プロテアーゼ生産性Bacillus 属細菌の16S rDNAの制限酵素切断部位に基づく同定


[要 約]
 ユニバーサルプライマーで増幅した16S rDNAの制限酵素切断部位(Hae IIICfo IAlu I )の相違により,耕地土壌から 分離したプロテアーゼ生産性のBacillus 細菌は種或いは近縁種のレベルで同定できる。
九州農業試験場 生産環境部 土壌微生物研究室
[部会名] 農業生態
[専 門] 土壌
[対 象]  
[分 類] 研究

[背景・ねらい]
 現在まで土壌の物質循環と微生物生態との関係解明を目的として,土壌プロテアーゼの生産に重要な役割を果たす多数のBacillus 属細菌を 分離してきている。近年Bacillus 属細菌の分類は16S rDNAの可変領域の塩基配列により見直されてきている。よって,この領域の相違を反映する 制限酵素切断部位を検索し,これらの制限酵素切断部位の相違に基づいたプロテアーゼ生産性のBacillus 属細菌の同定手法を開発する。
[成果の内容・特徴]
  1. データベースに登録されている16S rDNAの塩基配列から推定したBacillus属細菌(19種;31株)は制限酵素切断部位(HaeIIICfoIAluI )の相違により,16グループに分類できる(図1)。
  2. ユニバーサルプライマーを用いて増幅した対照菌株(9株)と,水田土壌から分離したプロテアーゼ生産性のBacillus 属細菌(12株)の16S rDNA (22-1085bp)を,制限酵素で切断し,デンシトグラムで求めた断片長をもとに推定した切断部位は,データベースから推定した切断部位とほぼ一致した (表1)。そこでこの手法は同定手法として利用できる。
  3. この手法によって新たに畑土壌から分離したプロテアーゼ生産性のBacillus属細菌(11株)は制限酵素切断部位から,B. subtilis グループ(U80:A*), B. cereus グループ(N4,N3,N7,N9,N68,U44,U72:H,H**),B. sphaericus (N63,N80,U77:M***)と同定され (表1),結果は簡単な生理試験による結果と一致した。

     以上の結果から16S rDNAの制限酵素切断パターンによる分類はBacillus 属細菌の簡易な同定手法として有効である。

[成果の活用面・留意点]
  1. 土壌から分離したBacillus 属細菌のみではなく,形態学的グループ1群及び3群に属する一般的なBacillus 属細菌の分類/同定にも適用できる。
  2. 類縁種であるB. subtilis グループ,B. cereus グループ内の分類は本法ではできない。
  3. デンシトグラムで求めた切断長から推定した切断部位はデータベースから決定した切断部位と1,2箇所のAlu I 部位の違いが見られる場合がある。

具体的データ


[その他]
研究課題名:バイオマス窒素の代謝関連微生物活性の動態
予算区分 :一般別枠(物質循環)
研究期間 :平成9年度(平成4〜10年)
発表論文等:16S rDNAの制限酵素切断パターンによるBacillus属細菌の分類と同定,第11回日本
      微生物生態学会講演要旨集 (1995)
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