被覆資材による土壌くん蒸用臭化メチルの大気放出量削減技術の開発


[要 約]
 土壌表面施用くん蒸法による臭化メチルの大気放出量は,慣用のポリエチレンフィルム被覆では施用量の63.8%であった。遮光資材を併用することで56.2%に,ガスバリアー性被覆資材で24.1%に,光触媒含有積層被覆資材で1%以下に削減できた。
[担当研究単位] 農業環境技術研究所 化学環境部 有機化学物質研究グループ 農薬動態評価ユニット
[分 類] 行政

[背景・ねらい]
 臭化メチルは,モントリオール議定書締約国会議において段階的削減の後,2005年に全廃さ れることが決定されている。我が国の園芸農業は,臭化メチルに大きく依存しているため,代替技術の開発,普及が望まれているが,完全に代わり得る技術は得られていない。代替技術が確立されていない場合には,不可欠用途として規制対象外となる余地が残されているが,その条件として臭化メチルの大気放出量を最小限にする措置が義務づけられる。そこで,日本で一般的な土壌表面施用法による臭化メチル土壌くん蒸に適した大気放出量削減技術を開発,評価する。
[成果の内容・特徴]
  1. 臭化メチル土壌くん蒸に,慣用のポリエチレン被覆資材(0.05mm厚)と遮光資材(Tyvek(R),DuPont)を組み合わせた結果,臭化メチルの大気放出量は63.8%から56.2%に削減できた(図1)。ガスバリアー性被覆資材(Orgalloy(R), elf atochem)を用いた場合には,被覆期間中の大気放出量は3.8%に削減できたが,被覆資材撤去時に大きな大気への放出があり,全体で24.1%が大気へ放出した(図2)
  2. 大気放出をさらに抑制するため,二酸化チタン光触媒含有積層被覆資材を試作,評価した。上部より順に,ガスバリアー層としてエチレンビニルアルコール共重合体フィルム(0.06mm厚),二酸化チタン光触媒層(石原産業:ST-01,3g/m2),光触媒粒子保持と光反射層として高密度ポリエチレン繊維不織シートを用いて,これらを加熱圧着した(図3)。この二酸化チタン光触媒含有積層被覆資材を用いることで,光分解が増強され被覆資材撤去時の大気への放出が減少し,臭化メチルの大気放出量は全体で1%以下に削減できた(図2)
[成果の活用面・留意点]
  1. 試作した光触媒含有積層被覆資材は,従来の土壌くん蒸処理作業を変更する必要がなく,繰り返し利用が可能で,また廃棄処理時に問題となるような物質,元素を含んでいない。
  2. 種々の条件下での評価事例を増やすことと,臭化メチル収支への人為起源の寄与割合を評価しなおすことが必要である。検討した被覆資材は,従来からある土壌くん蒸剤を代替薬剤として用いる場合にも,応用が可能である。

[その他]
 研究課題名 : 臭化メチルと代替物質の放出制御技術システムに関する研究
 予算区分  : 環境省:地球環境[オゾン層破壊]
 研究期間  : 平成13年度(平成11〜13年度)
 研究担当者 : 小原裕三,石井康雄,殷熙洙,石原悟
 発表論文等 : 1) 小原裕三,他,「薬剤の放出制御・抑制方法およびその資材」,
                特許第2987422号
               2) Kobara, Y., et al., Reducing methyl bromide emission with a sheet containing
                 titanium dioxide. Methyl Bromide Alternatives Newsletter, United State
                 Department of Agriculture Jun. (1999)
               3) Kobara, Y., et al., “Estimation of some techniques of reducing methyl bromide
                 emission form soil fumigation under the Japanese horticultural conditions.
                 Organohalogen Compounds 54, 238-240, (2001)

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