家畜糞の液体燃料化


[要約]
水分を含んだままの牛糞を300℃,10MPaで高温高圧処理することによって,牛糞に含まれる有機物の27%を液体燃料(オイル)化できる。生成したオイルの 熱量は約30MJkg-1であり,C重油の熱量の70%程度に相当する。
農業環境技術研究所 資材動態部 肥料動態科 有機資源利用研究室
[部会名] 環境資源特性
[専門]  資源利用
[対象]
[分類]  研究

[背景・ねらい]
 畜産物及びその加工品の需要が増大した結果,畜産廃棄物の量が増加し,適切な処理が困難になりつつあることから,新たな用途の開拓が急務となっている。 そこで,家畜糞を熱エネルギー源として利用できるように,糞の液体燃料(オイル)化技術を開発する。
[成果の内容・特徴]
  1. 水分を含む牛糞を高温高圧反応槽(図1)で300℃,10MPa程度の高温高圧で処理し,ジクロロメタンで抽出することにより 高粘度のオイルが得られる。
  2. 牛糞の含水率が75〜90%の範囲内では,オイル収率は良好で一定している。
  3. 反応温度が250℃のときのオイル収率は20%(対有機物)程度であるが,280℃,300℃,320℃でのオイル収率は25%前後に高まる。
  4. 急速加熱して約10分間で300℃まで昇温させると,オイル収率は300℃を保持した時間によって変化し,300℃を10分間保持したとき, 27%で最も高い(図2)。
  5. 触媒として炭酸ナトリウムや水酸化ナトリウム,塩化亜鉛を添加してもオイル収率の向上は認められないことから,原料牛糞中にオイル化に 必要な触媒作用をする物質が含まれていると考えられる。
  6. オイルの元素組成から,オイルの熱量は約30MJ kg-1と推定される(表1)。これは一般的なC重油の熱量の70%程度に相当する。
  7. オイルの13C NMRスペクトルから,オイルを構成している炭素の主要な構造はアルカンと考えられる(図3)。
[成果の活用面・留意点]
  1. 牛糞の有機物の一部はオイル化して燃料利用できる。
  2. オイル収率の改善及び得られたオイルの質の向上(低粘度化,高熱量化,不純物の除去)のための技術開発が必要である。
  3. オイル以外の副生成物の処理利用技術の開発が必要である。

具体的データ


[その他]
研究課題名:家畜糞の熱エネルギーの高度利用技術の開発
予算区分 :総合的開発〔家畜排泄物〕
研究期間 :平成8年度(平成6〜8年)
発表論文等:川崎,新井,畜産廃棄物の油化処理の検討,化学工学会
      第60年会研究発表講演講演要旨集〔第1分冊〕,p.81(1995)
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