分布を拡大しているハイマダラノメイガの雄成虫を誘引する物質の発見


[要 約]
 最近各地のキャベツなどで被害が問題となっているハイマダラノメイガの雄成虫を(E,E)-11,13-hexadecadienalと(Z)-11-hexadecenalの混合物によって,野外で効率的に誘引できることを発見した。この混合物はフェロモントラップの誘引源として利用できる。
[担当研究単位] 農業環境技術研究所 生物環境安全部 昆虫研究グループ 昆虫生態ユニット
[分 類] 学術

[背景・ねらい]
 野外での昆虫の発生動態モニタリング法として,性フェロモンなどの種特異的な誘引物質を利用することには多くの利便性がある。ハイマダラノメイガ,Hellula undalis Fabricius (鱗翅目:メイガ科)(図1) はアブラナ科作物を加害し,コナガとともに東南アジアで重要な害虫となっている。日本でも関西を中心に被害が報告されていたが,最近では関東でも被害が見られ,野外での発生状態を調査する方法の開発が求められている。既に報告されているハイマダラノメイガの性フェロモン,(E,E)-11,13-hexadecadienal,では誘引力が弱い。そこで,この物質の誘引力を強化する物質を野外でのスクリーニング試験を通じて選択し,フェロモントラップに利用できるようにする。
[成果の内容・特徴]
  1. ハイマダラノメイガ処女雌抽出物をフロリシルカラムで分画したところ5%エーテル/ヘキサンで溶出される画分に雄成虫に対する誘引活性が認められた。
  2. この活性画分をガスクロマトグラフ質量分析装置で分析したところ,主成分は(E,E)-11,13-hexadecadienalであることを確認できたが,類縁体は検出できなかった。
  3. フロリシルカラムクロマトグラフィで得られた画分の生物検定の結果から,誘引活性を強める未知の物質は主成分の類縁体であると考えられた。そこで,数種の類縁物質を主成分と混合した試料をろ紙に含浸して粘着式の屋根型トラップ内に設置し,その活性を野外で検討した。誘引活性は,10月8〜10日の結果から(E,E)-11,13-hexadecadienalだけでは弱いが,(Z)-11-hexadecenalを加えた場合に強くなることを確認した(表1)。また,10月11〜13日の結果から(E)-11-hexadecenal,(Z)-13-hexadecenal,(E)-13-hexadecenalをこの2成分混合物に添加しても誘引活性の増強は認められなかった(表1)。2成分混合物の誘引力は処女雌に匹敵し,種特異的な誘引源として用いることが可能である。
  4. (Z)-11-hexadecenalの濃度を変えてその誘引活性を野外で検討したところ,0.3〜10%程度の添加が最適であった(表2)。
[成果の活用面・留意点]
  1. (E,E)-11,13-hexadecadienalと0.3〜10%の(Z)-11-hexadecenalの混合物は,種特異的な誘引物質としてハイマダラノメイガの発生状況を調査するためのフェロモントラップの誘引源として利用できる。しかし,(E,E)-11,13-hexadecadienalは市販されていないので,その供給体制を確保する必要がある。
  2. 試験は性誘引物質をろ紙に含浸させて行ったが,誘引活性が持続するのは1晩の間だけであり,長期の利用には製剤化が必要である。

[その他]
 研究課題名 : カメムシ等の誘引現象の解明
        (カメムシ,ハマキガ等の放出物が周辺昆虫に及ぼす影響の解明)
 予算区分  : 運営費交付金
 研究期間  : 2002年度(2001〜2005年度)
 研究担当者 : 杉江 元
 発表論文等 : Sugie et al., Appl. Entomol. Zool., 38, 45-48 (2003) 

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