窒素肥料を施用した黒ボク土畑圃場からの亜酸化窒素と一酸化窒素の発生


[要 約]
化学窒素肥料と有機質資材を全面全層施肥して野菜を栽培したライシメータ畑圃場(黒ボク土)での亜酸化窒素(N2O)と一酸化窒素(NO)の合計窒素量の施肥窒素量に対する発生割合は,0.06〜1.46%であった。化学窒素肥料からの発生量はNOがN2Oより多く,乾燥牛糞を除く有機質資材からの発生量はN2OがNOより多かった。フラックスのNO-N/N2O-N比と土壌水分量は反比例の関係を示した。
[担当研究単位]農業環境技術研究所 環境管理部 資源・生態管理科 影響調査研究室
[部会名] 農業環境・地球環境
[専 門] 環境保全
[対 象]  
[分 類] 研究

[背景・ねらい]
温室効果ガスの一つである亜酸化窒素(N2O)と,対流圏オゾン(温室効果ガスの一つ)や酸性雨の生成に関与する一酸化窒素(NO)は,土壌が主要な発生源の一つと推測されている。世界の畑地からのN2OとNO発生量を正確に推定するためには,施用窒素量に対するN2OとNOの発生割合やその発生要因を明らかにする必要がある。本研究では,化学窒素肥料(尿素系肥料,硝酸系肥料,被覆尿素肥料,被覆硝酸系肥料,硝化抑制剤入り肥料)と,有機質資材(醗酵鶏糞,醗酵豚糞,油かす,魚かす,牛糞堆肥,乾燥牛糞)を黒ボク土畑圃場に全面全層施肥したときのN2OとNOの発生量を明らかにする。
[成果の内容・特徴]
  1. 黒ボク土の畑圃場におけるN2OとNOの発生割合は,化学窒素肥料区では常にNOが多かったが,有機質資材区では,乾燥牛糞区を除いてN2Oが多かった。また,N2OとNOを合計した総窒素発生量は,投入窒素量の0.06〜1.46%であった(表1)。
  2. 多くの処理区では施肥後1〜2週間内にN2OとNOのフラックスが大きくなり,その後は減少した(図1)。被覆尿素肥料区での施肥後のピークの大きさは,尿素系肥料区(尿素,尿素+硫安)の半分程度であったが,その後は尿素系肥料区より大きいフラックスが常に見られた。その結果,被服尿素肥料区からの総発生量は,尿粗系肥料区よりも多い場合があった。
  3. 硝化抑制剤入り肥料区でのN2OとNOのフラックスの施肥後のピークは,尿素系肥料区の半分程度で,その後も尿素系肥料区より小さかった(図1)。
  4. 化学窒素肥料区の施肥直後にみられるピーク時のフラックスのNO-N/N2O-N比は,土壌水分量(飽水度)と反比例し,土壌が湿るほどN2Oが,土壌が乾くほどNOが多く発生することが明らかになった(図2)。
[成果の活用面・留意点]
  1. IPCC(気候変動に関する政府間パネル)等での,世界の畑地からのN2O発生量の推定に貢献する。
  2. 好気的になりやすい関東の黒ボク土壌とは異なる土壌タイプを用いて同様な実験を行う必要がある。また,有機質資材からのN2OとNO発生の制御要因を明らかにする必要がある。

具体的データ


[その他]
 研究課題名 : 窒素肥料・有機物の施用が大気・水環境に及ぼす影響の評価
 予算区分  : 経常,環・地球環境(温暖化抑制)
 研究期間  : 平成12年度(平成9〜15年)
 発表論文等 : N2O and NO emissions from soils after the application of different chemical
        fertilizers, Chemosphere -Global Change Science 2 : 313-320 (2000)
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