カラム浸潤法による黒ボク土の硝酸イオン吸着容量の測定


[要 約]
 黒ボク土の硝酸イオン吸着容量を正確に測定する方法を開発した。硝酸塩溶液を混和した土壌を充填したカラムに水を浸潤させると,カラム内溶液集積部分の乾土当たり硝酸イオン含量と溶液含量の関係から硝酸イオンの土壌溶液中濃度と吸着量が求められる。
[担当研究単位] 農業環境技術研究所 化学環境部 栄養塩類研究グループ 土壌物理ユニット
[分 類] 技術

[背景・ねらい]
 黒ボク土は硝酸イオン(NO3-)を吸着するために,土層内のNO3-の移動速度は水移動速度に比べて小さくなる。従来の陰イオン交換容量の測定法ではNO3-吸着容量を過大評価するため,移動の遅れを的確に予測・評価することが難しい。そこで,圃場条件に近い吸着態イオン組成を持つ黒ボク土のNO3-吸着容量を求めるための新しい測定法を開発する。
[成果の内容・特徴]
  1. 黒ボク土では,NO3-は溶液濃度の上昇に伴う陰イオン交換容量の一時的な増加によって吸着される(図1)。従来法では土壌に加えられる溶液量が多いために,吸着態硫酸イオン(SO42-)とのイオン交換によるNO3-の吸着も同時に進み,NO3-吸着容量を場合により数倍程度過大評価する。
  2. 開発した方法では,硝酸塩溶液混和土壌を充填したカラムに水を浸潤させ,カラム内にあった土壌溶液が集積する部分(図2のx > x*部分)での乾土当たりNO3-含量を乾土当たり溶液体積に対してプロットする。得られた直線の傾きから塩溶液混和後の土壌溶液中のNO3-濃度が,切片からNO3-吸着量が求められる(図2)
  3. この方法によれば,土壌中の吸着態SO42-の脱離をほとんど引き起こすことなく,圃場条件に近い吸着態イオン組成を持つ黒ボク土によるNO3-吸着容量を測定できる(図3)。濃度の異なる硝酸塩溶液を土壌に混和してカラム実験を行えば,土壌溶液中のNO3-濃度とNO3-吸着容量の関係も得られる。
[成果の活用面・留意点]
測定した黒ボク土のNO3-吸着容量は,硝酸性窒素の溶脱速度の予測に用いることができる。

[その他]
 研究課題名 : 畑地土壌における硝酸性窒素の地下水到達経路と到達率の解明
 予算区分  : 運営費交付金,環境研究[自然循環]
 研究期間  : 平成13年度(平成12〜14年)
 研究担当者 : 加藤英孝
 発表論文等 : 1) Katou, H., et al., An unsaturated transient flow method for determining solute adsorption
               by variable-charge soils. Soil Sci. Soc. Am. J., 65(2), 283-290, (2001)

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