アジサイはなぜアルミニウムの生育阻害作用を受けないか?


[要約]
植物に対して強い生育阻害作用を持っているアルミニウムは,アジサイ(Hydrangea macrophylla)の植物体中では無害なアルミニウム−クエン酸錯体として 存在しているため,アジサイは植物体内に大量のアルミニウムを蓄積しても生育阻害作用を受けない。
農業環境技術研究所 環境生物部 他感物質研究室
[部会名] 農業生態
[専門]  生理
[対象]  花き類
[分類]  研究

[背景・ねらい]
 わが国の火山灰土壌では,アルミニウムの毒性により植物の生育は著しく阻害されている。しかし,アジサイ(Hydrangea macrophylla) は植物体中に大量のアルミニウムを蓄積するにもかかわらず生育は抑制されないことから,植物体中にはアルミニウムに対して何らかの解毒機構が存在するもの と考えられている。本研究では,アジサイ植物体中でのアルミニウムの存在形態を調べることにより,アルミニウムの解毒機構を研究した。
[成果の内容・特徴]
  1. 花の青いアジサイは,大量のアルミニウムを葉に蓄積していた(15.7mmol kg-1)が,その2/3以上は汁液中に存在していた。
  2. 汁液を抽出し分子ふるいクロマトグラフィーにより分画した結果,アルミニウムを含む画分には,クエン酸がアルミニウムとほぼ等量 含まれていた(図1)。
  3. 27Al-NMRスペクトルを比較すると,アジサイの生葉(図2A),汁液(図2B),精製した汁液 (図2C),クエン酸とアルミニウムの1:1混合物(0.1mM,図2D)はほぼ同一であることから, アジサイの植物体中ではアルミニウムは6配位の形で,クエン酸と錯体を作って存在していることが明らかになった。
  4. アジサイの汁液中のアルミニウムはトウモロコシの根の伸長生長を阻害しない(図3)ことから,アジサイは植物体中で アルミニウムをクエン酸と結合さることによってアルミニウムの毒性を解毒していることがわかった。
[成果の活用面・留意点]
 植物体内におけるアルミニウム耐性機構の解明に資する。これらの成果は,アルミニウム耐性植物の創出のための基礎的資料となる。

具体的データ


[その他]
研究課題名:土壌中における生理活性物質の挙動と活性発現
予算区分 :経常
研究期間 :平成8年度(平成5〜9年)
発表論文等:Internal detoxification mechanism of aluminum in
      Hydrangea macrophylla, Identification of Al form
      in the leaves, Plant Physiol.,(1997) 133:1033-1039
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