マメ科植物根粒菌のモニタリング手法開発のための16S rDNA情報


[要 約]
 マメ科植物根粒菌およびその近縁菌の16S rDNA配列をもとに菌種間の系統関係を明らかにし,配列上の相違点が明瞭にわかるように整理した。これらの情報を利用することで,根粒菌に対する特異性の高いモニタリング技術を開発することが可能になる。
[担当研究単位] 農業環境技術研究所 生物環境安全部 微生物・小動物研究グループ 微生物機能ユニット
[分 類] 学術

[背景・ねらい]
 根粒菌の効果的な利用技術を確立するためには,対象とする根粒菌を特異的にモニタリングし, その動態を把握する必要がある。しかし,根粒菌と近縁菌との系統関係の解明が十分でなく,菌種間における性質の違いが明確になっていないために,モニタリングの指標として利用できるような特異性の高い情報を入手することが困難であった。そこで,根粒菌およびそれ以外の多数の細菌の16S rDNAの配列データを蓄積して系統解析を行うとともに,菌種間における配列上の相違点を整理することによって,モニタリング技術を開発するために必要な情報を得る。
[成果の内容・特徴]
  1. 既知のすべての根粒菌(新種と考えられる野生株を含む13属59菌株)や,様々な環境中に生息する細菌(1142菌株)の16S rDNAの配列データを蓄積した。このデータを用いて系統樹を作成したので,各根粒菌に対してどのような細菌が近縁であるかが具体的に把握できる(図1)。
  2. 根粒菌と近縁菌の16S rDNAの配列情報を整理してデータセットを作成したので,菌種間における配列の相違が明瞭にわかる(図2)。
  3. モニタリング対象の根粒菌について,系統樹をもとにその近縁菌を把握した後,データセットを利用して両者の間の配列の相違を探索する。得られた配列をもとに,目的とする根粒菌に対して特異性の高いプライマーやプローブを設計することができる。
[成果の活用面・留意点]
  1. ここで得られた情報は,根粒菌だけでなく,近縁の有用菌や有害菌などのモニタリングやセンシング技術の開発へも利用可能である。
  2. 16S rDNAの配列が互いにきわめて類似している一部の近縁菌種を識別するためには,配列の置換速度が16S rDNAより速い遺伝子を新たな指標として採用することが必要である。
  3. データセットの利用希望者は,研究担当者(kikaku@niaes.affrc.go.jp)に連絡する。

[その他]
 研究課題名 : 環境微生物等の増殖促進・抑制に影響を及ぼす環境要因の解明
        (微生物及び植物の二次代謝物等が微生物の増殖に及ぼす影響の解析)
 予算区分  : 運営費交付金
 研究期間  : 2003年度(2001〜2005年度)
 研究担当者 : 澤田宏之,吉田隆延,高橋真実,土屋健一
 発表論文等 : 1)澤田,土と微生物,57 (1) ,39-64(2003)
               2)澤田・土屋,日本植物病理学会報,69,349-365(2003)
               3)Sawada et al.,J. Gen. Appl. Microbiol.,49,155-179(2003)

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