カリウム吸収能の高い畑作物による土壌ケイ酸の可溶化


[要 約]
 カリウム吸収能には作物間差があり,カリウム吸収能が高くケイ酸含有率が低い畑作物では跡地土壌中の2.5%酢酸抽出ケイ酸量が増加した。このことから,カリウム吸収能の高い畑作物は,土壌中のケイ酸の可溶化を促すことが示された。
[担当研究単位]農業環境技術研究所 環境資源部 土壌管理科 土壌生化学研究室
北海道農業試験場 畑作研究センター 生産技術研究チーム
[部会名] 農業環境・環境資源特性
[専 門] 土壌
[対 象] 
[分 類] 研究

[背景・ねらい]
 作物に供給されるカリウムの主体は交換性カリウムであるといわれているが,作物によっては異なる形態のカリウムを利用できることが報告されている。鉱物に強く保持,結合されているカリウムを作物が利用すると,鉱物の形態変化がおこりケイ酸が遊離すると予想される。そこで,カリウム吸収能の作物間差と土壌のケイ酸の可溶化について検討した。
[成果の内容・特徴]
  1. 低カリウム土壌(淡色黒ボク土)を充填したポット条件で,開花期までにダイズ,ヒマワリ,リクトウおよびトウモロコシはポット中の交換性カリウム量よりも多くのカリウムを吸収した(図1)。
  2. ダイズとヒマワリの栽培跡地土壌の2.5%酢酸抽出ケイ酸量は無栽植区の土壌よりも多かった。リクトウとトウモロコシの栽培跡地土壌には2.5%酢酸抽出ケイ酸量の増加はみられなかったが,他の作物に比べて多くのケイ酸を吸収した(図1)。
  3. ラッカセイのカリウム吸収量はポット中の交換性カリウム量よりも少なく,カリウム吸収能が他の4作物よりも低かった。また,跡地土壌の2.5%酢酸抽出ケイ酸量は無栽植区の土壌よりも少なく,ラッカセイのケイ酸吸収量も少なかった(図1)。
  4. 長期三要素試験圃場(乾性火山灰土壌)においてもカリウム吸収能の作物間差がみられた。すなわち,冬コムギのカリウム吸収量はカリウム無施用区(-K区)と三要素施用区(NPK区)とではほぼ同じであった(1977,80,84,89年)。一方,ジャガイモはNPK区に比べて-K区のカリウム吸収量が極端に少なかった(1983,88,93,98年)(表1)。
  5. 長期三要素試験圃場に隣接する未耕地に比べて,三要素無施用区(-NPK区)の交換性カリウム量は少なく,2.5%酢酸抽出ケイ酸量は多い。一方,-K区では未耕地に比較して交換性カリウム量は少なく,2.5%酢酸抽出ケイ酸量はほぼ等しい。しかし,作物のケイ酸吸収量は-NPK区よりも多い(表2)。
  6. 以上の結果から,カリウム吸収能が高い畑作物の栽培は土壌ケイ酸の可溶化を促すことが示唆された。
[成果の活用面・留意点]
  1. 土壌蓄積カリウムの資源的評価と有効態カリウムの診断法の開発に有効である。
  2. 作物のカリウム吸収とケイ酸可溶化機構については今後検討する。

具体的データ


[その他]
研究課題名:作物によるカリウム吸収能の機構解明
予算区分 :経常
研究期間 :平成11年度(平成10〜11年度)
発表論文等:黒ボク土および黒ボク土に施用した鉱物に対する作物カリウム吸収反応,日本土壌
      肥料学会誌,27(2000)
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