航空機搭載多目的デジタル分光画像計測システム


[要 約]
 農耕地生態系を中低高度からリモートセンシングするための新たな分光デジタル画像計測システムを試作開発した。スチル写真やビデオ観測では不可能であった可視〜熱赤外域の波長別画像を高精度で連続的に取得できる。精密農業や生態系に関する空間情報の計測に応用できる。
[担当研究単位] 農業環境技術研究所 地球環境部 生態システム研究グループ 環境計測ユニット
[分 類] 技術

[背景・ねらい]
 高精度な作物管理と資材の適正利用とをめざす精密農業においては,作物の生長をモニタするこ とが必須である。また,水・熱・炭素循環における植生の生態的役割を解明するためには,植物の生長と地表面の物理的特性を空間的にとらえる必要がある。しかし,従来の空中写真やビデオでは,観測波長域や信号としての定量性,位置精度問題があった。そのため、農業・環境関係研究機関が必要に応じて,適時・機動的に情報収集できる新たな観測システムへの要望が高い。そこで,多様な特性の評価に利用可能な航空機搭載の波長別リモートセンシング画像を得るための画像計測システムを開発した。
[成果の内容・特徴]
  1. 本システムは,センサ部およびその制御と波長別画像の記録を行う制御部からなる(図1)。 センサ部は干渉フィルタ付の高解像度CCDカメラ5台と短波長赤外カメラ,および熱赤外カメラを用いており,従来のスチル写真やビデオ装置では不可能で あった可視〜近赤外域(460nm,560nm,660nm,830nm,950nm),短波長赤外域(1650nm),および熱赤域(8〜13μm)の波長別画像を取得できる。また、本システムは2次元の素子を用いているためスキャナ方式と異なり位置精度の高い画像を取得できる。
  2. 制御システムは大容量のメモリを内蔵し,従来困難であった高解像度の波長別デジタル画像の連続記録を可能にした(画像数:可視〜近赤外域1280×1024,短波長赤外域:640×480,熱赤外域:512×480)。シャッタ速度・画像取得間隔・連続取得サイクル数・フォーカス・絞り等の制御は,画像モニタ画面上で調整する。システム全体の電源はバッテリにより完全に独立している。
  3. 有人ヘリAS350に搭載して取得した画像と地上での同時計測データの比較から,少数の校正データで反射率や表面温度を精度よく求められることを実証した。地上空間分解能は飛行高度と画角に応じて数cm〜数mの範囲で設定できる(図2)
  4. 取得した画像と地上での測定データの比較解析により,分光反射率画像から水田や畑地のバイオマス,葉面積指数,土壌炭素含有率等の空間分布を高精細度で推定できることを確認した。解析事例を図3に示した。
[成果の活用面・留意点]
  1. 精密農業,気象災害評価,環境調査をはじめ多くの場面で,空間分布情報の把握に活用できる。
  2. 地上での反射率や温度の正確な絶対値が必要な場合には,地上での校正データが少なくとも数点必要。応用場面に応じて適切な観測緒元を選ぶことが望ましい。

[その他]
 研究課題名 : リモートセンシングによる植被動態の広域的検出・評価手法の開発
 予算区分  : 運営費交付金
 研究期間  : 平成13年度(平成13〜17年)
 研究担当者 : 井上吉雄,富田淳志(現,ニューヨーク大),小川茂男(現,農工研),
               美濃伸之(現,姫路工大)
 発表論文等 : 井上吉雄,他,スペクトル画像の空中計測による
               作物・圃場状態の診断と予測. 第5報 航空機等による作物特性の面的変異
               の評価. 日本作物学会紀事,69別1,170-171, (2000) 

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