転換年数の異なる低湿重粘土転換畑の脱窒速度


[要 約]
低湿重粘土の転換畑(2,10年目)圃場における10〜20cm層の脱窒速度は,土壌還元が発達し,硝酸態窒素が増加する7月に最大になる。10年目圃場に比べ,2年目圃場では土壌還元が発達し,脱窒速度も大きい。供試圃場の作付期間中の脱窒量は,転換2年目で12.5 kg ha-1,転換10年目で6.3 kg ha-1と推定される。
[担当研究単位] 秋田県農業試験場 生産環境部 環境調和担当
[部会名] 農業環境・環境資源特性
          東北農業・生産環境
          総合農業・生産環境
[専 門] 土壌
[対 象]  
[分 類] 研究

[背景・ねらい]
閉鎖水系の八郎潟干拓地では, 環境保全型の持続的農業が特に求められており,環境負荷物質, 特に窒素の動態を明らかにする必要がある。ここでは低湿重粘土の転換2年目と10年目のスイートコーン作付圃場において,土壌の酸化還元状態, 無機態窒素濃度, 脱窒速度の推移と脱窒量を把握する。
[成果の内容・特徴]
  1. 供試圃場は細粒質表層灰色グライ低地土,強粘質に分類される。転換2年目圃場(作付来歴:〜H.10水田,H.11〜12スイートコーン)では地表下30cmからグライ層が出現し,45cm以下は構造のない壁状である。10年目圃場(作付来歴:〜H.2水田,H.3休耕,H4ダイズ,H.5〜6休耕,H.7コムギ,H.8ダイズ,H.9〜10秋キャベツ,H.11〜12スイートコーン)では,2年目圃場に比べ酸化・乾燥が進み,下層にも弱い柱状構造の発達がみられる。施肥前の0〜20cm層では無機態窒素は認められない。
  2. 転換2年目圃場では6月下旬のまとまった降雨後から土壌還元が発達し,10〜20cm層でより発達する。転換10年目0〜10cm層では調査期間中ほぼ酸化的に推移し,10〜20cm層では降雨のあと土壌還元がみられる。転換2年目圃場は10年目圃場に比べ,より還元的に推移する(図1)。
  3. 硝酸態窒素濃度は,両圃場とも0〜10cm層で施肥後徐々に増加し,6月下旬に150 mg kg-1程度と最も高くなり,まとまった降雨のあと減少する。10〜20cm層では,6月下旬から増加し7月中旬にかけ30〜40 mg kg-1程度で推移する(図2)。
  4. 脱窒速度は,施肥後〜6月下旬まで両圃場とも0〜10cm層が10〜20cm層より大きく,10〜20cm層では土壌還元が発達し,硝酸態窒素が増加する7月に入ると大きくなる。最大は7月上旬の転換2年目10〜20cm層で,260 g ha-1day-1である。作付期間中の脱窒速度は,10年目圃場に比べ,より土壌還元の発達する転換2年目圃場で大きい(図3)。
  5. 作付期間中の脱窒量は,0〜10cm,10〜20cm層の合計で転換2年目圃場で12.5 kg ha-1,10年目圃場で6.3 kg ha-1と推定される(図3)。
[成果の活用面・留意点]
  1. 転換畑では土壌還元層の存在により,系外,特に地下水への窒素溶脱を抑えられる可能性がある。
  2. 畑地化が進むと,溶脱が増える可能性がある。

具体的データ


[その他]
 研究課題名 : 閉鎖水系水田地帯における環境負荷物質の動態と環境保全機能の定量的解明
 予算区分  : 指定試験
 研究期間  : 平成12年度(平成11年〜12年)
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