小型光量子センサーを用いた葉面受光量の直接連続測定法


[要 約]
 複数の小型光量子センサーを植物の各部位の葉面に貼り付け,経時的に変動する植物の受光量を連続測定し,測定値(電圧)をパソコンに入力する装置である。本装置は群落内の植物の受光量の正確な評価・解析を可能にする。センサーの群落内の配置等は,群落構造や気象条件を考慮して決める必要がある。
[担当研究単位] 農業環境技術研究所 環境生物部 植生管理科 植生生態研究室
[部会名] 農業環境・農業生態
[専 門] 生態
[対 象] 水稲
[分 類] 研究

[背景・ねらい]
 植物群落における葉面の受光量は,葉身の傾きや方位,隣接する葉との関係などの群落構造の要素と風,雲,太陽高度など気象要素の影響を受けて極めて複雑に変動する。このため,植物群落内の個葉が受ける受光の実態を解明するためには,群落内の大小の葉の様々な位置に取り付けて受光量を連続して同時に多点測定できる装置が必要である。しかし,これまでの市販の測定装置では光量子センサーが大きいため(数十グラム),葉面に取り付けることは困難であり,また長時間測定することも困難であった。
[成果の内容・特徴]
 小型・軽量の光量子センサー(浜松ホトニクス;G1118,大きさ5×6×1.5mm,重さ0.16g,波長域300〜660nm)を用いて葉面受光量を直接測定する装置を構築した。光量子センサーを群落内の任意の葉面に張り付け(写真),極細ケーブルで電圧計と接続することにより,受光量を連続的に同時多点測定できる。
 この装置を用いて水稲個体群における葉面受光量を測定した結果の概要は下記のとおりである。
  1. 葉面での受光量の日変化は,葉の向いている方角や隣接する他の葉との関係によって異なり,また,短い時間内においてもしばしば大きく変動する(図1)。
  2. 晴天日には,葉面受光量が最大になる時間帯は直射光の受光角度に依存する。また,日変化のパターンは,理論的に算出した受光量の日変化パターンと一致する(図2)。
  3. 1日の総受光量は,同じ高さ(葉位)の葉でも,その傾角や方位によって大きく異なり,最大で10倍以上の差異がある(図2)。
  4. 葉面受光量をより高速(800回/秒)で測定すると,群落における葉面受光量は,しばしば数秒以内の短い周期で変動している(図3)。このような変動は,隣接する葉などによる不規則な被陰(図3(a),(b)),および風による葉自体の揺れ(図3(c))による。
[成果の活用面・留意点]
  1. 本測定法は,様々な植物群落の葉面受光量測定に適用することが可能である。
  2. 野外の群落内でのセンサーの設置には,ある程度の細かい手作業が必要である。

具体的データ


[その他]
    研究課題名:植物群落内の微細環境と物質生産との関連の解明
    予算区分 :経常
    研究期間 :平成6〜10年度
    発表論文等:
       1)Spatial and temporal variation in photon flux density on rice (Oryza sativa L.) leaf surface.
               Plant Prod. Sci. 1 : 30-36 (1998)
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