農業環境技術研究所

最終更新日: 2013年6月18日

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6月の公開セミナー

農業環境技術研究所
セミナー開催記録

6月7日(金曜日) 生物多様性研究領域セミナー第一回(蟲の日)

6月17日(月曜日) 領域横断セミナー

6月27日(木曜日) 農業環境インベントリーセンターセミナー(第1回)

6月27日(木曜日) 第534回気象談話会

生物多様性研究領域セミナー第一回(蟲の日)

日時: 平成25年6月7日(金曜日)
15:30~
場所: 547会議室

テーマ 講演者 連絡先
野外観察からナミテントウの“共食い”の意味を考える 木村滋
(蚕糸・昆虫農業技術研究所 元所長)
徳岡
電話 838-8245
要旨

春のナミテントウ(Harmonia axyridis Pallas、以下「ナミ」と略)の繁殖現場では成虫やふ化幼虫が産下直後の卵を食べ、4齢幼虫が前蛹などを共食いする光景が良くみられる。このような共食いは、ナミの生存戦略上如何なる意味を持っているのであろうか。仲間同士の共食いによって生じる個体群の変動を成虫斑紋型分布比率の変化と捉えて観察をおこなった。アブラムシの発生動態が異なるウメならびにトウカエデにおける4型(二紋型、四紋型、まだら型、紅型)分布比率の変動、カエデ幹の卵塊群からの斑紋型出現頻度ならびに野外紅型メスの子どもの斑紋型分離比から遺伝子発現頻度を調べた。その結果、ナミの越冬集団と春のウメの樹の繁殖集団の4型分布比率はほとんど同じであった。一方、ウメならびにカエデにおける繁殖集団の4型分布比率は、二紋型では両者の間で8%の激減、四紋型で2%の微動、紅型で5%の増加があった。また、カエデでの卵塊群および樹から得られた2つの集団の4型分布比率は二紋型が69%から70%へ1%の微増、四紋型が15%から11%へ4%の減少、紅型が14%から17%へ3%の増加となった。紅型メスの調査では繁殖現場(または、越冬集団内)で多数回交尾がおこなわれ、交尾相手(オス)の遺伝子型は主に二紋型ヘテロ接合体であることが明らかになった。これらのことからナミ斑紋型の分布比率の変動は、アブラムシの発生動態の変化によって生じる共食いによってもたらされることが分かった。その共食いの主犯は二紋型メスであり、彼らの遺伝的多様性(遺伝子型>表現型)によって斑紋多型が容易に形成され、種が維持されると考察した。

キーワード:
 ナミテントウ、成虫斑紋型分布比率、遺伝的多様性、共食い、個性

テーマ 講演者 連絡先
ナミテントウの餌になる/ならないアブラムシ 加茂綱嗣
(農業環境技術研究所 生物多様性研究領域)
徳岡
電話 838-8245
要旨

農業害虫であるアブラムシの天敵として、ナミテントウの効果的な利用方法が工夫されている。多種多様なアブラムシの中に、ナミテントウが餌として利用できる種とそうでない種が存在することは古くから知られているが、比較的小規模な研究が主であった。演者は、当研究所周辺で採集した26種のアブラムシを対象に、ナミテントウ幼虫の餌としての適性が、アブラムシとその寄主植物のいずれによって決定されるかを調べた。その中で低い餌適性を示したセイタカアワダチソウヒゲナガアブラムシは、野外ではナミテントウ幼虫に頻繁に摂食されていることから、確認のための実験もおこなった。また、ニセアカシアに寄生するマメアブラムシはナミテントウに対して毒性を示すことが以前から報告されているが、その毒性物質については不明な点が残っていた。そこで、推定される毒性物質の分析とナミテントウに対する毒性の評価をおこない、この問題を再検討した。

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領域横断セミナー

日時: 平成25年6月17日(月曜日)
15:00~16:30
場所: 5階会議室(547号室)

テーマ 講演者 連絡先
木材腐朽菌の起源と多様化:分子系統解析と化石記録から見えてきたこと 白水 貴
(国立科学博物館植物研究部)

電話 838-8225
要旨

真菌類の植物遺体を分解する「分解者」としての働きは秀逸です.特に,難分解性の木質高分子を分解することのできる木材腐朽菌は,森林生態系の発達・維持に多大な影響を与えてきたと考えられます.私は,陸上生態系の進化史に菌類を登場させることを目指して研究を続けております.本セミナーでは,分子系統解析と化石記録から見えてきた木材腐朽菌の進化の歴史について考えたいと思います.また,菌類のような目に見えない微生物はその多様性の大部分が未発見であり,これが生態・進化研究の大きな障壁となっています.この多様性の現状把握という問題解決に向けた,菌類の未知系統を効率的に「見つけて」「狙って」「採る」方法についても議論したいと思います.

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農業環境インベントリーセンターセミナー(第1回)

日時: 平成25年6月27日(木曜日)
15:30~17:00
場所: 547会議室

テーマ 講演者 連絡先
長期害虫データと齢構成モデル 山中武彦
(農業環境インベントリーセンター)
白戸・稲生
電話 838-8235
要旨

モデルは、自然界の現象を人間の理解できるレベルまで簡略化し、様々なテスト(シミュレーション)を繰り返すことで、より深い理解につなげる演繹的な手法である。生態学で用いられるモデルは一般に、自然現象を再現できる範囲内で最も単純なものが好まれる。しかし、時には個体のプロセスが個体群全体の挙動を決める鍵となる事例もあり、個体のキャラクターを無視してモデルを構築すると自然界の挙動と全く違う予測結果となってしまう。齢(ステージ)構成を考慮したシミュレーションモデルは、室内実験などの詳細な個体データと野外で観察される複雑な個体数変動パターンをつなぐ、理論的な武器である。モデルの単純さを保持したまま、個体の成長段階の詳細を組み込むことが出来るからである。これまで保全生態学や進化生態学など、様々な分野で活発に利用されてきた。

本セミナーでは、昭和16年から続く病害虫発生予察事業の中で、半世紀以上も継続して記録されてきた茶害虫の記録を取り上げる。茶害虫の中でも特にチャノコカクモンハマキは、西南日本で特に発生が多い鱗翅目重要害虫で年5回の発生がある。まず、このチャノコカクモンハマキが60年以上もの間、年5回の世代が一つずつはっきりしたピークを形成して持続する世代分割という性質を持つことを示す。次に、齢構成モデルを駆使してこの世代分割を評価し、齢構成に起因する種内競争強度の違いと、繁殖期間の短さが引き起こしていることを解説する。冬に害虫の成長が止まることによって生育ステージが斉一化することや、薬剤散布や茶葉の摘葉等の人為的影響では説明できなかった。

セミナーでは、イントロとして山中がこれまで行ってきた簡単な研究紹介も行う。

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第534回気象談話会

日時: 平成25年6月27日(木曜日)
13:30~
場所: 農環研本館4F、453会議室

テーマ 講演者 連絡先
Tillage-induced changes in aerodynamic roughness and their influence on carbon and nitrogen dynamics in a fallow paddy ONO Keisuke
桑形
電話 838-8202
要旨

For cultivation of one rice crop, a predominant crop in Japan, the fallow season can be as long as the growing season. Therefore, even a small change in the surface condition can alter the carbon and nitrogen dynamics through its integration over the entire fallow season. Aerodynamic roughness length (z0) is an important parameter to determine the rate of surface exchange of energy and materials. Relationships between z0 and surface conditions are widely documented, but tillage-induced changes in z0 have not been investigated. The purpose of this study was thus to quantify tillage-induced changes in z0 and their influence on carbon and nitrogen dynamics during the fallow season at the Mase rice paddy site. In the seminar, some important results on the influence found by using numerical models are presented.

テーマ 講演者 連絡先
Large scale evaluation of the effects of adaptation to climate change on rice production and quality in Japan ISHIGOOA Yasushi
桑形
電話 838-8202
要旨

Extreme high temperatures during the rice growing season which possibly cause serious degradation of rice yield and quality have become more frequent recently in Japan and are predicted to be even more frequent and severer in the future. In this study, the effectiveness of moving cultivation schedule as adaptation to reduce impact of climate change on rice production and quality in large scale was evaluated in large scale. A process-based rice development model, which is applicable for multi-cultivars, was introduced and applied for all paddy area in Japan using mesh meteorological data having 2nd spatial resolution (10km x 10km approximately) from 1981 to 2100 derived from multi-GCMs. In this seminar, I will introduce some results of model implementation and discuss the strategies for selection of optimal transplanting date which can reduce the impact of climate change on rice production and quality.

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