ダイコン作付けによるハクサイ根こぶ病の耕種的防除


[要約]
 根こぶ病菌密度が概ね104/g乾土前半以下の土壌では,根こぶ病抵抗性ダイコンを植えることにより収穫株跡の菌密度が大きく低下するので, マルチの除去及び耕起を行わずに連続してダイコン株跡へハクサイを植えることで,発病が著しく軽減できる。
長野県中信農業試験場 畑作栽培部 土壌肥料係
[部会名] 農業生態
[専門]  肥料
[対象]  葉茎菜類,根菜類
[分類]  普及

[背景・ねらい]
 環境保全型農業を推進する上で,各種土壌病害に対する耕種的な防除法を確立することは急務である。宮重系青首ダイコンは根こぶ病に強い抵抗性を示すこと から,土壌中の根こぶ病菌密度を減少させる「おとり作物」としての利用が期待できる。しかし,その効果を左右する要因が未解明で,技術的な発展や現場への 普及が困難になっている。そこで,ダイコン作付けが根こぶ病菌密度,発病度及びハクサイ収量に与える影響を調べ,現場への適用可能性を検討した。
[成果の内容・特徴]
  1. 発病が軽減できる菌密度条件:1作目作付け前の土壌中の根こぶ病菌密度が比較的低い条(2.5×104/g乾土)では,おとり作物区のハクサイの発病度は, ハクサイ連作区に比べ大きく低下する。また,菌密度が高い条件(1.7×105/g乾土:土壌殺菌剤処理区の発病度も高い)においても発病度は低下するが, その度合は低菌密度土壌の場合より小さい(図1,図3)。
  2. ハクサイ作付け位置:ダイコン作付け後の土壌中根こぶ病菌密度は,作付け前より平均で3割程度減少し,その度合はダイコン株周囲土壌で大きく (作付け前の49.7%),株間土壌で小さい(同83.0%)ことから,2作目ハクサイはダイコン株跡に植えるのが有効である(図2)。 栽植密度は,株間:ダイコン20〜25,ハクサイ40〜50cm,うね幅(共通):45cm程度とするが,2作目ハクサイはダイコン株跡1株おきに定植する。
  3. ダイコン−ハクサイ2作1回施肥連続栽培方法:標準的な施肥方法は,窒素溶出期間が50〜70日タイプの緩効性肥料を使用し,窒素で 30kg/10aを基準として全量基肥で2作分を1回で施用後マルチする。ダイコン収穫後はマルチの除去及び耕起は行わないで,連続してハクサイを作付け る。これは,菌密度を下げた株跡の土に高菌密度の土を混ぜないためである。また,ダイコン株跡に5〜7g程度の石灰窒素を散布後ハクサイを定植すること で,追肥,土壌pH矯正,生理障害防止,殺菌及び除草の各効果が追加できる。
[成果の活用面・留意点]
  1. おとり作物用ダイコンは,宮重系青首品種の「耐病総太り」,「快進総太り」等が使用でき,生育,品質ともに通常栽培法と同等であり,1株当たりの 根重が700〜1,000gのものが収穫できる。
  2. この成果は,表層腐植質黒ボク土畑(標高740m)で得られたものである。
  3. ハクサイ作付け前土壌の根こぶ病菌密度と収穫時の発病度との間には,圃場試験レベルで高い相関(r=0.867)が認められたので,過去の発病度の データから菌密度の簡易推定が可能である。

具体的データ


[その他]
研究課題名:野菜作地帯における病害抑止型土壌の環境容量の解明
予算区分 :指定試験
研究期間 :平成8年度(平成5〜8年度)
発表論文等:平成8年度長野県普及技術
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