九州の火山砕屑物に含まれる酸可溶性リン酸とその起源一次鉱物


[要約]
九州の火山灰土壌地帯には酸可溶性リン酸(ブレイ2態リン酸やトルオ−グ態リン酸)に富む火山砕屑物が各地に存在する。火山砕屑物から 抽出されるこれらの形態のリン酸はアパタイト(リン灰石)起源である。これらの形態のリン酸は火山砕屑物の風化が進むとともに急激に減少する。
九州農業試験場 生産環境部 上席研究官,土壌資源研
[部会名] 環境資源特性
[専門]  土壌
[対象]
[分類]  研究

[背景・ねらい]
 九州の火山灰土壌地帯には各地の火山から噴出した多量の火山砕屑物(火山灰,軽石,火砕流等)が堆積し,火山灰土壌の母材や 基盤となっている。これらの火山砕屑物の鉱物・化学的特性や風化と可給態リン酸分析に用いられる酸可溶性リン酸(ブレイ2態やトルオ−グ態リン酸)との関 係やその給源を明らかにする。
[成果の内容・特徴]
  1. 雲仙・普賢岳,飯田,阿蘇4の各火砕流,桜島安永ボラ,開聞岳起源の開聞Cはブレイ2態やトルオ−グ態リン酸に富む(表1)。
  2. 火山砕屑物の全ケイ酸含量や全リン酸含量,1次鉱物組成とブレイ2態とトルオ−グ態リン酸量とには関係が認められない(表1)。
  3. 火山砕屑物のブレイ2態リン酸量とアパタイト(リン灰石,Ca(PO4)3(OH,F,Cl))含量とには正の関係がある(図1)。 ブレイ2態とトルオ−グ態リン酸に富む火山砕屑物のこれらの給源はアパタイト起源と考えられる。
  4. 火山砕屑物のブレイ2態とトレオ−グ態のリン酸は,火山砕屑物の風化が進むと(非晶質アルミニュウム(AlO)が増大すると)急激に減少する (図2)。
  5. 火山砕屑物中のアパタイト(リン灰石)は小さく(数十μm),他の一次鉱物に包含されて存在することが多い(写真1,写真2)。
[成果の活用面・留意点]
  1. アパタイト(リン灰石)に富む火山砕屑物は,細粒質で強酸性の赤・黄色土等の土性や酸性の改良資材となる可能性がある。
  2. 火山砕屑物のブレイ2態とトルオ−グ態のリン酸は一部の作物には有効である。

具体的データ


[その他]
研究課題名:火砕流由来土壌の生成・機能特性の解明
予算区分 :経常
研究期間 :平成8年度(平成4〜7年)
発表論文等:1)火砕流に含まれるリンの資源特性(1)九州の主要な火砕流
        に含まれるリンの形態,日本土肥学会講要集,41,p.381(1995)
      2)火砕流に含まれるリンの資源特性(2)テフラの鉱物・化学
        特性及び風化程度と酸可溶性リン酸量との関係,九農研講演
        要集,59,p.28(1996)
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