牧草ミネラル組成改善のためのカリ低減型施肥法


[要 約]
 牧草のミネラル組成を乳牛飼養上望ましい方向に改善するために,チモシー・シロクローバ混播草地において(1番草)マメ科率を 維持できるカリの必要最低量を策定し,土壌診断に基づく施肥量算出式を提案する。
北海道立根釧農業試験場 研究部 土壌肥料科
[部会名] 環境資源特性
[専 門] 肥料
[対 象] 牧草類
[分 類] 指導

[背景・ねらい]
 一般に,チモシー・シロクローバ混播草地の牧草体カリ含有率は乳牛の求めるカリ水準に比べ明らかに高い。この状況を改善するために, カリ施肥量と早春の土壌表層0〜5cm中交換性カリ量との合計であるカリ供給量を,最大収量の安定確保を目的に設定されている現行の30kg/10aから どこまで低減できるかについて検討し,施肥量の決定方法を提案する。
[成果の内容・特徴]
  1. 牧草の年間乾物収量はカリ供給量の増加に伴い高まり,平均的にはカリ施肥量14〜18kg区(カリ供給量18〜22kg/10a)で22kg区とほぼ同等の 収量水準に達する(表1)。しかしながら,この施肥量レベルにおいても年次変動が大きい。
  2. 根釧地方の火山性土地帯のチモシー・シロクローバ混播採草地においてマメ科率を目標値である15〜20%程度に維持し得るカリ供給量の 下限値は20〜25kg/10aである(図1)。また,カリ施肥量18kg区の1番草マメ科率は22kg区と同等であることと, 18kg区における土壌表層(0〜5cm)中交換性カリ量は3〜4kg/10aであることから,マメ科率の低下をもたらさないカリ供給量の下限を22kg/10aと設定する。
  3. 牧草のミネラル組成は,カリ供給量の低減により乳牛飼養上望ましい方向に改善される。すなわち,過剰傾向にあるカリの含有率はチモシー, シロクローバともに低下し,逆に不足がちなマグネシウムおよびカルシウムの含有率はチモシーでは高まる傾向にある(図2)。
  4. マメ科率維持のためのカリ供給量の下限値を22kg/10aと策定し,このカリ供給量を満たす牧草ミネラル組成重視型のカリ低減型施肥量決定法として
      カリ施肥量(kgK2O/10a)
       =22−1/2×仮比重×早春の土壌(0〜5cm)中交換性カリ含量(mgK20/100g乾土)
    を提案する。これによる試算例を表2に示す。
[成果の活用面・留意点]
  1. この施肥法による収量は,現行のカリ施肥法(カリ供給量で30kg/10a)に比べやや低下する。
  2. 適応地域は北海道東部の火山性土地帯の採草地とする。

具体的データ


[その他]
研究課題名:大規模草地酪農における環境保全型物質循環 −カリの循環−
予算区分 :指定試験
研究期間 :平成9年度(平成7〜9年度)
発表論文等:三枝俊哉,能代昌雄:北海道の火山性土に立地した草地に対する低投入持続型カリ
      ウム施肥の可能性,土肥誌, 67 (3), 265〜272 (1996)
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