たな視座、すなわち地球とその生命圏との関係についてのひとつの新しい概念を提起し、ガイア仮説を述べている。第2章では、ガイア誕生のための太初の生命の出発、生命活動と大気の循環、生命圏による環境調整について語る。第3章では、他の惑星との大気組成の比較、微生物の活性などによってガイアを認識させようとする。第4章では、ガイアのもつサイバネティクスを温度調節と化学組成の調節を例にとって解き明かしていく。
 
 第5章では、生理学者が血液の成分を調べ、それが全体として生命体のなかでどのような機能をはたしているかを見るのと同様な扱いで、現在の大気圏をとりまく空気の成分を解説する。ここでは土壌や海洋から発生するメタン、亜酸化窒素、アンモニア、二酸化炭素などのガスが生命圏の安定状態の維持に重要であることが語られる。第6章では、海洋が〈彼女〉の大切な部分であることを、「海はなぜもっと塩からくならないか」というテーマや、硫化ジメチルなどの化学成分の海洋から大陸への旅で説明する。
 
 第7〜8章では、ガイアと人間について論じている。人間の諸活動がもたらす危険を注意深く監視するのに必要な最重要地域は、熱帯の湿地帯と大陸棚であると強調する。また、オゾン層の増減には常に気を配ることを力説する。そして、ガイアの自己調節活動の大半は、やはり微生物によるものと考えていいとする。さらにガイア仮説と生態学を比較し、「ガイア仮説は、惑星の細部ではなく全体を明かした宇宙空間からの地球の眺望を出発点としている。一方、生態学のほうは全体像というよりは、地についた自然史と、さまざまな生息地や生態系の緻密な研究に根ざすものである。かたや森をみて木がみえず、かたや木をみて森がみえない」と説く。
 
 第9章では、人間とガイアの相互関係における思考や感情という、ガイア仮説のうちでもっとも推測的でつかみにくい側面を語っている。
 
 以上がこの訳書の概略である。本書の前半の六つの章は、いわゆる自然科学の領域で理解できるものであろう。けれども、ガイアと人類について論ずる最後の三つの章はきわめて信条的で難解な部分が多い。しかし、本書のような観点から地球をとらえた時、地球の研究がいかに生命圏の維持、保全に重要なものであるかが理解されよう。著者は語る。「ガイア仮説は、散策したりただ立ちつくして目をこらしたり、地球やそこで生まれた生命について思いをめぐらせたり、われわれがここにいることの意味を考察したりすることの好きな人びとのためのものである」と。目次は以下の通りである。
 
 著者はその後、1988年に「The Ages of GAIA: A biography of our living Earth」を書いて、Oxford University Press から出版した。この本は、スワミ・ブレム・プラブッダにより「ガイアの時代」と訳され、工作舎から1989年に出版されている。
 
地球生命圏―ガイアの科学▼目次
まえがき
第1章▼序章
  1 火星の生命探査計画にはじまる
  2 地球生命への新たな視座
  3 ガイア仮説の誕生
 
第2章▼太初(はじめ)
  1 過酷な環境下での生命の出発
  2 生命活動と大気の循環
  3 生命(バイオス)(フイア)による環境調整
  4 嫌気性の世界と危機の克服
 
第3章▼ガイアの認知
  1 ガイアの仕事と偶然の産物のちがい
  2 平衡世界と生命なき安定状態
  3 生きている世界
  4 ガイアの死についての思考実験
  5 SF「ネッシン博士の異常な愛情」
 
第4章▼サイバネティックス
  1 直立作業のサイバネティックス
  2 直線論理から循環論理へ
  3 体温調節とホメオスタシス
  4 ガイアの自動制御システム
  5 正と負のフィードバック
  6 情報と自由エネルギー
 
第5章▼現在の大気圏
  1 宇宙空間からの地球像
  2 大気圏の構成
  3 酸素と生命(バイオス)(フイア)
  4 メタンの機能
  5 亜酸化窒素とアンモニア
  6 窒素ガスと微量ガス
  7 二酸化炭素と水蒸気
 
第6章▼海
  1 〈水球〉としてのガイア
  2 海はなぜ塩からいのか
  3 生きた細胞と塩分
  4 海はなぜもっと(・・・)塩からくないのか
  5 ガイアの塩分コントロール
  6 硫黄収支の謎を追う
  7 海岸開発の前に
 
第7章▼ガイアと人間―汚染問題
  1 「昔はよかった」の呪縛を超えて
  2 自然界の汚染物質
  3 地球と生命を脅かすもの
  4 オゾンを消衰させるもの
  5 ガイアと調和するテクノロジー
  6 海洋農場の危険性
  7 全地球的な目くばり
 
第8章▼ガイアのなかに生きる
  1 人間中心の生態学(エコロジー)を超えて
  2 ガイアの制御プロセス
  3 ガイアの健康を保つために
  4 人間の歴史と全地球的環境
  5 都会の科学者によるモデル操作の限界
  6 オルタナティヴ・テクノロジーの可能性
 
第9章▼エビローグ
  1 思考・感情とガイア
  2 パートナーの一員としての人間
  3 ガイアと知性
  4 われわれの中のガイアめざめ
 
訳者後記▼体験的ガイア論▼スワミ・プレム・プラブッダ
  用語の定義と解説
  参考文献
 
 

本の紹介 98:ガイアの時代
J.E. Lovelock 著、星川 淳訳、工作舎
(1989)
ISBN4-87502-158-5
 
 
 本書は、「本の紹介97:地球生命圏ガイア」が、その後の科学的知見を元に全面書き直しされた物である。その間、9年の歳月が経過している。
 
 ルイス・トマスは、本書の「序文」で次のように語る。われわれは地球を整合性のある一つの生命システムととらえるようになるだろう。それは自己調節能力と自己更新能力をそなえた、一種の巨大生命体である。ここから直接・間接に何か新しい技術的応用が生み出されるとは思えない。が、将来われわれが選択するであろういまとはちがった種類のテクノロジーに対し、新たな、より穏やかな影響をおよぼしはじめる可能性は大きい。
 
 「はじめに」では、著者がガイアの声を代弁したいだけであることを強調する。なぜなら、人間の声を代弁する人の数にくらべ、ガイアを代弁する者があまりにも少ないからである。また「ヒポクラテスの誓い」と題して、本書の目的の一つに、惑星医学という専門分野が必要で、その基礎としての地球生理学を確立する必要があると説く。
 
 第1章では、この本が書かれた理由を以下のように説明する。本書はわたしたちが属する世界について一人の人間の見たままをつづったものであり、何よりも著者にとっても読者にとっても楽しめる本である。これは、田園散歩に出かけたり、コロレンコがしたように友人たちと地球が生きていることについて論じ合ったりする時間をそのなかに含む、ひとつの生き方の一端として書かれたものだ。
 
 第2章は、本書の中で第6章とともにもっとも主要な部分で、生命と生命の条件が解説され、デイジーワールドの進化が提案される。生命としての地球の説明については、観念的には次の文章が理解しやすい。なかに次つぎと小さな人形の入った入れ子式のロシア人形のように、生命は一連の境界線のうちに存在している。もっとも外側の境界は、地球大気が宇宙と接するところである。この惑星的境界線内部で、ガイアから生態系へ、動植物へ、細胞へ、DNAと進むにつれ、生命体の大きさは縮小するが生育はどんどん盛んになってゆく。
 
 第3章では、地球生理学的視点から見た地球の歴史を、デイジーワールドを使い生命の発祥から今日までたどる。
 
 第4,5,6章は、科学的に妥当な年代を順番に並べたものである。最初は生命が発生した始生代で、この代の地球上唯一の微生物はバクテリアであり、大気はメタン主体で酸素は微量ガスの一つにすぎなかった。原生代と呼ぶ次の中世の章では、酸素がはじめて大気ガスの主体として登場してから、細胞の集団が集まってそれぞれ独自の個体性を持った新種の共同体を形成するときまでを扱っている。次は、動物が現れた顕生累代についての章である。第6章は、第2章と同様にこの本では重要な部分である。
 
 第7,8,9章は、ガイアの現在と未来を扱ったもので、地球上における人類の存在と、何時の日か火星上にもそれが広がってゆくかもしれない可能性とに力点を置いたものである。第9章では、これまで提出された様々な質問や問題点に解答を試みている。
 
 この本を読んでいて、農業にかかわるひとびとが大きな関心を寄せる箇所がいたる所に現れる。執筆者が見つけただけでも、少なくとも9カ所散在する。簡単に言えば、農林漁業はガイアにとって好ましくない存在であると言うことである。以下にその代表的な記述を紹介する。これらの指摘をどのように理解するか、反論があればどのように説得するか、認める部分があればその対策をどのようにとるか。われわれに与えられた課題であろう。
 
●地球の健康は、自然生態系の大規模な改変によってもっとも大きく脅かされる。この種のダメージの源として一番重大なのは農業、林業そして程度はこの二つほどではないが漁業であり、二酸化炭素、メタン、その他いくつかの温室効果ガスの容赦ない増加を招く。
 
●われわれはけっして農業なしには生きていけないが、よい農業と悪い農業のあいだには大きなひらきがある。粗悪な農業は、おそらくガイアの健康にとって最大の脅威である。・・・・・・・・
 
序文  ルイス・トマス
はじめに
コームミルの水車場から/ガイアの代弁者として/ヒポクラテスの誓い
 
第1章
序章
月への招待状/X博士の火星生物探査器/不毛の火星とガイア仮説/先人コロレンコ
生命鏡/既成科学とも人間主義ともなじまない理論/地球を散策する
 
第2章
ガイアとは何か?
生命の不完全な定義/進化するガイア/「全生命カタログ」を超えて
シュレーディンガーの比喩/無知の不在とエントロピー/散逸構造論の美徳
1パーセントの生/S・J・グールドの謎めいたことば/R・ドーキンスたちの「ガイア」批判
反批判のために/デイジーワールド・モデル/生命の4条件/地球のジグソーパズル
 
第3章
デイジーワールド探訪
理論の劇場/デイジーワールドの意味/理論生態学の限界/複雑さは不利か?
地球生理学と生態学/外的撹乱への対応/デイジーワールド曲線を読む
設定値のない閉鎖ループ/システム全体を扱う/抹殺への本能的な怒り
 
第4章
始生代
ガイア幼年期への旅/メディアとしての生物/もうひとつのビック・バン/地殻岩石情報
死んでいる惑星/ガイア誕生前夜の大気/エネルギー源と生命の器/生命発生とガイア生誕のあいだ
メタンのスモッグ/光合成生物とメタンの生成生物/二酸化炭素の消費/始生代を観光する
海洋の維持/地球のか弱い眉/オゾンの神話の崩壊/雨を作る生物
元素のコントロール/メタンの時代から酸素時代へ/始生代のコミュニケーション・ネットワーク
 
第5章
中世
地球の骨/思春期のガイア/始生代から原生代への激変
ホメオスタシスとカルシウムの毒性/プレートテクトニクス/シャボン玉と塩水
塩分対策/原生代の巨大遺跡/もし生命が存在しなかったら/微生物の土木労働者
酸素の生産/大気の進化モデル/稼働する生物原子炉/青空
 
第6章
近世
消費者と生産者の時代/酸素をめぐる戦略/ふたたび上昇した酸素レベル/火事の地球生理学
二酸化炭素と太陽/氷河期の繁栄/ある農芸生物学者の干渉/わがフロン探査航海
イオウを運ぶ物質/グレン・ショウのアイデア/海藻による気候調整システム/安定期終焉
 
第7章
ガイアと現代環境
ヒューマニストの矛盾/ガイアを診断する/◎二酸化炭素による発熱/◎酸による消化不良
◎オゾン病―皮膚科学のジレンマ/◎放射能被曝/◎真の病/名医求む!
 
第8章
第2の故郷
月面歩行のニュース/火星緑化の物語/武器商人ブラスボトム氏の名案
火星について知っていること/火星最悪の事態/火星の上に立つ/原子炉プラント構想
はたして計画は成功するか/火星生態系を予想する/恒常性維持のための根気と愛情
 
第9章
神とガイア
わたし自身のこと/いまここにあるガイア/方法としてのガイア/都市生活の地獄
ヒューマニズムの罪/漆黒のタールの上に散らばった宝石/病的なものへの関心
未来のアトランティス/本当の〈母〉
 
エピローグ
クジャクとコンクリート/お茶の思い出/盗まれた田園
ブレイクのヴィジョン/ケアリー川に橋をかける/わが?燭は両端から燃える
 
訳者あとがき・参考文献
 
 

本の紹介 99:読書力
齋藤 孝著、岩波新書801
(2002) ISBN4-00-430801-1
 
 
 明治維新者の精神的支柱であった吉田松陰先生は、萩の地に松下村塾を設けていた。多くの若者がこの塾を巣立って、新しい日本の時代を創っていったことは、歴史が証明している。この松下村塾の講義室の柱に、竹に刻まれた吉田松陰の書(漢字のみ)がいまも飾ってある。
 
 「万巻の書を読むに非(あら)ざるよりは、安(いず)くんぞ千秋の人たることを得ん。
  一己の労を軽んずるに非ざるよりは、安くんぞ兆民の安きを致すを得ん。」と。
 
 多くの本を読み勉強しなければ、どうして名を残すような立派な人間になることができようか。労力を惜しむようなことがあっては、どうして多くのひとびとのために何かすることができようか。と、解釈できる。名を残そうが残すまいが、個人の勝手な想いであろう。しかし、文章の前段と後段は連結しているのである。国民の税金をもとに研究をしているわれわれは、国民のためになる研究をしているのである。そのためには、読書がきわめて重要なのである。
 
 本書は「情報:農業と環境」に直接は関係ないが、上に掲げた理由と「読書の秋」を思ってここに紹介する。
 
 序章では、読書力とは何か、なぜ読書力などということを言い出すことになったのかについて、思いのたけが述べられる。序章で印象的な文章を、いくつか列記する。
 ●私がひどく怒りを覚えるのは、読書をたっぷりしてきた人間が、読書など別に絶対にしなければいけないものでもない、などと言うのを聞いたときだ。
 ●本は読んでも読まなくてもいいというものではない。読まなければいけないものだ。
 ●書くことは読むことの氷山の一角だと私は考えている。読書は単に情報の摂取のためにあるばかりではない。思考力を鍛え、人間をつくるものだ。読書という真面目な行為を軽視するような発言をすることで、権威的なものからいかほどかフリーになっているポーズをとる欺瞞には耐えられない。
 ●「読書力がある」ということは、読書習慣があるということである。読書が苦にならずに日常で何気なくできる力、これが読書力である。
 ●私の基準としては、「本を読んだ」と言うことは、まず「要約が言える」ということだ。
 
 第1章「自分をつくる」では、読書が自己形成にとって強力な道であることが書かれている。時代が進んでいるようでも、個人個人はやはりゼロからスタートする。読書はあいかわらず自己形成の王道だと主張する。この章で印象的な文章を、いくつか列記する。
 ●「本はなぜ読まなければいけないのか」という問いに対する私の答えは、まず何よりも「自分をつくる最良の方法だからだ」ということだ。
 ●矛盾し合う複雑なものを心の中に共存させること。読書で培われるのは、この複雑さの共存だ。自己が一枚岩ならば壊れやすい。しかし、複雑さを共存させながら、徐々にラセン状にレベルアップしていく。それは、強靱な自己となる。
 ●一人の静かな時間は、人を育てる。読書は、一人のようで一人ではない。本を書いている人との二人の時間である。
 ●言葉をたくさん知るためには、読書は最良の方法である。なぜ読書をした方がよいのかという問いに対して、「言葉を多く知ることができるからだ」という答えは、シンプルなようだがまっとうな答えだ。
 ●自分の経験と著者の経験、自分の脳と著者の脳とが混じり合ってしまう感覚。これが、読書の醍醐味だ。
 ●実体験の前に読書をしていることは、体験の質を低くするどころか高くするものだと私は考えている。
 
 第2章「自分を鍛える」では、読書をいったんスポーツとして捉えて、上達のプロセスをクリアにしている。あまりにも精神的な行為として見られて敬遠されがちな読書を、一度スポーツや芸事のような身体的な行為として考えて、読書になじみやすくなってもらいたいという気持ちが現れている。この章は、目次そのものが読書力のまさに技術である。技術の重要さがこの章で理解されよう。
 
 第3章「自分を広げる」では、コミュニケーション力の基礎としての読書の役割について具体的に書かれている。本を読むことで対話力はアップする。話の文脈をつかまえる力は読書で確実に養われる。この本を紹介している筆者は、つねづね「読書は人を豊かにし、会話は人を機敏にし、書くことはひとを確実にする」と思っているいるが、2番目の会話、すなわちコミュニケーションも結局は、この読書力に影響することがこの本から理解することが出来た。本書の以下の文章がそのことを証明してくれる。
 ●通常、人の話には幹と枝葉がある。この幹をつかまえる力は、読書を通じて要約力を鍛えることによって格段に向上する。
 ●読書で要旨をつかまえることのできない人は、質の高い会話のやりとりは難しい。会話で要点を外さずに捉え、うまく切り返す能力は、いわばどのコースに来るかわからない球を打つようなものだ。
 ●読書をしているかしていないかが会話に表れるポイントとしては、話し言葉がきちんと文章になっているかどうかということである。
 
 巻末には、「大人の読書」に移行するための文庫百タイトルがひとつの例として挙げられている。
 
 この本は、次のことを語っているのかも知れない。世の中には素晴らしい本が無数にある。世の中には素晴らしい人が無数にいる。この素晴らしい本と人から、素晴らしいものを手に入れることができれば、その人は素晴らしい人になれる。要は、その素晴らしいものを手に入れるためには、その人のアンテナがいつも磨かれているかどうかにかかっているのだと。目次は以下の通りである。
 
 まえがき
 
序 読書力とは何か
「本を読む読まないは自由」か
読書してきた人間が「本は読まなくてもいい」というのはファウル
「読書力がある」の基準は?
精神の緊張を伴う読書
文庫のスタイルに慣れる
新書五十冊
本は高いか
要約を言えることが読んだということ
新書は要約力を鍛える
読書力検定がもしあったら
社会で求められる実践的読書力
なぜ百冊なのか
有効期限は四年
本は「知能指数」で読むものではない
「小学校時代は本を読んだけど」の謎
定期試験に読書問題を入れる
顎を鍛える食らうべき書
歯が生え替わった本
日本は読書立国
総ルビ文化・世界文学の威力
読書力は日本の含み資産
the Book がないからBooks が必要だった
 
I 自分をつくる−自己形成としての読書
1  複雑さを共存させる幅広い読書
2  ビルドゥング(自己形成としての教養)
3  「一人になる」時間の楽しさを知る
4  自分と向き合う厳しさとしての読書
5  単独者として門を叩く
6  言葉を知る
7  自分の本棚を持つ喜び
8  繋がりながらずれていく読書
9  本は背表紙が大事
10 本は並べ方が大事
11 図書館はマップづくりの場所
12 経験を確認する
13 辛い経験を乗り越える
14 人間劇場
15 読書自体が体験となる読書
16 伝記の効用
17 ためらう=溜めること
18 「満足できるわからなさ」を味わう
 
II 自分を鍛える−読書はスポーツだ
1  技としての読書
2  読み聞かせの効用【ステップ1】
3  宮沢賢治の作品が持つイメージ喚起力
4  自分で声に出して読む【ステップ2】
5  音読の技化
6  音読で読書力をチェックする
7  読書は身体的行為である
8  線を引きながら読む【ステップ3】
9  三色ボールペンで線を引く
10 読書のギアチェンジ【ステップ4】
11 脳のギアチェンジ
 
III 自分を広げる−読書はコミュニケーション力の基礎だ
1  会話を受けとめ、応答する
2  書き言葉で話す
3  漢語と言葉を絡ませる
4  口語体と文語体を絡み合わせる
5  ピンポンと卓球
6  本を引用する会話
7  読書会文化の復権
8  マッピング・コミュニケーション
9  みんなで読書クイズをつくる
10 本を読んだら人に話す
11 好きな分を書き写して作文につなげる
12 読書トレーナー
13 本のプレゼント
 
文庫百選 「読書力」おすすめブックリスト
 
 

資料の紹介:IGBP Dictionary, 2002/2003
 
 
 IGBPについては、すでに先月の「情報:農業と環境 No.31」で紹介した。ここでは、新しく発刊された「IGBP辞典:2002/2003」を紹介する。本書は218ページに及び、IGBPの概略が鳥瞰できるきわめて便利な辞典である。IGBPの詳細は、http://www.igbp.kva.se/ から知ることができる。本書の目次は以下の通りである。
 
Introduction
International Geosphere-Biosphere Programme (IGBP):
A Study of Global Change
Scientific Committee for the IGBP
IGBP Secretariat
 
IGBP PROJECTS
Biospheric Aspects of the Hydrological Cycle (BAHC)
Global Analysis, Integration and Modelling (GAIM)
Global Change and Ecosystem Dynamics (GCTE)
Global Ocean Ecosystem Dynamics (GLOBEC)
International Global Atmospheric Chemistry Project (IGAC)
Joint Global Ocean Flux Study (JGOFS)
Land-Ocean Interactions in the Coastal Zone (LOICZ)
Land-Use / Cover Change (LUCC)
Past Global Changes (PAGES)
Surface Ocean  Lower Atmosphere Study (SOLAS)
 
International Partners in Global Environmental Change Science
DIVERSITAS An International Programme of Biodiversity Science
International Human Dimensions Programme on Global Environmental Change (IHDP)
World Climate Research Programme (WCRP)
Activities of the Earth System Science Partnership
Global Change System for Analysis Research and Training (START)
Global Carbon Project (GCP)
GECAFS
 
Other Partners
Scientific Committee on Problems of the Environment (SCOPE)
 
Co-Sponsors in Global Environmental Change Research
International Council for Science
ICSU Advisory Commission on Atmospheric
Chemistry and Global Pollution (ICACGP)
Intergovernmental Oceanographic Commission (IOC) of UNESCO
Scientific Committee on Oceanic Research (SCOR)
 
National Committees
Role and Function
Benefits
Establishment of a National Committee
Responsibilities
National Committees and Members
 
Regional Information Centers
Contact Persons
 
Past Members of SC-IGBP, Core Project
Executive Directors and Core Project Chairs
Address List
List of Acronyms
List of Publications
IGBP Report Series. List with Short Summary
 
 

資料の紹介:環境と食料生産の調和に関する研究
高等研報告書0203、財団法人国際高等研究所
(2002)

 
 
 「環境と食料生産の調和に関する研究」は(財)国際高等研究所の研究課題のひとつとして、1998年4月から2001年3月まで続けられた共同研究である。
 
 報告書は序章と終章とをあわせて全9章からなる。序章に研究の意図と方法など、第1章に環境、第2〜3章に農業技術、第4章に食料需給バランスの問題点が取り上げられている。中国およびインド・バングラデシュの現地調査結果が第4および5章に述べられている。第7章は、現地調査のまとめとして、21世紀においてアジア農業と農村が目指すところに焦点が当てられている。
 
 本書は、この種の21世紀的課題に対しての、少なくとも日本からする最初のまとまった発言であると思われる。研究会は専門が多岐(農耕文化論、農村開発論、土壌学、昆虫学、農業土木学、熱帯農学、農業経済学、人口学、農耕技術論、文化人類学、地球環境学、地域開発論)にわたる12人のメンバーで構成されている。目次は以下の通りである。
 
まえがき
序章
  1 研究の出発と経過の概要
  2 アジアの認識をめぐる前提―人口、都市、農村
  3 研究の問題認識、目標、手法
  4 本報告書の構成
 
第1章 アジアの特異性とその環境資源の特質
  1 アジアの特異性
  2 環境資源の特質
  3 おわりに―「アジアの豊かさと脆さ」
 
第2章 20世紀農業の光と影
  1 はじめに
  2 食料自給の見通しが楽観的である根拠
  3 転換期を迎えた科学農業
 
第3章 新しい農業技術への期待と限界
  1 はじめに
  2 期待される農業技術―生物改良・栽培・飼育の視点から
  3 病害虫防除の問題点と新しい防除体制
  4 むすび―楽観と悲観と
 
第4章 世界とアジアの食料需給の分析
  1 世界食料需給バランスの危機と対応戦略
  2 世界食料需給予測の比較検討
  3 アジアにおけるコメの特殊性とその農業政策への含意
  4 先進・途上国間の消費格差
  5 結論
 
第5章 ケース・スタディーからの視点
    中国の場合
  1 はじめに
  2 中国食料危機の予測と反論の検証
  3 中国農業をめぐる最近の研究と農村の変容
  4 中国農業の注目すべき動き
  5 むすび
 
第6章 ケース・スタディーからの視点
    インド・バングラデシュの場合
  1 はじめに
  2 インドの農業政策―ポスト「緑の革命」を目指して
  3 インドの農村の現状と苦悩
  4 インドの農業・農村問題のまとめ
  5 バングラデシュの農村を歩いて
  6 バングラデシュにおける、ひとつの試み
  7 この章のまとめ―次章とのつなぎ
 
第7章 複合的循環農業システムと「デサコタ」型農村開発
    ケース・スタディーのまとめとして
  1 はじめに
  2 複合的循環農業システムの構築―「緑の革命」を越えて
  3「デサコタ」型農村の創設―小都市と村の共存を考える
  4 むすび
 
終章
  1 はじめに
  2 委員会での論議から―書き残したことなど
  3 最終委員会での共同討議の結論
 
座談会―課題研究を終えて―
 
 

報告書の紹介:欧州委員会から欧州議会、理事会、
経済社会評議会および地域委員会への文書;
持続可能な開発のための
グローバル・パートナーシップに向けて

 
COMMUNICATION FROM THE COMMISSION
TO THE EUROPEAN PARLIAMENT, THE COUNCIL,
THE ECONOMIC AND SOCIAL COMMITTEE
AND THE COMMITTEE OF THE REGIONS
Towards a global partnership for sustainable development

COMMISSION OF THE EUROPEAN COMMUNITIES
Brussels, 13.2.2002
COM(2002) 82 final
 
 欧州委員会は、2002年2月13日に欧州議会、欧州理事会、経済社会評議会および地域委員会への文書「持続可能な開発のためのグローバル・パートナーシップに向けて」を採択した。この文書は、持続可能な開発への欧州連合の取組みについて、とくにその対外的な側面を強化するための戦略と行動を、欧州議会、欧州理事会等に提案する文書である。
 
 今回は、この文書の英語版:
http://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/PDF/?uri=CELEX:52002DC0082&rid=3 (最新のURLに修正しました。2014年8月)
を日本語に仮訳した。仮訳した中には原文の内容が的確に表現されていない部分もあると思われるので、原文で確認していただきたい。なお、参考となると思われる資料を脚注として加えている。
 
目次
1. グローバル・パートナーシップの実情
2. グローバル・パートナーシップを通した市場統合、統治、国内政策の課題
3. 欧州連合の貢献: 優先目的への対応
3.1. グローバリゼーションを操作する:持続可能な開発のための貿易
3.2. 貧困との闘いと社会開発の促進
3.3. 天然資源と環境資源の持続可能な管理
3.4. 欧州連合政策の一貫性の改善
3.5. すべてのレベルでのより良い統治
3.6. 持続可能な開発への資金調達
4. 戦略の実施と再検討
 
1. グローバル・パートナーシップの実情
 持続可能な開発を行うためには、社会の経済的、社会的、環境的な目的間のバランスを保ち、今日の福祉を最大化するとともに、将来の世代の要求を満たす機能を危うくしてはならない。
 
 欧州連合は、持続可能な開発の国内戦略をすでに設定している1)。この戦略を進めるために、2001年6月にイエーテボリで開かれた欧州理事会では、対外的面をさらに展開する必要があることを認めた。また、地球規模での持続可能な開発への欧州共同体の貢献を検討し、2002年の持続可能な開発に関するヨハネスバーグ世界サミットにおける「世界的な取組み」のための戦略的構成要素を明らかにすることを、委員会に要請した。この文書はこれらの面を扱う。

イエーテボリ欧州理事会については、下記のウェブページが参考になる
 http://www.deljpn.ec.europa.eu/modules/media/speech/2001/010618.html?ml_lang=en (該当するページが見つかりません。2012年7月)
(Speech 17/01、18 June 2001: 「持続可能な発展および気候変動に関するイエーテボリ欧州理事会の成果」、マルゴット・ヴァルストレム欧州委員会環境担当委員)

 
 1992年のリオ会議以来、持続可能な開発の各要素に取り組むため、多くの新しい計画が提出されたが2)、全体としての進展は遅かった。グローバリゼーションから生れる新たな課題だけでなく、残された多くの課題に包括的かつ効果的な方法で取り組むために、新しい行動が必要である。
 
 世界の多くの国々は、経済成長の加速、とくに市場開放の進行と海外直接投資(FDI)制度の自由化の恩恵を受けた。1960年以降、世界貿易は15倍に拡大し、世界の一人あたりの所得は2倍になった。経験は、グローバリゼーションが経済成長と生産性を生み出し続けることができることを示している。
 
 開発途上国は、多くの面で前進した3)。その輸出と生産はかなり多様化し; 平均寿命が伸び、多くの人について、生活が向上した。それでもなお、あまりに多くの国や民族間で、貧困、失業、排斥が今なお続いている4)。世界の人口の半分は、1日2ドル未満で生活している。国内と国の間で不平等が拡大している。1960年には、世界で豊かな上位5分の1の国の収入は、貧しい下位5分の1の国の30倍であった: 今日では、それが90倍になっている。豊かな上位5分の1の国が世界の民間総消費支出の86%近くを占める5)。世界中でおよそ10億人の女性と男性が失業者であるか不完全就業者あるいは低収入労働者であり、2億5千万人の子供たちが働き、就業年齢人口の約80%は基本的な社会的保護を受けられないでいる6)

1) よりよい世界のための持続可能な欧州: 持続可能な開発についての欧州連合戦略 COM(2001) 264
2) 地球温暖化に関する京都議定書や、後発開発途上国からの産品に対する無税・無枠の市場アクセスを目的としたドーハ閣僚宣言の公約など、さまざまな例がある。
3) 開発途上国の経済は変化しており、30年前には製造業が輸出額の25%をやっと超えていたのが、現在は70%になっている。東アジアでは、1970年代中期には、10人に6人が1日あたり1ドル未満で生活していた; 現在は、10人のうち2人になっている。
4) サハラ以南のアフリカでの収入は、1975〜1999年の間に平均で年1%ずつ減少した; 46%の人々はいまだに1日1ドル未満で生活しており、平均寿命は、他の地域では60歳以上であるのに対して、49歳である。

 
 さらに、水、土地と土壌、生物多様性、森林と魚資源など、多くの天然資源が、すでに限界まで、あるいは限界を越えて開発され、環境に深刻な被害をもたらしている。
 
 不平等の拡大は開発途上国だけの問題ではない。豊かな国では、近年、類似した傾向が見られる。この傾向には多くの原因があり、そのほとんどはグローバリゼーションとは関係がない。たとえば、技術の進歩は雇用に重大な変化をもたらし、世界中の知識労働者の賃金を上げることになった。
 
 知識を生み出し、利用する方法の不平等は、貧しい国と豊かな国の間の格差を広げている。新技術の開発と利用は、機会と挑戦とをもたらす。新技術は、広範な事業と急速な経済成長を生み出し、同時に資源の効率的な利用に貢献することができる。
 
 人類は、共通の連結された未来を共有し、地球の反対側で起きた衝突や不公正が身近なところにまで直接に影響してくることに、しだいに気がついている。さらに、貧困と欠乏は、不満と怒りの温床となり、民族問題や宗教問題に容易に利用、拡大される状況を生み出している。
 
 世界は、深刻な“グローバル・ガバナンス・ギャップ”に直面している。気候変動に関するボンおよびマラケシュでの合意と、ドーハ開発アジェンダの開始によって、効果的なグローバル・ガバナンスをめざす有望な前進があった。この両方について、欧州連合は主導的な役割を果たした。グローバリゼーションを持続可能なものにするためには、一方では世界的な市場原理、他方ではグローバル・ガバナンスおよび政治制度を、さらによく均衡させる必要がある。発展途上地域から先進地域までのすべてにおいて、また世界的レベルで、良い統治(good governance)**をさらに強化することは重要な優先事項である。これは、すべてのレベルの利害関係者の広範囲の参加に基づかなければならない。

グローバル・ガバナンスについては下記のウェブページが参考になる
(対応するURLが見つかりません。2010年5月)
**良い統治については下記のウェブページが参考になる
 http://www.jica.go.jp/about/report/2001/pdf/ann2001_37.pdf (最新のURLに修正しました。2010年5月)
(対応するURLが見つかりません。2010年5月)
 http://www.oecdtokyo.org/theme/corp-g/1999/19991210gavernace.html (最新のURLに修正しました。2010年5月)

 
2. グローバル・パートナーシップを通した市場統合、統治、および国内政策の課題
 世界中の製品、サービス、資本、技術、発案、人の移動の急速な拡大−グローバリゼーション−は、経済成長と生産性を刺激し、生活水準を向上させると期待されている。また、貿易の自由化によって国内経済がその比較優位を最大限に活用することが可能になり、また規模の経済が促進されるため、世界的な資源の効率が高まる可能性もある。

http://www.ne.jp/asahi/british/pub/econ/comparative.html (最新のURLに修正しました。2010年5月)

 
 グローバリゼーションには利益だけでなく費用が伴う。世界的な経済活動の拡大が制御できない場合には、環境への負の圧力と、社会的結束へのリスクが生じる。集中的なエネルギーの使用、天然資源の非持続的な利用、生産および輸送の費用に環境コストを加算しないことが、経済開発と社会開発とが依存している資源基盤をいまや危うくしている。技術の進歩、市場統合、そして国際競争は、経済と社会組織に構造的な変化をもたらそうとしている。

5) 国連開発計画(UNDP)人間開発報告書1998
6) 国際労働機関(ILO)による推定

 
 持続性が維持不可能になる非持続的な傾向の原因としては、市場、グローバル・ガバナンス、および国内政策間の複雑な関係がある。成長を維持・拡大し、仕事を生み出すために市場の影響力を操作するとともに、将来の世代のための環境を保護し、社会的結束を強化することが可能な枠組みにするために、総体的な努力が世界的、地域的、および国内のレベルで要求される。
 
 とくに開発途上国の「比較優位」が多く見られる産業部門で保護が撤廃されないために、貿易自由化上重要な効率向上が制限されている。それに加えて、効率向上には調整費用を伴う。急速に再編成することは勝者と敗者を生み、適切に管理しないと、経済的、社会的、環境的に持続的ではなくなる。たとえば、急成長した国や天然資源が豊かな国であっても、貧困、失業、不完全雇用がある。とくに初期段階では、特定の産業部門や地域が不相応に恩恵を得るなどで、不平等が拡大しやすい。これは新興経済の多くにあてはまり、そこでは成長の利益が公平に分配されず、豊かな地域と貧しい地域、あるいは集団の階層間の、平均収入に不平等が拡大している。
 
 開発途上国の国内政策は、開発の機会にとって極めて重要である。開発途上の多くの国々−とくに後発開発途上国(Least Developed Countries)−は、グローバリゼーションの恩恵を受けていない。それは、これらの国々が、経済構造に基づく貧困の罠(わな)、すなわち低所得、低投資と最低限の生活水準の悪循環に陥っているからである。民間資本の流入は、技術の獲得や人的資源の開発といった開発手段として、開発途上国の重要な資金調達源になるだろう。海外直接投資は、有利な投資環境、マクロ経済の安定、貿易の開放、制度や法の改正を必要とする。健全な財政制度とマクロ経済政策をもたない無統制状態は、金融危機に対してぜい弱な国にする。ほかの国内政策は、課税、所得の再分配、中核的労働基準の権利の尊重、および腐敗と闘うことを考慮した良い統治の各領域が、いずれも重要である。保健、教育、環境保護および技術への投資は、いずれも重要な貢献になる。それらは真に持続可能な開発のための必須要件である。

中核的労働基準については次のWebページを参照:
 http://www.oecdtokyo2.org/pdf/policybrief_pdf/pb23.pdf

 
 多国籍企業による投資は、短期資本フローよりも一般的に安定しており、技術移転や受入れ国の輸出力を強める点から大きな利益をもたらす可能性がある。けれども、多国籍企業の世界的な拡大は発展途上地域のいくつかに強く集中しており、最貧国にはほとんど投資されていない。いくつかの部門では、競争力を維持することが大きな争点となっている。
 
 地球規模の問題に取り組むには、すべての国で、同時に十分に調整する行動が必要である。すべての国が政治的に難しい選択をすることを彼ら自身が約束しなければ、これは成功しないだろう。必要なことは、すべての利害関係者を含めたグローバル・パートナーシップである。これは、市民社会と社会的協力者がその過程に最初から参加するということである。経済の自由化と極めて堅実なマクロ経済政策には、強化された国内規則、多国間協定、および国際協調が必要である。
 
 工業国には持続可能性のための行動を推進する重大な責任がある。それには、まずなによりも、国内の財政を立て直し、持続可能な生産と消費パターンへの動きを支援し、そして、国際的金融制度の機能の向上、安定性の強化はもとより、さらなる市場開放、開発協力について、公的、私的な資金調達の強化を確実にすることである。これらの国内外の政策は、持続可能な開発の目標に統合し、地球規模の要求を考慮しなければならない。共有だが差異のある責任というリオ会議での考え方に見られるように、多くの消費社会は、当然、世界の天然資源の基準についての圧力を緩和するための行動を極めて大規模に提案するだろう。豊かな国々は、強化された国内と地球規模のガバナンスはもとより、社会的結束、高次の公衆衛生、国内消費者保護を推進するため、さらに努力が必要である。

「共有だが差異のある責任」は、1996年のリオ宣言(国連環境開発会議)の27の原則の7番めに示されている。以下のWebページが参考になる。
 http://www.eic.or.jp/ecoterm/?act=view&serial=628 (最新のURLに修正しました。2010年5月)
 http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kankyo/wssd/yogo.html
 http://www.ioc.u-tokyo.ac.jp/~worldjpn/documents/texts/docs/19920614.D1J.html
 http://www.econ.keio.ac.jp/staff/myamagu/ja_paper/POV_of_Kyoto_Mec.pdf

 
 国際的な制度は、このような協力関係に最大限に貢献する必要がある。国際連合組織、ブレトン・ウッズ機構、世界貿易機関(WTO)、および国際労働機関(ILO)を、持続可能な開発に向けて、たえず機能させる必要がある。国連組織は、環境、社会、経済の各分野における役割とすべての国連加盟国によって、持続可能な開発のためのグローバル・ガバナンス組織の展開を先導しなければならない。

ブレトン・ウッズ機構(the Bretton Woods institutions)については下記のウェブページが参考になる:
 http://web.worldbank.org/WBSITE/EXTERNAL/COUNTRIES/EASTASIAPACIFICEXT/JAPANINJAPANESEEXT/0,,menuPK:515508~pagePK:141132~piPK:141121~theSitePK:515498,00.html (最新のURLに修正しました。2010年5月)(世銀グループ)
  (対応するURLが見つかりません。2010年5月) (国際復興開発銀行)
  (対応するURLが見つかりません。2010年5月) (国際開発協会)
  (対応するURLが見つかりません。2010年5月) (国際金融公社)
 http://www.mof.go.jp/international_policy/imf/what_is_imf/gaiyou.htm (最新のURLに修正しました。2012年7月) (国際通貨基金)

 
 問題の重大さはさまざまであるが、不平等は国境や国際的な格付けとは関係がない; 豊かな国々、しかも都市部でも、平均寿命といったもっとも基本的尺度が、著しい不平等を示している。グローバル・パートナーシップは、豊かな国と貧しい国の間だけでなく、豊かな国どうしであっても学ぶべき教訓があることを物語っている。すべての国がこれらの教訓を明らかにしなければ、われわれはだれも、包括的で永続的な発展による利益を得られないだろう。
 
 欧州連合は、地球規模の持続可能な開発の追求において先導的役割をまかされている。欧州連合は開発援助の世界最大の提供者であり、世界最大の貿易相手であり、海外直接民間投資の主要な供給源の一つであり、数多くのクリーン・テクノロジーを開発し、促進してきている。
 
 欧州統合モデルは、安定経済成長、社会開発、および環境保護のための相互支援的な戦略の追求に、常に基づいて発展してきた。もっとも親しい隣国と共有する未来に投資することは、欧州連合そのものの長期の政治的安定に必須である。とりわけ、欧州連合の拡大は、政治的な安定、健全な経済情勢、社会的結束、および環境の持続可能性をめざす支援プログラムに基づいている。これは、世界的なレベルで同様な課題に取り組むための貴重な経験になるだろう。

欧州共同体におけるクリーン・テクノロジーについて、下記のページでふれられている:
(対応するURLが見つかりません。2010年5月)

 
3. 欧州連合の貢献: 優先目的への対応
 この章では、包括的で統合化された一連の行動を介した、地球規模の持続可能な開発への欧州連合の貢献について述べる。これらの行動は、イエーテボリ欧州理事会で承認された戦略を補足するものである。これらは、持続可能な開発について相互に関連のある3つの要素(経済、社会、環境)だけでなく、成功の前提条件となる、欧州連合政策の高い一貫性、あらゆるレベルでの統治の改善および必要な政策を実施するための財源の増大にも関係する。
 
3.1. グローバリゼーションを操作する:持続可能な開発のための貿易
 

優先目的

グローバリゼーションが持続可能な開発に貢献することを確保する。そのために:

● 開発途上国が世界経済に公正に統合されることを保証し、補完的政策を介して、貿易と投資の自由化の恩恵を受けられるようにする。

● 環境的、社会的に持続可能な生産と貿易にインセンティブを与える。

● 国際な財政と金融の構造を強化し、また、金融市場規制を正当で透明な形態にして、地球規模の財政的不安定性とシステムの悪用を減らす。

 
 
 欧州連合の持続可能な開発戦略の目的は、グローバリゼーションの恩恵を最大にするとともに、その費用を最小限にすることである。
 
 ドーハ開発アジェンダは、欧州連合が進めている管理されたグローバリゼーションのための統合的取組みの要約であり、グローバル・システムをさらに変更するための基盤となる。市場の自由化をより広い規制枠組みの中で行うことは、環境、競争、投資、貿易促進といった争点の広範な協議によって実現される。

ドーハ開発アジェンダについては、下記のウェブページが参考になる:
 http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/wto/wto_4/koshi.html
 http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oecd/comuni41.html
 http://www.oecdtokyo.org/theme/trade/2002/20020516doha_p.html
http://www.oecdtokyo2.org/pdf/theme_pdf/macroeconomics_pdf/20020516communique01.pdf (該当するページが見つかりません。2013年512)

 
 国内および国際的な金融システムの安定性の保証が、包括的戦略の重要な要素である。市場や関係者の国際的関係を強化することが、財政のグローバリゼーションによる経済的恩恵を引き出している。一国の経済不安が、他の国に短時間のうちに直接に伝わることは、この強い結びつきを反映したものである。金融の不安定要因(financial volatility)のリスクは、国内の開発努力をひどく妨げることがある。同じように、国際金融制度のさまざまな乱用、とくに資金洗浄(money laundering)、脱税、あるいはテロリズムなど犯罪の資金調達は、国内の財政システムと行政システムの安定と保全を徐々にむしばみ、国際金融制度の存続に影響する。安全保障や国家財政に広範囲に影響する可能性がある。
 

ドーハ開発アジェンダ

 ドーハにおいて、世界貿易機関の構成メンバーは、次のアジェンダを承認した:

開発途上国をより効果的にこの貿易システムに統合する
◆ 非農産品の市場アクセスに関しては、貿易障壁を取り除き、とくに開発途上国にとって重要な輸出産品に関する傾斜関税と関税ピークを削減する。

◆ 後発開発途上国原産のすべての産品に無税、無枠の市場アクセスを目的とする多国間枠組みを発展させる。開発途上国が直面する特殊な制約に取り組むために、特別かつ異なる待遇(
Special and Differential Treatment)の規定を明確に、効果的、かつ機能的なものにすることによって強化する。

農業
◆ 市場アクセスの改善、とくにさまざまな形態の輸出助成金と貿易をゆがめている国内補助金を削減する包括的交渉を行う。
◆ 非貿易的関心事項は、考慮すべき交渉中の提案に盛り込む。
◆ 特別かつ異なる待遇は、交渉に必須であり、運用上効率的であり、また開発途上国が食料安全保障や地域開発などの開発要求を有効に考慮することを可能にする。

環境と消費者の問題と社会開発要求を含む目的を設定する
◆ 消費者保護、衛生と環境などの論点を含めた協議を同時に行い、中核的労働基準を公約する。

衛生問題に対応する
◆ 貿易関連知的所有権(TRIPS)協定は、とくに、この協定の下で予想される保護措置の実施によって、WTO加盟国が公衆衛生を保護するための措置をとらないようにすること、あるいはとるべきでないことを再確認する。

投資、競争、貿易促進、政府調達に関する交渉を準備する
◆ 貿易と開発への貢献を強化するため、これらの領域における規則の均衡のとれた枠組みをめざす。

能力構築と技術援助
◆ 現行の協定に関係があり、また将来の交渉に正式な参加を支持して、貿易に関する能力構築のための包括的戦略を公約し、その結果を実施する。

グローバル・ガバナンス
◆ 国際労働機関(ILO)、国連環境計画(UNEP)、 ブレトン・ウッズ機構、国連貿易開発会議(UNCTAD)、および他の関連する国際的な環境と開発の組織に積極的な協力を行う。

 

貿易関連知的所有権協定については、下記のウェブページが参考になる:
(対応するURLが見つかりません。2010年5月)

 
 二国間協定および地域協定は、持続可能な開発を支持していなければならない。また、欧州連合は、多国間政策や二国間政策が互いに矛盾しないことを保証しなければならない。これは、環境、社会開発、競争、投資などの規制の問題に、二国間でも取り組むことでもある。欧州連合は、密接な一体性と規制の収束を、工業国と開発途上国との、あるいは開発途上国間の地域貿易協定を介して促進している。
 

欧州連合の行動

☆ いっそうの自由化と貿易を拡大することによって、世界中の生活水準を上げることを目的とする、ドーハ閣僚会議の結論に従い、市場を志向した公正な貿易システムを確立する作業を継続するため、WTO交渉において建設的に交渉する。開発途上国、とくに後発開発途上国が国際的な貿易システムに参加することを促進する。

☆ ドーハ開発アジェンダ等によって、地球規模の貿易システムに加わり、その恩恵を得ようとする開発途上国の努力を支援する。開発途上国が貿易交渉に参加する能力を強化する。開発途上国が供給面の制約を克服して、その貿易能力を向上させることを支援する。

☆ 確認された持続性パラメータによる効果的な優遇制度に基づき、さらに調整したシステムを2004年に導入し、持続可能な開発のための一般特恵関税制度(GSP)の役割を補強する。

☆ 持続可能な開発の公約を組み入れることによって、また優良事例(best practices)の交換を可能にする対話を設立することによって、二国間協定および地域協定の持続性の側面を強化する。

☆ 経済協力開発機構(OECD)で進行中の作業をもとにして、環境と輸出信用に関する共通アプローチを欧州連合内で実施する。輸出信用機関は持続可能な技術を含め、持続可能な開発で考慮すべき問題を扱っており、これを確実にするために、欧州連合文書の必要性を評価する目的で、実施経過を2003年に再検討する。

☆ 国際金融制度の悪用の余地を狭めて、とくにテロリズムを含む犯罪とその財政機構と闘い、金融活動作業部会の援護の下で資金洗浄と金融犯罪を防止および阻止し、とくに税避難地(tax havens)における監視、規制、情報交換の政策を強化し、有害な税慣行**に取り組む。

☆ 企業の社会的責任に対する欧州企業の取組みを、外国投資家のためのOECD指針の厳守を支持し、また、企業の社会的責任に対する欧州枠組みを推進する委員会のグリーン・ペーパーに基づくイニシアティブを発展させることによって、促進する7)

☆ WTOと国際的環境組織(国連環境計画と多国間環境協定の事務局)とのより密接な協力関係、さらにグローバリゼーションの社会的側面に関するILOの作業を支援する。ILOの「ディーセント・ワーク(適切な労働)・アジェンダ(Decent Work Agenda)」8)***を推進する。
 

環境と輸出信用に関する共通アプローチについては、以下のページを参照:
 http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oecd/oecdapp.html
 http://nexi.go.jp/insurance/ins_kankyou/ins_kankyou.html
** 有害な税慣行については、以下を参照:
 http://www.jbaudit.go.jp/effort/study/mag/pdf/j23d06.pdf
http://www3.famille.ne.jp/~imai911/oecd.htm (該当するページがみつかりません。2013年12月)
*** ディーセント・ワーク・アジェンダについては、以下が参考になる。
 http://www.ilo.org/public/japanese/region/asro/tokyo/newsletr/01-11.htm#tayori

 
3.2. 貧困との闘いと社会開発の促進
 

優先目的

国際開発目標およびミレニアム開発目標9)、とくに極度の貧困にある世界人口を2015年までに半減するという目標10)を達成する。そのために:

● 開発協力の量、質、影響、および持続可能性を高める。
 

7) COM(2001) 366 final
8) このILOのイニシアティブは、首尾一貫して、開発を志向する、性差別のない見方で、勤労の権利、雇用、社会的保護および社会的対話の目標を同時にもたらし、経済・社会的政策の選択を支援する。委員会は、その文書COM(2001) 416の中で、グローバリゼーションにかかわる中核的労働基準を促進し、社会の統治を改善させるための包括的戦略を提案した
9) 2000年に、国連一般総会はミレニアム宣言を採択した。これには8つのミレニアム開発目標が含まれる: (1)極度の貧困と飢餓を根絶する、(2)すべての人の初等教育を達成する、(3)男女平等を促進し、女性に権利を与える、(4)子供の死亡率を減らす、(5)母親の健康を改善する、(6)エイズ、マラリアや他の病気と闘う、(7)環境の持続性を保証する、(8)開発のための世界的な協力関係を発展させる
10) 国際開発目標においては、極度の貧困は「1日1ドル以下で生活すること」と定義されている。

 
 貧しい人々とは、食料供給の安定、経済、社会、環境の安全、公民権および政治的エンパワーメント(empowerment)の面で、正当に認められた福祉水準に達することができない人々のことである。貧困の重要な問題点は、資源が絶対的に不足していることではなく、資源とそれを利用する機会の分配が偏っていることである。物質面と財政面とで、世界は全体として豊かになってきているが、調査によれば、その富の分配がさらに偏りはじめている。世界的な生産と富の創造が増大するとともに、工業国を含む多くの国々の中ばかりでなく、国と国の間でも偏りが拡大している。これらの偏りは、衛生、雇用、教育、知識、きれいな大気や水のような環境財と環境サービスの利用にまで拡大している。

エンパワーメントについては以下のウェブページが参考になる
 http://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/16005c/danjo-kaisetu.html#2 (最新のURLに修正しました。2014年8月)

 
 一部の地域では資源が利用できず、他の地域では十分に入手可能で、非持続的な消費と生産の様式がある−このすべてが世界規模の環境の状態に直接に関係している。大量消費の生活様式は、工業国と世界の富裕層間で、環境悪化の原因となっているが、貧困の拡大も、同様に重要な根本原因となっている。貧しい人々は、悪化した環境の影響をもっとも大きく受けるが、その日々の生活が、天然資源に直接に依存している場合は、彼らも、環境に大きな負担をかけている。
 
 今日、8億近くの人々が飢餓と栄養不良で苦しんでいる11)。近年、この数字は平均して1年に約800万人ずつ減少しているが、2015年までに栄養不良の人々の数を半分にするという国際開発目標を達成するにはまったく低い。
 
 教育と衛生は、経済開発の重要な決定要因である。だが、世界中の約20%の子供は、初等教育を受ける機会を持たない。多くの国々では、この数10年間続いていた衛生と開発の向上が逆転している。とくに、エイズ、結核、マラリアなどの重要な伝染病の拡大は、もはや単なる衛生問題ではなく、持続可能な開発への深刻な脅威になっている。衛生に投資することによって、経済開発の面だけでなく、貧困を減らすという面でも極めて大きな見返りがもたらされるだろう。2010年までに、おおよそ800万人の生命を−主に低所得国で−伝染病と栄養失調に対する主要な取組みによって救うことができると推定されている12)
 
 貧困な人々の中で、女性が不相応に多い13)。女性の教育、職業への参加、所得水準、出産・育児活動の間に正の関係があることは、十分に立証されている。中核的な社会サービスへのユニバーサル・アクセス(すべての人に対する平等な利用機会)、さまざまな権利、とくに基礎的な教育、社会的保護と初期医療は、貧困の悪循環を断ち切るために必要不可欠である。

社会サービスについては、以下のページが参考になる:

(対応するページがみつかりません。2014年8月)


 
 深刻な貧困は、紛争や環境悪化とともに、難民や避難民の大規模な人口移動の原因になるかもしれず、近隣の国々の安定をおびやかしている。さらに、豊かな国々への自発的な移住は、社会の富裕な上層階級にとって魅力的な選択になりうる。これによって、活動的で有能な人的資源が開発途上国から流出するかもしれない。

11) 国連食糧農業機関(FAO)(2001)
12) 世界保健機構(WHO)事務局長ブルントランド博士への、マクロ経済と衛生に関する委員会(議長ジェフリー・サックス)の報告書(2001年11月)
13) 世界全体で、貧困状態で生活している15億人のうち、70%は女性である。(国連開発計画(UNDP)人間開発報告書1995)。

 

欧州連合の行動

☆ 後発開発途上国および他の開発途上国内の最貧グループに財源をさらに集中できるようにするため、欧州連合の開発政策を貧困削減という中心的な目的に向ける手続きを促進する。

☆ 食料の入手、利用とその栄養価を同時に改善することによって、欧州連合の政策が飢餓の根絶に効果的に貢献することを確実にする。被援助国の債務負担が拡大しないようにするため、食料援助を無償でのみ提供するようにすべての食料援助提供者を説得する。受入れ国や団体が現地や地域の市場で食料を購入できるようにするため、また現地の生産者の状況を悪化させないようにするため、これらの無償援助は、できるだけ現金の形で行われるようにする。

☆ 貧困削減戦略に関しては、安全で適切な十分な量の水と衛生的な汚水処理を、貧しい人々が実際に利用できるようにするため、水と衛生サービスを健康と教育の政策に完全に統合する。

☆ 関連する欧州連合政策の中にジェンダーの視点をさらに取り入れる。

☆ 他の提供者や団体と協力して衛生面への投資のレベルを高め、持続可能な開発の中でのその重要な役割を高める。

☆ 伝染病に対する欧州連合の行動を、とくに、医薬品の入手とその段階的価格設定(tiered pricing)**を支援することによって、また教育による伝染病予防を支援することによって、促進・拡大する。

☆ 各国あるいは欧州連合の優良事例に基づいた、基礎教育を優先した、教育と研修の支援にさらに力を入れる。

☆ 持続可能な開発に関連する問題についての研究を推進する。民間の研究では顧みられない、あるいは開発途上国にとってとくに重要な、熱帯病治療薬の研究、安価な情報交換手段や適切な非汚染型効率向上技術などの分野にとくに配慮して、同じ利益を共有する国すべてに対する欧州連合研究プログラムを開始する。
 

ジェンダーについては以下のウェブページが参考になる
 http://www.gender.go.jp/fujin_chii/45goui.pdf (対応するページが見つかりません。2014年8月)
 http://www.gender.go.jp/eganet/eganetp-1.html (対応するページが見つかりません。2010年5月)
 http://www.rikkyo.ne.jp/grp/gender-f/kondou.htm (対応するページが見つかりません。2010年5月)
 http://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/16005c/danjo-kaisetu.html#10 (最新のURLに修正しました。2014年8月)
** 医薬品の段階的価格設定については次のWebページが参考になる:
 http://www.japan.msf.org/access/a_price.html (対応するページが見つかりません。2010年5月)

 
3.3. 天然資源と環境資源の持続可能な管理
 

優先目的

● 環境資源が減少している現在の傾向を、2015年までに、国および世界のレベルで、実質的に逆転させる。

● 一部の重要な部門−水、土地と土壌、エネルギー、生物多様性−において、部門ごとの中間目標を開発する。
 
 
 欧州連合の域内戦略に含まれる行動の一部は、欧州連合が他の国々に与える生態学的影響を減らすことに役立つ。より持続可能な方法で天然資源を管理し、資源の消費と汚染を経済成長から切り離すことによって、欧州連合は地球規模の持続可能な開発にも貢献できる。
 
 気候変動は、もっとも深刻な地球環境問題として認識されている。欧州連合、あるいは高所得国は、これからの数10年間に予測される影響に対処する能力があるだろうが、多くの開発途上国は、より恵まれない状況に置かれており、もっと緊急の行動が必要である。アフリカでの作物収穫量の減少やバングラデシュでの洪水は、最貧国がとくに被害を受けやすいことを示している。
 
 気候変動とほかの環境問題は、エネルギーの生産と消費に関係している。エネルギー需要の増大はこれらの問題を悪化させる。現在、世界の20億の人々にとっては、薪や木炭のみが料理と暖房に利用できるエネルギー源である。彼らのエネルギー需要に持続可能な方法で応えることは、ヨハネスバーグで扱われる主な課題の一つである。
 
 開発途上国では、エネルギーの消費量と輸送総量は概して低い。だからといって、交通渋滞や都市の大気汚染のような工業国が直面している多くの問題が開発途上国では起きないわけではない。エネルギーと輸送の部門の開発が今後、重要である。このために、大部分の開発途上国では、エネルギーと輸送のインフラストラクチャへの投資が高い割合となっている。財政的な見地だけでなく、社会的、環境的な見地からも適切なプロジェクトに投資が行われることを保証することが重要である。エネルギーの節約とエネルギー効率の改善だけでなく、再生可能なエネルギー資源も、持続可能な開発における重要な可能性を持っている。
 
 水資源の不足も大きな懸念事項である。水の消費量は、毎年2〜3パーセント増加している。多くの場所では、淡水資源は自然が補給可能な量よりも速く消費されている。すでに世界人口の約3分の1が、中〜高程度の水不足が生じている国に生活している。さらに、12億の人々(世界人口の20%)は安全な飲み水を利用できず、50%は安全な汚水処理を利用できない14)。河川、湖沼と地下水の汚染は世界中の関心事となっている。
 
 砂漠化と土壌劣化が進み、同時に地球上では生物多様性と生態系への圧力が続いている。アフリカでは、砂漠化による農業生産の損失は8%を超えると推定され、アジアと中東の一部の国々では、20%に達している。欧州南部もすでに影響を受けている15)。地球規模での森林の減少と森林の劣化とが高い率で進行すると、おもに生息場所の消失によって、25%のほ乳動物種と11%の鳥類種が重大な絶滅の危険にさらされる16)
 
 過去10年にわたって、自然災害の発生が増加している。これは、危険な建築物や定住地のような社会的要因がある程度原因となっており、地震や地滑りのような災害に対する貧しい社会のぜい弱さが増大している。また自然の要因もある。洪水、干ばつ、暴風と関連するエルニーニョの発生が、より大規模に、かつ頻繁になっている。大洋と海の表面水温の上昇は、ハリケーン(台風)の発生頻度と激しさを増大させている。
 
 大洋と海は地球にとっては広大な生命の源であるが、ここにおいても、人間活動による脅威が増大するようになっている。漁業の圧力は、海洋生態系と将来の漁業の両方に悪影響がある程度にまで、資源を枯渇させている17)。サンゴ礁の損壊割合は、1992年の10%から2000年の27%まで増加した。

14) 地球環境概況2000、国連環境計画、1999
15) 地球環境概況1、国連環境計画、1997
16) 国際自然保護連合、IUCN、2000
17) 世界における漁業および水産養殖業の現状、FAO、1998

 
 有害な化学薬品への曝(ばく)露は、世界中で続いており、食物連鎖を介して人の健康に影響を及ぼしている18)。重金属と残留性有機汚染物質は、環境中に長期間にわたって残るため、とくに重要である。
 
 これらの問題の規模は全地球的であり、地球全体のレベルで取り組む必要性があるが、地域や準地域での行動も、環境劣化を防止し、その影響とたたかうために必要である。たとえば、一部の地域では、水資源の不足と土地劣化が地域紛争の発生の原因になっており、これらが激化すると、軍事的脅威となりかねない。欧州連合は、欧州と地中海における環境と安全保障の問題への地域と準地域での対策を促進することを、とくに優先しなければならない。
 

欧州連合の行動

☆ 総合流域管理の原則に基づく持続可能な水資源管理の推進のための国際組織、各国政府、利害関係者の戦略的協力のイニシアティブを、持続可能な開発に関する世界サミットにおいて開始する。

☆ 省エネルギーやクリーン・テクノロジーを含む信頼できるエネルギー源とエネルギー効率の向上、および能力の開発や制度の構築を含む再生可能な資源の開発に、とくに焦点を合わせ、貧困根絶への行動の中のエネルギーと開発の分野における協力の欧州連合イニシアティブを2002年に採択する。

☆ 京都議定書の批准など、多国間環境協定の効果的実施を促進する。

☆ 2002年4月までに地球環境ファシリティーの50%を補給し、土地劣化、森林破壊、残留性有機汚染物質(POPs)条約を扱えるようにその任務を広げる。

☆ 違法な伐採およびこれと関連する違法取引きと闘い、また森林法の違反と森林犯罪に取り組む国際協力を強化するため、森林法の施行、統治と貿易(FLEGT)に関する欧州連合行動計画を2002年の終りまでに開発する。

☆ 安価で持続可能な環境にやさしい輸送方法への投資を促進する。

☆ 国または地域のレベルでの世界的および二者間の協力を通して欧州共同体領海外での持続可能な漁業に貢献するため、遠洋漁業に関する欧州連合戦略を開発する。

☆ 欧州連合の開発と環境の政策の中に防災を組み入れる。

☆ 開発途上国の利用者に関連する天然資源のモニタリングや管理、気象予報、天災のへ備えと軽減などにかかわる地球観測データと情報を、地域ごと(たとえばアフリカ)や課題ごと(たとえば森林被覆や砂漠化)に収集、加工、伝達するため、欧州連合の全地球的環境・安全保障監視(GMES)イニシアティブの運用を開発途上国に拡大する。
 

地球環境ファシリティーについては、以下のWebページを参照:
 http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kankyo/kikan/gbl_env.html
 http://www.undp.or.jp/GEF/GuideBook.pdf (対応するページが見つかりません。2010年5月)
18) 世界環境概況 2000、国連環境計画、1999

 
3.4. 欧州連合政策の一貫性の改善
 

優先目的

 持続可能な開発の目的が、その内外の両面への当然の配慮とともに、すべての欧州連合政策の中に、徐々に統合されることを確実にする。そのために:

● 主要な政策提案のすべてに対して影響評価を実施し、イエーテボリ欧州理事会の結論に従って、経済的、社会的、環境的な結果を分析することを確実にする。

● 共通農業政策、共通漁業政策、およびエネルギー、輸送19)と製造業に関する欧州共同体政策などの重要政策を、持続可能な開発の域内および域外の目的に適合させる作業を継続する。

● 欧州連合政策が作成、再検討あるいは改正される場合は、つねに、現実の、あるいは予想される一貫性の問題に取り組む。
 
 
 一貫性のある良い統治は域内で開始される。欧州連合の域内政策は、他の国々、とくに開発途上諸国にマイナスの波及効果を持つ場合がある。重要ないくつかの部門では、現在の欧州連合政策が、持続可能な開発の目的と矛盾することもあるだろう。
 
 政策の一貫性にはいくつもの側面がある。そのため、これは政治的に困難な問題の概念となっている。欧州共同体は、政策が開発途上国に対してマイナスの影響を持つ、あるいは持つと思われるいくつかの部門で積極的な行動をとる。もっとも明らかな例は、開発途上国に貿易特恵を与える一般特恵関税制度(GSP)と、後発開発途上国から欧州共同体への輸出品のすべてを無税・無枠とする、GSPの下での「武器以外はすべて政策(Everything but Arms Initiative)」である。他の例としては、国が健康と安全の基準を満たすことを助ける援助があり、これによって法定基準を適用する開発途上国からの輸出品に対するマイナスの影響を抑制する。

欧州連合の「武器以外はすべて政策」については、下記のページでふれられている。
 http://www.meti.go.jp/kohosys/press/0001184/0/1213ldc1.html (対応するページが見つかりません。2012年7月)
 http://jpn.cec.eu.int/japanese/general-info/5-6-1-0.htm (対応するページが見つかりません。2010年5月)
 http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/ldc/q7_9.html (対応するページが見つかりません。2010年5月)

 
 それでもなお、現在と将来の政策と行動をさらに組織的に広範囲に再検討することが、一貫性を向上させ、国際議論での欧州連合の信頼性を高めるために必要である。

19) エネルギーに関するグリーン・ペーパー(COM (2000) 769 final)および輸送に関する白書(COM (2001) 370 final)で概説されている行動を推進することによる。

 

欧州連合の行動

☆ 欧州連合のすべての機関は、政策の一貫性を向上させるため、内部の協力と協調手順を強化しなければならない。これに関連して、委員会は、2002年の終りまでにすべての主要な政策提案の経済面、社会面、環境面の影響を評価する影響分析について、統一的な手法を確立する。

☆ 農業における持続可能な開発を推進するという目的は、とくにアジェンダ2000以降は欧州共同体政策の一部となっており、今年の終りに提出される中間見直しでさらに追求する。

☆ 共通漁業政策に関する提案は2002年に提出される予定であるが、漁業資源のための長期管理計画の開発、乱獲を助長する補助金の撤廃、および持続可能な利用に見合う水準まで欧州連合の漁船の大きさと活動を制限することを含む。

☆ 欧州連合は、欧州連合を基盤とする企業や個人による不法な武器類の輸出の禁止と取締まり−そして最終的な停止−を強化する方法を探る。当面の処置として、加盟国と欧州共同体は、銃砲類の不法な製造と取引きに関する国連議定書について署名、批准し、実施する。

☆ 欧州の移民政策は、関係国間の対話と協力を介して、受入れ国と出身国双方の利益と同時に、移民の悪影響を最小限にすることを追求する、包括的で均衡のとれた取組み方に根ざしていなければならない。
 
 
3.5. すべてのレベルでのより良い統治
 

優先目的

● 共通の持続可能な開発の目的が達成されるように、すべてのレベルとすべての国で、良い統治を確保する。

● 合法性、参加の原則、一貫性、および地球規模の経済、社会、環境の統治の有効性を強化する。
 
 
 良い統治は、まずなによりも国内において重要である。民主主義と法の支配は、利害関係者の積極的参加を必要とし、持続可能な開発のためになくてはならない前提である。これまで、統治の課題への政治的な対応は、国内から欧州、国際までのあらゆるレベルで、公的レベルでも民間レベルでも、不十分であることが示されている。開発途上国を含む、多くの国における不適切な国内政策は、貧富の差を広げることに一役買っている。同様に、相互依存の進行という面では、一方では市場要因の不均衡、他方では統治制度間の不均衡によって、「グローバル・ガバナンス・ギャップ」が生じている。
 
 グローバル・ガバナンス・システムについては、正当性、一貫性、有効性を早急に獲得しなければならないという合意が形成されつつある。G7、G8など、さまざまなレベルの国際的な活動が、進行中のあるいは新たに提案される概念、手法、政策に政治的な刺激を与えている。けれども、G7やG8は、非加盟国と市民社会に対して広範な努力を行ってきたが、多国間の取組みを組織するためには、まだ多くの国が十分には参加していない。したがって、さらに多くの参加者が、他の協力者との共通の取組みが開始できるような非公式の場を作ることも考えられるだろう。参加、包括性と透明な意思決定過程は、良い統治には必須の要素であり、共通の普遍的価値を促進することに貢献する。国際的な統治システムの改革においても、国際的な言論の場における市民の発言権を強化する必要がある。ローカルアジェンダ21を介した地域社会の役割は、とくに重要である。

ローカルアジェンダ21については、以下のページを参照:
 http://www.gef.or.jp/LA21/4_1_1.htm
 http://www.shonan-inet.or.jp/~gef20/gef/news/LA.html (対応するページが見つかりません。2010年5月)
 http://www.env.go.jp/press/file_view.php3?serial=3485&hou_id=3303 (対応するページが見つかりません。2010年5月)

 
 国連の改革に関しては、さまざまな国連組織間、および国連機関と他の国際組織間の協力を強化し、持続可能な開発のためのグローバル・ガバナンスをめざさなければならない。これによって、国連のシステムは、地球規模だけでなく、地域と準地域の課題によりよく対応できるようになるであろう。
 
 欧州連合は、そのすべての政策において、より良い統治を促進することを約束している。欧州統治に関する白書20)によって、欧州連合がみずからの統治システムを改善するために何ができるかの議論が開始された。欧州連合の取組みは、次の5つの原則に基づく: 開放性、参加、説明責任、有効性、一貫性。これらは、欧州連合の内外の行動に同様に適用される。
 

欧州連合の行動

☆ 開発途上国における公共機関のキャパシティ・ビルディングと公益事業改革への支援を強化する21)。開発途上国や他の国において、国内や地域の政策討論や意思決定過程に参加するための市民社会の能力を育成する。

☆ 不正行為との闘いにおける協力と行動とを強化し、不正行為に対する今後の国連条約をまとめ、協議することを支援する。

☆ 中核的労働基準に関するILO条約を実施する能力を世界的に高め、労働市場と社会保護システムに影響を及ぼす開発途上国の社会政策の改革を支援し、多国間の技術援助と技術協力を提供するためのILOのイニシアティブを支援する。社会ガバナンスを促進するよう、ILOに働きかける。

☆ ヨハネスバーグ世界サミットの成果に、持続可能な開発のための統治を改善する以下のような具体的な動きが含まれるようにする:

− 国際的な環境統治を強化し、既存組織(とくに国連環境計画)を拡大し、多国間環境合意の効果的実施を、たとえばコンプライアンス・メカニズム(法令順守制度)を介して、推進する。
− 既存の組織(たとえば国連地域委員会)および進行中のイニシアティブ(アフリカ開発新パートナーシップなど)の中で持続可能性の課題に取り組むための、地域的および準地域的な協力の枠組みを開発する。
− ローカルアジェンダ21や持続可能な開発のための企業連合といった草の根の取組みを介して、市民社会、地方官庁と民間部門のさらに積極的な役割を促進する。

☆ 女性差別撤廃条約を実施することによって、女性に対する差別との闘いにおける協力と行動とを強化する。
 

キャパシティ・ビルディング(capacity building)は、「能力構築」、「能力開発」、「能力の向上」、「能力の強化」、「人材養成」など、さまざまに訳されている。開発途上国への開発支援の議論では、制度・組織の構築(institutional building)に対して、組織あるいは人間の能力の開発、向上を意味している。
 http://www.jica.go.jp/about/ann2001/pdf/ann2001_37.pdf (対応するページが見つかりません。2010年5月)
 http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/apec/soshiki/wto.html (対応するページが見つかりません。2010年5月)
 http://www.wtojapan.org/mailmagazine/backnumber/melmaga06.html (対応するページが見つかりません。2010年5月)
 http://www.kantei.go.jp/jp/singi/sihou/kentoukai/kokusaika/dai3/3siryou_2.pdf
20) European Governance - a White Paper, (COM(2001) 428) (最新のURLに修正しました。2014年8月)
21) 貧困削減戦略(PRSPs)あるいは国家開発戦略を効果的に実施するための前提となる、健全で透明な公共支出管理に対する支援が、最初の焦点とされなければならない。

 
3.6. 持続可能な開発への資金調達
 

優先目的

国際開発目標とミレニアム開発目標*22)を達成するために、十分な資金調達を保証する。そのために:

● 国民総所得(GNI)の0.7%を政府開発援助(ODA)にあてるという、国連目標の達成に向けて、断固として前進する。

● 開発途上国の債務負担が一定した効果的な方法で削減されるようにする。

● 地球公共財**を作り出し、保護するための、効果的な手段を明らかにする。

● 開発途上国における外国の民間投資がさらに増加し、その対象地域が拡大するように促す。
 

国際開発目標とミレニアム開発目標については、下記のウェブページが参考になる:
 http://www.grips.ac.jp/forum/doukou/d_prsp.htm (対応するページが見つかりません。2010年5月)
 http://www.worldbank.or.jp/04data/08wb_news/pdf_wbnews/wbn86.pdf
 http://www.worldbank.or.jp/04data/12brochure/pdf_brochure/mdg.pdf (対応するページが見つかりません。2010年5月)
 http://www.undp.or.jp/Publications/MDGsIndicators.pdf (対応するページが見つかりません。2010年5月)
 http://www.undp.or.jp/Publications/MDGs.pdf (対応するページが見つかりません。2010年5月)
** 地球公共財については、下記のウェブページが参考になる:
 http://www.efasid.org/FASID/IDRItop.htm (対応するページが見つかりません。2010年5月)
 http://www.mof.go.jp/jouhou/kokkin/tyousa/tyou035g.pdf (対応するページが見つかりません。2012年7月)
 http://www.nri.co.jp/report/c_news/2002/pdf/rn20020304.pdf (対応するページが見つかりません。2011年3月)

 
 持続可能な開発を実現するためには、多くの国の国内政策を改善し、良い統治に基づくものとしなければならない。政策の正しい組合せは、貧しい人々の必要を優先し、食料供給、教育、雇用、衛生、環境保護のような重要問題を扱う。けれども、もっともよく計画された国家政策であっても、資金不足のために効果が限られることがある。これらの問題は、2002年3月18〜22日にモンテレイ(メキシコ)で開かれる国連開発資金国際会議において、さらに詳細に扱われることになる。
 

モンテレイ合意23)

◆ 国際的に同意された開発目標を達成するためには、先進国と開発途上国の間の新たなパートナーシップが必要であることの合意。

◆ 健全な国内政策、すべてのレベルでの良い統治、法の支配と汚職との闘いへの責任。

◆ ミレニアム開発目標を達成するために、政府開発援助(ODA)と他の財源の大幅な増額が必要であることの認識。国民総所得の0.7%を政府開発援助とするという目標に向けて具体的な努力をすることを、まだ達成していない先進国に促す。そのためには、目標を達成するための手段と時間枠を検討することが重要であることを強調する。

◆ 政府開発援助(ODA)をさらに効果的にするように努める。

◆ 開発途上国に過剰な債務を負わせない革新的な資金調達源を探求する重要性の認識。
 
 

22) 国連開発資金国際会議(モンテレイ、2002年3月18〜22日)における欧州連合行動のための詳細な勧告は、別の欧州委員会文書で公表される
23) 第4回準備委員会は、2002年1月27日に多数意見によりサミット文書に合意した。2002年3月22日のモンテレイ会議で正式に採択されると予想されている。
国連開発資金国際会議において合意された文書(モンテレイ文書)の原文(英語)は、
 http://www.un.org/esa/ffd/0302finalMonterreyConsensus.pdf (対応するページが見つかりません。2010年5月) にある。

 
 いくつかの開発途上国の特徴ともいえる持続不可能な債務負担24)は、経済と財政の安定性をおびやかしている。すなわち、このような債務は、その国を外的ショックに対してさらに弱くする。さらに、債務によって、貧困の削減に必須の公共サービスに必要な財源が流出し、その国は世界経済に十分に参加することから永久に排除されてしまう。
 
 外国からの民間投資は、全体として開発途上国の最大の外部資金源である25)。海外直接投資(FDI)には、一般に親会社と系列会社との長期にわたる繋がりがあり、永続的な利益を親企業にもたらしている。FDIは、技術の移転、人的資源の開発、経済の成長と社会の進歩の重要な推進力になりうる。けれども、FDIは限られた国々に非常に集中し、最貧国にはほとんど向けられていない。
 
 FDIが根本的に重要であるのと同様に、政府開発援助(ODA)が開発途上国、とくに最貧国の努力を支援することも重要である。
 

政府開発援助の状況

◆ 2015年までに貧困を半減する国際開発目標を達成するには、政府開発援助の資金の流れを早急に倍増する必要がある26)

 現在の政府開発援助は年あたり530億ドルであり、提供国の国民総所得(GNI)の総計の0.22%に相当する。

 国連目標である国民総所得の0.7%の政府開発援助を達成するという欧州連合の公約を守るためには、290億ドルの増額が必要である27)
 
 
 いわゆる地球公共財28)の供給についての最近の議論で、新たな追加的な資金調達メカニズムについて多くの考え方が出てきた。それらを実現するための、革新的な国際税がいくつか提案されている。その中には、為替取引への課税(トービン税)、炭素税、武器輸出への課税が含まれている。この議論にもかかわらず、開発の資金調達の増強要求に対応し、短期から中期の地球公共財の供給を実現するには、国家予算からのさらに充実した貢献と、財源使用の効率のいっそうの向上が必要とされるであろう29)

トービン税については、下記のウェブページが参考になる
 http://www.oecdtokyo.org/theme/macroeconomics/2002/20020613tobintax.html (対応するページが見つかりません。2010年5月)
 http://www.oecdtokyo2.org/pdf/observer_pdf/no231232.pdf
 http://www5b.biglobe.ne.jp/~change-c/WSSD/kita_FfD.html
24) アフリカにおける対外債務は、1980年から2000年までの間に3倍となり、現在の推定額は、資本ベースで2060億ドルである。(世界銀行のデータ)。いくつかの国(アンゴラ、コンゴ、コモロ、ジブチ、ギニア−ビサウ、ガイアナ、モーリタニア、モザンビーク、サントメ・プリンシペ、ザンビア)では、負債資本/国民総生産の比が250%を超えている。
25) 開発途上国へのFDIの資金の流れは、1990年に政府援助の半分以下のレベルであったが、1999年には3倍以上に増加した。
26) 開発資金援助、世界銀行と国際通貨基金の職員によって作成された報告書、2001年8月
27) イエーテボリ理事会の結論として、欧州連合は政府開発援助を国民総所得の0.7%にするという国連目標を「できるだけ早く」達成し、「2002年にヨハネスバーグで開催される持続可能な開発に関する世界サミットまでに、この目標の達成に向けた具体的な前進をなしとげる」という公約を再確認した
28) 地球公共財は、国連開発計画によって、その利益が複数の国、世代、人間集団にわたる公共財と定義されている
29) 詳細な分析は、「グローバリゼーションの問題点への対応−国際通貨・金融システムと開発資金援助の研究」に関する委員会の報告書に入っている。

 

欧州連合の行動

☆ 政府開発援助(ODA)に関する国連目標に向けて実質的に前進させ、中期目標として、欧州連合加盟国のすべてのODAを、2006年以降、最低でも国民総所得の0.33%のレベルにまで向上させる指針を、2002年3月の国連開発資金国際会議の前に作成する。

☆ 重債務貧困国債務削減イニシアティブによって開始される債務救済措置を加速、拡大し、「環境債務」を含む新たな債務転換の提案を調査する30)

☆ 欧州連合内の二国間開発援助の完全自由化を考慮して、また、欧州共同体と他の供与国の政府開発援助の自由化をさらに進めるため、さらなるイニシアティブを検討する。

☆ 地球公共財と、それを供給し、強化するインセンティブを与える方法に関する新たな議論に貢献する。国際的な財政的負担の共有のため、ならびに外部性の低減のインセンティブのための革新的なメカニズムを調査する。
 
 
4. 戦略の実施と再検討
 
欧州連合の内部で
 委員会がイエーテボリ欧州理事会への文書で指摘したように、欧州連合の持続可能な開発戦略(欧州連合SD戦略)は、対外的な側面を入れなければ完成しない。この文書は、この対外的側面を述べており、欧州連合SD戦略に関する委員会提案の不可欠な部分と見なされるべきである。この戦略を効果的に実施するためには、委員会と加盟国とが一致協力して努力する必要がある。
 
 欧州連合は、2002年3月にバルセロナで開かれる欧州理事会において、欧州連合の持続可能な開発戦略の不可欠な部分として対外的な側面に取り組む。2002年8月にヨハネスバーグで開かれる持続可能な開発に関する世界サミットにおいて、欧州連合戦略を提唱する。地球規模の持続可能な開発への欧州連合の貢献を、2002年に開かれる持続可能な開発の円卓会議の中心的テーマとして取り扱う。欧州理事会の春の会合では、包括的な欧州連合SD戦略の定期的な再検討が行われる。2003年には、ヨハネスバーグ・サミットの結論をどのように実施するかに、とくに焦点をあてるべきである。
 
国際レベルで
 持続可能な開発に関するヨハネスバーグ世界サミットは、持続可能な開発に関する国際的取組みにおける画期的な出来事になるだろう。このサミットでは、均衡のとれた、先を見こした、行動指向の結論が生み出されなければならない。欧州連合は、ヨハネスバーグ・サミットにおいて、欧州連合の戦略の骨子を述べ、その持続可能な開発の戦略がどのようにグローバルな努力の一部となっているかを示す予定である。
 

30) 転換の提案は、開発途上国は債務救済の見返りとしてなんらかのサービス(たとえば環境の保護)を提供すべきであるという考え方に基づく

 
 さらに、欧州連合は、すべての二国間および地域の関係における持続可能な開発の側面の向上を追求する。政策対話の各領域の間のもっとも効果的で適切な連携は、その相手によって異なる。先進工業国に対しては、欧州連合の努力は、経済的および政治的な安定の概念を拡大して、その中に持続可能な開発を組み入れることに集中しなければならない。開発途上国に対しては、欧州連合は、良い統治、貧困削減の継続と天然資源保護の間の政策連携について、納得のいくように説明しなければならない。
 
 欧州連合は、それ自体が国益の均衡と責任の拡大の継続的な実施であり、多国間主義は事前に決めた国益に対する国際的な支持を集めるものであってはならないということを、欧州連合の対外的関係において示す必要がある。また、多国間主義は、有力な少数の国が国際交渉のパラメータをその場で提示しあってから、それらを既成事実として他の国々に提案するものであってもならない。一致協力した努力がすべての関係者に必要である。
 
 委員会は、理事会と欧州議会に、イエーテボリで承認された欧州内の戦略と矛盾しない方法で、持続可能な開発への欧州共同体の取組みの対外的側面を強化するという観点から、この文書で概略を述べた戦略と行動を支持することを要請する。
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