除草剤ベンスルフロンメチルの免疫化学的簡易測定法


[要 約]
 高活性除草剤 ベンスルフロンメチルの免疫化学測定法は,高価な機器や熟練した技術を必要とせず,2〜4時間の操作工程で環境試料中のベンスルフロンメチルをppbレベルで定量できる。
[担当研究単位]農業環境技術研究所 資材動態部 農薬動態科 農薬管理研究室
[部会名] 農業環境・環境資源特性
[専 門] 薬剤
[対 象] 水稲
[分 類] 普及

[背景・ねらい]
 ベンスルフロンメチルは,わが国の水田で最も広範に使用されているスルホニル尿素系除草剤の一つである。本除草剤は10a当たりの使用量が5〜7.5gと少ないため河川への流亡量が少なく,河川水中濃度は極めて低い。しかし,本除草剤は高活性であるため,低濃度であっても感受性の植物や藻類に対して生育障害を引き起こすおそれがある。本除草剤の微量分析法として高速液体クロマトグラフ法が採用されているが,煩雑な抽出精製操作を要するため,本除草剤の環境モニタリングの実施が困難な理由の一つとなっている。
 この研究では,民間企業との共同研究により,ベンスルフロンメチル抗体キットを用いた免疫化学測定法による環境試料分析の問題点を検討し,実用的な免疫化学測定法の開発を行った。
[成果の内容・特徴]
  1. 本キットは直接競合性競合ELISA法を採用している。ELISA測定部分の全操作時間は約2時間である。(図1)。
  2. 本キットは試料が水の場合は直接測定が可能であり,ベンスルフロンメチルの0.2〜4.0ppbの範囲で定量できる(図2および)。
  3. 試料が土壌の場合は抽出操作が必要である。土壌試料を2〜5倍量のメタノール・水(2+1)混液またはM/10炭酸ナトリウム・M/10炭酸水素ナトリウム等量混液を用いて抽出し,抽出液を10mMリン酸緩衝液・生理的食塩水(pH7.5)で5〜10倍に希釈して測定する。土壌試料の測定限界は試料5gを用いた場合2ppbである(図1)。
  4. 本キットはpH6〜10の範囲の水試料を直接測定できる。海水程度の塩分を含む水の場合でも支障なく測定が可能である。
  5. 本キットは他のスルホニル尿素系除草剤との交叉反応性がほとんどない。50%阻害濃度で比較した場合,ベンスルフロンメチルが1.6ppbのとき類縁化合物は10,000ppb以上である(表1)。
  6. 本キットによる測定値は機器分析測定値とよい一致を示す。田面水中のベンスルフロンメチルの残留濃度を本法とHPLC/MS/MSで比較した場合,測定値の相関係数は0.9以上と良好な一致を示した(図4)。
[成果の活用面・留意点]
  1. 田面水,水田土壌,農業用水および河川水並びに底質中のベンスルフロンメチルの残留濃度を容易に測定でき,環境中濃度のモニタリングに利用できる。
  2. 本キットを利用したベンスルフロメチルの測定は機器分析に比べて操作は簡便であるが,再現性のあるデータを得るためには分析操作を多少練習する必要がある。

具体的データ


[その他]
研究課題名:免疫化学測定法による環境中の残留農薬測定技術の開発
予算区分 :経常
研究期間 :平成11年度(平成8〜11年度)
発表論文等:残留農薬分析における免疫化学測定法,第21回農薬残留分析研究会資料集,
      40-49 (1998)
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