植物3次元形態情報の非破壊計測法


[要約]
磁気デジタイザによる非破壊計測に基づいて、植物の3次元形態をコンピュータ上において高精細度で再構築し、葉面積や葉面傾斜角度の空間分布など各種の3次元形態パラメータを算出する手法を開発した。
農環研 環境管理部 計測情報科 生物情報計測研究室
[部会名] 環境評価・管理
[専門]  情報管理、栽培
[対象]  植物
[分類]  研究

[背景・ねらい]
植物葉群の幾何学的配置を正確にとらえることは、植物の受光効率の生態学的解析、リモートセンシングにおける植物群落の光収支の解析と予測、育種における 草型評価等において極めて重要であるが、これまでは分度器と物差しによる測量法や層別刈取り法など近似的または破壊的な方法が用いられてきた。そこで、3 次元磁気デジタイザを改良した簡単なシステムを利用して、植物構成要素の空間座標を高分解能で計測し、コンピュータ上で再構築し、各種の3次元形態パラ メータを算出する手法を開発した。

[成果の内容・特徴]

  1. 3次元磁気センサのセンサコイルに細い探針を取付けたプローブを作成し、探針先端の空間座標を高分解能(0.2mm)かつ迅速(1座標当たり約 0.5秒)にコンピュータに取り込むとともに、スプライン補間等によって植物形態をコンピュータ上で再構築するシステムを開発した。
  2. 同手法により、多数の点の空間的位置座標を連続的に収集することができ、植物個体・群落の複雑な立体形状をコンピュータ上に再現することが 可能である。これにより、任意の角度から見た立体構造を表示・観察することもできる(図1)。
  3. 本システムによって、植物群落の測定データから葉面積の垂直分布を任意の層別に算出することができる。破壊法である層別刈取り法で通常採用される10cm層で比較したところ、両者は良好な対応関係にあることが確かめられた(図2)
  4. さらに、従来膨大な測定労力をかけても非常におおまかな近似評価しかできなかった葉面の傾斜角度の分布についても、傾斜角度ごとの面積密度の垂直分布 (図3)等を容易に高精細度で求めることが可能となった。

[成果の活用面・留意点]

  1. 植物の受光効率、草型、調位運動、形態形成モデル等多数の研究場面で有用。
  2. 絶対精度はプローブによる位置座標取得精度に依存するため、風などによる動きがあると誤差が大きくなるので注意。また、対象によって測定点の選び方を工夫することで、より少ない測定点数で形態情報を得ることが可能。

具体的データ


[その他]
研究課題名:植物3次元計測手法の開発
予算区分 :経常
研究期間 :平成6年度(平成3年〜5年)
発表論文等:植物の3次元構造の非破壊計測と評価 第2報、日作紀61巻別1号
      (1992)ほか
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