乾燥地における複数列の混交防風林帯による微気象改良と作物への効果


[要約]
乾燥地の裸地と農地の境界領域における複数列の混交防風林帯の効果について、減風に伴う昼・夜間の加湿・降温などの微気象改良・気象緩和面から評価するとともに、作物の生育、収量面からも評価した結果、有効であった。
農業研究センター 耕地利用部 気象災害研究室
[部会名] 環境資源特性
[専門]  農業気象
[対象]  
[分類]  研究

[背景・ねらい]
乾燥地における砂漠化の進行を阻止するためには、乾燥した裸地から農地に急変する限界地域の微気象改良が重要である。ここでは、中国トルファン地域の夏季 の高温・乾燥・強風条件下において、複数列の数樹種の混交防風林帯による耕地内の微気象改良・気象緩和効果を明らかにするとともに、作物の生育促進、収量 増加などの効果をも明らかにする。

[成果の内容・特徴]
防風林は高さ8m、密閉度70%のシロニレ(白楡、Ulmus pumila L.)・スナナツメ(沙棗、Elaeagnus angustifolia L.)・コヨウ(胡楊、Populus euphratica Oliv.)混交林である。
  1. 風速は、風上側から1列目の防風林によって減風した後、次第に回復し、2列目の直前までにかなり回復するが、2列、3列目と列数の増加につれて加 算的に減風する。減風に伴う気温・地表温の上昇によるマイナス効果が昼間にやや大きいが、乾燥地で重要な湿度が増加する特徴があり、防風林列数の増加につ れて加算的効果が認められる(図1A)。
  2. 夜間の減風効果は昼間と類似している。気温・地表温は防風林付近で上昇するが、林間では放射冷却によって低下する。昼間よりも加湿効果が大きく、防風林列数の増加につれて加算的効果も認められる(図1B)。
  3. ワタの草丈は、生育初期(図2A)には防風林から10H(高倍距離)までと2列目の防風林の-5Hまでが高く、1列、2列目の効果が出ている。生育終期(図2B)には1列目の3〜8Hと2列目の-2H付近で高く、12H付近でやや低い。果実数(図2C)は草丈への効果が強調された状態であり、特に3〜8Hと-2〜-3Hで多い。
  4. 乾燥地では気象環境が厳しく、灌漑水の欠乏のため、防風林の効果範囲は10H程度までと狭いが、複数列にすることで、微気象改良・気象緩和効果が加算される。

[成果の活用面・留意点]
適正な防風林樹種を選定すれば、国内においても強風・干ばつ頻発地域で活用できる。 乾燥地では、日中の高温時には防風林によって少し過剰高温となるため、耐熱性作物の導入が必要である。

具体的データ


[その他]
研究課題名:乾燥農業限界地域の環境改善による持続的農業技術の確立
      危険気象に対する作物の生態反応の解明
予算区分 :国際プロ(環境資源)・経常
研究期間 :平成6年度(平成5年〜9年、平成4年〜7年)
発表論文等:(1)中国トルファンの乾燥地における2列の防風林による微気象、堆砂、
      作物への影響、農業気象、49巻4号、247-255(1994) (2)中国トル
      ファンのポプラ防風林による夏季の気象改良と作物生育効果、農業気
      象学会関東支部1994年度講要、23-24(1994)
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