火山灰土壌による2,4-Dの吸着メカニズムの解明


[要 約]
2,4-Dは,火山灰土壌の構成成分であるアロフェン,イモゴライト,フェリハイドライト,ゲータイト,鉄・アルミニウム-腐植複合体により強く吸着される。その吸着メカニズムは配位子交換反応である。
[担当研究単位] 農業環境技術研究所 生物環境安全部 植生研究グループ 化学生態ユニット
[分 類] 学術

[背景・ねらい]
 2,4-D(2,4-dichlorophenoxyacetic acid,図1)は現在でも重要な茎葉処理型除草剤であるが,環境ホルモン様活性を持つことが疑われている物質でもある。わが国では農耕地の約3割が火山灰土壌であることから,火山灰土壌よる2,4-Dの吸着反応メカニズムや吸着反応特性に関心が持たれている。そこで,2,4-Dの土壌吸着メカニズムを明らかにし,2,4-Dおよび低分子有機酸の土壌環境中における動態およびその活性発現機構の解明に役立てる。
[成果の内容・特徴]
  1. 2,4-Dは低濃度(0.023 mM)においても火山灰土壌に選択的に吸着される(図2)ので,イオン交換反応による吸着の関与は小さい。
  2. 土壌の2,4-D吸着量は,pHが高くなるほど減少する。このような吸着特性は,配位子交換反応(配位結合による吸着反応)と一致する。
  3. 2,4-D吸着量は,
    有機物除去土壌(B) ≧未処理土壌(A) ≫有機物および遊離鉱物除去土壌(C)
    であったことから, 2,4-Dの土壌吸着に対する寄与が大きいのは,アロフェン,イモゴライト,フェリハイドライト,ゲータイトなどの遊離鉱物,および腐植物質に結合した鉄・アルミニウムである(図2)
  4. Ca型腐植酸はほとんど2,4-Dを吸着しないのに対して,Al型腐植酸は多量の2,4-Dを吸着する(図3)。またその量は,同量のアルミニウム水酸化物による2,4-D吸着量よりも多いことから,土壌中の腐植物質には,Alによる2,4-Dの吸着反応を起こりやすい状態で維持する機能があり,土壌中では腐植酸-Al, Fe-2,4-D吸着複合体(図4)が形成されていると考えられる。
  5. 以上のことから,火山灰土壌による2,4-Dの吸着メカニズムは配位子交換反応である。
[成果の活用面・留意点]
多様な天然生理活性物質の中でもカルボキシル基を持つ化合物は,配位子交換反応によって火山灰土壌成分に強く吸着される可能性がある。

[その他]
 研究課題名 : カテコール関連化合物を放出する植物の導入が周辺の植物や土壌環境に及ぼす影響解明
 予算区分  : パイオニア特別研究[カテコール]
 研究期間  : 平成13年度(平成13〜17年度)
 研究担当者 : 平舘俊太郎,藤井義晴
 

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