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農業と環境 No.52 2004.8.1
独立行政法人農業環境技術研究所

No.52
・「サイエンスキャンプ2004」が開催される
・つくばリサーチギャラリー夏休み特別公開
・保護者の職場参観が開催された
・つくば科学出前レクチャー 中学生向け特別授業:「大気の汚れを植物で測る」
・農業環境研究:この国の20年(8)農業生態系における物質循環
・農業環境技術研究所案内(13):気象観測装置
・わが国の環境を心したひとびと(8):岸本良一
・論文の紹介:高二酸化炭素濃度の条件下における泥炭地帯からの溶存有機炭素の流出
・論文の紹介:窒素を固定する植物が硝酸化成作用もする
・論文の紹介:生態学的なリスク評価のためのコンピュータ・シュミレーションモデルの開発と利用
・本の紹介 145:サンクト・ペテルブルク断章 −遺伝研究者のロシア滞在記−、山田 実著、未知谷(2004)
・本の紹介 146:昭和農業技術史への証言 第三集、昭和農業技術研究会、西尾敏彦編、人間選書257、農文協(2004)
・本の紹介 147:環境漁業宣言 矢作川漁協100年史、 矢作川漁協百年史編集委員会編、風媒社(2003)
・本の紹介 148:「健康な土」「病んだ土」、 岩田進午著、新日本出版社(2004)
・資料の紹介:季刊肥料2004年夏、肥料協会新聞部(2004)
・資料の紹介:欧州委員会農業総局ファクトシート「農業と環境」
 
「サイエンスキャンプ2004」が開催される

当所では「サイエンスキャンプ2004」を、平成16年8月18日から20日の期間に開催する。キャンプの趣旨や参加者などを以下に紹介する。

1.趣旨

サイエンスキャンプは、科学技術創造立国にふさわしい創造性豊かな青少年を育ててゆくために、研究機関のもつ学習資源としてのポテンシャルを最大限に活用した「創造的科学技術体験合宿プログラム」である。この事業は(財)日本科学技術振興財団が主催し、関係研究機関が協力して平成7年から実施されている。

本年度は26機関がそれぞれの研究機関の特徴を活かして、実習・実験を主体とした科学技術体験学習、研究者・技術者との対話、参加者同士の交流を行う。農林水産関係での受け入れは8機関である。農業環境技術研究所は,平成9年から毎年このキャンプを実施している。

2.農業環境技術研究所における実施内容

環境問題は身近なところから地球規模まで様々な分野で生じている。農業の分野においても、環境の変化によって農業生産に影響が及んでいることはもとより、農業生産にともなって派生する環境への影響が問題になっている。

農業環境技術研究所は、将来にわたって安全な食べ物を生産していくため、土・水・大気を健全な形で保全し、植物や昆虫と共生する農業を目指した研究を行っている。今回の「サイエンスキャンプ2004」では、「Aコース:アレロパシーによる植物間相互作用を調べてみよう」、「Bコース:土の中のイオンの動きを探る」および「Cコース:植物や土の中の微生物を観察しよう」と題して3つのコースを準備している。これらのコースで,青少年が研究者はどのようにして環境問題に取り組んでいるかを体験してもらう。

1)参加者

(Aコース)

川本 遼子 (かわもと りょうこ)

茨城県立土浦第二高等学校 2年 女  茨城県

久藤 至彦 (きゅうとう よしひこ)

広島県立西条農業高等学校 3年 男  広島県

清水  弥 (しみず わたる)

渋谷教育学園幕張高等学校 2年 男  千葉県

望月  匠 (もちづき たくみ)

東海大学付属翔洋高等学校 1年 男  静岡県

(Bコース)

石野 佳菜恵 (いしの かなえ)

栃木県立茂木高等学校 2年 女  栃木県

原田 創一朗 (はらだ そういちろう)

聖光学院高等学校 1年 男 神奈川県

平岡 浩太 (ひらおか こうた)

広島県立西条農業高等学校 3年 男  広島県

皆川 慶彰 (みなかわ よしあき)

埼玉県立浦和高等学校 1年 男  埼玉県

(Cコース)

石田 将章 (いしだ まさあき)

つくば秀英高等学校 2年 男  茨城県

土馬 秀俊 (どま ひでとし)

宮崎県立門川農業高等学校 3年 男  宮崎県

西藤 ゆかり (にしとう ゆかり)

慶應義塾湘南藤沢高等部 3年 女  東京都

山田 卓弘 (やまだ たくひろ)

愛知県立犬山南高等学校 3年 男  愛知県

アドバイザーおよびサイエンススキャンプ事務局

石島 秋彦 (いしじま あきひこ)

千葉県立市川西高等学校 教諭

四村 具隆 (よむら ともたか)

財団法人日本科学技術振興財団 振興部

2)各コースの講師

(Aコース)

藤井 義晴 (ふじい よしはる)

生物環境安全部植生研究グループ 化学生態ユニット 研究リーダー

平舘 俊太郎 (ひらだて しゅんたろう)

生物環境安全部植生研究グループ 化学生態ユニット 主研

荒谷  博 (あらや ひろし)

生物環境安全部植生研究グループ 化学生態ユニット 主研

(Bコース)

加藤 英孝 (かとう ひでたか)

化学環境部栄養塩類研究グループ 土壌物理ユニット 研究リーダー

江口 定夫 (えぐち さだお)

化学環境部栄養塩類研究グループ 土壌物理ユニット 主研

中野 恵子 (なかの けいこ)

化学環境部栄養塩類研究グループ 土壌物理ユニット 研究員

鈴木 克拓 (すずき かつひろ)

化学環境部栄養塩類研究グループ 土壌物理ユニット 研究員

(Cコース)

對馬 誠也 (つしま せいや)

農業環境インベントリーセンター 微生物分類研究室 室長

吉田 重信 (よしだ しげのぶ)

農業環境インベントリーセンター 微生物分類研究室 主研

篠原 弘亮 (しのはら ひろすけ)

農業環境インベントリーセンター 微生物分類研究室 研究員

3)期日:

平成16年8月18日(水)午後1時 〜 8月20日(金)午後3時(2泊3日)

4)問い合わせ先:

農業環境技術研究所

305−8604 茨城県つくば市観音台3−1−3

Tel: 029−838−8197(情報資料課広報係)

Fax: 029−838−8191

 
つくばリサーチギャラリー夏休み特別公開

夏休みに入った小・中学生を対象として、農業研究への理解を深めてもらうため、「つくばリサーチギャラリー夏休み特別公開」が、7月31日(土)(9:30〜16:00)に行われた。

農研機構の中央農業総合研究センター、作物研究所、野菜茶業研究所を中心に、農業環境技術研究所、農業工学研究所、食品総合研究所などが参加して、リサーチギャラリーの展示のほか、科学振興コーナーや夏休み宿題コーナーなどのイベントが開催された。

農業環境技術研究所からは、「昆虫の標本を作ってみよう」(昆虫分類研究室)、「土にひろがるミクロの世界をのぞいてみよう」(土壌分類研究室)、「植物と植物の戦いをみてみよう」(植生研究グループ)の各テーマで「夏休み宿題コーナー」に参加し、子供たちのさまざまな疑問に答えた。

おもなイベント:

●国際コメ年コーナー: こんなにいろいろ世界のお米

●科学振興コーナー: 最先端科学ってホントにすごい

−天ぷら油で車を動かすぞ、恐竜を使って遺伝の仕組みを知ろう ほか

●夏休み宿題コーナー: おもしろそうなテーマを見つけよう

−アサガオとヒルガオ どっちが朝寝坊? 泥だんごで探る土の不思議 ほか

●野外展示: 作物見本園、アルキメデスの実験

●食べ物実演コーナー

−世界の米料理の試食、手打ちうどん体験、ソバ打ち体験、ホエードリンク試飲、パンの試食 ほか

●ふれあい動物園: いったいどんな動物に会えるでしょうか?

●ミニミニコンサート: 音楽を聞いて、抽選で踊る植物をゲットしよう!

●スタンプラリー: ポイントをまわって、スタンプを集めよう。たくさん集めると、アイスクリームがもらえるよ!

●出店

−子供の学習図書、農業書

−研究成果からうまれた製品、飲物など

 
保護者の職場参観が開催された

つくば市内の中学校では、進路学習の一環として、夏休み期間中に保護者の職場参観を実施している。これまでは個別に対応していたが、「子ども霞ヶ関見学デー」と同時に開催される取り組みとして、参観を実施する機関が増えていることから、当所も今年度からこれを試行することにした。7月22日に開催した「職場参観」には、並木中学校1年生2名と桜中学校1年生1名の3名が参加した。

まず、研究企画科で概要説明・ビデオ視聴の後、業務科の作業や研究室での分析作業の見学および庶務課などで業務説明を受け、保護者の職場を見学した。さらに、職員食堂で昼食後、図書館を見学して解散した。

参加者からは、父親の職場へ休日に来たことがあるが、その他の人々がどのようなことをしているのかが分かってよかった、研究がいろいろな職種の人たちによって支えられていることが理解できたなどの感想が寄せられた。

 
つくば科学出前レクチャー 中学生向け特別授業:「大気の汚れを植物で測る」

当所の地球環境部気象研究グループ長の野内勇は、7月3日(土)9時から11時までの2時間、つくば市立谷田部中学校の1年生22人を対象に、つくば科学出前レクチャーを行った。つくば科学出前レクチャーとは、つくば市内の研究者が、市内の小・中学校、高校へ出張して講義を行い、普段の学校生活では体験することのできない、より専門的なことを学習する特別授業の制度である。

野内グループ長の授業の内容と感想は以下の通りである。

生物に毒性の強い大気汚染物質、たとえば二酸化イオウ(SO2)、オゾン(O3)などの濃度が増加すると、植物は被害を受け、葉に可視的な被害症状を生じることが知られている。逆に言えば、植物の葉に可視的な被害症状が発生したならば、大気汚染が悪化している状況をある程度知ることができる。これが、「大気の汚れを植物で測る」の講義の主題である。講義では、大気汚染の煙害・公害の歴史と現状、大気汚染による植物の可視被害症状、植物を利用した大気汚染の調査方法などを、わかりやすい図や写真で示すとともに、実際に光化学オキシダント被害の発生したアサガオ苗や小型の活性炭大気浄化チャンバー装置を持ち込み、写真だけではわからない実際の被害症状をまのあたりに見てもらったり、大気浄化チャンバー装置の制作・操作方法などを実体験してもらった。

中学生にとって、2時間もの講義を受けることは大変なことと容易に想像できるが、生徒たちはみな真剣なまなざしで、この特別授業に臨んでいた。この1回の授業によって、少年少女たちが科学の面白さ、環境を守る大切さの一端でもかいま見てくれたら幸いである。

 
農業環境研究:この国の20年(8)農業生態系における物質循環

前回の「情報:農業と環境No.51」では、「農業分野における温室効果ガスの放出削減」と「統計解析と情報システムの開発と利用」をとりまとめた。今回は、「農業生態系における物質循環」を紹介する。

1.はじめに

「生態系(ecosystem)」という用語は、英国の生態学者Tansleyが1935年に導入したもので、ある地域のすべての生物群集とそれらをめぐる環境を含めた系のことと定義されている。

「農業生態系(agroecosytem)」という言葉がいつごろから使われているかは定かではないが、農業の場における窒素など栄養元素の循環を研究する上で、農業の場を「生態系」という一つのシステムとして把握するという概念はきわめて有効なものであった。少なくとも1970年代には、「農業生態系」という言葉が広く使用されるようになっていたように思われる。

「農業生態系」研究は、たとえば一枚の水田などを一つの系とみなし、その系の中での物質循環を生物群集(作物生産)との関連で解析しようとする研究が多かった。しかし、肥料に由来する硝酸性窒素が地下水を汚染するなど農業に起因する環境負荷問題が顕在化し、さらに、農業も地球環境問題と無縁でないことが明らかになるにつれ、「農業生態系」をめぐる物質循環研究も、一枚の水田・畑から地区、地域、さらに国、地球レベルへと、さまざまなスケールで進められ、きわめて多様なものとなっている。

2.食料・農業を通した地域―国レベルでの物質循環

わが国の農業活動に由来する窒素の環境への負荷を、食料品などの窒素の輸出入から国レベルで解析した最初の研究は、おそらく三輪らによる一連の研究である。「科学」(岩波書店)の特集号「土の危機」(1988)へ発表した解説は、第二次大戦直後の自給自足的なわが国の食料生産においては、閉鎖的な窒素循環が、その後食料・飼料の輸入の増大によって外国からの膨大な窒素の流入が生じていることを、広範な読者に強く印象づけるものであった。

この研究では、まず国レベルの食料供給システムにおける窒素循環が検討された(岩本・三輪、1986)。わが国における有機物窒素のストック(現存量)を、「穀類保管(国内産)」「穀類保管(輸入)」、「加工業」、「畜産業」、「食生活」のブロックに分け、ブロック間のフロー(流量)を表す線形モデルを作成し、統計データを用いて解析した。このモデルはさらに改良が加えられ、1960年から1992、1997年までの窒素循環の変化が推定された。これらによって、主として輸入食料・飼料の増加に起因する畜産・食生活から環境への窒素負荷が増大していることが明らかにされた(袴田ら、1994;織田、2004)。

これら一連の研究の主な内容は、次のとおりである。

・環境に対して排出される窒素は1980年代には60年代の2.5倍程度に増大し、90年代に入っても増加し続けている。この増加は、おもに、畜産廃棄物、加工業、食生活からの窒素の排出による。

・排出される窒素すべて農耕地へ還元されると仮定すると、その量は1992年には320kgN/ha(化学肥料を加えると440kgN/ha)と試算され、耕地土壌の窒素受け入れ可能容量として提起されている250kgNの値をはるかに上回る。

統計データに基づいた解析ではあるが、わが国の食料供給システムは窒素循環からみると、すでに破綻(はたん)していることが如実に示されている。

一方、さまざまな農業現場での窒素循環を考えるならば、それぞれの地域において農業の形態は異なる。畜産の偏在や都市化に伴う農耕地面積の減少などの問題もそのよい例である。地域における窒素などの資源循環を進めるためには、対象地域における物質循環の現状を把握しておくことが必要である。耕種農家地域あるいは耕種農家と畜産農家の混在する地域を対象に、農業由来の有機物・廃棄物の地域内還元と地域間の移動を考慮した地域物質動態モデルが開発された(三輪、1998)。

さらに、地域における有機物フローが牛久沼集水域をモデル域として算定された(松本・袴田、1990)。まずこの集水域の農業関係の統計データ、土壌データなどから、当該地域の食生活・耕地・畜産の有機物の現存量と生産量を求めて、これらに基づいて有機物フローを算定した。解析した1980年から1985年の5年間に、耕地はやや減少し、畜産は大きく減少したが、総人口は23%増加した。食生活へ流入する有機物は地域内で生産されたものがやや減少し、地域外から運ばれたものが37%増加し、非農家人口の増加が地域有機物フローへ大きな影響を及ぼしていることが示された。このように、畜産に由来する窒素負荷は減少したものの、食生活を経由した負荷が増加したため、全体としては10%の増加と算定された。

さらに、三島ら(1998,2004)は、行政区(県、市町村)レベルにおける農地の窒素収支を算定するため、農業関係関連の統計情報をデータベース化し、パソコン上で対象地域の窒素収支を簡便に計算できるシステムを開発した。これらのシステムは、農地への窒素負荷を軽減するための土壌管理や栽培管理、さらには家畜排泄物等の堆肥の流通システム改善に向けて利用することが可能であろう。

農業は、本来、太陽エネルギーと水から農産物としての有機物を合成する産業であるが、同時に、現在では、農業機械・施設の使用、肥料・農薬などの製造に必要な多量のエネルギーを石油などの化石燃料に依存している。そこで、農業におけるエネルギーの流れの実態を明らかにし、農業における化石燃料消費の節減を図るために、大規模畑作を対象としてエネルギー収支の評価が行われた。主要畑作物への投入エネルギーの内訳は、肥料40%、機械19%、施設・建物15%、燃料11%、農薬9%などであった。産出エネルギーはテンサイでもっとも多く、産出/投入効率は1.78、マメ類は効率が低く、アズキでは1.0以下であった(昆、1989)。

また、作付け体系の異なる輪作農耕地における太陽エネルギーの利用効率、炭素および窒素の循環が調べられた。飼料作物を中心にした作付け体系では、土壌の炭素と窒素の収支がマイナスになることが示され、耕地生態系全体として炭素・窒素の収支を考慮した栽培管理が必要であると考えられた(小泉、1988)。

栽培後に耕地に残される作物残渣は後作における窒素のフローに大きな影響を与える。北海道大規模畑作地帯において作物残渣による後作の窒素フローと窒素ストック形成への影響が、重窒素トレーサー法を用いて調べられた(新良ほか、1999)。代表的畑作物の残渣に由来する後作への窒素供給量は、テンサイとトウモロコシで8-20kgN/ha、コムギで4-6kgN/haであり、残渣窒素の36-76%がストックされる。土壌微生物バイオマスにとりこまれた窒素の半減期は490-980日であった。

農耕地を通したこのような窒素・炭素の循環を把握するために、自然界にわずかに含まれる安定同位体13Cと15Nの存在比を利用する手法が検討された。これらの存在比は、物質循環の物理化学的あるいは生物的過程でわずかに変動する。この変化を高精度の質量分析計で測定し、土―草―家畜の系の物質循環における変動の特徴が明らかになった(小山・須藤、1990)。

農業活動全体から生じる各種の環境影響を、ライフサイクルアセスメント(LCA)手法によって総合的に評価するための研究プロジェクトが、農業環境技術研究所が中核となって実施された。LCAは、工業製品の生産において、原料の生産から生産物が出荷されるまでの一連の流れの中で、どのように環境への負荷・インパクトが生じるかを評価する手法として開発されたものである。農業についてのLCA手法の適用は、諸外国においてもほとんど研究の蓄積がなく、手探りの中で研究が進められた。その成果として、各種農作物の栽培における温室効果ガス、農薬、栄養塩類などの環境負荷のインベントリーが作成され、環境影響を考慮した評価手法マニュアルが提案された(農環研編、2003)。

3.水質の悪化と窒素浄化機能

(1)硝酸汚染の実態

硝酸による地下水の汚染が顕在化する中で、環境省の指導による全国的な地下水の水質調査が進められている。硝酸性窒素による汚染は農業に起因すると考えられる事例が多く、地方自治体、国公立の農業研究機関による現地実態調査がさまざまな角度から行われた。1990年、常総台地南部において土地利用別の地下水の硝酸濃度の調査が行われた。深さ10m以下の浅井戸では畑地に隣接する場所で高濃度の硝酸が検出された。しかし、林や水田に隣接する井戸の濃度はそれらより低いこと、また、深さ30m以上の深井戸では土地利用にかかわらず硝酸濃度はきわめて低いことが見出された(岡本ら、1992)。

水質と土地利用の関係は多くの地域で調べられている。しかし、水質には地形的要因や灌漑の影響があるために、水田であれば一律に硝酸濃度が低いというわけではない。つくば市近郊では非灌漑期に開放された暗渠(あんきょ)排水から100kgN以上の窒素が排出された例がある。これは水田の背後に畑地が連なるという地形的特徴のある場合に認められ、畑から浸透した硝酸性窒素が非灌漑期に水田の暗渠排水から流出したものと考えられた(山口ら、1989)。

また、北陸地方の扇状地における浅層地下水の硝酸濃度は、非灌漑期に高く、灌漑が開始されると低下する傾向にあった。これは非潅漑期に土壌表層から溶脱し地下水へ達した硝酸が、灌漑の開始とともに流出したためと考えられた(大野ら、2003)。

畜産における不適切なふん尿処理は、周辺への硝酸汚染を引き起こす。こうした特定汚染源から周辺への硝酸の流出動態について調査が行われてきた。北海道において、酪農由来スラリーの素掘貯留池(ラグーン)ではスラリー投入直後から周辺へ硝酸が漏れ出し、浅層地下水を汚染していた(早川ら、1997)。茨城県の火山灰台地上に位置する養豚農家の素掘貯留槽からの硝酸汚染は周辺に広がっていたが、その汚染は発生源である素掘貯留槽から100mを越えることはなかった(尾崎ら、1991)。しかし、点源からの汚染の拡散は周辺の浅層地下水や土地利用によって大きな影響を受けるので、個々の調査事例から一般化は難しい。

硝酸性窒素のように水溶性の環境負荷物質は、流量と濃度によってその流出を算定することができる。しかし、リンなどの難溶性の物質の場合、水に懸濁する微細な土壌粒子に吸着して周辺に流出する。懸濁物質の流出は、大雨のような限られた条件下に起こり、きわめて不規則であるために、そのモニタリングは難しい(第20回土水研究会、2003)。こうした懸濁物質の発生負荷量を流域単位で算定するモデルが開発された(板橋・竹内、2003)。

(2)窒素流出量の推定とモニタリングデータの活用

農業に由来する窒素による水質の悪化が顕在化するに伴い、農業由来の窒素による負荷を定量的に把握する必要に迫られた。当初の研究は、ライシメーター等を用いた点からの窒素および栄養塩類の流出量の把握にとどまっていたが(井田ら、1986)、研究は次第に面的な広がりを持つようになった。釧路湿原において、湿原周辺の草地開発の進んだ地域から湿原へ流入する汚濁物質の特性が調べられ、降雨時の懸濁物質による負荷の大きいことが明らかになった(早川ら、1995)。

丸亀扇状地平野では、丘陵地帯からの出水(ですい)と呼ばれる浅層地下水の湧水の量と硝酸窒素濃度から流域の窒素負荷量が算定された(石原ら、1996)。農耕地を流れる河川の水質は、渓流水、集落排水など由来の異なる水が複雑に混ざり合って形成される。それぞれの由来ごとに特徴的な水質中の無機成分組成に基づいて、河川の水質を解析することによって、由来別の寄与率が推定された(芝野ら、1997)。また、東北タイの傾斜畑地において水移動の3次元的評価が、重水や塩素イオンをトレーサーとして用い、観測井とテンシオメーターのモニタリングによって行われた(谷山・真弓、1990)。

水環境保全のために、環境省などによって河川・地下水の水質調査が行われ、膨大なモニタリングデータが蓄積されている。しかし、これらのデータの多くは年度ごとの数値データとしてまとめられているだけで、そのままでは水質保全のために活用することは難しい。そこで、これらのデータを容易に把握し、水質変化の実態を容易に評価できるシステムが開発された。このシステムを利用することによって、水質成分の年・季節変動や気象要因との関連などの解析が簡便に行える(竹内ら、2003)。こうした水質データと流域の畑・草地面積率および表層地質を利用することで、北海道の畑作・畜産地帯を流れる河川流域における窒素負荷量が推定された(竹中・草場、2001)。

(3)土地利用連鎖等を利用した窒素浄化

かつて化学肥料が高価であった時代、水田における窒素肥料の利用効率の低さは深刻な問題であった。1940年代における塩入松三郎による水田の脱窒現象の発見と全層施肥法の開発を挙げるまでもなく、窒素肥料の利用効率の向上技術は、水稲栽培における最も重要な研究テーマの一つであった。そして、現在、被覆尿素などの溶出制御型肥料など新たな技術の開発によって、わが国の水稲作における窒素肥料利用効率はきわめて高いものとなった。その結果、水稲への平均窒素施肥量は100kgN/ha以下になっている。

一方、野菜畑や茶園に多量に施用される窒素の利用効率は高まっておらず、過剰の窒素が地下水や河川の硝酸性窒素汚染につながっている。そのような地下水や灌漑水が水田地帯を通過すると、硝酸性窒素の濃度が低下する現象が見出された。これは水田地帯の還元的な土壌条件に伴う脱窒による窒素の浄化である。静岡県の台地上にある茶園から流出する窒素の濃度が水田地帯において低下していること、台地の畑から流出する窒素が、いわゆる谷津田において脱窒により浄化されること、などの具体的な事例が報告されるようになった(宮地、1999、阿部ら、1999)。

湛水状態にある水田と畑などの異なる土地利用の連鎖を通した水の移動とそれに伴う脱窒、いわゆる「土地利用連鎖」による窒素浄化が広く認められるようになった。さらに、アンモニアを含む灌漑水の水田での窒素浄化(尾崎ら、1992)、稲わら施用による水田における脱窒能の強化(尾崎ら、1996)、水稲・イグサ二毛作地帯での窒素流出量推定(久保田ら、1999)の研究が進められた。また、低湿重粘土の転換畑では下層土に還元的条件が発達しやすく、脱窒による窒素浄化が期待できる(小林ら、2001)。

農業工学分野においても田渕俊雄らの研究が精力的に進められた結果、現在では、水田における窒素浄化機能は広く認められ、農業の有する多面的機能のひとつとして、土地利用や灌漑水路の計画などに活用されている。このように水田における脱窒現象がもっぱら窒素浄化の面からクローズアップされるようになったことは、脱窒による窒素の損失をできるだけ減らし施肥効率向上をめざしてきた水田土壌管理研究の流れを振り返ると、皮肉なことである。

水田以外の土地利用による窒素浄化の検討も進められている。野菜畑あるいは家畜ふん尿を多量に施用した飼料畑から浅層地下水を通して流出する窒素は、草地による窒素吸収によって浄化可能であり、窒素浄化のために積極的に草地を緩衝帯として用いる方法が提案されている(早川ら、1996,2000)。また、モデル湿地を用いた脱窒による窒素浄化も試みられている(寶示戸ら、1996)。

窒素などの流出負荷を削減するために、さまざまな栽培法や土壌管理技術が検討されている。すでに環境保全型農法として普及している水稲不耕起移植栽培および無代かき移植栽培は、窒素のみならず、懸濁物質、リンなどの流出を軽減することが、八郎潟干拓地で確かめられた(土屋ら、1997;太田ら、1998)。

脱窒による窒素浄化に関する微生物の脱窒能を評価するためには、アセチレン阻害法や重窒素同位体の分別を用いる方法などがある。それらの適用について検討が進められ、水田の用排水路の底泥における脱窒量が調べられた(木方ら、1991;駒田・竹内、1995)。

4.土壌中における水と栄養塩類の挙動

(1)土壌中の水分・栄養塩類のモニタリング

土壌中における物質の移動は、水の動きで支配され、土壌の物理化学的特性の影響を受ける。土壌中における水の動きを把握するためには、土壌中の水分含有率を非破壊的に長期にわたって測定する必要がある。そのために、さまざまなモニタリング装置が開発されてきた。

粕渕(1985)は、土壌の熱伝導率が含水率の違いに伴って変動することを利用した熱伝導度双子型非定常熱プローブ法によるセンサーを開発し、コンピューターを利用した自動モニタリングシステムを製作した。現在では、土壌の誘電率が土壌含水率で変動することを利用し高周波の電磁波の反射により誘電率を測定するTDR水分測定法がおもに圃場での水分モニタリングに広く用いられているが、この方法を黒ボク土に適用するための校正法が検討された(吉田・長谷川、1997)。

硝酸性窒素は水に伴って動くので、土壌中の水分のモニタリングと同時に、土壌溶液中の硝酸性窒素の濃度をモニタリングすることによって、土層中の硝酸性窒素の動きを把握できる。これを可能にするために、深さ3mまでの土壌に適用可能な土壌採水管が開発された(結田ら、1986)。この装置は企業を通して市販され、現場で広く用いられている。また、深さ1m程度の土層における硝酸性窒素などのモニタリングのために、埋設型ライシメーターを用いた方法が開発された(尾崎ら、2001)。また、中空糸膜を用いた土壌溶液採取装置が開発された。これは、室内カラム実験やポット試験における土壌中の栄養塩類濃度のモニタリングに用いられた(尾和、1989;関口ら、1997)。

(2)硝酸性窒素等の土層内の移動予測

土層内における硝酸性窒素をはじめとする栄養塩類の移動を予測するためには、まず実験室内のカラム実験での精密な測定と解析が必要であった。そのために、水と各種イオンの移動速度について土壌カラムを用いたモデル解析が行われた(鈴木ら、1985)。さらに、火山灰土壌の水浸透性に対するpHや溶液イオン組成の影響が検討された(石黒、1997)。また黒ボク土壌の硝酸イオン吸着量を正確に測定するためのカラム浸潤法が開発された(加藤、2002)。圃場での複雑な水分移動を予測するために、水が粗大孔隙(げき)や亀裂を早い速度で浸透するプレフェレンシャルフローがモデル化された(前田ら、2000)。

圃場での浅層地下水の水位や硝酸性窒素濃度などの長期モニタリングのデータに基づいて、圃場内の微地形要因も加味した硝酸性窒素の土層内移動フラックスが推定された(江口、2003、2004)。

(3)窒素の動態解明

土壌中の有機態窒素の無機化は、土壌の作物への窒素供給力、いわゆる地力窒素の評価のためにも、また、無機化した窒素の土層内での移動を考える上でもきわめて重要である。土壌窒素の無機化は微生物が関与する反応であるために、温度に依存することが知られており、積算地温を用いた解析が行われてきた。金野・杉原(1986)は、この無機化の過程を反応速度論的に解析することにより、反応速度定数、窒素無機化ポテンシャル、活性化エネルギーの3種のパラメーターで表す新たな方法を開発した。この方法を用いて、圃場地温を用いた推定(斎藤・金野、1985)や、下水汚泥や有機質肥料の窒素無機化特性が明らかにされた(杉原、1986;樋口ら、1995)。土壌中で見られる窒素の無機化は、正確には有機化と無機化の動的平衡の結果である。この考え方により、同位体希釈法を用いた総(gross)窒素無機化量算定法が開発された(山室、1985)。

無機化される土壌有機態窒素(可給態窒素)の実体についての研究も進められた。土壌リン脂質の分析から淡色黒ボク土においては細菌菌体が可給態窒素に大きく寄与していること(荒尾ら、1996)、また可給態窒素の指標として広く使われているリン酸緩衝液で抽出されるタンパク質の分子量が9000程度ときわめて均一であることが、明らかになっている(阿江ら、1998)。

都市ごみコンポストの腐熟化の指標として円形ろ紙クロマトグラフィーを用いる簡便な方法が開発され、現場で広く使われた(井ノ子・渡辺、1985)。

(4)リンの挙動

火山灰の影響を受けているわが国の農耕地土壌は、リン酸を吸着する力が強くリン肥沃度は低かった。第2次大戦後、熔リンなどのリン資材による土壌改良、リン酸肥料の多量施用技術が普及し、現在の高い作物生産を達成することができた。しかし、施用されたリンの作物による利用率は低く、施用されたリンの多くは土壌に吸着固定され、土壌中に蓄積してきた。一方、地球上のリン資源(リン鉱石)の枯渇が懸念されており、施肥リンの利用率向上と土壌蓄積リンの利用技術に関わる研究が進められた。

施肥されたリン酸の土壌での集積形態が赤外線吸収スペクトルによって調べられ、非晶質リン酸アルミニウム類似物質であることが明らかにされた(南条・秋山、1988)。九州の火山灰土壌中の火山砕屑物中の酸可溶性リン酸の形態はアパタイト(リン灰石)であった(山田・久保寺、1997)。土壌のリン酸保持能力は「リン酸吸収係数」として表されるが、従来法では把握しきれない土壌間の差を評価するための新たな定法が開発された(南条・秋山、1986)。九州の主要農耕地土壌におけるリンの蓄積の実態が調査され、畑地や樹園地でリンの蓄積が著しく進んでいること、および蓄積リンに占める難溶性リンの増加割合が赤黄色土壌で高く、黒ボク土で低い傾向にあることを明らかにした(川崎ら、1989)。土壌リンの各種形態別蓄積量に基づいて、モデル地区を対象として、形態別土壌蓄積リン分布図が作成された(天野ら、1991)。

リン酸肥料を多量に施用すると水溶性のリンが土層中を移動し、周辺環境への富栄養化につながることが危惧されている。そこで、水溶性リンの土層内移動モデルに基づく予測法が開発された(加藤・尾和、1986)。また、土壌―植物系でのリン酸の挙動を解析するため、中性子照射による32P標識リン資材の作製法が開発された(加藤ら、1996)。

(5)植物の養分吸収機構研究の新たな展開

土壌中の養分を無駄なく効率よく植物に吸収利用させる技術の開発は、高価で貴重な肥料を大事に使っていた時代において重要であったが、今や肥料は安価となり、肥料の過剰施用による栄養塩類等の環境汚染のほうが問題となっている。しかし、現在においても環境保全・資源の持続的利用の面から、こうした技術開発の重要性に変わりはない。

土壌へ施用されたリン酸肥料は土壌粒子に吸着され、時間とともに難溶性のリン酸化合物へと変化する。土壌中のリンのかなりの部分は難溶性リン化合物であり、これを植物が吸収利用することができればリン資源の効率的利用につながる。そのために、難溶性リンを吸収する能力の高い植物種が探索され、根から有機酸を分泌するナタネ、シロザなどの能力が高いことが見出された(堀江、1989)。また植物の根系の伸長能力の差も重要な要因であることが明らかにされた(大谷・阿江、1993)。ラッカセイも難溶性リンの吸収力が強く、根の細胞壁との接触によってリンが溶解されることが示唆された(阿江ら、1997)。また、根圏土壌における有機リンをフィターゼ活性の高い土壌微生物を利用して無機化することによって土壌のリン可給能を高めることができることが示された(藤原・原田、1989)。さらに、低リン酸耐性のイネ品種、すなわち土壌中の低濃度のリン酸を吸収する能力の高い品種を調べ、関連する量的遺伝子座が推定された(Wissuwaら、1999)。

植物は窒素源としておもに土壌中の無機態窒素を利用するが、植物種によっては有機態窒素を吸収するものがある。このような有機態窒素吸収能力の種間差が調べられ、イネがトウモロコシよりも高いことが示された(山縣・阿江、1995)、また、高い有機態窒素吸収能力を示すチンゲンサイがタンパク様窒素化合物を直接吸収している可能性が示唆された(阿江ら、1999)。このような植物の特異な養分吸収機構は、麦が根圏へムギネ酸を分泌し鉄をキレート化して溶解し吸収するという高木の大発見(Takagi、1976)、さらに、阿江らによるインド・ICRISATの作付け体系におけるキマメのリン酸溶解能の重要性の発見を経て、研究が飛躍的に進んだ。研究の進歩を踏まえ新たな展開を図るための国際ワークショップが、1998年につくばで開催され、その内容が冊子としてまとめられた(農環研、2001)。

(6)水質浄化システムの開発

土壌中には多数の脱窒菌が生息しているため、土壌を窒素浄化の場として利用できる。また土壌自身が多孔質であり吸着能を有するため、さまざまな環境負荷物質を吸着浄化する素材としてもきわめて適している。また、植物の養分吸収能を活用して、汚染水中の栄養塩類を除去することも可能である。こうした観点から、植物および土壌の機能を活用した水質浄化システムの開発が進められてきた。

水質浄化のための濾材としての火山放出物等の適性が、窒素、リンの吸着量から検討された(高木、1988)。人工水路を用いて、嫌気的浄化水路と付着藻類による浄化水路とを組み合わせることよって高い浄化率が得られることを示した(端、1988)。粒子表面に定着させた微生物による窒素浄化(生物膜法)の基材として、焼成サンゴが有効であり、家畜尿汚水への適用が可能であった(高木、1989)。家畜尿汚水の浄化のために、種々の浄化カラムが検討された。硝化カラムとしては、黒ボク土とゼオライトなどを混合したものが、また脱窒カラムとしては、もみがらくん炭などが優れていた(阿部ら、1989)。

また、硝化と脱窒のカラムを分けずに、同じカラムに交互に好気・嫌気条件を与える方式も考案された(原田ら、1990)。硝化・脱窒重相型土壌カラムに用いた後の廃棄土壌の安全な利用法も検討された(羽賀ら、1989)。カキ殻などの海生生物由来の石灰資材は、豚舎からの2次処理水のリン除去に優れた効果を示し、また、使用後のリン酸を豊富に含む石灰資材には高い肥料価値があった(竹内・駒田、1997)。

各種の水生・陸生植物の環境浄化能が調べられ、水生植物の中ではホテイアオイの窒素・リン吸収速度の高いことが見出された。植物を栽植したゼオライトの濾材を水路中に設置するバイオジオフィルター水路が試作され、水路による窒素・リンの除去速度が調べられた(阿部ら、1995)。バイオジオフィルター水路と合併浄化槽とを組み合わせた生活排水高度処理システムが試作され(尾崎ら、1995)、冬期の水路での窒素浄化率を向上するための植物の栽植法や有機物添加の効果が調べられた(阿部ら、1997)。さらに、性能向上のために濾材の検討(尾崎ら、2001)、栽植すべき植物種の検討(尾崎・長峰、2001)が進められ、バイオジオフィルターを利用した農業集落排水二次処理システムが開発された(尾崎・長峰、2001)。

農村生活排水への対策として、汚水処理で用いられる酸化池法の利用がモデルで検討され、一年を通じて安定な処理をすることは難しいと判断された(川島・藤井、1992)。農業用ため池の窒素浄化能も定量的に評価され、ため池によって集水域への窒素流出が低下することが示された(戸田・竹内、1994)。

5.今後の展望

この20年間の「農業生態系における物質循環」研究を概観すると、点的な研究から面的な研究へ深化してきたと見ることができる。今後は、こうした面的な研究を時間的なスケールを加味して進めてゆく必要がある。そのためには、現場でのモニタリングデータを面的・経時的に収集することが欠かせない。最近の分析・モニタリング機器の進歩は、網羅的なデータ収集と分析を可能にしつつある。しかし、そのような研究には膨大な予算と労力がかかる。許される時間と資源の範囲内で、問題解決のためにどのように研究の場を選び、必要なデータを収集するかが、今後の物質循環研究の重要な課題となろう。

また、理想的に膨大なデータが得られたとして、その時、われわれは、生態系内の物質循環機構をすべて理解できるだろうか。また、トータルとしての環境負荷の削減のためには、さまざまトレードオフの関係を乗り越える必要がある。膨大なデータを解析・総合化していくための新たな数理解析手法、そして、生態系内の物質循環を全体として評価し、環境負荷削減への道筋を提起するための新たな思考法が求められている。

 
農業環境技術研究所案内(13):気象観測装置

農業環境技術研究所の正面玄関に立つと、研究所のロゴマークが描かれた所旗がたなびいている。その後方の桜樹に囲まれた露場に、高さ25mのタワーがみえる。これが当所の気象観測装置である。

農業環境技術研究所の総合気象観測は、当所の前身である農業技術研究所が筑波に移転してきた1980年(昭和55年)の8月から実施されたものを、そのまま引き継ぎ現在に至っている。したがって、観測が開始されてから24年の歳月が経過したことになる。今回の農業環境技術研究所案内は、この気象観測装置の内容や測定項目などを紹介する。

観測施設と観測方法

1.観測装置の設置場所:

茨城県つくば市観音台3−1−3 農業環境技術研究所

本館南側露場: 北緯36°01′、東経140°07′、標高25m

2.観測装置: 総合気象観測装置、年1回総合的な保守点検を実施している。

3.総合気象観測の要素は次の通りである。測定基準に従い1時間ごとに観測している。

風向(16方位)・風速・平均風向(16方位)・平均風速・最大風速・最大風速時の風向(16方位)・気温・気温最高値・気温最低値・露点温度・相対湿度・10cm深地温・10cm深地温最高値・10cm深地温最低値・30cm深地温・30cm深地温最高値・30cm地温最低値・降水量・降水量積算値・日照時間・日照時間積算値・日射量・日射積算値・蒸発量・蒸発量積算値

気象表

1.要素別累年気象表: 要素別累年気象表が、日別値、半旬別値、旬別値、月別値で表現されている。これらを求めるための要素は、平均風速・平均気温・最高気温・最低気温・平均相対湿度・最低相対湿度・降水量・日射量・10cm深地温・30cm深地温・日照時間である。なお、日別値、半旬別値、旬別値、月別値の定義は以下の通りである

1)半旬別値: 月の初日から5日間の数値を母数とした統計値。ただし、第6半旬については、月により6日、3日(うるう年については4日)の場合がある。

2)旬別値: 月の初日から10日間の数値を母数とした統計値。ただし、下旬については、月により11日、8日(うるう年については9日)の場合がある。

3)月別値: 月間の数値を母数とした統計値。

2.累年平均値:半旬値の平均値・旬別値の平均値・月別値平均値が表現されている。これらの内容は以下の通りである。

1)半旬値の平均値: 毎月の半旬別平均値または合計値を計算し、これを統計年数で割った値。

2)旬別値の平均値: 毎月の旬別値または合計値を計算し、これを統計年数で割った値。

3)月別値の平均値: 毎月の月別値または合計値を計算し、これを統計年数で割った値。

これらの観測データは、気象月報として月ごとに作成し、関係場所に配布するとともに必要に応じて所内を供覧している。また、これらのデータは農林研究団地(7号団地)の気象の代表値の一つとして利用されている。1989年から1996年までの累年気象表は、以下の資料にまとめられている。

(1)農業環境技術研究所累年気象表(1980年〜1989年): 奥山登美子、農業環境技術研究所資料第11号、1-150、平成2年

(2)農業環境技術研究所累年気象表(1990年〜1996年): 林 陽生・鳥谷 均・後藤慎吉・横沢正幸・清野 豁、農業環境技術研究所資料第23号、1-173、平成10年

蛇足

京都国立博物館長の興膳宏氏の「気象」の言葉の語源を紹介する。

「気象」の「気」とは、この世界のあるとあらゆるものごとを構成する元素であり、また「象」とは、人の目に見えない「気」が具体的に形をとって現れるありさまをいう。いま「気象」は、もっぱら「天気」のこと、英語のウエザーの意味に用いられるから、直訳すれば「天」の「気」の「象」(かたち)ということになろうか。

ところが、この「気象」とは、本来実にやっかいな語である。『古事記』序に、「混元すでに凝りて、気象未だ效(あら)われず」とあるのは、天地草創期にあって、万物がまだ形さえも成していない状態をいっている。そうしたマクロの宇宙的次元で使われるだけでなく、人体のメカニズムについても用いられ、中国最古の医学書『黄帝内径』には「平人気象論」という章があって、正常な人間の健康状態を論じている。ここでの「気象」は、人体における「気」のあり方を意味している。「気」のあり方が異常であれば、それが病気を引き起こすもとになる。

唐代になると、肉体面よりむしろ精神面について用いられることが多くなり、つづく宋代では、朱子をはじめとする儒学者によって、言動や著作など人間の精神活動全般を論ずる哲学用語になった。中国では、人は一種の小宇宙(ミクロコスモス)として意識されたから、人に天と同様の「気象」が備わるのも当然である。天の「気象」としての用法が主流になるのは、近代以後のことである。

 
わが国の環境を心したひとびと(8):岸本良一

日本人とカメムシと供養塔

かつて、日本人の心はやさしさに満ちていた。農民にとって命に等しい稲を食い荒らした、憎んでも余りある害虫を駆除しながらも、これを供養する人々の心。この思いは虫塚に現れている。

古くは、天保7(1836)年に建立された敦賀市色ケ浜の本隆寺開山堂の横にある善徳虫塚。その昔、小浜の国富庄で善徳と呼ばれる虫がわいた。秋稲を食い枯らす害虫である。善徳という呼び名のクロカメムシがこの一帯に発生したのである。大量に捕獲殺生した虫の霊を供養するため、この碑が建てられたのであろう。

天保10(1839)年、害虫防除の方法を記した虫塚の碑が、梯(かけはし)川を望む小松市の竹林台に建てられた。この塚には、藩政時代に大量に発生したウンカが供養されている。ウンカの発生があるたびに、農民はこの防除法に学びながら稲の敵を駆除していたのであろう。この虫塚が建てられて、165年もの歳月が経過している。亨保の大飢餓(1732年)は、ウンカの大発生によるイネの不作が原因と考えられている。われわれの文化は稲作とともにあった。

ちなみに、わが国の「稲作文化」について渡部氏は、「稲のアジア史、1」の中でおおむね次のようなことを述べている。「ごく常識的で包括的な理解の範囲でいえば、この文化とは、稲の栽培にかかわる農法あるいは技術、米の食文化、そして豊饒(ほうじょう)の祭りや信仰などに象徴される民俗と儀礼あるいは宗教、さらには、社会組織から国家の体制にまでおよぶ日常の営為とその周辺のおおかたの総体にかかわるひとつの文化の体系にほかならない。」

わが国の蝗(ウンカ)の被害

体長わずかに4〜6ミリのこの虫によって、私たち日本人はどれほど辛酸をなめさせられたことであろうか。江戸時代に筑紫(つくし)の国で発生した蝗(ウンカ)の被害は、わかっているだけでも、寛永4年(1627)から慶応4年(1868)まで33回もあった。有名な享保(きょうほう)の大飢饉では、西日本を中心に数十万の人が餓死したといわれる。これらもウンカの大発生が原因であった。九州には、今でも各地に餓人(うえにん)地蔵や供養塔が建っている。このことは、いかにウンカの被害が大きかったかを私たちに教えてくれる。

もちろんウンカの被害はごく最近も起こっている。昭和になってからでも、4年、15年、19年、23年、41年、42年と、数年に1回は大量発生し、農家をなやませてきた。それは、これらの虫の発生生態がごく最近まで、謎に包まれていたためである。

イネに決定的な被害を与えることで知られているのは、ウンカのなかでもトビイロウンカとセジロウンカである。古来その生態に謎の部分が多く、年によって忽然と異常発生することが知られていた。わが国のイネ害虫防除にかかわる専門分野では、これらウンカの発生生態の解明に多くの努力が注がれた。しかし、その詳細は長年にわたってわからず、昭和30年代においても冬季の越冬状態の解明に多くの努力がそそがれていた。

6月から7月になると、水田にセジロウンカとトビイロウンカが忽然として出現する。このウンカは、それから秋まで増殖を繰り返しながら、稲を食べつづける。しかし、冬の到来とともに突然いなくなる。ウンカは一体寒い冬を春までどこでどのように過ごすのか。それまで専門家の間では、2つの説が激しく議論されていた。ひとつは、国内のどこかで越冬し、春になって各地に飛散するという越冬説である。ほかは、毎年海外から海を渡り飛来するという飛来説である。大勢は越冬説であった。

ウンカの飛来

そんなときに届いたのが、気象庁定点観測船「おじか」の衝撃的なニュースであった。このときの話は、西尾敏彦著の「農業技術を創った人たち:2」に詳しく紹介されている。以下、この本の元になった西尾氏の「農業共済新聞:1999年9月8日」の文章を引用する。

「昭和42年7月17日、潮岬南方500キロの洋上にあった気象庁定点観測船「おじか」は、突如飛来した虫の大群に取り囲まれた。何万匹という小虫が船の周りを乱舞し、 粉雪が舞うようにみえたという。後日、虫の正体は稲の大敵セジロウンカとトビイロウンカであることが判明した。この出来事が、わが国のウンカの研究の流れを一変させることになった。この研究の推進役になったのが、当時九州農業試験場にいた岸本良一であった。」

そのときの躍動は、西尾敏彦著「農業技術を創った人たち:2」にみごとに表現されているので、以下に引用する。

「そこに届いたのが、「おじか」の衝撃的なニュースである。かねて飛来説に関心をもっていた岸本を勇気づけたのはいうまでもない。さっそく仲間と本格調査に着手する。 まず観測船に乗り込み、定期的な洋上観測を試みる。地上でも、予察灯や水盤・捕虫ネットを使い、各地での飛来虫数を連日観測した。この結果、東支那海の飛来と九州における飛来に同時性があることが明らかになった。

ウンカには長翅(し)型と短翅型がある。普通、最初に飛来した長翅型ウンカが田に住み着き、そこで3世代を過ごす。1世代で10個以上産卵するから、3世代で1,000〜1.500倍も増殖する。 この間は短翅型が多く、株間でもほとんど移動しない。被害が坪枯れ状を呈するのはそのためだ。他にもウンカが稲以外に寄生しないこと、10〜24時間は連続飛翔(ひしょう)が可能なことなども明らかにされた。

昭和46年、岸本は両ウンカの海外飛来に関する新説を国際誌に発表する。梅雨どきの低気圧にのって、中国大陸から飛来するというのである。 彼の説は中国・東南アジアの研究者にも関心を呼び、以後国際的な規模で研究が進められるようになった。

昭和62年、九州農試の清野豁(せいのひろし)らによって、飛来経路が明確にされた。梅雨前線の南側を華南から西日本に吹き抜ける強風〈下層ジェット気流〉が両ウンカの通路だったのである。 今日では、この気流解析によって飛来を予察し、防除対策をたてることもできるようになった。大昔から農家を悩ましてきたセジロ・トビイロの大被害は、 もはや過去のものになったといってよいだろう。

最新の研究では、初発地は東南アジアで、ここで常時繁殖している両ウンカが中国南部へ移動、さらに海を越えて日本に至ると考えられている。ウンカからみても、世界はせまくなっているようだ。」

日本農業研究所賞の受賞

岸本はこの業績で、昭和46年に日本応用動物昆虫学会賞、昭和51年に科学技術庁研究功績者表彰、昭和58年に日本農学賞・読売新聞社賞を受賞している。また、平成16年には日本農業研究所賞を受賞した。研究業績の内容は、以下の通りである。

ウンカ類の海外長距離飛来の実証と防除技術の確立

本賞の受賞者である岸本良一氏は、昭和40年代の初めから九州試験場(筑後市)において、ウンカ捕獲のためのさまざまな技術を駆使し、ウンカの飛来が梅雨期の前線に沿って東北に進む低気圧(湿舌)の進行状況に関係することを明らかにした。さらに、彼は昭和44年からほぼ10年間にわたる東シナ海での水産庁調査船ならびに気象庁観測船での継続的な調査をおこない、海洋上でのウンカ類の捕獲状況とそのときの気候条件との関係の解析から、これらウンカ類が海外から長距離を飛来してわが国にいたる確かな証拠を示し、長年にわたるそれまでの国内越冬説と海外飛来説の論争に明快な決着をつけた。

受賞者は、こうした成果をさらに発展させ、長距離を飛来したトビイロウンカの水田におけるその後の増殖過程をくわしく追跡し、飛来個体群(長翅型成虫)にひき続く、増殖個体群(短翅メス成虫)の爆発的な密度増加によってひき起こされるイネ株の集中的な枯死(坪枯れ)の発生量を正確に予測する技術を確立した。すなわち、わが国における本害虫の防除には、飛来時期と飛来程度の把握、飛来世代の次世代である短翅型メス成虫の発生量の予測、そして、このメス密度が一定の閾値を超えたときに防除作業を実行するという、きわめて具体的でわかりやすい技術を確立し、わが国の稲作農業におけるウンカ類防除にきわめて大きな貢献をした。

現在トビイロウンカは熱帯アジアから東南アジア、そして日本を含む東アジアの稲作地帯での重要な害虫として注目されているが、この害虫の南から北に向かっての壮大な移動と分布の拡散に関する受賞者の考え方は、いまや世界的に確固たる地位を占めている。

今は:ウンカの飛来予測

独立行政法人 農業・生物系特定産業技術研究機構と日本原子力研究所は、日本原子力研究所が開発した放射性物質の大気中の拡散予測技術を応用して、平成13年度からウンカ類のアジア地域長距離移動の高精度予測に関する研究を進めてきた。その結果、ウンカの飛来を高精度に予測するシミュレーションシステムを完成した。

ウンカは風に乗って飛来するため、数日先までの風や温度などの情報が含まれている気象予報データを利用することにより、アジアのどの地域から日本のどの地域にウンカが飛来するかを2日先まで予測することができる。こうして、今ではこれらの情報を得ることで、より適切なウンカの防除対策が可能となった。

このシステムがどれほど活用価値があるかを調査した結果、2003年の梅雨期における予測精度は74%であった。これは同期の降雨予報の的中率とほぼ同じ精度であった。このことから、2004年から実用システムとして予測を開始している。

予測システムのホームページは次の通りである。 http://agri.narc.affrc.go.jp/indexj.html。 このホームページでは、イネの茎上のセジロウンカ(メス)の写真、ウンカ飛来予測システムの概念図、ウンカの飛来予測図などが掲載されている。

岸本良一の思いは、このような形で実りつつある。さらに、これらのことは科学がまさに継承の学問であることを教えてくれる。

参考資料

1.西尾敏彦:農業技術を創った人たち

2、家の光協会(2003)

2.岸本良一:日本農業研究所賞表彰式案内、第21回(平成15年度)

3.西尾敏彦:農業共済新聞、1999年9月8日

4.http://agri.narc.affrc.go.jp/indexj.html

 
論文の紹介:高二酸化炭素濃度の条件下における泥炭地帯からの溶存有機炭素の流出

Export of dissolved organic carbon from peatlands
under elevated carbon dioxide levels
C. Freeman et al., Nature, 430, 195-198 (2004)

泥炭地帯は、全球にある炭素を蓄える巨大な貯蔵庫である。泥炭地帯を流れる河川において、溶存態の有機炭素の濃度が急激に上昇していることが観察され、この貯蔵庫が不安定になりつつあるのではないかとの関心が生まれている。

これらの原因となる機構として、三つの主な要因が提唱されてきた。しかし、そのうちの二つの選択肢、すなわち温暖化要因と河川流出量増加要因では十分な説明ができない。この論文では、三番目の要因、すなわち年間降水量のうちの夏期降水量の割合の変化を使っても、この傾向は説明できないことを示す。

C. Freeman らは、これまで認識されていなかった要因、つまり、一時生産力に及ぼす二酸化炭素を媒介とする刺激が有力な要因であると推察した。二酸化炭素濃度が高い条件下では、最近吸収された二酸化炭素に由来する溶存有機炭素の割合が、対照条件の場合よりも10倍高かった。溶存有機炭素濃度は、分解のみに影響を与える環境側の駆動因よりも、純一次生産力に影響を与える駆動因に対してはるかに敏感に反応しているようである。

 
論文の紹介:窒素を固定する植物が硝酸化成作用もする

Nitrification by plants that also fix nitrogen
Charies R, et al., Nature, 430, 98-101 (2004)

空気中に存在する分子状の窒素を利用して、窒素化合物をつくる反応を窒素固定という。土壌を含めた自然環境下で窒素固定生物によっておこなわれていることに特徴がある。窒素はニトロゲナーゼの作用により還元されてアンモニアになり、有機物に取り込まれる。

一方、アンモニア態窒素が微生物の働きで酸化され、亜硝酸態窒素や硝酸態窒素が生成されることを硝酸化成化作用(硝化)という。

エンドウ、インゲン、クローバーなどのマメ科植物は窒素の循環に重要な位置を占めている。なぜなら、これらの植物は空気中から窒素を取り込んでアンモニウムイオンに変える共生細菌の宿主だからである。植物は、このアンモニウムイオンをタンパク質を作るために使う。植物が枯れるか、あるいは単に葉を落としただけでも、この貴重な栄養は、還元されると再び大気中に失われる。

ただし、タンパク質が分解されて酸化態窒素、つまり亜硝酸態窒素や硝酸態窒素が生じる硝化が促進されれば話は別である。土壌や堆肥には、硝化を促すさまざまな微生物が高密度で存在している。しかし、硝化を行う緑色植物はこれまで見つかっていなかった。

ここに紹介される植物はマメ科に属する。C.R. Hipkinたちは、防御用の毒素として3−ニトロプロピオン酸を蓄えている一部のマメ科植物が、酸化態の無機態窒素を茎や葉で合成する仕組みを明らかにした。こうして生じた酸化態窒素を含む植物遺体は土壌に還元され、堆肥になる。

通常、硝化の過程ではさまざまな微生物が関わり、複数の反応段階がある。このため、緑色植物が自らの体内で硝化を行うという今回の論文は、これまでの窒素循環では知られていなかった過程を明らかにしたという意味で大変興味あるものだ。これらの結果は、窒素循環が土壌とたった一本のマメ科植物の中で起こり得る可能性を示している。

 
論文の紹介:生態学的なリスク評価のためのコンピュータ・シミュレーションモデルの開発と利用

Development and application of computer simulation tools for ecological risk assessment
Haiyi Lu et al.,
Environmental Modeling and Assessment, 8, 311-322 (2003)

農業環境技術研究所は,農業生態系における生物群集の構造と機能を明らかにして生態系機能を十分に発揮させるとともに,侵入・導入生物の生態系への影響を解明することによって,生態系のかく乱防止,生物多様性の保全など生物環境の安全を図っていくことを重要な目的の一つとしている。このため,農業生態系における生物環境の安全に関係する最新の文献情報を収集している。

今回は、生態系に化学物質が及ぼすリスクを評価するためのコンピュータ・シミュレーションについての論文を紹介する。

要約

生態リスクの推定に利用できるモデルのレビューによれば、ほとんどのモデルが特定の場所の生態系を対象としており、その適用範囲も限定されていることがわかる。一方、他の場所の生態系にも容易に適用できる汎用的なモデルは少なく、あっても、単純なうえ、かなりの不確実性を伴うという問題がある。

この論文では、各生態系の条件に合わせて修正が可能な、生態リスク評価(ERA)モデルを用いた研究を紹介する。環境管理や政策決定において、ERAによってはじめてその必要性が明らかになるような潜在的な問題に焦点を絞って評価を計画したり修復を実施したりすることに、生態リスク評価の予備調査としてコンピュータ・シミュレーションを利用することが役に立つ。

このモデルは、Windowsベースの操作環境とデータベース管理システム(DBMS)とが組み合せられ、扱いやすいソフトウエア・パッケージになっている。さらに、各生物の食物源データに基づく食物網の情報が、DBMSの枠組みに統合されている。

このモデルを評価するため、事例分析が実施された。銃砲類へのクロム(Cr)のコーティングをタンタル(Ta)の蒸着に変更した場合、生態系にどのような影響があるかを米軍の射撃実験場(ユマ実験場およびアバディーン実験場)で調査した。生物への曝露経路として、陸上動物では食物摂取、吸入と皮膚吸収、植物では根と葉からの吸収、水生生物では直接的な吸収が考えられる。

シミュレーションの結果、全体としてモリブデンと六価クロムの生態有害性指数(EHQ)が高く、2つの実験場で調査された水生生物と陸上生物に対して高いリスクがあることが示された。一方、タンタルについては、性質のよく似たバナジウム(V)のデータを利用して評価した場合、対象区域内の汚染生物へのリスクは小さかった。感度分析によって、土壌と水への分配係数がこれらの結果に大きく影響することが明らかになった。シミュレーションの結果からは、モリブデンとクロムはどちらも銃身の被覆材料として好ましくないこと、そして、影響を受ける試射地区での調査をさらに実施する必要があることが示された。

タンタルを使用することが望ましいが、タンタルの悪影響のリスクがわずかにある生物種については、予定された濃度が土壌または底泥、水の調査で検出された場合に、汚染された可能性のある生物種のサンプリングを含む現地調査が必要であろう。

管理システムが適切に定められていても、リスク管理の決定の根拠とするためには、これまでに得られた通常時の汚染レベル、利用可能な技術、代替行動の経費、修復法の選択など他の事項を、リスク調査の結果と合わせて総合的に検討しなければならない。

 
本の紹介 145:サンクト・ペテルブルク断章 −遺伝研究者のロシア滞在記− 山田 実著、未知谷(2004) ISBN4-89642-107-8

等閑。夏休み。短い夏とはいえ酷暑の砌(みぎり)。暑さを払拭(ふっしょく)すべく、一昨年の夏は「情報:農業と環境、No.29」のなかで「本の紹介 85:海馬−脳は疲れない−」を書いた。引き続いて、昨年の夏は「情報:農業と環境、No.41」のなかで「本の紹介 129:バカの壁」を書いた。いずれも「脳」に関する本の紹介で、脳が涼しいと想えば涼しいのだと思いながら書いてきた。暑いと、専門の本よりこの種の本の方が「脳」に適しているとも私の脳が感じたからである。

「脳」の話を2回にわたって紹介したので、どうやら筆者の脳が満足したようである。そこで、つぎに暑いときに寒いところを念(おも)えば、脳が涼しく感じるとの憶(おも)いから、今回は極寒の地のサンクト・ペテルブルクを選んだ。これで、読者の暑さが払拭できたとすれば、筆者の喜びは筆紙に尽くしがたいものがある。

さて、法学などのように自然の摂理とかけ離れた学問や仕事をしている人には、趣味が多岐にわたる人が多い。とくに、美術や音楽などいわゆる芸術とよばれるものに造詣(ぞうけい)の深い人が多い。無機的なものからの乖離(かいり)なのかもしれない。農学などという自然を相手にした人の多くは、定年退職をした後もやはり農業などに関わる人が多いように思われる。自然とのつながりが、そのままの姿で引き継がれているような気がする。

農学をやった人には珍しく、退職後に文学的、芸術的なものに心酔した人と著書を紹介するのが、実は今回の目的である。題して「サンクト・ペテルブルク断章−遺伝研究者のロシア滞在記−」。

著者は、表題にもあるとおり遺伝研究者で、1922年に東京小岩に生まれた嫡々(ちゃきちゃき)の江戸っ子である。1957年に東京大学の農学部を卒業し、すぐに農林省に入省した。初めは稲の栽培に関する研究をしていたが、後年トウモロコシの遺伝の研究に進み、“トウモロコシの花粉競争における雑種強勢”の研究で日本育種学会賞を受賞したまことの農学者である。文字通り、わが国におけるトウモロコシ研究の指導者として活躍してきた。

また1990年代には、ゲノム研究にも係わった。1997年から3年間、科学技術振興事業団の上級研究員としてサンクト・ペテルブルクのバビロフ植物生産研究所で研究に携わった。著者は、歌声喫茶でロシア民謡を歌い、ドストエフスキーやチェーホフを語らせれば人後に落ちないロシア通なのである。そういえば、顔つきもロシア人に似ている気もする。通が高じ、いつの間にかこの都が自分の生まれ故郷とまで錯覚するほどになり、ここにこの都の案内書を書き上げた感が強い。いわば思いのこもったロシア見聞録なのである。

著者の思いは、「人と言葉」、「ピーテルの暮らし」、「ロシア人の想い」、「主義と信仰」、「芸術の世界」、「ソビエト体制が残したもの」などにある。「北緯六十度の冬」などの断章を読まれて、涼を感じていただきたい。目次は以下の通りである。

はじめに − なぜ書く?

街を歩けば(人と言葉)

あなたはなに人?  白人の街ピーテル  五百万人のなかの二百余人  わが運転手、サーシャ君  ピーテルとハルビン  冬宮とエルミタージュ、ロシア美術館

食う寝るところに住むところ(ピーテルの暮し)

北緯六十度の夏と冬  ジャガイモ、パン、それに米と玄ソバ  ウォトカとワイン、そしてビール  一・五米ドルと六十米ドルの食事  果物、野菜、それに魚と肉

なぜ耐えるのか(ロシア人の想い)

ピーテル、ここはロシアであってロシアでない  飢えても資源は食さず  文化遺産とソビエト時代の建物  19世紀と21世紀

心の安らぎ(主義と信仰、芸術の世界)

ラスコーリニコフとアカーキィ・アカキエヴィチのかげ  「展覧会の絵」と九百日の封鎖  ロマノフ王朝の遺産  グリンカ、チャイコフスキーと五人組、それにショスタコーヴィチ  レービンの絵、ロシア正教会のイコン

七十年の遺産(ソビエト体制が残したもの)

冷戦と冷戦以後  建て前と本音  商売は一日にしてならず  感性と感情または勘定

あとがき−−なぜ書いた?

 
本の紹介 146:昭和農業技術史への証言 第三集
昭和農業技術研究会、西尾敏彦編
人間選書257,農文協(2004) ISBN4-540-04145-2

「昭和農業技術史への証言」の第三集が刊行された。第一集は、稲作に関する多収技術や直播栽培などの研究者五人が、先駆者の研究の足跡を証言したものであった(本の紹介:101)。第二集では、バイオ研究の土台を築いた五人の研究者が、バイオ野菜「ハクラン」を創出するまでの苦闘を語る(本の紹介:102)。第三集の本書は、農業に「節」を見出し、新たな農業の躍進に貢献した五人の研究者の物語である。

目次は以下の通りであるが、4ページにわたる「はしがき」を読めば、この本の大方の内容がわかる。筆者が解説するよりは、直接そのはしがきを紹介するほうが、本書の内容をより深く理解できると考え、以下に「はしがき」を掲載する。

はしがき

「物の変化には、〈節〉がある。その〈節〉をみつけよ」

とは、本書の第5話「水田土壌学の進歩」で高井康雄先生が引用している塩入松三郎先生の言葉である。わが国水田土壌学の泰斗、塩入先生がつねづね口にされていたというこの言葉は、たんに土壌学の世界だけではなく、自然現象のすべてに通じる至言であろう。本書は、農業にその〈節〉を見出し、新たな農業の躍進に貢献した五人の研究者たちの物語である。

元九州農業試験場長・伊藤隆二氏が語る水稲品種「クサブエ」にまつわる第1話は、品種改良という仕事が一筋縄にはいかないことを教えてくれる。鳴り物入りで誕生した稀代の水稲いもち病抵抗性品種「クサブエ」が、一夜にして罹病性品種に転じた事件は、世に〈クサブエの悲劇〉といわれ、わが国のみならず世界中の育種研究者を震かんさせた。第1話は、その渦中にあった育成者自身が語る事件のてんまつである。とかく失敗については語りたがらない研究者が多いなかで、すべてを率直に語り尽くす伊藤さんの真摯な姿は、読者の共感を呼ぶにちがいない。ちなみに、この事件を契機に、わが国の水稲抵抗性研究は長足な進歩を遂げ、抵抗性品種の育成に大きく寄与している。

北海道における水稲作付け面積の拡大は、わが国水稲育種研究のかくかくたる成果として、広く喧伝されている。第2話は、ご自身も多収品種「テイネ」「ユーカラ」を育成し、北海道における稲作多収時代のきっかけをつくった元熱帯農業研究センター所長・岡部四郎氏が語る「北海道における水稲品種改良」の話である。「品種改良は伝承の業。いつの時点にもゴールはなく、長い歴史のなかの一齣である」と語る岡部さんの言葉は、実績をひっさげているだけに重みがある。こうした想いをもつ、育種家たちの努力の積み重ねが、最盛期27万ヘクタールにも達した北海道稲作の隆盛につながったのだろう。

元農業環境技術研究所長・坂井健吉氏の第3話「サツマイモ品種改良のあゆみ」は、がむしゃらだが、実行力と周到さを兼ね備えた坂井さんの人柄を反映し、たのしい読み物になっている。 「ステッキ1本で、淘汰すべきイモをはねとばしながら選抜した」などという坂井流<モーレツ育種>は、読者の度肝を抜くにちがいない。とかく最近の品種改良は学理先行の世界と思われがちだが、それ以上に<大胆さ>と<体力>、それになりよりも<情熱>が必要であることを、第3話は教えてくれる。坂井さんが育成した多収・高でんぷん品種「コガネセンガン」は、初の工業原料用サツマイモとして最盛期には3万5000ヘクタールの栽培面積をもった大品種であった。

土壌学、わけても土壌リン・粘土鉱物などに関する研究の第一人者である元農業技術研究所長・江川友冶氏の第4話「農業技術研究所における化学研究の思い出」には、ご自身が戦中戦後を過ごした〈西ヶ原〉の思い出があふれている。西ヶ原(東京都北区西ヶ原)の地は、明治26年(1893)の農事試験場の創立から昭和55年(1980)の農業技術研究所筑波移転まで、わが国農業研究の本拠だった。第4話では、とくに戦後の混乱期の農業技術研究所で「明けても暮れても勉強し、討論を重ね、知の蓄積に励んだ」研究者たちの<こころざし>を語り継ぎたかったのだろう。江川さんはこの時代の農業技術研究所を<西ヶ原大学>と呼ぶが、まさに<西ヶ原大学>卒業生の活躍が戦後農業の大きな力となったといって過言ではない。

東京大学名誉教授・高井康雄氏の第5話「水田土壌学の進歩」は、恩師だった塩入松三郎先生の諸研究の紹介からはじまる。全面全層施肥・老朽化水田・高位収穫田の造成と、わが国水田土壌学の太宗をなす塩入先生の研究がどのような経緯で生まれたかを、読者は知ることができる。塩入先生はまた多くの俊秀を育てたが、高井氏はその一人。「誰もやっていないから、君は水田を微生物学的に研究してみたまえ」といわれて、土壌微生物学をこころざしたという。講話の後半では、土壌中の酸化還元電位と土壌微生物の動態変化の間に<節>を見出した話など、ご自身が切り拓かれた土壌微生物学の研究過程をたどってくださった。最近の農業にとって土壌微生物学は欠かせない学問になっているが、その草創期に孤軍奮闘された先生の話は、深い感銘を与えてくれる。

講話につづく質疑、出席者を含めた討論もまた、熱っぽいものになった。かつての共同研究者、かつての競争相手が一堂に会してたたかわせる論議からは、今だから話せるといった本音、内輪話がぽろぽろ出てきて、昭和農業技術誕生の秘話としても興味深い。

はしがき

西尾 敏彦

第1話 水稲品種のいもち病抵抗性喪失とその後の対応

伊藤 隆二

はじめに

1、過去におけるいもち病抵抗性品種

2、いわゆる抵抗性品種の罹病化と当面の対応

3、判別品種と菌糸別反応によるいもち病抵抗性遺伝子分析

4、いもち病抵抗性の育種における日本と外国との違い

5、真性抵抗性と圃場抵抗性の検定方法

6、現在のいもち病抵抗性品種の育種

《質疑・討論》

第2話 北海道における水稲品種改良  −−その歩みと担い手たち−−

岡部 四郎

はじめに

1、北海道の水稲主要品種の変遷とその背景

2、北海道米の品質・食味改良

3、北海道品種改良物語

むすびにかえて

《質疑・討論》

第3話 サツマイモ品種改良のあゆみ  −−数理統計学の応用と「コガネセンガン」の育成−−

坂井 健吉

はじめに −−わが国におけるサツマイモ作の変遷−−

1、統計数理学との出会い

2、サツマイモの育種のあゆみ

3、サツマイモの育種試験法の検討

4、母本養成と組合せ能力の検定

5、「コガネセンガン」の育成

6、育種法の研究と育種事業

7、育種の反省

《質疑・討論》

第4話 農業技術研究所における化学研究の思い出

江川 友治

はじめに

1、戦前のこと

2、研究再開まで

3、農業技術研究所の創設

4、「共通基礎研究」と「西ヶ原大学」

5、研究者として私の経験した学問上の討論

6、研究者として私の経験した国際交流

おわりに

《質疑・討論》

第5話 水田土壌学の進歩  −−微生物学の立場から−−

高井 康雄

はじめに

1、塩入松三郎の『水田の土壌化学』

2、湛水土壌中の還元過程と微生物代謝

3、水の浸透が湛水土壌の酸化還元過程に及ぼす影響

4、水田土壌作土表層部位における酸化還元過程

5、水田における有機物循環における植物遺体と堆肥の意義  −−生態系としての水田−−

6、水田における肥培管理と地力

《質疑・討論》

《質疑・討論》における発言者の紹介(主な研究分野・職歴)

人名索引 巻末

 
本の紹介 147:環境漁業宣言 矢作川漁協100年史
矢作川漁協100年史編集委員会編
風媒社(2003) ISBN4-8331-0523-3

矢作(やはぎ)川は、長野県下伊那郡に源を発し、長野・岐阜両県の山間地を経て、愛知県のほぼ中央を流れ三河湾に流入する一級河川である。この河川は、わが国のほかの多くの河川と同様に、近代化の波にほんろうされ、その環境が破壊されてきた。本書では、この矢作川の愛知県内の区間に専用漁業権を持つ矢作川漁業協同組合が、「環境を語る漁協」に変身し、100年の歴史を振り返りつつ近代化のひずみを克服しようとしている姿が描かれている。

本書の冒頭に、漁協創立100周年の総代総会で採択された「環境漁協宣言」が示されている。河川環境と水産資源の再生をめざした7条からなる本宣言には、「森・川・海の環境を一体的に改善する視点」から、「三河湾の海面漁協と内水面漁協との交流・協力」、「水源の森の整備、矢作川漁民の森の整備」など、環境を守る漁協としての方針がうたわれている。この宣言には、河川環境が森林などの流域環境や下流の沿岸環境などと一体のものであることが深く刻まれている。

なお、農業環境技術研究所が中心になって実施されている研究プロジェクト「森林・農地・水域を通ずる自然循環機能の高度な利用技術の開発」では、この矢作川の流域を研究の対象の一つとして、流域の物質循環と河川・沿岸環境との関係の解明を進めている(情報:農業と環境 No.46参照)。本書の目次は以下の通りである。

美しい矢作川の創造を目指して 
―創立100周年記念誌「環境漁協宣言」の出版によせて

環境漁協宣言

序章 河川環境を「生物生息環境」と見る目

第1章 環境漁協への展望(座談会)

第2章 川の権利をめぐって

1 明治期の矢作川  2 水力発電の影響 3 漁業権設定の壁  4 組合の組織と事業

第3章 生活世界のなかの川漁

1 古きよき矢作川  2 川の記憶  3 迫りくる変化

第4章 川との距離

1 高度成長期の矢作川  2 河川利用の高度化とその管理  3 サービス漁協への転換

第5章 川と魚の病

1 矢作川の汚濁・歴史と現状  2 川の疲弊  3 魚類相変化と不漁続きのアユ漁

第6章 環境を語る漁協―よく利用され、なお美しい矢作川の創造をめざして

1 矢作川に流れを取り戻す  2 河川環境の改善への「知」の結集  3 河川管理思想の転換

引用文献・参考資料

あとがきにかえて―川の自然(じねん)に心を澄まして

巻末資料/索引

カラーグラビア/漁業者の見た矢作川、矢作川水系淡水魚類目録

 
本の紹介 148:「健康な土」「病んだ土」
岩田進午著、新日本出版社(2004) ISBN4-406-03088-3

これまで「本の紹介」で、この著者の本を4冊紹介した。本の紹介56の「生ごみ・堆肥・リサイクル」、本の紹介35,38,62の「環境土壌物理学IIIIII」がそうである。著者は、ほかにもわかりやすい土の本を数多く出版している土壌学の泰斗である。たとえば、「土壌の化学」、「土のコロイド現象」、「土は生命の源」、「土壌物理学概論−土と水の科学−」、「これでわかる生ごみ堆肥化Q&A」、「落ち葉はどこへ消えた?」、「土のはたらき」など。

レスター・ブラウンは、「環境のなかに経済」があるという認識がなければ、地球はこの人類を支えきれない、20世紀の「経済のなかに環境」があるという認識では、地球の未来は危ういというような考えを、彼の著書「プランB」(本の紹介140)で紹介している。

本書の著者の思いをレスター・ブラウン風にいえば、「大地が人間のためにある」という思いでなく、「人間こそ大地のもの」という思いがなければ、環境の危機は避けられないということになろう。そのためには、自然との共生理念を身につける以外に方法はないと著者はいう。

この本は、土を通して自然と人間とのかかわりを、具体的に「健康な土」と「病んだ土」で考えていく。縦軸に土の進化史を据え、生物的要素と非生物的要素の見事なハーモニーのもとに、土とその周りの環境がともに進化していく姿を写し出す。横軸には、土に対する人間の働きかけと自然摂理をからみ合わせる。科学と技術が発達した現代でも、自然の摂理に背いた人間の行為が、成功したように見えても、かならず後で自然のシッペ返しを受けると、著者はいう。大変読みやすい本である。目次は次の通りである。

はじめに

序 土が危ない!

1.母なる大地の思い  2.土が病んでいる――人類が初めて経験する異変

I 土と人間のかかわり

1.人類が育んできた自然観・土観  2.人類が荒野を残す  3.自然との共生を求め続けた人類

II 土のしくみと進化

1.土とは?  2.土の進化史の素描−−誕生期から老年期まで  3.壮年期までの土をめぐる物質循環  4.土も年をとる  5.土の進化を通して自然を見る

III 土の「肥沃性」の鍵

1.植生の多様性が土を豊かにする  2.土の進化とバラツキの強まり  3.農地でのバラツキと土の肥沃性  4.夢の実現を

IV 「健康な土」と現代農業

1.「健康な土」「生きている土」とはどんな土?  2.土の危機をもたらすもの  3.環境とのかかわりを考える

終 土はみんなの宝物

1.みんなで「病んだ土」の再生を  2.土をみんなで大切に

 
資料の紹介:季刊肥料2004年夏  肥料協会新聞部、2004

カドミウムの問題は古くて新しい。古くは、イタイイタイ病の原因が三井金属鉱山神岡工業所から排出したカドミウムであるという厚生省の見解(1968年)、農用地土壌汚染防止法等に関する法律(1970年)、農用地土壌汚染対策地域の指定(1989年)などの問題がある。新しいところでは、FAO/WHOが共同して実施しているコーデックス委員会(Codex Alimentarius Commission)の食品規格計画の問題である。

この季刊肥料には、以下の目次に示したように、CODEXを中心とした食品中の汚染物質に関するリスクアナリシスの国際動向から、汚染土壌の修復技術、欧州連合における肥料中のカドミウムの規制案など多岐にわたる報文が含まれている。重金属、とくにカドミウムに関心のある方に一読をおすすめする。

またカドミウムに直接は関係しないが、この資料の中に農業環境技術研究所のOBである越野正義の「化学肥料の歴史」と題する報文がある。これは、世界と日本の古代から現在に至る肥料の歴史を、手短かにわかりやすくまとめたもので、環境研究を進める人には大変参考になる報文である。

【肥料考】水田における植物遺体の供給とその土壌中での分解

・食品中の汚染物質に関するリスクアナリシスの国際動向について

・カドミウムに汚染された農耕地土壌の修復技術について

・ファイトレメディエーション(植物による重金属汚染土壌の浄化)

・ヨーロッパ連合における肥料中のカドミウムの規制案

・農地におけるカドミウムの出入りとゆくえ

・カドミウム高吸収イネ品種を利用した汚染土壌の修復

・洗浄法によるカドミウム汚染土壌の修復

・秋田県におけるイネを用いたファイトレメディエーション研究概要

・カドミウム汚染土壌の植物による修復技術一貫体系の確立

・下水汚泥の農業利用に関する最近の研究から

・平成15年東北地域の水稲冷害と堆肥等の施用効果

・化学肥料の歴史

・生ごみ原料別の堆積発酵による堆肥化特性

 
資料の紹介:欧州委員会農業総局ファクトシート「農業と環境」

欧州委員会農業総局は、「農業と環境」と題するファクトシート(概況報告書)を2003年12月に発行した(http://europa.eu.int/comm/agriculture/publi/fact/envir/2003_en.pdf (対応するページが見つかりません。2010年6月))。このファクトシートにはEU(欧州連合)がどのような政策や法規に基づいて農業環境問題に取り組んでいるかが体系的に記述されており、我が国の農業環境問題にかかわる行政者や研究者の参考になると思われる。そこで、このファクトシートを翻訳したものを紹介する。このファクトシートには数多くの政策、制度および法規などが記述されているが、それらの内容がある程度、理解されていなければ、本文の内容も十分な理解が難しいと思われる。そこで、本文中の政策、制度、法規、および用語の定義などについて、参考になる資料をウェブサイトから検索し、番号(*1*2・・・)を付けて掲載したので、参照していただきたい。また原文中の地図1(EUにおける条件不利地域)、地図2(EUにおける硝酸塩ぜい弱地域)、および脚注文献は省略したので、それらの内容については、上記のアドレスにアクセスして参照いただきたい。さらに、読みやすいように編集した部分があり、適切に原文を表現していないことも懸念されるので、原文で確認いただきたい。

農業と環境

EUの陸地の半分は農業に使用されており、このことだけでも、EUの農業は自然環境にとって重要であることが明らかである。農業と自然は相互に重大な影響を及ぼしている。EUの農業は数世紀にわたって、さまざまな価値のある半自然生息地を形成し、維持することに貢献してきた。今日、農業はEUの景観の大部分を創造し、そこでは広範囲にわたる野生生物が数多く生存している。農業は欧州文化の重要な資産であるだけでなく、健全な環境を維持することに重要な役割も果たし、多様な農村社会を支えている。

自然環境の豊かさと農業活動の間の結びつきは複雑である。粗放的農業は欧州の貴重な生息地の多くを維持しており、多種多様な野生生物が、この生息地に依存して生存している。しかしながら、農業活動はこれらの自然の資源に悪い影響を及ぼすこともある。土壌、水および大気の汚染、生息地の分断、野生生物の消失は、農業活動や土地利用が不適切な場合に生じる可能性がある。そのため、EUの諸政策、とくに共通農業政策(CAP)は、環境悪化のリスクを防ぐことをさらに目指すとともに、それぞれの地域において、対象とする農村開発措置*1によって、しかも農業の収益性の確保に貢献することによって、田園と環境の維持に積極的な役割を行っている農業者を奨励する。

このファクトシートは、第1節ではCAPが環境の持続可能性に重要な貢献をしていること、そして第2節では、EUが地球規模の環境の持続可能性の目的と、具体的目標を達成するために、実行可能なその他の政策と規制措置が果たす役割を解説している。ボックス1に農業と環境に係わるおもな注目すべき出来事を示した。

ボックス1 農業と環境に係わるおもな注目すべき出来事

アムステルダム条約(1997年6月17日)*2において、EUは持続可能な開発*3,4への取組みを確認し、持続可能な開発戦略(SDS)を提出した。2001年5月に欧州委員会は、この政策の効力を高め、さまざまな政策間の整合性を徹底することに重点をおいた持続可能な開発戦略案を発表した。

カーディフプロセス(Cardiff integration process)*5は、国家元首または最高指導者によって1998年6月に開始され、農業を含む各産業部門の環境問題を統合するための包括的戦略を開発することをEUに求めている。1999年12月のヘルシンキ欧州理事会において、農相理事会は最初の戦略を提出し、その後、2001年6月のイエーテボリ欧州理事会*6でその改訂戦略文書を提出した。

欧州委員会の協議文書「持続可能な農業に向けて」(1999年1月)*7

アジェンダ2000*8,9での共通農業政策(CAP)改革*10−1,11、12(1999年3月)。

イエーテボリ欧州理事会(2001年6月)において、CAPは、「健康増進、高品質の農産物、有機農業など、持続可能な生産方法、再生可能な原料および生物多様性の保護に重点を移すことによって」、持続可能な開発に貢献すべきであるということに合意し、今後、CAPの改革を行うことになった。

・欧州委員会の「CAP改革持続可能な農業の長期見通し」提案に関する欧州理事会の政治的合意*10−2(2003年6月26日)

1. 環境保全を促進する農業政策

農業は単なる食料生産以上に意義のある活動である。農業はすべての生産過程において、自然環境に影響を及ぼす可能性がある。たとえば、多量の農薬や肥料の使用、誤った排水または灌漑活動、高水準の機械化または不適切な土地利用は、環境を悪化させる可能性がある。ところが、農業活動を放棄することは、半自然の生息地や生物多様性を低下させ、EUの環境的遺産やそれらに関係する景観に害を与える可能性もある。CAPはこのような問題を重視して取り組んでいる。

環境の具体的目標を農業政策に統合することが1980年代に始まった。それ以来、CAPの目標は、持続可能性の向上に貢献することに重点をおいてきた。CAPの目的には、安全で健康な食料を生産し、農村地域の持続可能な開発に貢献し、農村環境および生物多様性の現状を保護・強化することなど、社会に多面的機能を十分発揮させる農業を支援することが含まれている。欧州委員会の1999年の協議文書「持続可能な農業に向けて」において、環境問題をCAPに統合させることの重要性が強調された。この文書についての最近の処置は2003年のCAP改革である。

「CAPのグリーン化」

1990年代における主要な二つのCAP改革は、農業における環境面をさらに重視することにあった。

1992年のCAP改革は、EUの農業政策、とくに環境問題の統合化に関して転換点となった*10−1、11。穀物と牛肉や子牛の肉の保証価格を下げ、いくつかの主要穀物(commodity)の生産制限を継続もしくは実行した。農業者への直接補償支払い(direct aid payment)が導入された。環境と調和した農業を促進するために重要ないくつかの個別措置が立法化された。たとえば、農業環境にかかわる規則*12(ボックス2参照)や低密度の肉牛飼養の農業者に支払われる粗放化奨励金の導入がそれである。

EU改革のパッケージ「アジェンダ2000」の一つ、1999年のCAP改革では、さらなる提案を遂行した*10−1、13、14。市場支持をさらに改革して、CAPを二つの活動分野に再編成した:

・市場政策(CAPの「第一の柱」として知られている);

・農村地域の持続可能な開発(「第二の柱」)。

1999年のCAP改革における環境要件の統合問題は、次の二つの主要な規則によって目的を達成した。その一つは「横断的規則」*15であり(CAPで定めた直接支払い(direct payment)*16のすべてが対象になるので、このように呼ばれる)、第一の柱の措置を実施する際に、環境目標を考慮に入れることを求めている;もう一つは農村開発規則であり、以前の農業環境措置*17を整理統合し、それらに加えている。そのためにCAPの第二の柱が該当する。

新たな取組みの中心は、「クロス・コンプライアンス(cross compliance)」「直接所得補償(direct income support)*13,14,16「適切な農業活動(good farming practice)*18および「調整制度(modulation)*13,14の考え方である(ボックス3で説明)。

アジェンダ2000は加盟国に義務づけられている農業環境事業の内容を受け継いでいるが、農業者の選択であり、契約に基づいて実施される。加盟国は第二の柱を受けて、農村開発計画*19、20の適切な農業活動の規範を提示することも要求されている。

CAPと今後の環境政策

2003年のCAP改革*21,22、23は、環境への統合にさらに良い状況をもたらしている。この改革では生産から直接補償支払いをほとんど切り離す(decoupling)*24,25ことを求めている。このデカップリングによって、環境リスクを高める集約生産への奨励金が大きく削減されるであろう。クロス・コンプライアンスと調整制度が義務づけられたが、調整制度は第二の柱に基づき、その後、資金的措置のための予算を増すことが可能である。強制クロス・コンプライアンス*26は、農場段階での、環境、食品の安全性および家畜の衛生と福祉の分野で定めたEU基準を適用する*27。また、農業活動と環境が良好な状態で、すべての農地*28を管理することを直接支払いの受益者に義務づけている。

ボックス2 農業環境事業*17

EUは環境の保護および田園地域の維持を促進することをとくに目的にした農業活動を支援し、このような活動を促進するために農業環境措置を適用する。農業者は最低5年間、通常の適切な農業活動以上に環境と調和した農業技術を用いることを約束することになるが、その見返りとして、農業活動の変更のために生じた新たな費用と収入減分を補償金として給付される。国または地域の農業環境事業が扱った取組みには以下のような実施例がある。

・環境面で好ましい農業の粗放化*11、29

・低集約放牧システムによる管理;

・総合農場管理*30と有機農業;

・景観および生け垣、水路、森のような歴史的な地物の保存;

・貴重な生息地とそれに関連した生物多様性の保全。

農業環境措置はCAPの環境目標を達成する主要な手段になった。加盟国が農業環境措置を行う際の資金の一部負担率(co-financing)*31は、後進地域(いわゆる目的1地域*32)で75%、他の地域で50%である。農業環境措置へのEUの支出は、2002年に20億ユーロ近く、または農村開発のための欧州農業指導保証基金(EAGGF)*11−3の支出は44%に達した。EUの農地の約5分の1は、農業環境契約が適用されている。

2003年のCAP改革で、EUの一部負担率の上限を、目的1地域で85%、他の地域で60%に増加した。さらに、調整制度資金は農業環境事業を含む農村開発措置に使用できる予算を増すことになる。

ボックス3 環境問題をCAPに統合:

「クロス・コンプライアンス」

加盟国は使用された農地または関係する農業生産の状態からみて、適切と認められる環境措置を行わなければならない。この基本原則はアジェンダ2000のCAP改革に付け加えられ、横断的規則の中に織り込まれた。加盟国にはこのような要件を実施するためのさまざまな選択肢がある。とくに、農業者がこのような要件を考慮しない場合、加盟国は制裁を適用することがあり、直接補償の削減もしくは取消しさえ含めることができる。適用された環境要件の実施例としては、牛もしくは羊の最大飼育密度の厳守、ヘクタール当たり施肥量の最大許容量の遵守、傾斜地の個別の耕作条件の遵守、およびと植物防疫剤(plant protection product)*33,34の使用に関する個別規定の遵守がある。

2003年のCAP改革は環境、食品の安全性、農作物ならびに家畜の健全性および家畜の福祉の分野で特定の法定要件が適用される標準認可手法を組み入れ、クロス・コンプライアンスを強化した。その他、クロス・コンプライアンスは農業活動と環境が良好な状態で農地を保護することを農業者に義務づけている。

「直接所得補償とデカップリング」

1992年のCAP改革の主要な事項は、支持価格を削減するためにいくつかの畑作物と牛について農業者への直接支払いを導入することであった。1999年のCAP改革は価格支持から直接支払いにさらに転換することを課し、実質的に直接所得補償支払いとなった。この転換は、ますます開放される世界の貿易取引制度に直面して、EU農業の競争力を強化させる必要性からだけでなく、集約的生産のための奨励金を除去することで、農業と環境とのかかわりについての社会不安に十分に答える必要性からも余儀なくされなくなった。

2003年のCAP改革は、今後は特定の作物生産あるいは家畜生産と結びつけずに、農業者が受け取ったこれまでの直接補償額を参考にした単一支払い制度を確立するという、直接所得支払いのデカップリングの考え方を取り入れている*35、36。直接所得支払いのデカップリングは、環境に悪い結果をまねく可能性がある生産奨励金を除去することを意図している。

「適切な農業活動(GFP)」*18、37

アジェンダ2000でのCAP改革で提示されたもう一つの原則は、「適切な農業活動(GFP)」である。地域または国レベルでGFPの規範を定めなければならない。GFPは適切な農業者が当該地域で行っている農業タイプに合わせることが望ましく、現行の法定環境要件を遵守することを課している。GFPは、農業環境事業に加わることを望んでいる農業者のために、基準線を要件に設けている。GFP以上の農業活動を行う農業者に限って、農業環境支払いの資格を与えることが可能である(ボックス2参照)。これらの支払いのおもな対象者は、環境と調和した農業活動を採用したことによって、収入が減少した農業者である。条件不利地域(LFAs)*38,39に関連した措置は、GFP規範の遵守が同様に必要である。

GFPの遵守の原則は、農村開発規則に謳われている。最低限の環境基準を遵守することは、農場投資、若手農業者の育成、農産品の加工とマーケティングを改善することなど、複数の措置に基づいた支援のために必要な条件である。

調整制度

アジェンダ2000のCAP改革で、補助金を市場政策から環境と調和した農業活動につながる措置に移し替えることができるようになった。したがって、加盟国は直接支払いの中の農業者への負担金の一部を使って、農業環境措置の予算を増すことが可能である。この考え方は「調整制度(modulation)」として知られ、横断的規則の一つである。

2003年のCAP改革は、義務的措置である調整制度が含まれる。調整制度は2005年は3%の割合で開始し、2段階で5%まで増すであろう。直接支払い受給額が5,000ユーロまでの農業者は、調整額の補償を全額受け取れる。調整額は客観的判定基準に基づいて加盟国に割り当てられる。

条件不利地域(LFAs)のグリーン化

条件不利地域はEUにおいて物理的な自然条件が原因で農業生産性が低い地域である。1997年のLFAの状況を地図1に示す(原文参照)。EUの農地の約56%は、LFAとされている(1998年のデータ)。これらの条件不利地域においてLFAの農業者は、環境的、社会的に極めて重要な役割を果たしており、EUはこの行為を支援する取組みが必要であることを認めている。長期システムは、これらの不利な自然条件であることが認定されると、農業者に補償金が支払われ、長期の投資優遇措置が与えられるものであり、このシステムはアジェンダ2000で強化され、農村開発の枠組みに織り込まれた。貴重な生息地はもとより、眺めのよい景観を保護するためにも、LFAs農業の継続を保証することが重要である。LFAsの補償金は、現在は面積ベースで支払われ、生産とは無関係である。この制度の変更はアジェンダ2000で取り入れられた。新たな制度は集約的な農業への奨励金を除去し、過放牧など、環境に悪影響をもたらすような農業活動を防止した農業を援助することである。LFA支払いを受けるために農業者は、いくつかの環境要件を遵守しなければならない。これらの支払いを受ける有資格者であるためには、農業者は環境の保護および景観の維持のための要求と両立可能な通常の適切な農業活動を実行しなければならない。

アジェンダ2000には、また、農業的使用が制限される「環境規制地域」をLFAsに加えた。この措置はNatura 2000地区*40がおもな対象になる。

2002年に、LFAsと環境規制地域に対するEUの出資は 9億2400万ユーロに達した(農村開発のための欧州農業指導補償基金支出の約21%)。

林業活動

農地への植林は、確立された農業政策の一つになった。正しく管理されるならば、林業は自然の景観と生物多様性にかなり良い影響を与えることができる。森林には、「温室効果」と地球温暖化の脅威を軽減する役割もある。これに加えて、森林管理は、農村地域、とくに限界耕作地における収入と雇用の代替源である。アジェンダ2000では、農地を林地や森林に転換する農業者に、奨励金を増やした。CAPは森林改良、山林火災防止措置、および土壌侵食を防止する上で重要な防風林の設置を支援する。このおもなねらいは、森林の生態的安定性を維持し、被害を受けた森林を回復させることにある。

2. 農業と主要な環境問題

CAPのグリーン化*41,42は、地方、地域、国内、さらには地球規模の環境問題を扱うかなり幅の広い取組みの一環である。これらは、気候変化、硝酸塩および農薬による汚染、土壌保全、水管理および生物多様性の保全に関係がある。これらの問題は非常に関連があり、EUのすべての分野別政策を横断的に統合することが重要であることをカーディフプロセスで確認している*5,43

農業と気候変動(国連京都議定書1997)

農業は温室効果ガス(GHG)を増大させることもあるが、EU全体の気候変動の課題を解決するのに貢献するであろう。欧州委員会は、欧州気候変動プログラムを2000年3月に開始した*44,45。これには EUが2012年までにGHG排出を8%削減する京都議定書の約束を達成する方法についての計画が含まれている。農業からのGHG排出の主要な発生源は三つある:

・おもに窒素肥料に起因する土壌からのN2O(亜酸化窒素)の排出;

・腸内発酵によるCH4(メタン)排出(EUにおける総CH4排出の41%が農業に由来する);

・家畜糞尿管理によるメタンと亜酸化窒素の排出。

 

欧州委員会における農業に関する作業グループと(農地の土壌および森林地(forestry)の)炭素吸収に関する作業グループは、農業におけるGHG問題を扱うための最良の手段を事前評価し、またその他の問題を解決するために、農業がプラスの効果に働く方法についても事前評価している。肥料の全体的な使用量を減らすための施肥効率向上の奨励、現行の硝酸塩の法律(硝酸塩指令*46)に従ってすでに開始された処置;生物分解性の副産物や廃棄物を処分するための堆肥化および(たとえば生物ガス生産用の)嫌気性消化システムの改良;バイオマス生産、保全型耕作および有機農業の再重視など、各種の措置が検討されている。

再生可能な農業バイオマスのさらなる開発は、エネルギーの削減および輸送からの排出削減に貢献することが可能であり、同時に農業部門に利益をもたらす。エネルギー作物は、休閑地で生産されているが、さらに新たな措置が必要と考えられる。したがって、2003年のCAP改革では、バイオマスを生産する農業者に奨励金を出す「炭素クレジット」システムを提出している。

硝酸塩

EUの硝酸塩指令は、二つの主要な留意事項、すなわち農業起源の硝酸塩による水質汚染を減らし、これ以上の汚染を防止することを目的に1991年に施行された。この指令は各加盟国が取り扱い、農業に関係する水質のモニタリング、硝酸塩ぜい弱地域の指定、適切な農業活動の(自発的な)規範の確立および硝酸塩ぜい弱地域の行動計画の中で実施すべき(義務的)措置の確立などを行う。また、この指令はこれらの地域で施用可能な家畜糞尿からの窒素の面積当たり上限値を170kgN/ha/年と定めている。

適切な農業活動の規範は、施肥時期、水路の近くや傾斜地での肥料の使用、家畜糞尿の貯蔵法や散布法および輪作のような活動、そしてその他の土地管理法などが対象になる。この行動計画には、特定の肥料の施用を禁止する時期、糞尿貯蔵施設の容量、(急傾斜地;水で飽和した農地、氾濫した農地、凍結した農地、あるいは積雪のある農地;水路付近での)肥料の施用制限に関する義務的措置のほかに、適切な農業活動規範で定めたその他の措置も含まれなければならない。

硝酸塩ぜい弱地域にはEU15ヶ国の総面積の約37%(総面積370万km2の120万km2)が該当する。地図2にEUの硝酸塩ぜい弱地域を示す(原文参照)。加盟国による指令の実施には、複雑な手続きが存在する。これまでのところ、少数の加盟国だけが完全にこの指令を適用している。欧州委員会は非実施加盟国に対して違反件数を公表した*47,48。CAPの第二の柱の枠組みで定めたように、適切な農業活動と法定の環境基準(硝酸塩指令関連の法規を含む)の遵守を結びつけることは、加盟国による指令実施の改善に役立つ。

2003年のCAP改革で、硝酸塩指令の実施から生じる法定要件の遵守が、強制クロス・コンプライアンス措置の枠組みの中に入っている。

農薬

農業で使用する農薬*49は通常、植物防疫剤と呼ばれ、農作物または農産物を病害虫から保護する。これらは作物病害虫を防除し、雑草からの競合を減少させ、経済的利益のために農業において広く使われている。けれども、もし農薬を不適正に使用すると、ほとんどが健康と環境に危険をもたらしうる固有の特性があるため、農薬を使用することはリスクを伴う。工場労働者が植物防疫剤を製造中に、そして植物防疫剤を散布中など、直接曝露することによって、人または家畜の健康に悪影響を受ける可能性がある。また、農産物および飲料水中の残留農薬を介して、または噴霧中に、居合わせた人や家畜がドリフトよる曝露など、間接曝露によって、人や家畜の健康に悪影響を受ける可能性がある。土壌および水は、噴霧中のドリフト、土壌中への農薬の分散、農機具洗浄中もしくは洗浄後の流出を介して、または野放図な処分を介して汚染される可能性がある。したがって、EUはそれらの適切な使用を徹底することを求め、環境への悪影響を最少にするために、農薬の使用を規制し、農薬の使用と残留問題について公衆に通知する。

植物防疫剤の上市*50、殺生物剤の上市*51、食品中の最大残留基準の設定*52を対象とするEU規則がある。EUでは農薬についても水質を保護することを規定している。水枠組み指令*53は、生態的、化学的な状態に基づき、すべての地表水および地下水の評価、監視、管理についての統合された枠組みを定めている。この指令は、地表水の保護のために危険物質の放出、排出および喪失を減らしもしくは排除するために取るべき措置を求めている。33種の優先物質*54,55が2001年までにリストに掲載された。その中の13種は植物防疫剤であった。

農業環境措置は、実際に使用した農薬の記録と保存、土壌、水、大気および生物多様性を保全するための農薬の使用量の削減、総合防除技術(IPM)*56の実施、有機農業への転換に関する取組みを支援している*57。EUの第6次環境行動計画*58,59は、植物防疫剤の使用を変更する農家を促進する要求に取り組んでいる。欧州委員会の協議文書「農薬の持続可能な使用に関するテーマ別戦略に向けて」*60,61,62はこれを受けて、各国が薬剤防除にかかわるハザード、リスクおよび依存を減らす国家計画を制定するなど、可能な措置をいくつか提案している。利害関係者との協議手続きに従って、欧州委員会は農業における農薬使用の改善戦略を提案する。

2003年のCAP改革で定めた強制クロス・コンプライアンスには、植物防疫剤の上市を対象にした、EU規則の実施に伴う法定要件の遵守が含まれている。

土壌保護

砂漠化、侵食、土壌有機物の減少、(たとえば重金属による)土壌汚染、土壌孔隙の減少、土壌の圧密、土壌中の生物多様性の低下および塩類集積など、土壌劣化は、土壌の主要な機能を働かせる能力を失う原因になる。そのような劣化の進行は、不均衡な施肥、灌漑のための地下水の過剰くみ上げ、農薬の誤った使用、重量機械の使用、過放牧など、不適切な農業活動によっておきる可能性がある。土壌劣化は、農業活動の放棄から生じることもある。たとえば、伝統的な畑作農業では輪作と、土壌有機物量を回復するためにマメ科植物による緑肥のすき込み作業が行われてきたが、大規模専業化に伴って、このような農作業がしばしば放棄された。

第6次環境行動計画では、土壌保護に関するEU戦略の必要性を強調している。これは、地形的、気候的条件からくる個別の要求に取り組むための国内のさまざまな土壌保護プログラムを補足するものである。欧州委員会の協議文書「土壌保護のためのテーマ別戦略に向けて」*63,64は、土壌劣化を抑制するEU行動計画のための基本的な要素を提示している。この文書は各国の行動計画を詳細に調査し、EUレベルで埋めることが可能な相違点を明らかにしたほかに、農業における下水汚泥や堆肥の使用に関連する新たな法律*65、土壌監視法の提案とこれらの予定表など、実行可能な行動についても概要を説明している。

農業環境措置は、土壌有機物の増加、土壌中の生物多様性の向上、土壌侵食、土壌汚染および土壌の圧密の減少に有利に働く機会を提供する。これらの措置には、有機農業の支援、環境保全型耕作(conservation tillage)*66,67,68、段々畑の保護と維持、より安全な農薬の使用法、総合作物管理*69,70、低集約放牧システムの管理、家畜飼養密度の低減、認証堆肥の使用が含まれている。

2003年のCAP改革の強制クロス・コンプライアンスには、侵食から土壌を保護し、土壌有機物および土壌構造の維持に留意した農業と環境の良好な状態基準に遵守することが含まれている。

水の管理

農業は欧州における水資源の重要な使用者であり、総使用水量の約30%を使用している。欧州の南部では、(水の使用は必須であり)灌漑はほとんどの国で水使用の60%以上に達する;北部の加盟国では、0%から30%以上に及ぶ。灌漑に使用される水の量は、気候、作物の種類、土壌の特性、水質、栽培法および灌漑法などの要因に左右される。自然の利用可能な量に対する人為的な追加分、または降水量の季節変動の補う分として、灌漑を行うことは、作物の生産性を向上させ、乾季に関連したリスクを低下させ、より収益の多い作物を栽培することを可能にする。けれども、灌漑は、地下から過剰な水をくみ上げ、灌漑による土壌侵食、土壌への塩類集積*71、既存の半自然生息地の変質など、いくつかの環境問題の原因にもなる。しかも灌漑によって可能になる農業生産の集約化から生じる二次的な影響の原因になる。

欧州委員会は、2000年の協議文書「水資源の持続可能性を強化するための価格設定政策 」*72を採択した。この文書は水資源の持続可能な使用を促進する目的で、水の諸政策の基本的な原則を示し、水の供給と使用に関係するさまざまな費用を反映した水の価格設定政策の必要性を強調している。この原則は、水枠組み指令*53,73に十分、取り込まれており、水の価格設定政策は利用者が水資源を効率的に使用するために適切な優遇措置を与え、そして各経済部門が環境と資源にかかわるものを含む水供給の費用を負担することを遅くとも2010年までに確実に行うことを加盟国に求めている。

農村開発措置(第1節参照)に基づいて、CAPは灌漑基幹施設の状態を改善し、農業者が水のくみ上げ量を減らした改良灌漑方式に移行できるように、投資支援を規定している。また農業環境事業は、灌漑水量を減らし、改善された灌漑方式を採用するための取組みを扱っている。

2003年のCAP改革により、地下水指令の実施によって生じる法定要件の遵守が強制クロス・コンプライアンスの枠組みに含まれている。

生物多様性の保全

最近の数10年で、生物種とその生息地、生態系および遺伝子(すなわち生物多様性)の減少が全世界で速まり、消失速度さえも高まっている。農業を長期的に持続可能なものにする必須要素は、生物多様性を維持することである。欧州共同体は1993年12月に発効された国連生物多様性条約*74の締約国である。EUは欧州共同体生物多様性戦略*75,76を1998年に採択した。この戦略の全体的な目標は、生物多様性の源で、その重大な減少もしくは消失の原因に対処することである。

2001年3月に欧州委員会は農業生物多様性行動計画を採択した*77。EUは生物多様性の保全と持続可能な利用のために、現行のCAPの中で具体的な優先事項を明らかにすることを2002年に正式に開始した。たとえば、次のようなことを優先事項として上げている:生産の粗放化を支援すること;生物多様性を重視した健全な農業活動を開発すること;線的な地物(生け垣、野生生物の回廊)を含む自然資源の持続可能な管理;地方もしくは絶滅が危惧される家畜の品種または植物の品種を保全するための行動;新規加盟国における農業での生物多様性を保全することを目指した具体的行動;研究、研修および教育によって、これらのすべてを支援する。

2003年のCAP改革では、生物多様性の保全を目指した措置を強化している。したがって、強制クロス・コンプライアンスは、野鳥指令*78,79,80と生息地指令*81,82,83の実施に伴う法定要件の遵守が適用され、しかも生息地の維持にかかわる要件が含まれる。さらに、野鳥指令および生息地指令の実施に伴う環境規制で区域における支援を強化する(Natura 2000)。

農業における遺伝資源

EUは遺伝資源の保全に関する措置を実施している。農業における遺伝資源の保全、特性表示、収集および利用に関する1994年6月20日の理事会規則No 1467/94は、欧州共同体行動計画書を採択した。この計画書は、欧州議会が遺伝的侵食(genetic erosion)*84問題が最重点課題であることを決議したことを受け、欧州委員会がこの決議に答えた文書である。

遺伝子組換え生物(GMO)

GMOについてのEU法は1990年代、初期から適用され、その規制の枠組みはさらに拡張、改正された。個別法は公衆の健康と環境を保護し、同時にバイオテクノロジーの市場統一を行うことを意図している。EUのGMO法の中で処置の難しい主要な事案は、遺伝子組換え生物の放出の取り扱いである。先の指令1990/220/EEC*85,86を改正した指令2001/18/EC*87,88、89は、GMOまたはGMOから成る製品もしくはGMOが含まれる製品の環境放出あるいは上市のための承認手続きを適切に定めたものである。その法的な規制枠組みにおける条項の実施例としては:

・GMOの栽培あるいは上市に伴う環境および人の健康へのリスク評価;

・その他のGMOおよび環境との相互作用に関係する長期的影響を含めた上市後の義務的な監視要件;

・市民への必要な情報の公開;

・加盟国が上市のすべての段階で表示(labelling)とトレーサビリティ*90を確実にするための条件;

・GMOの放出のための初回承認は最長10年を限度にする;

・関連科学委員会への諮問義務;

・GMOの放出の認可の決定に関して欧州議会に諮問する義務。

 

指令1990/220が1991年10月に発効してから、18のGMOが商業的放出(栽培および放出)がEUにおいて許可された。しかし、1998年10月以降、さらに承認されたものはない。GMOに関する法律は、審議中である。

EUの環境一般法*91

環境一般法のさまざまな条項が農業にも関連する。

統合的汚染防止管理(IPPC)指令*92,93は、大気、水と土地への汚染物質の放出を防止し、廃棄物の産出を控え、安全な方法で廃棄物を処分し、使用されなくなった産業用地を満足のいく状態に戻すことを、工業と一定規模を超える集約畜産業に義務づけている。戦略的環境アセスメント指令*94,95および環境影響評価指令*53,96,97は、土壌への影響の可能性を含む、いくつかの設計および実行計画あるいは、いくつかの私的および公的な事業計画に対して、環境アセスメントの実施を義務づけている。土壌に関連するリスクアセスメントは、既存物質の規則*98に基づいて行われる。生息地指令は、砂丘、泥炭地、石灰岩の草原および湿原など、特殊な土壌特性に依存する陸生生息地を数多く定めている。

廃棄物の管理とリサイクルを規制する廃棄物に関する個別法がかなりあり、それによって土壌汚染防止に貢献している(下水汚泥指令*99、廃棄物枠組み指令*100、埋め立て指令*101、焼却指令*102および都市廃水指令*103)。

3. 農業環境とEUの拡大

新規加盟国は、特定の新たな環境問題を持ち出していない。とはいえ、加盟の際に、すべての環境要件を含め、EU加盟国が基本条約に基づいて積み上げてきた法体系の総体、いわゆるアキ・コミュノテール*104,105を採択しなければならない 。アキ・コミュノテールの国内法化を終了させることに加えて、とくに廃棄物管理の部門においてそれを適用するために行政能力を全体的に強化する取組みが必要である。他方で、EUへの加盟は、おそらく農業活動の変化を速め、生息場所と種の消失の防止が必要となるであろう。

加盟初期に新期加盟国の要求がよく反映されるように、農村開発措置を改正、追加した。これは新期加盟国が限られた期間に農村地域の再構築を促進するために設計された事業に対して、農村開発基金を使用できることを意味している。たとえば、環境要件をはじめとするEU基準を満たす農業者を支援する個別の措置はもちろん、経営体質を再構築している半自給農家(semi-subsistence farms)*106も支援する。同時に、新期加盟国は、CAPを全面的に受け入れなければならない。

農業・農村地域特別調整計画(Special Adjustment Programme for Agriculture and Rural Development - SAPARD)*107を使用すると、新規加盟国はEUの要件を受け入れるのに有利なスタートをきることができる。試験的農業環境事業もこれらの計画の一部分とすることができる。自然環境保全地域の管理、有機農業の発展と促進、土壌侵食および汚染の防止、そして自然価値の高い地域での農業(とくに粗放放牧)の維持が新規加盟国にとってとくに重要になる。

4. 環境パフォーマンス*108,109の判定

EUはEUの農業環境を改善することを付託されている。これを達成するために適切な新計画を提案し、この成果を判定するために、とくに地域または地方の段階で、それらを評価する手法(指標)を開発することが欠かせない。たとえば、排水や湿地の乾燥化に関するデータが不足すると、水管理と農業活動の関係を評価することが困難になる。

カーディフとウィーンにおける欧州理事会(いずれも1998年)は、環境指標*110,111の開発の重要性を明白に示した。環境指標は、人間活動と環境の状態についての物理的データと金銭的データを決定支援情報に変換することができる。環境指標を使用すると、農業と環境分野の複雑な問題をさらによく理解し、期間中の経過を示し、量的な情報を提供することが可能である。たとえば、肥料使用法の進歩は、実際の肥料吸収の進歩との相関から考えた場合のみ、意味をもつ。指標は、意味を持たすために、場所別の特色と計画の基準が反映されていなければならない 。一般的な指標は、個別政策への実績に関して信頼性が低い傾向がある。

環境問題をCAPの中に統合するための指標に関する協議文書の中に農業環境指標の開発が記述されている*112。農業環境指標の開発は、協議文書*113「環境問題をCAPへの統合を監視する指標のために必要な統計情報」においてさらに推し進められた。この中では、農業分野における環境と生物多様性に関する政策の効果の理解と監視を改善するために必要とする処置が概説されている。この2つの文書によって特定された農業環境指標を適切な地理的レベルで改良、拡張そして編集するために、IRENAプロジェクト*114,115が(2002年9月に)開始された。このプロジェクトは、農業総局、環境総局、統計局、共同研究センターおよび欧州環境庁との共同作業であり、共同で責任を負う。このプロジェクトの最後成果として、指標に関する報告および指標に基づくアセスメントが2004年12月までに提出されるであろう。

参考資料

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*3: http://www.rrr.gr.jp/iso/ogawa/papercp12.htm (対応するページが見つかりません。2010年6月)

*4: http://www.econavi.org/weblogue/back/25/backnumber/special/22.htm (対応するページが見つかりません。2011年1月) の「持続可能な発展へのEUの取り組み」

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*8: http://jpn.cec.eu.int/japanese/general-info/5-7-2.htm (対応するページが見つかりません。2010年6月)

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*11http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/bse/report/reort1/agen2000.htm

*12: http://europa.eu.int/smartapi/cgi/sga_doc?smartapi!celexapi!prod!CELEXnumdoc&lg=EN&numdoc=31992R2078&model=guichett (対応するページが見つかりません。2010年6月)

*10-2:http://www.maff.go.jp/kaigai/seisaku/seisaku_eu_1.htm (対応するページが見つかりません。2010年6月) の「4 CAP改革の合意について」、「6 (3) CAP改革合意に到るまでの議論」および「6 (4) CAP改革の合意の概要」

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*15http://www.naro.affrc.go.jp/archive/niaes/magazine/mgzn021.html#02107 の「4.2.1. 横断的規則」

*16: http://www.rakusoken.co.jp/00-1.html (対応するページが見つかりません。2010年6月)

*17: http://www.dsr.kvl.dk/forening/biebrza/images/pdf/5eu.pdf (対応するページが見つかりません。2013年12月) (EUの農業環境政策に係わる用語(programme,scheme,measure)の説明資料)

*18: http://www.ruralni.gov.uk/environment/countryside/good_farming_practice/ (対応するページが見つかりません。2010年6月)

*19: http://europa.eu.int/comm/agriculture/rur/countries/index_en.htm (対応するページが見つかりません。2010年6月)

*20: http://www.heritagecouncil.ie/publications/rural/rdp.html (対応するページが見つかりません。2010年6月)

*21http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/agrifood/europe/news/03012301.htm

*22http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/agrifood/europe/document/mtrmemob.htm (最新のURLに修正しました。2010年6月)

*23: http://www.maff.go.jp/kaigai/2003/20030124eu42a.htm (対応するページが見つかりません。2010年6月)

*24http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/agrifood/europe/news/04021901.htm

*25http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/agrifood/europe/news/04022601.htm

*26http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/agrifood/europe/document/cap04.htm

*27http://eur-lex.europa.eu/LexUriServ/LexUriServ.do?uri=OJ:L:2003:270:0070:0077:EN:PDF (最新のURLに修正しました。2010年6月) の第22条

*28: http://forum.europa.eu.int/irc/dsis/coded/info/data/coded/en/gl011168.htm (対応するページが見つかりません。2011年1月) (農地(agricultural land) の定義のための文献)

*29: http://www.maff.go.jp/kaigai/2001/20011102eu31b.htm (対応するページが見つかりません。2010年6月)

*30http://www.leafuk.org/leaf/about.eb (最新のURLに修正しました。2011年1月)

*31: http://www.maff.go.jp/kaigai/2001/20010209eu44b.htm (対応するページが見つかりません。2010年6月)

*32: http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/eu/kouzou_s.html (対応するページが見つかりません。2012年1月)

 「II 構造基金(Structural Fund)の概要」の「5. 優先目的分野における3つの目的」

*10-3:http://www.maff.go.jp/kaigai/seisaku/seisaku_eu_1.htm (対応するページが見つかりません。2010年6月)の「2 価格・所得政策」の項

*33: http://members.at.infoseek.co.jp/gregarina/K1A2.html (対応するページが見つかりません。2011年1月)

*34: http://members.at.infoseek.co.jp/gregarina/K1A4.html (対応するページが見つかりません。2011年1月)

*35: http://www.maff.go.jp/kaigai/2003/20030228eu47a.htm (対応するページが見つかりません。2010年6月)

*36http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/agrifood/europe/news/03041301.htm

*37http://www.maff.go.jp/primaff/koho/seika/review/pdf/primaffreview2001-1-5.pdf (最新のURLに修正しました。2010年6月)

*38http://www.nochuri.co.jp/report/pdf/n0304re2.pdf

*39: http://www.maff.go.jp/soshiki/kambou/kikaku/chousakai/nousonbukai/4kaisiryou/4-12.html (対応するページが見つかりません。2010年6月)

*40: http://www.natura2000.lt/en/apie.php (対応するページが見つかりません。2010年6月)

*41http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/agrifood/europe/highlight/02053001.htm

*42: http://www.maff.go.jp/kaigai/1999/19991105eu32b.htm (対応するページが見つかりません。2010年6月)

*43: http://www.nuis.ac.jp/~usui/Paper_TokyoSocio_2002.html (対応するページが見つかりません。2010年6月) の「III 規範進化のアリーナ」「2 過程志向の規範研究」

*44: http://jpn.cec.eu.int/japanese/press-info/4-1-1-64.htm (対応するページが見つかりません。2010年6月) の「気候変動」の項

*45http://eneken.ieej.or.jp/data/pdf/747.pdf の第1編第4章「EUの温暖化政策概要」

*46: http://group.lin.go.jp/leio/seido/seidoec.html (対応するページが見つかりません。2010年6月)

*47http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/agrifood/agrienvi/03040701.htm

*48: http://wwwsoc.nii.ac.jp/jssspn/reference/naigaiinfo/74-6-3.pdf (対応するページが見つかりません。2013年12月)

*49: http://www.iskweb.co.jp/ibj/Keimo/kaisetu10.htm (対応するページが見つかりません。2012年8月)

*50http://www.env.go.jp/chemi/end/2002report/pdf_j/pena2_j.pdf の「長期的活動」の項

*51: http://www.jetoc.or.jp/biocide.htm (対応するページが見つかりません。2012年1月)

*52(対応するページが見つかりません。2015年6月)

*53: http://www.envix.co.jp/99_others/ecofigure.html (対応するページが見つかりません。2010年6月)

*54http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kaigai/kaigai_01/01_01/01_16_01_eu.html

*55: http://www.ecologyexpress.com/plaza/trend/pub/TRW200310300.html (対応するページが見つかりません。2010年6月)

*56: http://www.jcpa.or.jp/qa/detail/03_11.htm (対応するページが見つかりません。2010年6月)

*57http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/agrifood/organic/document/euorgcap.htm   

*58http://www.eic.or.jp/ecoterm/?act=view&serial=1606 (最新のURLに修正しました。2010年6月)

*59http://www.naro.affrc.go.jp/archive/niaes/magazine/mgzn033.html#03310

*60: http://www.pan-uk.org/pestnews/pn57/pn57p9.htm (対応するページが見つかりません。2010年6月)

*61: http://europa.eu.int/comm/environment/ppps/home.htm (対応するページが見つかりません。2010年6月)

*62http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/foodsafe/news/03042601.htm

*63: http://wwwsoc.nii.ac.jp/jssspn/reference/naigaiinfo/73-4-2.pdf (対応するページが見つかりません。2013年12月)

*64http://www.eic.or.jp/news/?act=view&serial=2736 (最新のURLに修正しました。2010年6月)

*65http://europa.eu/legislation_summaries/agriculture/environment/l28088_en.htm (最新のURLに修正しました。2010年6月)

*66: http://oregonstate.edu/instruction/bi301/constill.htm (対応するページが見つかりません。2010年6月)

*67: http://www.qfaqyf.org/agrenv/en/tillage.html (対応するページが見つかりません。2010年6月)

*68: http://www.pbic.jp/abroad/study/021025.html (対応するページが見つかりません。2010年6月)

*69http://www.ecifm.rdg.ac.uk/integrated_crop_management.htm

*70: http://www.csrjapan.jp/casestudy/00_05.html (対応するページが見つかりません。2010年6月) 「残留農薬」の項

*71: http://www.maff.go.jp/www/counsil/counsil_cont/nouson_sinkou/150219syo_iin/s1.pdf (対応するページが見つかりません。2011年1月) p.22「塩類集積」の項

*72: http://ec.europa.eu/environment/docum/00477_en.htm (最新のURLに修正しました。2011年5月) (対応するページが見つかりません。2013年12月)

*73: http://www.wec.or.jp/center/jyouhou/ronbun/H14syohou/pdf/h14_2-01.pdf (対応するページが見つかりません。2011年1月)

*74http://www.wwf.or.jp/activities/wildlife/cat1016/cat1327/ (最新のURLに修正しました。2010年6月)

*75: http://ec.europa.eu/environment/docum/9842sm.htm (対応するページが見つかりません。2013年12月) (最新のURLに修正しました。2011年5月)

*76: http://www.ecnc.nl/doc/projects/bap/Nick%20Hanley%20Chapeau-presentation.pps (対応するページが見つかりません。2010年6月) (PowerPoint用ファイル)

*77http://www.naro.affrc.go.jp/archive/niaes/magazine/mgzn021.html#02107

*78http://www.eic.or.jp/news/?act=view&serial=395&oversea=1

*79: http://www.birdlife.org/action/awareness/eu_birds_directive/what.html (対応するページが見つかりません。2012年1月)

*80: http://members.aol.com/YANAGAMI/6natur.htm (対応するページが見つかりません。2010年6月) 「国立公園など自然保護地域」の項

*81http://www.eic.or.jp/news/?act=view&serial=2163

*82: http://www.environment-agency.gov.uk/business/regulation/31913.aspx (対応するページが見つかりません。2013年12月)

*83:http://proaction.tripod.com/infoandlinks/id10.html (対応するページが見つかりません。2014年10月)

*84http://www.d1.dion.ne.jp/~tmhk/yosida/jutugo.htm#sigen 「遺伝的侵食と遺伝資源の枯渇」の項

*85: http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/eu/gmo.html (対応するページが見つかりません。2010年6月)

*86http://www.naro.affrc.go.jp/archive/niaes/magazine/gmo/mz0150l.html 「1. 主要国における安全性確認の制度・規則」の「2) EU」の項

*87: http://www.no-gmo.org/news/46/3.htm (対応するページが見つかりません。2014年10月)

*88http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/gmo/document/eugmoreg.htm

*89http://eur-lex.europa.eu/LexUriServ/LexUriServ.do?uri=OJ:L:2001:106:0001:0038:EN:PDF (最新のURLに修正しました。2010年6月)

*90: http://emi.h.chiba-u.ac.jp/lab/matsuda/nougyoutokeizai0212.pdf (対応するページが見つかりません。2010年6月)

*91: http://alt.lohmeyer.de/air-eia/legislations/eu-legislation.htm (対応するページが見つかりません。2012年8月)

*92http://www.eic.or.jp/news/?act=view&serial=5563&oversea=1

*93http://www.env.go.jp/council/06earth/y061-10/ref01.pdf

*94: http://europa.eu.int/comm/environment/eia/home.htm (対応するページが見つかりません。2010年6月)

*95: http://assess.eic.or.jp/houkokusho/sea9907/chap1.html (対応するページが見つかりません。2010年6月)

*96: http://www.eic.or.jp/ecoterm/?act=view&serial=475

*97: http://www.law.hit-u.ac.jp/ILPR/h14_2/report_06.pdf (対応するページが見つかりません。2010年6月) 第1節−1「環境アセスメント制度の目的」

*98http://www.jogmec.go.jp/mric_web/EU_eco/EU_26.html

*99http://www.eic.or.jp/news/?act=view&serial=198&oversea=1

*100http://www.env.go.jp/recycle/waste_tech/kaigai/

*101http://www.jogmec.go.jp/mric_web/EU_eco/EU_13.html

*102http://www.eic.or.jp/news/?act=view&serial=3969&oversea=1

*103http://www.ewaonline.de/downloads/vann_sum.pdf

*104: http://www.deljpn.ec.europa.eu/modules/union/enlargement/ (対応するページが見つかりません。2012年8月)

*105http://eu-info.jp/law/en2.html

*106:http://www.maff.go.jp/kaigai/2002/20021011eu28a.htm (対応するページが見つかりません。2010年6月)

*107:http://www.maff.go.jp/kaigai/2002/20020419eu03b.htm (対応するページが見つかりません。2010年6月)

*108:http://www.rrr.gr.jp/iso/ogawa/papercp51.htm (対応するページが見つかりません。2010年6月)

*109http://www.env.go.jp/policy/report/h14-04/09.pdf

*110: http://homepage1.nifty.com/nakaguti/work/kanjo00.htm (対応するページが見つかりません。2014年10月)

*111http://www.naro.affrc.go.jp/archive/niaes/magazine/mgzn031.html#03111

*112:http://europa.eu.int/eur-lex/en/com/cnc/2000/com2000_0020en01.pdf (対応するページが見つかりません。2010年6月)

*113:http://europa.eu.int/eur-lex/en/com/cnc/2001/com2001_0144en01.pdf (対応するページが見つかりません。2010年6月)

*114:http://agrienv.jrc.it/activities/indicators/ (対応するページが見つかりません。2010年6月) (IRENAは農業政策への環境問題の統合に関する報告を示す頭文字)

*115:http://webpubs.eea.eu.int/content/irena/index.htm (対応するページが見つかりません。2010年6月)

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