チモシーを飼料とする乳牛のふんを用いた重窒素標識堆肥の調製手法


[要 約]
 チモシー単播草地150m2に重窒素含有率8.36atom%の硫酸アンモニウム10g/m2を早春に施用し,得られた粗飼料をホルスタイン種未経産牛1頭に給与すると,最高濃度3.80atom%のふん394kgと同2.62atom%の尿141kgが得られる。ふん121kgから2.55atom%の堆肥91kgが調製できる。
[担当研究単位] 北海道立根釧農業試験場・研究部・草地環境科
[分 類] 科学・参考

[背景・ねらい]
 畜産農家から排出される家畜ふん尿による環境汚染が問題化し,草地に施用された家畜ふん尿由 来の肥料成分,特に窒素の動態を解明することが急務となっている。ふん尿に由来する窒素の動態をより直接的に把握し,窒素の環境影響を評価するには,重窒素で標識した家畜ふん尿の利用が有効と期待される。近年,いくつかの畜種や飼料を用いた重窒素標識堆肥の調製が試みられているが,牧草を乳牛に給与して重窒素標識堆肥を調製した例は見あたらない。乳牛では大量の粗飼料を必要とするので,原料の濃度および量と調製された堆肥の濃度および量の関係を明らかにし,確実な堆肥調製の参考とする。
[成果の内容・特徴]
  1. 重窒素標識肥料を草地に施用し重窒素標識飼料を得る。チモシー単播草地150m2に8.36atom%の重窒素標識硫酸アンモニウム10g/m2を早春施用し,市販の化学肥料を併用して標準栽培を行うと,重窒素含有率5.46atom%の1番草と同1.45atom%の2番草が得られるので,これらをサイレージまたは乾草に調製する。また,馴致期間中に給与する重窒素無標識飼料についても,並行して標準的な栽培と調製を実施する(表1)。
  2. 重窒素標識飼料を乳牛に給与する。併給飼料を給与するとふん尿の重窒素濃度が低下するので,成雌牛の牛体維持に要する養分量以上を粗飼料で給与する。重窒素無標識サイレージによる馴致期間(1期:8日間)の後,重窒素標識飼料(2期:サイレージ14日間,3期:乾草6日間)を給与する。その後,体内に残存した重窒素を回収するため,重窒素無標識サイレージを9日間給与する(4期)。
  3. 乳牛から重窒素標識ふん尿を採取する。2〜4期の29日間にふん394kgと尿141kgを分別採取する。飼料の乾物摂取量が1日当たり乾物5.8〜6.8kgのとき,日排ふん量は13〜15kg,日排尿量はサイレージ給与期間に5〜6kg,乾草給与期間に2〜3kgで推移する(図1)。ふん尿中の重窒素含有率は,重窒素標識飼料の給与開始とともに上昇し,ふんで3.80 atom%,尿で2.62atom%まで高まる(図2)。
  4. 重窒素標識堆肥を調製する。5cm前後に細切した水分調整用の重窒素無標識乾草2.4kgと2〜4期に採取した重窒素標識ふん121.0kgを数回に分けて混合しながら容器に充填し,屋根付きの網室内において70日間堆肥化を行う。堆肥化に伴い現物中の肥料成分含有率はやや上昇するが,重窒素含有率の変化は少ない。ただし,総重量および水分は26〜27%減少し,窒素現存量はアンモニア揮散や脱窒等により18.6%減少する(表2)。
[成果の活用面・留意点]
 ふん尿を採取日ごとに分別して保存すると,様々な重窒素濃度のふん尿が得られる。

[その他]
 研究課題名 : 草地酪農地帯における環境負荷物質の動態解明
 予算区分  : 指定試験
 研究期間  : 1999〜2003年度
 研究担当者 : 松本武彦,三枝俊哉,三木直倫,宝示戸雅之
 発表論文等 : 松本ら(2002)日本土壌肥料学会講演要旨集48:151.

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