菌体脂肪酸組成に基づく根圏細菌の類別のためのデータベース作成


[要約]
菌体脂肪酸組成を基に,グラム陰性の根圏細菌を簡易に類別するためのデータベース並びに検索表を作成した。このデータベースは、関東以北で 分離された根圏細菌の分類を基にしている。
農業研究センター 土壌肥料部 畑土壌肥料研究室
[部会名] 農業生態
[専門]  土壌
[対象]  細菌
[分類]  研究

[背景・ねらい]
 根圏細菌を簡便に類別・同定できれば,根圏細菌相と作物生育の関係を明らかにするための研究の進展が期待できる。現在,菌体脂肪酸組成から細菌を同定す る手法があるが,根圏細菌についてのデータベースは不十分である。このため,本邦で分離されてその所属が明らかにされつつあるグラム陰性の根圏細菌を用い てデータベースをつくり,簡易検索法を提示する。
[成果の内容・特徴]
  1. 加藤の細菌コレクションより190菌株を供試した。この内129菌株は関東以北で分離された根圏細菌であり,Enterobacteriaceae,Pseudomonas 1,Pseudomonas 2(=Burkholder-ria),Pseudomonas 3(Comamonadaceaeに含まれる),Pseudomonas 4(Sphingomonasを含む),Alcaligenes(Variovoraxを 含む),Agrobacterium(Rhizobiumなどを含む),XanthomonasStenotrophomonasを含む),CytophagaFlavobacteriumを含む) といった科・属に分け,更に種々の性質から全体として71グループに細分化したものである。残り61菌株は基準菌株またはMAFFなどの登録菌株である。
  2. 菌体脂肪酸組成は概ね71のグループ毎に異なっており(測定手順は図1左),脂肪酸組成から所属するグループを判別できた。71グループの 内の多くは基準菌株とは異なっており,今後更なる分類研究が必要である。
  3. 検索では,まず主体となる菌体脂肪酸の種類により,次にOH基を有する脂肪酸の種類を基準とすることにより属レベルに細分化する (図2)。
  4. 群馬県嬬恋村のキャベツ根から分離した260菌株判定したところ,全ての菌を属レベルで類別できた。
[成果の活用面・留意点]
  1. 種に近いレベルまで類別可能である。データベースと検索表等は要望に応じて提供する。
  2. 脂肪酸抽出物は,不純物をほぼ含まないのでFID付きのガスクロマトグラフィーで解析できるが,0.1%の脂肪酸成分まで測定できることが望ましい (図2注)。

具体的データ


[その他]
研究課題名:有用根圏微生物の選抜とその機能評価
予算区分 :経常
研究期間 :平成8年度(平成7〜11年)
研究論文等:第12回日本微生物生態学会「根圏細菌を類別するための脂肪酸
      組成のデータベース化(1)−概要並びにPseudomonas 1について−」
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