紋羽病菌に見出された菌類ウイルス由来の病原力低下因子の発見


[要 約]
 紫紋羽病菌および白紋羽病菌のいくつかの菌株は,菌類ウイルスに由来する病原力低下因子(dsRNA)を保有している。病原力低下因子を含む菌株は病原力の低下を招くので,果樹類紋羽病生物防除への利用が可能である。
[担当研究単位] 農業環境技術研究所 生物環境安全部 微生物・小動物研究グループ 微生物生態ユニット
[分 類] 学術

[背景・ねらい]
 果樹類の土壌伝染性病害である紋羽病の防除は困難で,農薬の潅注,くん蒸剤による土壌消毒, あるいは表土のはく離など化学的あるいは物理的方法による方法のみが実用的な対策である。しかし,土壌中の病原菌は完全に死滅するわけではないので,頻繁な対応が不可欠である。また、慣行防除は環境負荷が大きい。そこで、病原力低下因子(dsRNA)を発見し,環境負荷の少ない永続性のある新しい生物防除法を開発する。
[成果の内容・特徴]
  1. 病原力低下因子は,病原菌細胞質中で増殖する菌類ウイルスに由来する遺伝子で,病原菌の病原力を低下させる。
  2. 単菌糸分離で得られた紫紋羽病菌v670に由来するdsRNA部分脱落系統の病原力(ニンジンの発病に要する週数)は7.33±0.82で,v670の10.33±2.50に比べて病原力が高くなる。この系統に脱落したdsRNAを対峙培養により戻すと病原力は低下する(11.0±2.97,表1)。
  3. ベクターモノカリオン法(一核化した菌株をdsRNA感染の媒介者として,dsRNA供与菌株と受容菌株の仲介をさせる)により,果樹研究所リンゴ研究部が紫紋羽病菌v70のdsRNAを導入した強病原力菌株(v18)は,dsRNA導入前に比べニンジンに対する病原力が低下する(図1)。同じ方法により,v17のdsRNAを導入した菌株v664の病原力も低下する。
  4. ReoviridaeウイルスのdsRNAを保有する白紋羽病菌7菌株のうち,4菌株は単菌糸分離によるdsRNAフリー化により,元の菌株に比べて病原力が強くなる(図2)。
[成果の活用面・留意点]
 従来の慣行防除は環境負荷が大きいので,環境負荷の少なく,しかも永続性のある防除法の開発が求められていた。病原力低下因子を利用した生物防除はこのような欠点を補うものである。

[その他]
 研究課題名 : 病原性低下因子の探索と評価
        (土壌微生物相等の要因が菌核性糸状菌等の動態に及ぼす影響の解析)
 予算区分  : 基礎研究推進
 研究期間  : 2002年度(1998〜2002年度)
 研究担当者 : 松本直幸,岡部郁子,星野(高田)裕子
 発表論文等 : 1) 松本ら,病原性が低い紫紋羽病菌菌株分離株V−70及びそれを含む紫紋羽病防除剤,
                  特許第3231744号,平成13年9月14日
               2) Arakawa, M. et al.,Mycoscience,43(1),21-26(2002)

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